ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年8号
SOLE
SOLE報告

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2005 84 される見込みである。
電子タグの価格低減については「響プロジェクト」を立ち上げ、 推進中である。
当プロジェクトの目標は2年以内に価格を5円まで引 き下げることであり、そのためにアンテナ製造技術の開発、実装技 術の開発、国際標準UHF帯ICチップの小型化を図らねばならず、現 在中核企業として日立製作所、協力企業としてNEC、大日本印刷、 凸版印刷の4社体制で推進されている。
世界の動きを概観するために、昨年は欧州、今年は米国を訪問し、 電子タグ製造業者の実態、利用企業の動向、標準化機関の活動状況 を調査してきた。
電子タグ製造業者の動向として、フィリップス・ セミコンダクター社、インフィニオン・テクノロジー社、利用企業 の動向としてメトロ社のエクストラ・フューチャー・ストア、同社 のRFIDイノベーションセンター、ウォルマート社、国防総省、標準 化機関の動向としてAuto-IDラボを訪問した。
欧米では民間企業が自ら莫大なお金をつぎ込んで、顧客満足度の 向上やサプライチェーン上の全体最適化を狙い、電子タグの導入に 積極的、かつ真剣に取り組んでいることが判った。
電子タグの普及に向けた環境整備の一環として、経済産業省では 平成15年度から産業界における実証実験を進めてきている。
平成15年度は4業界(家電、アパレル、出版、食品流通)で電子 タグの実用化を想定した基礎的な実証実験を行った。
平成16年度は 業種を拡大し、建設機械・産業車両・農業機械、書籍、家電製品・ 電子電器機器、医薬品、百貨店・アパレル、物流、レコード・DV D・CDなど7つの事業分野にて実証実験を行った。
その結果、三 越や阪急など本格導入を図る業界も出てきており、大きな成果があ ったといえる。
平成17年度は、電子タグシステムの持つさまざまな 効果を最大限に引き出し、即効性をもって産業競争力の維持・強化 に繋げていくため、多方面にわたる複数テーマを設定し、広く業 界・企業からの提案を募集し、推進していく。
電子タグの普及に向けた活動には、もうひとつ大切な事項がある。
それは省庁間の連携体制の構築であり、現在、利活用促進に経済産 業省、農林水産省、国土交通省が、ネットワーク技術研究開発に総 務省が、製造技術の研究開発に経済産業省、文部科学省が中心にな って推進を図っているが、それらの連携を密にするために「省庁間 連絡会議」を設置している。
経済産業省は「国際標準化」と「価格低減」の2点に政策課題を 絞り込み、戦略的に電子タグ関連の政策を進めているが、その本格 的な普及のためには、ユーザー企業の主導的な牽引力がきわめて重 要だ。
経済産業省としては、引き続きこういった企業の方々を応援 していく。
フォーラムシリーズ第9回は7月13日に、ロジスティクス課題の研 究ということで津久井先生を招いて「環境ロジスティクス」に関す る話を聞いた。
その内容は改めて報告する。
また第10回は9月14日 に、8月中旬に米国で開催される「SOLE2005」の報告を行う。
8月は米国フロリダ州オーランドで「SOLE2005」(8月16日〜18 日)が開催されるため、SOLE東京支部では有志を募って参加する 予定。
皆様のご参加をお待ちしております。
このフォーラムは年間計画に基づいているが、単月のみの参加も 可能。
1回の参加費は6,000円。
参加希望やSOLE2005ツアーに関する 問い合わせは、次の事務局まで(sole_consult@jmac.co.jp)。
SOLE報告 The International Society of Logistics 次回フォーラムのお知らせ SOLE東京支部フォーラムの報告 SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティク ス技術やロジスティクス・マネジメントに関する活発な意見交換、 議論を行い、会員相互の啓発に努めている。
今回はシリーズ第8回と して6月15日に行ったロジスティクス技術「RFID最新情報」につい て報告する。
内容と講師は、まず「電子タグ(ICタグ)の普及に向けた経済産 業省の戦略」として経済産業省情報経済課係長の福留康和氏。
続い て「電子タグ利活用(トレーサビリティ)動向」を中心に「平成16 年度電子タグ実証実験」全般について次世代電子商取引推進協議会 (ECOM)の主任研究員東野正明氏、「百貨店店頭における電子タグ 活用実証実験」として三越商品企画部ゼネラルマネジャーの西田雅 一氏の話を聞いた。
内容が豊富だったため、今号ではまず経産省・福留氏の講演内容 の要約を報告し、ECOM・東野氏、三越・西田氏の講演内容は次号 にて報告する。
*       *       * はじめに 今回のフォーラムのテーマは昨年の12月度フォーラムにて取り上 げたRFIDの続きで、前回学んだ「RFIDの基礎」をベースに「RFID 技術の最新動向」を学ぼうというものである。
経済産業省の戦略(福留氏の講演) 電子タグについて経済産業省としては3〜4年前から取り組んでい るが、当時は省内、民間ともに認知度が低い中、将来性を確信し政 策を推進してきた。
最近はマスコミでも取り上げられるようになり、 うれしく思っている(3月15日「ニュース23」)。
わが国の企業が直面している課題はいろいろあるが、経済産業省 としてはIT技術の進展による新しい企業間連携の効率向上を重要課 題と認識している。
しかし、IT投資の現状を見ると、ほとんどが企 業内の課題解決であって、企業間の最適化まで活かされている事例 は多くない。
複数の企業があたかもひとつの企業のごとく、シーム レスに活動するには企業間の情報共有が重要である。
企業間情報共 有による新しい企業連携の鍵を握るのがこの電子タグである。
電子タグ普及の狙いは「ユーザー業界の競争力強化」である。
それ も企業と企業をまたがる、オープンな分野をターゲットとしている。
現在、電子タグが活用されているのは1つの工場内とか企業内といっ たクローズドな分野※であり企業の独力で実用化されているが、企業 と企業を跨って利用されるオープンな分野での実用化には未だ至っ ていない。
オープンな分野でのタグの普及には標準化と価格低減が 決め手となる。
企業と企業を跨って利用されるオープンな分野にお いては、もはや国境など無いので、標準は国際標準でなければなら ない。
また、電子タグの価格については、現在は数十円から数百円 するものを1個5円程度まで引き下げる必要がある。
標準化のポイントは商品コードと技術規格(通信プロトコル)の 二つであり、前者については電子タグ用の商品コードの統一を日本 からISOに提案中であり、今年度中にはISO標準として確定する見込 みである。
後者については、EPCグローバルの規格とISO/IECの2つ の規格を統一することが最大の課題であったが、今年度中には統一 ※物流センターでの仕分効率化、回転寿司での精算効率化・精度 向上、アパレル店舗での棚卸時間の短縮など、クローズドな分 野では既に多くの効果を上げている。

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