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APRIL 2007 18
パート採用の十箇条
突然パートが辞めてしまう。 募集しても、なか
なか集まらない。 せっかく採用したのに、また辞めてしまう。 しわ寄せが正社員や他のパートに波
及する。 サービス残業が横行し、ベテラン頼みの
綱渡り的な運営が続く。 結局、最後は精神論、根
性論をゴリ押しして社員に泣き寝入りを強いる。
そんな現場が増えている。
今や物流分野でも、パート比率の向上がローコ
ストオペレーションの決定打とされている。 しか
し、単純に社員の頭数をパートと置き換えるだけ
では、一時的に人件費を安くすることはできても、
中長期的には「現場力」の低下を招いてしまう。
物流部門、物流企業として最も大事な競争力を失
えば、元も子もない。
パート比率の向上は、パートを戦力化する仕組
みがなければプラスには働かない。 ところが多く
の企業が、その場しのぎの付け焼き刃的な対応に
終始している。 パート労働者の特質を見落とし、
募集・採用の段階で自らパートを閉め出してしま
う企業が後を絶たない。 まずは「パート採用の十
箇条」を頭に叩き込む必要がある。
■■第一条
採用責任者を決める
パートの採用や時給設定の権限を本社の役員や
人事部ではなく現場に与える。 突然の退職に現場
で即対応できる体制を整える。 採用責任者の役割
は四つある。 すなわち「?募集活動の準備と実施」、
「?面接の実施」、「?採用手続きの実施」、「?新
人オリエンテーションおよびフォロー」である。
この四つの活動を同じ人が一貫して担当しなけ
ればならない。 新人に安心感を与えることに加え、
同じ活動を何度も繰り返すことで改善が進み、採
用力がレベルアップする。 パートの質も改善でき
る。 同じ人が対応しているため応募者を一定のレ
ベルに保つ効果が出てくる。 その都度、担当者が
バラバラでは募集・採用ノウハウが蓄積されない。
責任者がセンター長本人である必要はない。 募
集・採用活動にはかなりの時間と労力が割かれる。
それを日常の管理業務に追われる現場の最高責任
者が担当してしまうと、後回しになり兼ねない。
センター長代理など、現場のナンバー2に兼任さ
せるのが最も成功しやすい。
■■第二条
事前に情報を集める
パートの応募・離職には一定のパターンがある。
一般に学生アルバイトの場合は、新学期の始まる
四月前に「離職」→ゴールデンウィーク前「応募」
→夏休み「応募」→九月新学期前「離職」→冬休
み「応募」→成人式を境に「離職」→三月に「応
募」というサイクルをとる。
主婦層の場合は、当然ながら家庭の事情に影響
される。 基本的には子育ての区切りとなる四月、
九月、一月などが「応募」の時期。 主婦パートは
学生バイトと違って近所の目があるため二〜三日
で辞めてしまうことは少ない。 しかし職場の内情
も分かってくる採用一カ月後あたりに「離職・転
職」が発生する。 これとは別に夫の転勤や配偶者
控除の問題で三月、九月、十一月の異動の時期に
起きる。
もちろん地域性の違いもある。 しかし、そこに
もまた一定のパターンが存在する。 その地域の応
募・離職の波をとらえる必要がある。 応募が増え
パートの賃金相場は、国内のどのエリアもマクドナルド
の初任時給が基準になっている。 その地域における実質的
な最低賃金を示しているからだ。 物流現場で働くパートの
時給は、それよりも200円以上高いことが珍しくない。 それ
でも人が集まらない。 採用力を磨く必要がある。
第2部マクドナルド化の手順
【採用】――地域最低時給でも集める
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る時期にタイミング良く募集活動を行うことで、
期待通りの人数・人材を採用できる確率が高くな
る。
パート時給の地域相場を把握するため周囲の競
合の初任時給調査を定期的に行うことも重要だ。
地域相場より高額な初任時給は、かえって「仕事
がキツイのではないか」「人がすぐ辞めるのでは」
といった不安感を与えてしまう。 地域相場の維持
は初任時給決定の原則だ。
■■第三条
年間募集計画を立てる
主婦にとっては家庭、学生にとっては学校が生
活の最優先課題だ。 そのためパートの多くは「子
供の学校の勉強が‥‥」「友達に旅行に誘われて
‥‥」など様々な理由から、いともアッサリと職
場を離れていく。 いつでも辞めることができるからこそ、パートとして働いているのである。
それなのにパートが辞めてしまってから慌てて
集めるようでは、現場の安定運営など望むべくも
ない。 募集・面接・採用には最低一カ月かかる。
採用後、基本作業の習得に、さらに一カ月。 欠員
が埋まるまでには合計二カ月かかってしまう。 正
社員と同様にパートについても事前に年間募集計
画を立てておく必要がある。
手順は次の通りだ。 まず月別売上高予測から月
別人件費を割り出す。 それをパート一人当たりの
適正労働時間数で割って、月別の適正在籍者数を
算出する。 これと並行して現場の離職率調査を定
期的に行う(
図1)。 そのセンターではどの時期
に、どれだけのパートが離職する傾向にあるのか
を把握し、応募・離職の波を加味して、何月に何
人募集するのかを確定する。
離職率調査によって、パートの辞める原因も分
かってくる。 例えば毎年三月に離職者が多い場合
には、二月に昇給評価・評価面接を行うことで離
職防止を図る。 これと並行して二月に募集・採用
し、三月までに一人前に育てるといった手を打つ
ことができる。 計画は三カ月単位で見直しを図る
(
図2)。
■■第四条
採用ツールを準備する
パートの応募に、三六五日いつでも対応できる
ように、現場採用ツールを常備しておく必要がある。 ?応募用紙、?ユニフォーム、?ロッカー、
?募集チラシ・ポスターなどである。 こうした基
本的なツールの不備によって、せっかくの採用チ
ャンスを逃してしまうことが、一般に想像されて
いる以上に頻繁に起きている。
募集チラシやポスターは、募集タイトル・サブ
タイトルを工夫し、三色以上を使って見やすくデ
ザインする。 募集対象者、初任時給など、パート
が知りたい情報は全て明記しておく。 また、でき
るだけ多くの職種を募集対象者として表記し、各
人が希望する勤務曜日・時間帯に合わせることを
アピールする必要がある。 決して募集対象者を狭
めてしまうことがあってはならない。
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■■第五条
募集告知を工夫する
多様な募集告知方法を開発する必要がある。 物
量の波動に対応して全営業日・全営業時間を埋め
る要員を確保するには、いろいろなタイプのパー
ト労働者を雇用する必要がある。 単一の採用源に
頼ると、応募数が少ないだけでなく、後々大混乱
を招く恐れがある。 例えば同じ学校の同じ学年の
子供を持つ主婦ばかりを採用してしまえば、学校
行事の時などに大量に休みが発生してしまう。 現
場は途方にくれるしかない。
知恵を使えば、募集源はいくらでも開発できる。
パートによる友人紹介、団地や地元婦人会などへ
の依頼、定時制・二部学校・学生寮などへの訪問、
センター外壁や社内の他センターでのポスターの
掲示、駅前・街頭でのチラシ配布など、正社員の
採用よりも、はるかに多様な採用源が活用できる。
■■第六条
受け入れ態勢を整える
パートが職場を選ぶ最大の動機は、自分が希望
する時間、空き時間だけ働けることである。 とこ
ろが多くの職場が、そのニーズに全く対応できて
いない。 これは「ワーク・スケジューリング」の
問題である。 ワーク・スケジュール表が月次で作
成されている、あるいは全く作成されていないこ
とが最大のネックになっている。
主婦や学生の生活で一カ月以上先の空き時間が
ハッキリと分かっていることなど少ない。 授業参
観やレジャーなど、パートが生活主体とする家庭
や学校などのイベントは、もっと唐突に変化する。
それを一カ月に一回の計画でコントロールしよう
とすれば、どうしてもパートの不満やパート間の
トラブルを招いてしまう。
パートの自己申告制による一週間単位のワー
ク・スケジュール作成が一つの解決策になる。 次
の週の希望勤務時間を各パートに申告させる。 そ
れを翌週が始まるまでに調整する。 この時、優秀
なパートから先にシフトを確定する。 これによっ
て、できるパートが残り、ダメなパートが落ちて
いく。 しかも採用時に勤務時間を固定しなくて済
むため応募も増えるというわけだ。
■■第七条
パートに選ばれる面接を
事前に面接チェックリストを準備しておく。 二
二頁にそのフォーマットを掲載した。 面接者によ
る仕事の説明内容や採用の評価基準が曖昧だと、
トラブルの元になる。 実際、労働基準監督署に持
ち込まれるクレームの過半数は、いわゆる「話が
違う」だ。 パートに辞められてしまうだけでなく、
会社の社会的信用にも傷が付いてしまう。
パートも今や売り手市場。 面接に来た応募者は
既に何社か回ってきたと考えたほうがいい。 その
なかから、職場として「選ばれる」必要がある。
ただし、パート側の判断基準は正社員のそれとは
全く異なる。 「感じがよい」「やれそう」といった
印象が重視される。 短時間の面接だけで、そうし
た印象を与えるのは相当に難しい。
カギになるのは、相手に納得してもらうことだ。
具体的には?一五分以上をかけて集中的に面接を
行う。 中断等しない。 ?身近な話題から切り出し
リラックスさせる。 ?相手の話をよく聞き、面接
チェックリスト等に常に記録する。 それによって
真剣な印象を与える。 ?労働条件を明確に伝える。
?センターの基本的な運営方針を積極的にPRす
る、といった姿勢をとり、好感を持たれるように
する。
■■第八条
採否の通知は電話で連絡
採否の通知は後から電話で連絡する。 面接終了
と同時に「明日から来てください」では、応募者
は不安になる。 採用側のいい加減な姿勢が露呈し、
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何社も面接回りをしている応募者には逃げられて
しまう恐れがある。 電話連絡は現住所等に虚偽が
ないか確認する意味合いもある。 応募者本人の不
在を狙って連絡するのも手だ。 パート先を家族に
知ってもらうことで、後のトラブルを未然に防ぎ、
就業期間中の援護も期待できる。
不採用者にも丁寧な連絡が要る。 応募者はその
会社の顧客にもなり得る。 反感を持たれてはいけ
ない。 断り方としては、希望する勤務日・時間帯
が合わなかったことを伝え、その時間が空き次第、連絡を入れたい旨を伝える。 チャンスがあれば、
改めて応募してもらえるようにお願いし、感謝の
言葉を添えて電話を切る。
■■第九条
採用手続きは厳守する
パートには保証人を立てるなどの複雑な手続き
は避けるべきだ。 ただし、必要な書類の提出は厳
守させる必要がある。 履歴書の記載不備や一八歳
未満の場合の親権者同意書など、「忘れました」
「後からもってきます」を許してしまえば、採用側
の姿勢を問われることになる。
雇用契約書も必ず取り交わす。 パート用の雇用
契約書を用意してサインさせる。 シンプルな手続
きでも、手順を確実に踏むことで、採用時から気
を引き締めて背筋を伸ばしてもらう。 半端な気持
ちを払拭させる。 放任すれば、そのツケは後日必
ず採用側に回ってくることを肝に銘じておく。
■■第十条
緊急時に備えておく
いくら詳細に分析しても離職予測が必ず当たる
とは限らない。 パートの突然の退職に対応するために、パート予備軍をリストした登録台帳を用意
しておく。 この台帳には、パートの「?退職者」
と、応募時期や希望就業日・時間などの理由で
「?不採用になった面接者」をリストする。 これ
を活かせるかどうかは、?退職者の場合は退職時
の対応、?不採用者は面接時の担当者の対応いか
んによる。
突然の退職に備えるには、日頃の情報収集も重
要だ。 どんな職場にも、世話好きな事情通のパー
トがいるものだ。 彼女たちと常にコミュニケーシ
ョンを図ることで、「隠れ離職予定者」を把握し
ておく。 センター長や採用担当責任者の腕の見せ
所と言える。
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