ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年8号
特集
最新物流施設 物流センター機能を評価する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流センターに求められる機能 基本的に物流センターとは、需要側である小売業と、 供給側であるメーカーとの間に立ち、両者間のギャッ プを解消して経済合理性を高める役割を担っている。
といっても、これまでは需要地付近にリードタイム分、 もしくは売り上げ目標分の在庫を置けば十分だった。
しかし今日、流通に対するニーズは多様化が進んでい る。
同じ業態でも、経営指向ごとにロジスティクス戦 略はより細分化され、物流に期待される価値も企業ご とに異なるものになってきている。
製造業においては、独自技術を付加価値とする ?開発型メーカー〞か、大量生産された商品をローコ ストで広域に供給する?企画型メーカー〞かによって、 物流センターに求められる機能が違ってくる。
開発型メーカーでは、独創的で他に替えが利かない 商品を提供することに注力していることから、物流に ついても品質に関する要求レベルが高い。
輸送安全管 理の徹底などが重視され、商品教育なども熱心である。
こうしたニーズに対応するため、物流企業は荷主の敷 地に自社の出先機関を置き、常駐人員で管理してい ることが多い。
それに対して企画型メーカーは廉価な商品を大量に 広域流通させる必要があることから、何よりコストを 重視する。
地域別に物流企業を使い分け、競争原理 に基づく評価と選別を常に行う。
利用業者の評価は 減点法が基本。
結果として傭車の調達力に優れ、繁 閑差への対応力のある大手が勝ち残ることが多い。
中間流通業は、特約代理店をはじめメーカー側に 立った?販売支援型企業〞と、アスクルなどを代表と する?購買支援型企業〞に二分される。
そして小売 業は店舗を持って販売する?対面型〞と、通販に代 表される?非対面型〞に分かれる。
必要とする付加価値サービスとローコスト・オペレ ーションを両立させるという狙いは一緒でも、各社の ロジスティクスのモデルは異なり、その違いは拠点活 用にも反映される。
一般に物流拠点の設計コンセプト は大きく次の四つに分類される。
?サービスレベル追求型:好立地で、法的規制項目を クリアした拠点施設。
医薬や化学メーカーなどの法 的規制が厳しい業種や、二四時間三六五日稼動する 機械類のパーツセンターなどがこのタイプである ?多機能複合型:倉庫内でコールセンター併設などの 複数の機能を提供。
通販や購買代理業などの業種 が志向するのがこのタイプである ?業態特化型:徹底した標準化(食品業界向けTC 等)業務を実施する施設。
小売センター、食品、消 費財卸などがこのタイプである ?コスト追求型:目的外転用が目立つ(工場跡地・オフィス物件の倉庫化)。
メーカー全般、ルート営 業を主体とする卸売業などが志向する 「?サービスレベル追求型」においては、物流ファ ンドの手がける新型施設などを利用し、運用も3PL に委託しているケースが多く見られる。
本業により集 中するために、自社で物流施設に投資することや、そ の管理に人的リソースを割くことはできる限り避ける 傾向にある。
「?多機能複合型」にも新型施設が用いられること はあるが、庫内運営はインソースで処理しているケー スがほとんどだ。
通販や購買代理業は物流サービスこ そがコア・コンピタンスであり、重要すぎてアウトソ ーシングすることはできない、あるいはアウトソーシ 物流センター機能を評価する 物流センターに求められる機能は、荷主企業の業態とマー ケティング展開によって決まる。
さらに、同じ企業であって もその成長ステージによって、物流管理上、重視すべきポイ ントは変わってくる。
市場環境を分析して経営戦略をセンタ ー機能に落とし込む必要がある。
(中根治) AUGUST 2007 26 第4部 ングでは急激な事業拡大に柔軟に対応できないと考え られている。
「?業態特化型」では主に従来型の倉庫が使用されて いる。
しかも自社物件が多い。
温度帯管理を行う倉 庫などは、その設備だけでなく、二四時間稼動が可能 な立地や、近隣の協力運送会社の確保など、多くの 制約条件を抱えている。
商流に熟知した人間が連携 して初めて成立するコスト構造、運営ノウハウが存在 する。
つまりセンターそのものが、大きな差別化要因 となっている。
「?コスト追求型」も従来型の倉庫が主流だ。
新型 施設の供給ラッシュで、中小規模物件には出物が発 生している。
割安な物件を活用することで、固定費の 削減と納品先へのサービスレベルを向上させることが できる。
効率化機器を導入するほどの規模がない、商 流が複雑で標準化が難しいといった特徴のある業態で は顧客至近の立地にあることこそが付加価値となる。
飲食店向けの酒卸や、書類保管サービス、資材卸な どが、このような物件を好む。
物流施設の選定基準は、物流企業と荷主企業では 重視するポイントに若干の差がある。
立地・規模・構 造といった基本条件、および作業環境のチェックは両 者共通だが、物流企業側はこれらに加えて輸配送業 務や拠点間の業務連携、絶対的なランニングコストの 安さをより強く重視する傾向がある。
一方、荷主企業は繁忙期に借り増しできるなどの 繁閑対応や、コールセンターが同居できる、返品処理 ラインを作るなどの多機能性を要求する傾向がある。
また、このような荷主企業のニーズを取り込むため、 物流企業側では特定地域にドミナント的に施設を配 置することで繁閑対応に対応し、業態特化することで 高機能を提供する戦略を鮮明にしてきている。
「I/P/Oモデル」 このような多様なニーズに適切に対応するための物 流拠点の評価手法として、図1のような「I/P/ Oモデル」を用いた拠点評価の方法をお勧めしたい。
ロジスティクスを「I(インプット)」、「P(プロセ ス)」、「O(アウトプット)」の三つに区分して整理し、 モノの流れを考えるための基本モデルである。
ロジスティクスのどの部分に自社の利益の源泉があ るのか。
調達・仕入れにあるのか、もしくは中間流通 プロセスにあるのか、あるいは出荷・配送部分にある のかを確認し、適切な物流施設の運営に役立てる。
企業の成長の過程からこのモデルの活用方法を考え てみよう。
事業の立ち上げ期において、経営上最も重 要なことは「売り上げの確保」である。
多少過剰気味 の物流サービスを行ったとしても帳尻は合う。
売り上 げの拡大=利益の拡大、という時期である。
この時期 はアウトプット優先の物流体制を敷くことになる。
成長期に入ると、増え続ける顧客に対して十分な 量の供給責任が生まれる。
立ち上げ時期の営業スタイ ルを続けた場合、一度歯車が狂いだすとたちまち利益 が圧迫される。
原価率が大幅に悪化し、クレーム対応 への費用が膨れるなどの不具合が発生する。
この時期 は短期間に変化する流通量をコントロールする、プロ セス優先の物流体制が有効に機能する。
成長期をクリアすると安定期に入る。
この時期には 多くの顧客が存在する。
多様なニーズを受け止め、な おかつ安定供給できる体制が必要になる。
この体制維 持には多くの費用がかかることから、計画のわずかな 未達も許されない。
販売だけに利益を頼るのでなく、 より安価な価格での調達が利益確保の命題となる。
イ ンプット優先の物流体制が重要というわけだ。
27 AUGUST 2007

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