ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年8号
物流不動産市場レポート
近畿圏港湾部に大型拠点の供給集中募集賃料は坪四千円前後で横ばい

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2007 76 供給量は四年で一・七倍増 物流不動産市場は拡大期にある。
物流拠点 の集約・統合や物流業務のアウトソーシングと いった物流業界の構造的変化が追い風となり、 前回取り上げた首都圏のみならず、各地の主要 都市においても大型物流施設(延床面積一万平 米以上)の供給が加速している。
そこで第二回 では近畿圏の物流施設の市況動向を解説する。
近畿圏とは、大阪府、京都府、兵庫県、滋 賀県、奈良県、和歌山県の二府四県を指す。
首都圏に次ぐ二一〇〇万人の人口集積を擁す 巨大消費地であり、物流施設に対する需要も 首都圏に次いで高い。
図1は近畿圏の物流施設の年間供給量の推 移を示したものである。
供給量は上昇傾向にあ り、二〇〇三年時点で年間一〇四万平米だっ た供給量が、二〇〇六年には一七四万平米と、 四年間で一・七倍も増加している。
また供給量 を県別に見ると、大阪府、兵庫県を中心に供 給されていることがわかる。
これは企業の物流効率化を求めた拠点の統 廃合などの動きが全体量を押し上げた結果とい えるが、一方で、その受け皿となる施設を供給 する不動産投資家・ディベロッパーの実績がこ こ数年で急増している。
図2は供給サイドを不動産投資家・ディベロ ッパーに限定した大型物流施設の年間供給量 の推移である。
二〇〇四年以降施設の竣工が 相次いでいる。
二〇〇六年には約四五万平米 と、前年比約五倍増となる供給が行われた。
二 〇〇七年以降も年間四〇万平米以上の竣工が 予定されており、大型物流施設の供給ラッシュ は依然として続いている。
同時期に竣工された代表的な大型物流施設 として、二〇〇四年に大阪市住之江区に竣工 したプロロジスによる「プロロジスパーク大阪 (延床面積約一五万八〇〇〇平米)」や、二〇 近畿圏 港湾部に大型拠点の供給集中 募集賃料は坪四千円前後で横ばい シービー・リチャードエリス 大阪本社インダストリアル営業部 北村健次 生駒データサービスシステム 鈴木公二 第2回 77 AUGUST 2007 による大型物流施設の供給が昨今の供給量増 加に寄与している。
二〇〇〇年年以降首都圏 で実績を積み上げた不動産投資家・ディベロッ パーが、新たな物流不動産市場として関西圏を 選択した結果ともいえる。
図3は不動産投資家・ディベロ ッパーによる大型物流施設の供給 先・開発予定地を地図上に表したものである。
内陸部よりも大阪港 周辺など、港湾部に供給が集中し ている。
賃料水準は 安定的に推移 物流施設の大量供給により、首 都圏と同様にテナント獲得競争の 激化が懸念される。
そこで気にな るのは需給バランスである。
図4 は大阪府の中・大型物流施設の募 集賃料の推移を示している。
二〇 〇〇年以降は四〇〇〇円/坪前後 (共益費含む)で、安定的に推移 している。
二〇〇六年には不動産 投資家、ディベロッパーによる大 量供給が行われたが、上下期とも 賃料水準は微増減に留まっており、 需給バランスは安定している。
一方で、実勢の賃料水準は大型 物流施設に限っては弱含みとなっ ている側面もあり、また、テナン トからの引き合いも一時期より落 ち着きつつある。
現在竣工済みの 〇五年に尼崎市東海岸町に竣工したAMBプ ロパティジャパンによる「AMB尼崎ディスト リビューションセンター1(同約九万五〇〇〇 平米)」などが挙げられる。
このように、不動産投資家・ディベロッパー 施設の空室消化は比較的良好であるものの、今 後の大量供給により需給動向の不透明感は否 めない。
今後新規物件によるテナント獲得競争が起こ れば、立地環境もさることながら、開発段階の 建物コンセプトの良し悪しにより、他の物件と の空室消化に格差が現れる可能性もある。
また、 この先湾岸部での動きが落ち着けば、首都圏と 同様に内陸部へ供給される展開も予想される。
いずれにせよ、今後数年の計画案件の竣工によ り、方向性は徐々に見えてくるだろう。
近年新たに供給された大型物流施設は、 「安全」や「エコ」を意識した設計になって いるケースが増えている。
阪神淡路大震災や能登半島地震を経験し、テナント各社は従業員の安全確保や事業の 継続性をより強く意識するようになった。
そ のニーズを受け、免震構造や耐震性能を高 めた施設が増えてきている。
また、環境に配慮してCO 2 排出削減に 取り組む施設も増えている。
遮熱性能の高 い外壁材を採用したり、屋上・壁面緑化を 取り入れたり、なかにはNO X (窒素酸化 物)吸着アスファルトや風力発電を導入す るなどの工夫も見られるようになった。
ま るで都心のオフィスビルを彷彿とさせる設 備の充実ぶりに、施設を見学した人は感動 して帰る事もしばしばだ。
?感動的〞施設の秘密に迫る

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