ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年8号
特集
最新物流施設 従来型倉庫VS 新型センター

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

古いセンターはなぜダメか 物流不動産ファンドの手がける最新の物流センター が注目を浴びている。
それらは旧来の、いわゆる倉庫 と呼ばれる施設とは、規模の面で一線を画す。
延べ床 面積は最低でも一万坪を超え、五万坪を超える大型 施設も登場している。
内部は千坪程度の区画に分割 され、多数のテナント企業がオフィスビルのようにそ れらを自社仕様に手を加えて使う。
大半の建物が三階以上の高層階建てだ。
ただしラ ンプウェイかスロープが設置されているため、四〇フ ィートコンテナを牽引したトラクターが上層階にも直 接アプローチできる。
これによって、どの階であって も一階と同じ感覚で作業できる。
ホテルのような事務棟のエントランスに辿り着くと、 スーツを着た従業員が出迎える。
施設内は明るく、そ して広い。
センター内には食堂やコンビニ・売店など の設備に加え、身障者用トイレまで設置されている。
これらのセンター運営には通常数百人から千人規模の パート・アルバイトを必要とするが、アメニティが充 実していることから定着率は高いという。
センターの入り口には警備員が常駐し、許可なしに は立ち入りのできないよう警備が徹底されている。
壁 には等間隔に防犯カメラが設置され、誰が今どこを通 過しているのか、事務所で常に監視している。
ブロー ドバンド対応は今や当たり前。
震度七以上の地震が 来ようと、最新の免震構造を採用しているため、びく ともしない。
これだけ設備が充実していながら、坪当たりの賃料 は従来型の施設とさほど変わらない。
そのため、最新 の物流センターは設置後長くとも半年から一年程度で ほぼ一杯になる。
新規建設の勢いも止まらない。
港に向かう幹線道 路沿いには、巨大な物流センターが次々に立ち上がり、 その壁には大手一流企業のロゴがいくつも並んでいる。
その数と規模は、高速に乗れば誰でもつい目を奪われ てしまうほどだ。
これらの新型物流センターは従来型と比べ、機能面 でも優れている。
新旧施設の最大の違いは、その使用 使途にある。
従来型の倉庫が貨物の保管を主目的と しているのに対し、新型施設は通過型の貨物の荷扱い を前提としている。
実際、新型施設には入出荷作業を効率化させるた めの工夫が随所に施されている。
入出庫作業について は、先に触れた通り、高層階であってもランプウェイ などで直接車両が各階に接車できる。
入出庫口もトラ ック荷台へフォークリフトが直接アプローチできるよ う、四トン車の荷台高に合わせた高床ヤードが標準的 な仕様になっている。
しかもコンテナや小型車にも対 応できるように、トラックの荷台とホームの高さを調節するドックレベラーが装備されている。
床加重の面でも新型施設は従来型の一・五倍程度 の強度を持つ。
フォークリフトを使った重量物の搬送 を想定したものだ。
また、新型施設では昇降機もフォ ークリフトがそのまま乗り込める大型のものが標準で 装備されていることが多い。
庫内はソーターやコンベヤーなどを敷設しやすい構 造になっている。
柱スパンの間隔が広く、デッドスペ ースが少ない。
このような構造上の違いは生産性の向 上に直結している。
プロロジスの資料によると、新型 施設は従来型と比べ保管効率において十二・五%の 有効面積の向上、作業時間については一四七%の生 産性向上が図れるという。
流通加工の作業環境にも配慮されている。
従来型 従来型倉庫VS 新型センター 交通アクセスに優れた物流一等地に物流不動産ファンドの 手がける大型物件が次々に建設されている。
機能性に優れ、使 い勝手が良いにも関わらず、賃料水準は従来型倉庫と同等と いうことから、利用が拡がっている。
その一方、倉庫スペース の過剰な供給は、思わぬ副作用も招いている。
(中根治) AUGUST 2007 24 第3部 の倉庫では作業員は、棚に光を遮られた暗い倉庫の一 角で、汗をかきながらの作業を余儀なくされていた。
それに対して新型施設では流通加工専用のスペースが 確保され、空調を備え、照明の照度を上げ、細かい作 業をしやすい環境が整備されている。
賃貸倉庫の玉突き現象 このように比較すると、新しい施設は良いこと尽く めで、入居しない理由などないように思える。
しかし 実際にこれらの施設に入居するには、いくつかの制約 条件をクリアする必要がある。
まず、賃借規模。
新型施設の大半は、最低賃借単 位をおおよそ千坪としている。
このため千坪未満のニ ーズに対しては非常に敷居が高い。
しかも入居にあた っては、最低でも賃料数カ月分の保証金を積む必要 がある。
このため大手企業が専用施設として借り受け るほかは、大手物流企業がワンフロアをまとめ借りし、 それらを小さく転貸借しているケースが多い。
中堅以下の企業が、これらの新型施設に入居しよ うとする場合には、借主である大手物流企業への業務 委託が前提となる。
これを逆手にとり、大手3PL企 業の中には、最新センターの賃料を破格の条件で提示 し、受注をさらっていくところもあると言われる。
そ のあおりをうけて、中小の物流企業にとっては新型施 設が3PL業務受託の一つの参入障壁となっている。
また近隣に超大型の物流センターができると、従来 型の倉庫の空洞化が発生する。
借主のいない倉庫がよ り賃料を下げてでも荷物を入れようとするため、賃料 相場自体が軟化する。
いわゆる?玉突き現象〞が発 生している。
「東京都内では、特に東扇島、平和島あたりが激し い。
東扇島はもともと賃料が坪・五〇〇〇円台後半 だったのが、駅からのアクセスが悪いことから人材募 集に苦労する企業が増え、さらに東部湾岸地域の新 規建設ラッシュのあおりを受けて、見る間に賃料が下 がった。
供給過剰で今後さらに賃料が軟化する可能 性もある(不動産関係者)」 「平和島などは坪・七〇〇〇円台前半の物件もあれば、 一万円の物件もあり、どれが正当な料金なのかわかり にくい。
(荷主企業)」「同じ都内でも、板橋区内など の内陸はほとんど値崩れしていない。
新規供給がない からだ(物流企業)」などの声がある。
自社物件を抱えている場合はさらにやっかいだ。
新 型施設に転居するには、それまで使用していた施設を 有効活用する必要がある。
従来型施設は建造物とし てはまだまだ使えるにもかかわらず、機能的な陳腐化 のため、そのままでは新たなテナント確保は難しい。
仮に土地・建物を売却できたとしても、従業員の雇 用問題や協力物流会社との取引など、クリアすべき 課題は少なくない。
ほとんどの物流不動産ファンドが、こうした旧施設 の移転後の手当てについては熱心ではない。
しかし空 き物件の活用は、テナント企業にとって移転を円滑に 行う上での大きな制約になっており、それを解決する ことは、貸主にとっても物流不動産市場の活性化につ ながる。
物流不動産市場全体の課題といえる。
このような制約があるため、現状では新型施設の借 主は、大手3PL、大手卸、大手小売りの順でニーズ が高い。
とりわけ大手3PLは積極的に施設の取得を 行っている。
施設ごと3PL企業にアウトソーシング するという選択肢が、メーカーを中心とした荷主企業 に一般化したことが、その背景になっている。
これら 3PLの台頭に対抗する形で、大手卸も大消費地近 接地域を中心に大規模な施設取得に動いている。
25 AUGUST 2007

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