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MAY 2007 42
失望感から株価が半落
ハマキョウレックスの株価は、二〇〇六年
一月の高値六三〇〇円から同年十一月の安
値三〇二〇円まで五割程度下落した(〇七年
三月二七日終値は三七三〇円)。
〇一年三月期から〇五年三月期の営業増
益率は平均で三一%に達しており、同社には
「3PL市場における急成長企業」というブ
ランドイメージがあった。 ところが、〇六年
三月期の営業利益は二九億円で前期比五・
二%増にとどまった。 利益成長の失速が株式
市場に失望感をもたらし、株価下落につなが
ったものと考えられる。
業績低迷の主因としては、主力である物流
センター事業の勢いが低下したことと、子会
社「近物レックス」の業績が計画未達となっ
たことが挙げられる。 〇七年三月期に入って
からは、物流センター事業の業績は着実に改
善し、再び従来の成長軌道に乗っている。 し
かしながら、売り上げの六割を占める貨物自
動車運送事業の業績は依然として不安定だ。
ハマキョウレックスが「近鉄物流」を子会
社化して路線便事業を取り込んだのは〇四年
一〇月。 買収前の期間を含め、〇五年三月期
までの近物レックス(旧・近鉄物流)は、営
業利益率が一〜二%と低水準ながらも営業黒
字基調で推移していた。 だが、競争激化に伴
う単価下落、庸車・下請費などの増加、軽油
価格の上昇などの影響を受け、〇六年三月期
の営業利益率は〇・四一%に落ち込んだ。 〇
七年三月中間期(〇六年四月〜九月)決算
では大幅な営業赤字を計上し、ハマキョウレ
ックス単体の増益効果を減少させることにな
った。 第3四半期(一〇〜十二月)はわずか
ながら営業黒字を確保したものの、中間期の
減益を挽回するには至らなかった。
メリルリンチ日本証券では、ハマキョウレ
ックスの〇七年三月期連結業績を、売上高八
一九億円(前期比五・五%増)、営業利益二
三億円(同二〇・四%減)、経常利益二一億
円(同三一・三%減)、当期利益一〇億円
(同十一・三%減)と予想している。
経常利益二一億円の予想は、同社計画の
二五億円(前期比一八・二%減)を一六%
下回る。 これは、ハマキョウレックス単体の業績は同社計画以上、連結子会社スーパーレ
ックスの業績は同社計画通りで順調に推移し
ているとみられるものの、近物レックスの業
績は〇六年三月期に引き続き計画未達となる
可能性があると考えるためだ。 景気回復の効
果もあり、輸送量は順調に伸びていると考え
られる。 しかし一方で、輸送単価の値上げを
顧客に浸透しきれていないと見受けられ、ま
た、業務効率改善の効果も我々の想定に満た
ないのではないかという懸念がある。
管理職クラスが直接テコ入れ
子会社化から二年間、ハマキョウレックス
は、近物レックスが長年培った路線業者とし
第30回
ハマキョウレックス
物流センター事業は着実に改善
近物レックスの立て直しが課題
営業増益率が平均で三〇%を超え、3PL市場
における急成長企業というブランドイメージを手
にしたハマキョウレックス。 〇四年には近鉄物流
(現・近物レックス)を買収して事業を拡大した。
だが買収した路線便事業が依然として振るわない。
テコ入れ策の成否が今後のカギを握る。
土谷康仁
メリルリンチ日本証券
調査部
43 MAY 2007
てのノウハウ、マネジメントの統率力などを
重視し、経営は自助努力に任せてきた。 だが、
業績不振を目の当たりにして方針を転換。 〇
七年一月からは、ハマキョウレックスの管理
職クラスが近物レックスの一員となり、現場
のテコ入れを行っている。
一部の拠点では、着手から三カ月で既に具
体的な成果が見え始めているようだ。 例えば、
庸車費や人件費といったコストの削減。 固定
的だった協力業者を見直すことで自社トラッ
クの輸送頻度を高め、積載効率を上げている。
また、外注費を見直した結果、一人当たりの
生産性が向上し、人件費の抑制にも繋がって
いるという。 全拠点において同様の成果を期
待できるかは、これからの注目点と言えよう。
とはいえ、親会社のスタッフが直接改善にあ
たるのには限界がある。 この成功事例をいか
にシステマチックに
他拠点に応用できる
かが成功の鍵を握る
だろう。
〇八年三月期連結
業績は、売上高八七
七億円(前期比七・
一%増)、営業利益
三六億円(同五六・
五%増)、経常利益
三四億円(同六一・
九%増)、当期利益
一七・五億円(同七
五・〇%増)と予想
している。
ハマキョウレックスおよびスーパーレック
スの物流センター事業は、既存顧客における
取扱数量の増加、例年通り一〇件程度の新
規顧客の獲得、加えて関東圏での倉庫増設と
いう好材料により増収効果が期待できる。 経営上の必須の課題は、やはり近物レック
スの営業黒字化だろう。 近物レックスの営業
利益は、〇七年三月期はマイナス七・五億円
の赤字予想だが、〇八年三月期はこの赤字を
帳消しにする七・五億円の営業黒字を予想し
ている。 親会社主導による人事組織の見直し、
業務効率化によるコスト抑制などにより、減
収・大幅増益というシナリオを想定してのこ
とだ。 一部顧客に対する輸送単価の値上げも
可能とみているが、競争環境が引き続き厳し
い状況においては輸送単価の上昇による増収
を見込むのは難しいだろう。
バランスシートの面からみても、近物レッ
クスの今後の業績動向が各種の財務指標を左
右すると考えられる。
ハマキョウレックスは、近鉄物流(現・近
物レックス)の株式七二%を近畿日本鉄道か
ら二三億円で買い取った。 〇四年三月期現在
で近鉄物流の長短借入金は二〇〇億円以上
あった。 実質的には二二〇億円程度で子会社
化したわけだ。 〇四年三月期のハマキョウレ
ックスの株主資本は六六億円。 株主資本の約
三倍に相当する子会社買収をしたことになる。
近鉄物流の買収後、ハマキョウレックスの
有利子負債残高は大幅に増大した。 〇七年三
月期のデッド・エクイティ・レシオ(有利子
負債/株主資本)は二・三倍。 トラック業界
の平均である〇・七倍の三倍に相当する。
また、ROA(総資産利益率)に関して言
えば、〇七年三月期(連結)予想の一・四%
は業界平均の三%前後を下回る水準だ。 物流
センター事業のROAは五%前後の高水準で
安定的に推移していると考えられ、貨物自動
車運送事業が足を引っ張っているものと考え
られる。 近物レックスの純利益が黒字基調で
推移すれば、将来的なROAは業界平均を上
回る可能性もあるだろう。
メリルリンチ日本証券の業績予想をベース
にした〇八年三月期予想PER(Price
Earning Ratio:株価収益率)は一八倍前後
で、業界平均並みの水準(三月二七日株価終
値三七三〇円から算出)だ。
中期的な経営課題は多いものの、ハマキョ
ウレックスには、物流センター事業における
新規需要の獲得力、高い労働生産性といった強みがある。 また、近物レックスの業績改善
次第では業績変化率が高まり、株式市場でも
再度注目を浴びると予想できる。
リスクファクターとしては、物流センター
事業における取引先企業の業績悪化、近物レ
ックスの再度の業績低迷、事業拡大に伴う人
員不足の問題などが挙げられよう。
ハマキョウレックスの過去5年間の株価推移
(円)
《出来高》
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