*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
外販は比率より絶対額で
――経常利益率が約七%と、物流企業としては収益
性が高い。
「物流子会社の利益については、大きく二つの考え
方があると思います。 一つは単価をギリギリまで下げ
て、親会社で利益をとるという考え方。 もう一つは、
物流子会社の自由裁量を活かし、一定の利益を認め
る。 その結果として配当で貢献するという考え方です。
安川電機は後者をとっています」
――中長期の経営計画は?
「安川グループが創業一〇〇年を迎える二〇一五年
の長期ビジョンを〇五年一〇月に作成しています。 そ
こでは、売上高二〇〇億円、外販比率三〇%すなわ
ち六〇億円、経常利益率七%を目標に置いています。
〇八年度をメドとした中期経営計画は単独の売上高
一三五億円。 経常利益九・四億円です。 ただし、こ
の目標は実は〇六年度でクリアしてしまう見込みで
す。 そのため中期計画の数値を上方修正する必要が
ある」
――外販比率は?
「当面は現状の約一七%を〇八年度までに二〇%した
い。 ただし、それを絶対視するつもりはありません。
パーセント至上主義ではなく、売り上げとして着実に
増やしていければいい。 グループ向けが増えれば分母
が大きくなりますから、その結果として外部比率が停
滞するのは構わない」
――外販専任部隊はありますか。
「〇六年四月に本社営業本部を設置しました。 従来は
事業所別に分かれていた営業部隊を統合し、外販を
拡大することが目的です。 総勢一九人を北九州に九
人、東京に八人、大阪と名古屋に一人ずつ配置して
います。 現場を持たずに、外販専門の営業部隊として、
この一年間動いています。 しかし、簡単には成果は出
ない。 新規案件は増えてもスポット的な仕事が多く、
広がりに欠ける。 それでも外の厳しさを知ることは貴
重な経験になる」
――外販のターゲットは?
「リピート性のある仕事という面で、リース会社な
ど販売物流だけでなく回収業務のある荷主に注目して
います。 またモーターやロボットなど、安川電機の物
流で扱っている分野はもちろん当社が得意とするとこ
ろです。 安川電機の調達先を対象にしたVMI
(Vendor Managed Inventory:ベンダー主導型在庫
管理)の提案にも本格的に取り組んでいます」
――具体的には。
「VMIサービスは安川電機の八幡東事業所の工場で
始まった取り組みで、当社が工場のそばにVMI倉庫
を設置し、そこにサプライヤーの在庫を置いてジャス
ト・イン・タイムで生産ラインに投入するものです。 〇二年一〇月にスタートし、現在サプライヤー十二社
に利用してもらっています」
「もっとも当初の荷主は一社だけで、倉庫も当社の
『九州流通センタ』の一角を利用しているだけでした。
VMIは仕掛かり在庫がゼロになるので工場側は歓迎
しても、ベンダー側の理解を得るのが難しい。 〇四年
春に改めて他のサプライヤーへの提案に動きました。
実質的にはそれがスタートでした」
「工場敷地内に新たに専用スペースを確保し、当社
の設備とスタッフを導入しました。 その後、〇五年二
月には埼玉県の入間にある安川電機の東京工場にも
横展開を図りました。 満庫状態だった『関東流通セン
タ』から、荷動きの悪い在庫を他に移してVMI倉庫
として位置づけました」
FEBRUARY 2007 28
グループ会社の物量増に加え、親会社のサプライヤー
を対象としたVMI事業や、海外現法の部品調達を商流ご
と代行する商社的サービスなど、業務領域の拡大によっ
て成長を続けている。 主要拠点や車両を自社で抱えるア
セット型ながら、経常利益率は約7%という高い水準にあ
る。 (聞き手・大矢昌浩)
安川ロジステック
――VMIで親会社の調達先を取り込む
黒田昇安川ロジステック社長
注目企業トップが語る強さの秘訣
――他の工場は?
「現在、行橋事業所にも同様のVMI倉庫を設置する
ことを提案しています。 中国本土のVMIも検討しま
した。 しかし実施には至らなかった。 現地で信頼でき
るパートナーを見つけて、かつ事業としてペイさせる
のは容易ではない」
海外進出はしばらく様子見
――海外展開は出遅れています。
「それは否定できません。 本来なら安川電機が海外
展開をする時点で我々も一緒に進出するべきだった。
しかし、当時はそれだけの実力がなかった。 人材がい
なかった。 そこで遅ればせながら〇三年に中国の安川
電機の工場に人を送って第一歩を踏み出しました」
――それも現状では法人化していません。 つまり現地
で売り上げが立てられない。
「〇四年に上海に駐在員事務所を設置して、当初は一
年以内に法人化したいと考えていました。 しかし現地
の事情を知るにつれて難しさも分かってきた。 下手に
法人化してしまえば身動きがとれなくなる恐れもある。
急がず、もう少し様子を見たい」
――〇二年度から開始した「商社代行サービス」とは。
「当社が日本で調達した部品を海外工場に販売してい
ます。 従来、親会社がまとめて購入し、日本から海外
に送っていた資材の物流を商流ごと取り込みました。
親会社に代わって当社が部品を購入して流通センタに
保管、海外のグループの現地法人や協力工場に販売
しています。 取り扱い規模は毎年伸びています。 〇六
年度下半期の実績は月額で三億円強。 当社の売上高
に占める比率は二六%に上っています」
――アセットについての方針は。
「当社は安川トランスポートという運送会社と、北
九梱包という梱包会社をグループに抱えています。 そ
こには約一〇〇台の車両と現場スタッフたちがいる。
また『九州流通センタ』と『関東流通センタ』の東西
二拠点も自社資産として所有しています。 つまり規模
が小さいなりに、バランスよくアセットを持っている」
「そのため業務範囲が広い、何でもできるというメ
リットはあります。 しかし、外販で大手物流企業や3
PLと競合する場合には明確な売り物が必要です。 一
つの切り口として外販用に拠点を増やすことも検討し
ています。 先ほどの営業本部で約一年間マーケティン
グ活動を続けた結果、大都市圏の倉庫スペースを拡
充すれば外販を伸ばせるという感触を得ています」
プロパー社員を中心に
――課題は。
「社員の士気、モチベーションの問題が一番大きい。
当社は小さな会社です。 だからこそ人材がものを言う。
そのため集合教育とOJTの二本立てで人材教育には相当に力を注いでいる。 社員一人ひとりと半期ごと
に業績契約を結び、キャリアプランと今後の進路を相
談の上で決めています。 個人業績を各人の賞与にも反
映させています」
「当社の発足は七六年で安川電機の物流部門をそのま
ま機能分社するかたちで設立しました。 設立当時の売
上高は一〇億円にも満たなかった。 それが何とか一〇
〇億円企業にまで成長することができたのは、創業時
に弊社に移ってきたスタッフたちの個人ノウハウによ
るものでした。 しかし今後は、それを組織化していく
必要がある。 今や当社の社員の約七割はプロパーです。
親会社出身者ではなく、プロパーをメーンとした物流
会社に生まれ変わる、その過渡期に当社はあるという
認識です」
29 FEBRUARY 2007
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