ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年8号
メディア批評
マスコミを?まずいゴミ〞と断じる元朝日記者今なお秋田から警世の声を放ち続ける九二歳

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

65 AUGUST 2007 佐高信 経済評論家 むのたけじは今年九二歳。
戦争責任を感じ て敗戦の年の八月一五日に勤めていた『朝日 新聞』に辞表を出し、郷里の秋田県横手市に 帰って新聞『たいまつ』を発行した。
なお元気なむのの最近の発言集『戦争いら ぬやれぬ世へ』(評論社)は痛烈なマスコミ批 判である。
まず、なぜ、何かと言えば「マスコミ」と いうのか、と問う。
そして、『たいまつ』など を「ミニコミ」と呼ぶが、私は大っ嫌いだと、 むのは叫ぶ。
「あれな! 自分のことをミニコミと言った ことも、思ったことも一度もない。
問題はミ ニとかマスじゃないですよ。
コミュニケーショ ンが成り立っているか否かの問題だ。
それを 新聞社や放送局の人たちはマスコミ、マスコ ミ、と言うけれども、あなた方の実態はまず いゴミではありませんか」 そう毒づいたむのは、そう言われて腹が立 つなら、控え室に来て俺を引っぱたけと挑発 したが、今まで誰も来たことがないと嘆く。
「先輩に言われると思い当たることがある」 などと言って、テレ笑いを浮かべているが、そ れでいいのか。
社説については、さらに激烈で、そもそも マスコミに自分があるのか、と根本的な疑問 を呈する。
何百万部を誇るが、それは自分を否定する ことを意味するのではないか。
読者を増やすためには、どうしても「自民党員も民主党員 も社民党員も共産党員もみんな読んで下さい」 とならざるをえない。
「私はこう考えます」と 主張を鮮明にするわけにはいかないだろう。
「政治問題に関しては与党と野党の主張を足 して二で割って、水とコカコーラで薄めたよ うな、そんな社説しか書けないじゃないです か」 これに反論できる論説委員は果たしている のか。
むのの追撃は容赦がない。
「熱心に読まれる社説を一体新聞はどれだけ 提供しているのか。
見られもしないじゃない ですか。
これなんですよ。
自己規制なんて上 品なもんじゃねぇよ、もう。
自己規制なら、自 己との闘いがあるでしょう。
そんなもんじゃな い。
ズルズル、ズルズルな。
新聞そのものに 主語がない。
そこで働いてメシ食っている連 中、主語があるわけないじゃないか」 このむのと私は『世界』の二〇〇〇年三月 号で対談した。
それは私の編んだ『日本国憲 法の逆襲』(岩波書店)に収録してあるが、 『詞集たいまつ』(評論社)のこんな指摘も忘 れられない。
「自画自賛、結構じゃないか。
自賛できない ような画は描くな」 私たちがもっと「自画自賛」して、それこ そ世界に?輸出〞しなければならないのが日 本国憲法だろう。
その九条をむのは次のよう に秋田弁で語る。
「おらだ日本国民は、もう戦争はやらねごど にした。
世界中が平和になるよう、万事に物 ごどの道理をもどにして、けじめをつけでいぐ。
まんごころ込めてな。
戦争は国権の発動で、戦 するのは国家の権利・権力にもとづいている? そんだらごと、もう許されねえ。
国ど国どの 対立を始末するどって、武力で脅かしたり、実 際に武力を使ったりする。
とんでもねぇ。
そ んだらやり方は、おらだ日本国民は永久にか なぐり捨てるごどに決めだ。
だがら、陸軍も 海軍も空軍もいらねぇ。
軍隊・武器一切いら ね。
国の交戦権? 国家にはよその国と戦する 権利がある? そんだらごどは認められねぇ」 あるいは新聞の社説も方言で書いたら、ず いぶんと内容も違ってくるのではないか。
宮 崎県のタレント知事が、その方向性はともか く、県民から圧倒的支持を受けているのは 「宮崎をどげんかせんといかん」と方言で呼び かけているからかもしれない。
社説を標準語 なるもので書き始めた時、とくに地方の問題 は忘れられていったように見える。
マスコミを?まずいゴミ〞と断じる元朝日記者 今なお秋田から警世の声を放ち続ける九二歳

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