ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年8号
特集
最新物流施設 海外から国内顧客へコンテナ直送||東芝コンシューママーケティング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

減らせなかったトータル在庫 東芝の家電部門の流通在庫は、過去のピーク時に は国内二〇〇カ所以上に分散していた。
その後、事 業部門の再編と並行して集約を進め、九五年には二 〇カ所、二〇〇一年には一〇カ所、現在は四カ所ま で減らした。
さらに来年度中には東西二カ所に集約す る計画だ。
「置いておく場所があると在庫は減らない。
それなら ば器を小さくして物理的にも在庫を持てなくしてしま おう、という発想だった」と、東芝コンシューママー ケティング(TCM)でロジスティクス責任者を務め る清水英範生産調達統括部物流担当参与は一連の拠 点集約の狙いを説明する。
TCMは、東芝の家電部門が分社化する形で〇三 年一〇月に発足した。
冷蔵庫や洗濯機、掃除機、炊 飯器といった白物家電の企画・開発から製造、販売 までを手がけている。
それまで別会社として運営して いた東芝ライテック、東芝キャリアといった、周辺事 業を手がける会社を家電部門としてグループに組み込 み、グループとして物流を一体運営している。
同社で需給の調整を行っているのは、商品ごとに置 かれた各事業部だ。
物流部門に直接、在庫量をコン トロールする権限はない。
それでも、「在庫を余分に 抱えなくても運営できる仕組みを作ることはできる」 と清水参与。
それが物流部門のミッションだと考えて いる。
従来から国内生産品は工場倉庫、海外生産品は「ア ウトイン(海外生産―国内販売)倉庫」と呼ぶ輸入 品倉庫で保管し、各地の「地区物流センター」を経 由して客先に配送する体制を取ってきた。
「地区物流 センター」は需要を見込んで一定の在庫を持ち、受注 日の翌日に配送している。
TCMが発足した〇三年一〇月の時点では、「地区 物流センター」が全国に八カ所(北海道・東北・北 関東・南関東・中部・関西・中国・九州)、「アウト イン倉庫」が東西に二カ所あった。
このうち「地区物 流センター」を〇四年五月から〇六年八月にかけて四 カ所に集約した。
具体的には、東北拠点と南関東拠点の機能を北関 東拠点に統合して東日本の拠点を一つにまとめた。
西 日本では「アウトイン倉庫」と関西拠点を一体化させ た拠点を新設、ここに中部拠点と中国拠点の機能を 集約した。
現在は、北海道、東日本、関西、九州の 四拠点体制で運営している。
拠点の集約は、五月の連休と八月のお盆休みを使 いながら、滞りなく進めることができた。
空きスペー スが目立っていた貸し切り配送の路線便への切り替え など配送形態の見直しも奏功し、物流コストの二割 削減に成功した。
だが、そもそもの狙いである在庫削減は実現できなかった。
集約前に約二〇日だった家電の在庫回転期間は今 もほとんど縮まっていない。
「地区レベルでの在庫は 減らせたものの、トータル在庫の削減には至らなかっ た」と清水参与は苦い顔を見せる。
海外生産が増えた ことで「アウトイン倉庫」の在庫が増加、地区拠点の 集約による効果が打ち消されてしまった。
実際、この間に海外生産の比率は一気に高まって いる。
〇四年度初めの時点で海外生産の比率は売り 上げの三割程度に過ぎなかった。
それが現在は七割近 くを占めるに至っている。
現在、国内工場は主に新商 品立ち上げ時の生産を行う程度で、量産は高級品・ 廉価品を問わず海外の工場で行っている。
急激な海外シフトに対応し、物流部門も拠点集約 海外から国内顧客へコンテナ直送 ||東芝コンシューママーケティング 在庫削減を狙って国内の流通在庫拠点を8カ所から4カ所 に集約した。
しかし、トータル在庫は結局、減らなかった。
海 外生産品の輸入急増が原因だ。
環境変化に対応するため国内 拠点を東西2カ所まで集約すると同時に、海外工場から国内 の顧客にコンテナで直送する“拠点飛ばし”を本格化させる。
(森泉友恵) AUGUST 2007 20 第2部事例に学ぶ物流拠点集約 からプロセス改革へ在庫削減の方法を修正している。
「経由する倉庫を減らせば、保管料や入出庫料といっ たコストが削減できるだけでなく、トータルのバッフ ァーも低く抑えられる。
要は階層を少なくし、なるべ く大きなエリアで括っていけばいいというのが基本的 な考え方」と清水参与は説明する。
国内の拠点を東西二カ所に集約する取り組みは計 画通り実施する。
ただしその方法として「アウトイン 倉庫」と地区倉庫を一体型にして、従来二段階だっ たプロセスを一段階に減らす。
具体的にはこの八月に、 九州拠点から量販向けの在庫・配送機能を西日本拠 点に移管する。
現在、九州拠点に残っている在庫は 量販以外の系列店等への出荷で消化する。
北海道拠 点は、東日本拠点の出先機関として規模を縮小する。
新体制の実現は、〇八年度中を目指している。
取引条件に踏み込む これと並行して新たな在庫削減策として注目してい るのが「コンテナ直送」だ。
海外工場から出荷する時 点で納品先ごとにコンテナを仕立て、国内で陸揚げ後 に港湾のコンテナヤードからそのまま納品する。
これ によって海外生産品が国内で滞留することがなくなる。
「コンテナ直送のウェートが高まれば、トータル在庫 の削減に大きなインパクトが与えられる」と清水参与 は期待する。
コンテナ直送は既に一部では実施に移されているが、 現状では大口の商談がまとまった時などの利用に留ま っている。
生産工場単位でしか混載に対応できないた めだ。
例えば、洗濯機と冷蔵庫は同じ工場で生産して いるので同じコンテナにまとめられるが、別の工場で 生産している掃除機や炊飯器などとは混載できない。
混載を可能にしてコンテナ直送に幅広く対応できる ようにするため、現在、工場の異なる出荷品をドッキ ングするための拠点を設置する具体的な検討を進めて いる。
拠点の整備と並行して、工場ごとに異なる情報 システムをうまく連携させる仕組みも作らなくてはな らない。
商談の仕方も変えていく必要がある。
現在は、TC Mの冷蔵庫の営業担当者と量販チェーン側の冷蔵庫 担当バイヤーといった具合に、事業部ごと、製品ごと に個別に商談を進めている。
お互いに会社対会社の全 体的な取り組みとして、フルラインの製品を対象に取 引を調整しなければロットをコンテナ単位にまとめる ことは難しい。
清水参与は、冷蔵庫の営業マン経験が長い。
商品 の大型化が進む一方で販売価格がどんどん下がり、経 費の削減が大きな課題となった時期に、工場から客先 への直接納品の拡大に取り組んだことがある。
四〇〇 リットルの冷蔵庫であれば、四〇台で一〇トン車トラ ックが満載になる。
注文がトラック単位でまとまっていれば、そのまま客先に直送できる。
これによって物 流コストは三分の一に抑えられる。
四〇台程度であれ ば、注文をまとめるのはそれほど難しくはない。
営業 マンたちに一〇トン車単位での発注を呼びかけ、成果 を上げた。
「営業を長くやってきた経験があるものだから、結 局は商売のやり方から変えていかなきゃだめだよね、 という意識が強くある。
物流の側からみるようになっ て、やっぱりそうなんだと再認識している。
量販の台 頭などで、商売の仕方は変わってきている。
当然、在 庫の持ち方も変えていく必要がある。
情報の裏付けを 強くして顧客ごとに在庫を準備するような仕組みを作 ることで、在庫はもっと減らせる」と清水参与は今後 の展開に期待を込める。
21 AUGUST 2007 清水英範 生産調達統括部 物流担当参与

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