ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年7号
特集
ICタグの使い方 ICタグ関連市場ガイド

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

ICタグとは、半導体チップとアンテナで構成する 「インレット」をタグに二次加工したものだ。
現在、I Cタグのメーカーは無数に乱立している。
ただし、そ の多くはチップを自分では生産していない。
チップメ ーカーから調達し、顧客の注文に応じてタグに加工し て販売している。
チップメーカーは周波数帯ごとに寡占状態となって いる。
HF帯ならNXP(旧フィリップス・セミコン ダクターズ)、UHF帯は米インピンジ、マイクロ波 帯は日立が強い。
このうちUHF帯はこれまでインピ ンジの独壇場だったが、今年後半からは日立の「響タ グ」やNXPの製品も出回ってくる。
もっとも「UHF帯の『Gen2』が市場を作って いくのはこれからだ。
現状で最も普及しているHF帯 にしても市場を確立したと言えるのは、この二〜三年 のこと。
この二つの周波数帯のタグが今後は両輪とな り出荷量を拡大させていくだろう。
指向性が極めて強 い二・四五GHzも一部では使われ続ける。
一方、昔 から使われてきた低い周波数帯のタグは通信速度やコ ストの点から今後はUHF帯かHF帯に吸収されてい きそうだ」と野村総合研究所の藤吉栄二情報技術本 部技術調査部主任研究員は解説する。
ICタグの購入単価は発注量次第だ。
シート型の タグを一〇〇〇枚単位で購入すると単価は現状で二 〇〇円程度になってしまう。
ただし一〇万個まとまれ ば国内でも五〇円程度まで単価が下がる。
従来は五 〇〇〇円前後した海上コンテナ用のアクティブタグも、 三井物産、NTT、日本郵船の三社の共同開発によ って五〇〇円前後まで下がる見込みだ。
ICタグを導入するには、タグのほかにリーダ/ラ イタとミドルウェアを購入する必要がある。
現場でI Cタグに情報を書き込む必要がある場合は、エンコー ド機能付きプリンタも要る。
リーダ/ライタのベンダーの顔ぶれは、タグとほぼ 同じ。
タグの周波数帯に対応した機種を選ぶことにな るため、セットで購入することもが多い。
ゲート型リ ーダーの相場は、定価ベースでワンセット約一〇〇万 円。
ハンディ型はバーコード用ハンディの値段+五万 円〜一〇万円が相場となっている。
ミドルウェアは、ゲート型リーダーの複数のアンテ ナを使って読み取ったデータの取捨選択や、WMS (倉庫管理システム)やERP(基幹業務パッケージ ソフト)など、上位システムとのデータのやりとりを 処理する役割を果たす。
機能によって数万円から一〇 〇万円程度まで幅がある。
ただし、パッケージを購入 しても、そのまますぐ使えることは少ない。
ほとんど のケースでカスタマイズが発生する。
その費用は使い方によって大きく違ってくる。
基本 的にHF帯は普及が進んでいるだけに運用もこなれて いる。
導入後すぐに稼働に移れる。
一方、UHF帯は長距離まで届くという特性に加え、解禁されて間もな いこともあって、電波の飛び具合、システムの調整な ど、導入時のテストに一週間から一カ月程度見る必 要がある。
それだけカスタマイズの費用もかさむ。
本格導入を検討するための実験や数百枚程度のタ グを特定のサイト内で使う場合には、スターターキッ トを購入するという手もある。
日立、富士通、NEC、 IBMなどの大手システム会社が一〇〇万円前後で 販売している。
今のところチップ以外の製品は、ソリューションも 含め各社のシェアが横並びで、抜きん出ているベンダ ーは見あたらない。
市場規模も爆発的な成長には至っ ていない。
市場はいまだ黎明期にあり、ベンダーは収 益的に我慢を強いられている状況だ。
ICタグ関連市場ガイド 今後もICタグはHF帯が主流を占める。
ただしケー ス/パレットにはUHF帯の「Gen2」。
コンテナにはア クティブタグも使われる。
事実上の標準は決着が付い た。
これによって、ICタグ導入のコストパフォーマン スがようやく見えてきた。
JULY 2007 24 25 JULY 2007 ――ICタグ関連市場は予想されていたほど伸 びていません。
「当社の販売計画も、当初の予想より一年から一 年半ぐらい遅れています。
それでも昨年あたりか ら、ICタグの限界、できないことが分かった上 でICタグを使いたいというお客様が増えてきた。
とりわけ『RTI:Returnable Transport Item (回収可能な輸送アイテム)』と呼ばれる分野で利 用したいという引き合いが増えてきています。
こ れに合わせて当社も関連製品やサービスの開発を 進めているところです」 「取り組みの中身も以前のように話題性先行で、 バーコードでもできることをICタグでやってい るのとは違ってきました。
同時に一つひとつの案 件の規模が小さくなってきています。
投資対効果 を精査した上で、キチンと予算を立て着手してい る。
打ち上げ花火ではないプロジェクトが持ち込 まれるようになってきました」 ――市場拡大の遅れは何が原因でしょうか。
「やはりUHF帯の解禁がもたついたことが大 きい。
関連機器の出揃うのが遅れました。
しかも UHF帯が、思っていたよりも使いにくいことが 分かってきた。
UHF帯が使えるようになれば、 それまでの課題はあらかた解決すると期待されて いたのに、実際に使ってみると、また違う問題が 出てきた」 ――物流分野では、UHF帯の『Gen2』タ グが本命だと言われていますが。
「それは、ほぼ間違いないでしょう。
『Gen2』 が出たことで標準化の問題は一段落したと考え て構わない段階には来ています。
UHF帯は『G en2』、HF帯は『ISO15693』が事実 上の標準と考えていい。
チップとリーダ/ライタ は、それを選択すればいい」 「ただしUHF帯も万能ではない。
一つは電波 が飛び過ぎてしまうんです。
アメリカのように倉 庫が巨大で、コンベヤーやドックの間隔が五メー トル以上も離れているような環境では問題になら なくても、日本の狭い倉庫では問題になってしま う。
隣のコンベヤーを通過した荷物のタグまで読 んでしまう」 ――それは決定的な問題です。
「そのため当社も去年一年かけて解決策を作り ました。
読み取り機の出力とタグの貼り方を最適 化するという方法です。
このノウハウを持ってい るのは恐らく現状では当社だけです。
標準化が一 区切りして実用化が本格化してきたことから、今 後はそうした現場を作り込む能力がベンダーに問 われてくると考えています」 「ベンダーは現場を作る能力で選べ」 大日本印刷 中野茂 野村総合研究所の藤吉 栄二情報技術本部技術 調査部主任研究員 ICタグ本部事業戦略推進部 プロジェクト戦略推進チーム チームリーダー JULY 2007 26 特性・用途 ラベル表面に印字を施し、段ボール等に貼り付ける。
ウォルマートやヨドバシカメラがベ ンダーに貼付を課しているのがこのタイプ。
ワンウェイの使い捨て用だ。
値段は、安かろう 悪かろうから凝りに凝ったものまでピンキリ。
例えば、米国では、ウォルマート向けの出荷 に“とりあえず貼付しておく”ユーザー向けに、品質の保証をしない代わりに安く提供する ベンダーもあるようだ。
「日本は普及が始まったばかりで数が出ていない。
品質やデリバリーの面で違いがあると はいえ、現状では国内の流通価格は米国の倍以上している。
」(凸版印刷ICビジネス本部RFID ソリューション部の武藤健課長) 価格帯の目安50円〜200円 特性・用途 読み取り距離の短い13.56MHzで主に使われる。
「用途は規格により2つに分けられ る。
ISO15693は主に工場の生産管理用。
ISO14443は通信方式によって、さらにタ イプA〜Cの3つに分類できる。
タイプAは主に社員証などに使われる。
MIFARE(マイ フェア)と呼ばれるカードで、ヨーロッパやアジアで広く普及している。
タイプBは住 民基本台帳カードなどの公共カードを中心に、行政で使用されるケースが多い。
タイ プCはFeliCa、Suica、PASMO、Edyなどの電子マネーに使用されている。
」(日本電 気ユビキタスソリュ−ション推進本部RFIDビジネスソリューションセンター赤間清喜 エキスパート) 物流分野では、21ページで紹介したアサヒビールの事例のように、仕分け情報を持 たせ、電子ピッキングリストとして使うこともできる。
価格帯の目安100円〜500円 特性・用途 電波は、金属の影響で反射したり吸収されたりしてしまう。
その対策として特殊加工を施 したタイプ。
工場内の工程管理や、仕掛品を載せる台車に取り付ける場合などに使われる。
「金属を遠ざける素材自体の値段が高いこと、所定の形に加工するのに高い技術が必要で あることなどから価格は高くなる。
加工する素材によって、読み取り距離が数十cmから3m くらいまで幅が出る。
また、耐久性があるか、取り付け・取り外しがしやすいようにネジ穴 がついているかによっても価格が変わってくる。
」(オムロンRFID事業開発部事業企画グルー プの四ツ井元記主事) 18ページで紹介したロジックスはこのタイプを採用し、金属製の出荷パレットに取り付け ている。
価格帯の目安数百円〜数千円 特性・用途 使用環境や用途に合わせて耐性を持たせたタイプ。
例えば、ユニフォーム等に取り付ける リネンタグは水洗いを前提に耐水性を持たせている。
ゴム等を素材にしたソフトタイプとプ ラスチックやセラミックを素材にしたハードタイプがあり、丸形や角形、棒形など形状も様々。
基本的に衝撃に強く、また、太陽光による印字情報の劣化が少ないといった特徴も持つ。
「幅がありすぎて、価格帯の目安を答えることはできない」(日立製作所セキュリティ・ト レーサビリティ事業部トレーサビリティソリューション本部ソリューション第一部寺田修司 部長)ほど、多種多様な加工が可能だ。
価格帯の目安数百円 特性・用途 タグ自体が電源を持ち、自ら電波を発してアンテナと送受信する。
パッシブ型に比べ、通 信距離を伸ばすことができる。
電源を内蔵するため、小型化には限界がある。
海上コンテナ などに使われる。
「温度や湿度のセンサーを組み込んで定期的に報告させるなど、カスタマイズの自由度が 極めて高い。
電池の寿命が切れたら使えないので、省電力設計になっているかどうかも選ぶ 際のポイントになる。
価格は、どれだけの機能を持たせるかによって大きく変わってくる。
」 (オムロンRFID事業開発部事業企画グループの四ツ井元記主事) 価格帯の目安数千円 27 JULY 2007 特性・用途 通信距離が短い13.56MHzや2.45GHzで主に使われる。
バーコードとICタグを両方読める タイプと、ICタグのみを読むタイプがある。
バーコード兼用タイプは便利だが、電池の消耗 が早いという難点がある。
サークル状の外付けアンテナを装着することで、読み取り距離を伸ばすことができる。
価格帯の目安 15万円〜50万円。
バーコード用のハンディターミナルに、ICタグのモジュールを装着した 製品が一般的。
そのため価格もバーコード用ハンディ+モジュール代が基本。
特性・用途 現状ではハンディ型に比べ、据え置き型の方が圧倒的に多く使われており、全体の8 〜9割が据え置き型だと言われる。
据え置き型には、一括読み取り対応のゲート型も含 まれる。
「当社はインレットとリーダライタの両方を製造している。
ユーザーのニーズを理解 しやすく、技術シナジーが起きる。
両方あることで開発のスピードが早い」(オムロンの 四ツ井主事) 「当社のUHF帯リーダライタは、日本で初めてのGen2 “完全”準拠。
そのため、タ グからリーダライタへのデータ伝送速度、最高640Kbpsを実現できる。
理論上、600 枚/秒でタグを読み取れ、毎秒3メートルという世界最速級の高速コンベアで荷物が移 動する場合も十分に対応できる」(日本電気の赤間エキスパート) 価格帯の目安 据え置き型は10万円〜50万円。
ゲート型はワンセット100万円程度。
ゲート型の場合、 リーダ/ライタ本体が30万円台。
アンテナが1本当たり約10万円。
通常ゲートは4個使 用するので計40万円。
その他のポール等を含め1セット当たり100万円程度になる。

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