ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年7号
特集
佐川急便の変貌 舞台をアジアに拡げて列強を迎え撃つ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2005 26 国際競争は避けられない ――今年四月に真鍋前社長の辞任を受けて社長兼任 に復帰されました。
前社長の辞任は、経営計画の未達 が理由とされていますが、あまりにも突然で憶測を呼 びました。
業績も売上高は前年比で増加している。
「社長復帰は自分でも想定外でした。
しかし二〇〇 四年度の決算数字がはっきりした時点で、当社が危 機にあることは認めざるをえなかった。
前年比では増 収減益ですが、経営計画に対しては売り上げも利益も 届きませんでした。
当社はこれまで負けた経験がない んです。
創業以来四八年間、常に事業を拡大してき ました。
成長し続けることが最大の求心力でした。
そ れが崩れると一気にダメになる恐れがある」 「当社のような組織は、攻めには強くても守りに入 ると弱い。
前年度がマイナスになった以上、放ってお けば今年度も必ずマイナスになります。
こうした危機 を乗り切るためには、決断のスピードが大事です。
皆 で寄り集まって議論したり、シミュレーションの結果 を待ったりするのではなく、即断即決で動く必要があ る。
そのため、恥を忍んで復帰することにしました」 ――物流企業の国際競争がいよいよ本格化しています。
「身に迫って感じています。
昨年『ダボス会議』に 出席してきました。
ご存知の通り、この会議には世界 中から著名な経済人や政治家が集まり、トップ同士が 直接交渉を行います。
私も国際インテグレーターのト ップたちと話をしましたが、レベルの違いを痛感せざ るを得なかった。
当社も国内では大手に数えられてい ますが、国際市場では所詮ローカル企業に過ぎないこ とを思い知らされました」 ――それが危機感になっている? 「国際インテグレーターは今後、日本の国内市場に 間違いなく本格参入してきます。
当社も含めて、これ まで日本の物流会社は国際インテグレーターとパート ナー関係にあったわけですが、ここまで来れば、もは や提携だけでは収まらない。
世界を席巻しようという 会社が、日本だけは提携で済ませるとは考えにくい。
日本でも自分のブランドで展開したいはずです。
近く 外資系企業の株式交換による日本企業の買収も解禁 されます。
国内市場でも本格的な競争を覚悟せざるを 得ない」 ――国際インテグレーターは、株式の公開益を元手に 世界各地の物流企業買収を進めてきました。
未上場 の佐川急便にも同じ展開が可能なはずです。
「当社が国際インテグレーターの真似をしても太刀 打ちはできません。
株式の公開も考えていません。
実 際、現在の当社には株を公開するメリットが全くない。
東京佐川事件で背負った負債も返済し終わった今、買 収資金が必要になれば、いつでも銀行から有利な条件 で調達できる。
良かれ悪しかれ、既に知名度もある」「むしろ今は株式公開に伴うリスクのほうが大きい。
日本の国内市場への本格参入を狙っている外資にと って、当社は格好の買収先になり得ます。
当社の創業 者は生前、オーナー企業が株を公開するということは 責任を放棄するのと同じだ、株など公開するものでは ない、と常々話していました。
今になってその意味を 痛感しています」 躊躇している時間はない ――国際競争の点で佐川は「アジア No. 1の総合物流 業」をビジョンに掲げています。
なぜ世界でも日本で もなくアジアなのでしょう。
「マクロ的な日本国内の物流需要については、もは や頭打ちだと感じています。
宅配市場だけをとれば、 「舞台をアジアに拡げて列強を迎え撃つ」 佐川急便 栗和田栄一会長兼社長 前社長の突然の辞任を受けて、3年ぶりに社長に復帰 した。
国際インテグレーターとの関係は、もはや提携で は収まらない。
競争の舞台をアジアに拡げて列強を迎え 撃つ。
オーナー経営者という立場を活かし、即断即決で 経営のスピードを上げる。
27 JULY 2005 まだ伸びていますが、全体の国内物流量は一貫して減 ってきている。
今後は人口自体が減っていく。
需要が なくなるし、働いてくれる人もいなくなる。
国内市場 規模の拡大は、もはや期待できません」 ――しかし、宅配市場が頭打ちだという指摘は五〜六 年前からありました。
ところが実際にはその後も市場 は拡大を続けている。
「確かにこれまでは宅配業者同士が良い意味での競 争をすることで、眠っていた市場を掘り起こすことが できました。
物流サービスが多様化して様々なニーズ に応えられるようになったことで、それまで荷主が自 分で運んでいたものを、心配なくアウトソーシングし てもらえるようにはなりました。
しかし、それも永遠 には続かない」 「欧米の国内市場やフォワーディングも同様です。
既 に成熟している。
今から当社が参入しようとしてもタ イミング的に遅すぎる。
もうネットワークが出来上が ってしまっています。
そこに割り込むのは容易なこと ではありません。
しかしアジア諸国の物流市場は、ま だそこまで出来上がっていない。
これから成長すると ころです。
今のうちに参入しておけば、その国に根付 くことができる。
しかも、当社の顧客のビジネス自体 が今はアジア全域に広がっている。
それには何として も応えたい」 ――しかし、単にフォワーディング用の出先機関を置 くのではなく、世界各国の国内にネットワークを敷く ということになれば、それだけリスクも大きくなる。
と りわけ宅配便のようなインフラビジネスともなると当 初の設備投資に大金が必要で、回収には長い時間が かかります。
実際、日本でもそうでした。
「もちろんです。
宅配便のようなビジネスはネットワ ークを完成させて収穫期を迎えるまでに多くの時間を 要します。
しかし、リスクが大きいからといって躊躇 している間に、市場はどんどん変化してしまう。
それ に巨額の投資が必要だといっても日本のビジネス規模 から考えると高は知れている。
実際、これまで中国の 宅配事業に投資したのは二〇億円程度です。
経営の 屋台骨に響くような額ではない。
それでも現地の市場 では、一定のインパクトを持つ」 「採算についても現時点では初期投資を回収すると ころまでは来ていませんが、上海は今年五月には単月 収支で黒字までこぎ着けました。
北京も二年以内に黒 字転換できそうです。
後五年もあれば中国事業は日本 から投資するのではなく、中国の国内事業で稼いだ資 金で設備投資を回せるようになる」 日本のサービスは世界で通用する ――佐川が本格的に海外の国内市場に乗り出したのは 台湾が最初でした。
「台湾からは多くのことを学びました。
日本のモデルを持ち込んだ時に何が通用して、何が通用しないの かが良く分かった。
少なくともサービス面はそのまま 海外でも通用する。
実際、海外のセールスドライバー にも日本と全く同じ教育をしています」 「また台湾はともかく、中国のような国でサービス という概念が本当に定着するのか、始めは半信半疑で したが、実際にやってみたら思いのほか上手く回って いる。
お辞儀に慣れている日本人と違って、中国人は 頭を下げることを屈辱的に感じるようですが、それも 教育によってクリアできる。
笑顔やサービスがお金に なるということを理解すれば行動できる。
そして顧客 にもそれが評価されることが分かってきました。
今は 日本で培ったビジネスモデルがアジア全域で通用する と確信しています」 6月に開催された社内ドライバーコンテストの一コマ。
例年、 大変な盛り上がりを見せる。
欧米企業との国際競争においても こうした現場のエネルギーを最大の競争力と位置付けている 8,000 7,500 7,000 6,500 6,000 (単位:億円) 《売上高》 《経常利益》 400 300 200 100 0 7,380 151 302 350 311 7,468 7,625 7,819 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度 佐川急便の連結業績推移 売上高 経常利益

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