ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年9号
SOLE
ヤマハ発動機パーツセンターを見学補修部品をグローバルに一元管理

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2007  88 SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics ヤマハ発動機パーツセンターを見学 補修部品をグローバルに一元管理  七月度のフォーラムでは、ヤマハ 発動機部品事業部の「グローバルパー ツセンター」(静岡県袋井市)を見 学した。
同センターは明確なコンセ プトのもとに運営されており、随所 に様々な工夫が凝らされていた。
グローバルレベルで全体最適を追求  ヤマハ発動機のグループ売上高は 一兆円を超えており、このうち部品 事業の売上高は一〇〇〇億円に上っ ている。
この部品事業の核となって 稼働しているのが、静岡県袋井市に ある「グローバルパーツセンター」で ある。
三〇万点の補修部品や用品(ヘ ルメットなどのアクセサリー類)を、 日本だけでなく海外に向けても供給 している。
国内に三カ所あった拠点 を集約し新設したセンターで、昨年 八月に稼働を開始した。
 ヤマハ発動機部品事業部では、地 域統括センターを核とした「世界六 極体制」戦略を進めている。
日本を 中心に、欧州・中国・アジア・北米・ 中南米の各地域に統括センターを配 置して、部品に関するあらゆる情報 を一元管理し世界総在庫の最適化を 図ろうというものだ。
世界六極体制は、 今年九月に中国センター、来年三月 に中南米センターが動き出せば完成 する予定だという。
 今回見学したグローバルパーツセン ターは、敷地面積が六万七〇〇〇平 方メートル、建屋面積は一階が三万 九〇〇〇平方メートル、二階が二万 一〇〇〇平方メートルである。
入荷 件数は補修部品が一日あたり二〇〇 〇件、用品が同一五〇〇件で、出荷 件数は海外向けが一日あたり一万五 〇〇〇件、国内向けが同二万五〇〇 〇件に達している。
センターの要員 は約四七〇名(パートタイマー含む) で、日勤のみの一直体制で運営され ている。
 グローバルパーツセンターでは、オ ペレーションのコンセプトとして三つ の項目を掲げている。
 一つめは「SCM全体の最適化」 である。
市場のニーズを反映した最 適な在庫計画と部品調達を行い、部 品納入〜出荷の一連の流れの中で人 や物が停滞しない業務設計がなされ ている。
 二つめは「生産性マネジメント」の 徹底である。
受注の状況から、出荷 指図の状況、在庫の状況、現場作業 の進捗、出荷実績の状況、作業能率 の状況などの広範囲にわたり、生産 性マネジメントのための「業務の見え る化」を追求している。
 三つめは「フレキシビリティ(柔軟 性)」である。
オペレーションを Quality( 品質)・Cost( コスト)・ Delivery( 納期) の、いわゆるQ CDでトータルに最適化するために、 柔軟な対応がなされている。
具体的 には、情報の共用化、前後工程の統 合、段取り強化などがその手段とし て挙げられる。
 これらの三つに加え、「環境にやさ しい物流」という先取りしたコンセプ トも掲げられている。
包装資材の使 用を抑えるためのリターナブル(再利 用可能)パレットやボックスをフル活 用しているほか、太陽光発電や自然 採光も行われている。
オペレーションを「見える化」  事務所でセンターの概要について プレゼンテーションを受けてから、二 組に分かれてセンターを案内していた だいた。
 センターの一階部分は部品受入場、 高頻度部品の保管・出荷場として使 われているほか、高さのあるボックス 自動ラック(高層自動補充用倉庫) や大物用のラックが二階までの吹き 抜けで配置されており、全体の約半 分ほどがラックを使った保管スペース となっている。
 二階は小物中頻度・低頻度部品の 保管・出荷場であり、国内向け専用 の中・大物のピッキングエリアにも なっている。
コンソリデーション(混 載)のためのソーターも設置されてお り、出荷される商品を約四〇の行先 別に集め、一括して一階に送られ出 荷される仕組みになっている。
一階にあるCCR(Central Control Room:中央司令室)では、センター 全体の作業状況をモニタリングして いる様子を見学した。
CCRでは、 八カ所の作業現場をモニタリングし ながら、システムが指示する入出荷 作業の優先順位管理やエリア別の業 務負荷調整、作業進捗確認や設備の 状態監視などを行う。
現場との連絡 にはトランシーバーを使う。
 国内生産品用の受入現場では、新 規品に一点ずつバーコードを貼付し、 パーツスキャンを通して重量・サイズ を登録する作業が行われていた。
既 存品は供給先からバーコードが貼付 された状態で入荷するが、新規品は 受入時にこのセンターでつける必要が 89  SEPTEMBER 2007 要する出荷はほとんどないそうである。
また、RFIDの活用は検討したが、 コスト的な理由で現在のところはバー コードで十分と考えているとのことで あった。
それから、変動する物量に 対する作業要員の配置は過去の実績 を基に事前に予定しているとのこと であったが、現実的には作業を委託 している業者のほうでフレキシブルに 対応してくれているようであった。
 今回、ヤマハ発動機のグローバル パーツセンターを見学させていただ いて、補修用パーツの特徴である膨 大な数のアイテムを、また国際的に 管理をしている様子に感銘を受けた。
ヤマハの製品が世界に高い評価を受け、 普及している背景に、このパーツセ ンターの働きが大きく貢献していると 見学者一同、確信した。
あるためである。
 補充用の自動倉庫は、バケット(折 り畳みコンテナ)約一〇万個の保管 能力がある。
バケットのサイズは二 種類である。
ピッキングエリアには八 日分の在庫を置く仕組みになってお り、八日分を超える在庫が補充用と して自動倉庫に保管されている。
また、 調達ロットと出荷ロットが異なるため、 補充用倉庫はそのギャップを埋める 役割も果たしている。
 高頻度の小物部品のピッキング場 で使われる台車には、興味深い工夫 がなされていた。
パイプで作られた台 車に複数のボックスを載せた作りで、 台車とボックスにはそれぞれバーコー ドが貼付されている。
ピッキングを行 いながら作業内容の登録がなされる ようになってお り、確実な現品 認識が行われて いるという印象 を受けた。
ピッ キング台車のけ ん引車も独特の ものであった。
 梱包エリアで は、ピッキング された商品をダ ンボールやリタ ーナブルコンテ ナに入れてラベ ルを貼る作業が 行われていたが、 作業者の間に包 装資材や部品用 の棚があって見 通しが少し悪そ うであった。
海 外向け高頻度小 物の作業場、中 物のラック保管場、大物のラック保 管場は明確に区分されており、見通 しもよかった。
 二階に上がると、出荷する商品の 包装作業が行われていた。
現場モニ ターで包装ラインごとの作業負荷状 況を把握できるようになっており、「見 える化」のツールが活用されているこ とを実感した。
 国内専用の中大物ピッキングエリ アは、前述の自動倉庫同様、整然と した雰囲気だった。
このセンターで は物の大きさによる分類と出荷頻度 による分類で物や作業が区分されて おり、特性に合わせた管理がいろい ろな点で行われていると感じた。
 海外オーダー用には自動化された 「オーダーマージライン」が設けられ ており、ピッキングされた商品を入 れた複数のバケットが出荷先別にま とめられ、出荷予定数が揃うと自動 的に梱包工程に払い出されるように なっている。
 センター内の見学を終えた後、見 学者からセンターの皆さんへの質問が 活発に行われた。
回答の一例を紹介 しよう。
まず、このセンターの稼働 により、生産性は六年前に比べ五割 は向上しているとのことであった。
ま た、国内市場においては、受注〜出 荷が二十四時間以内で行われるため、 緊急や飛び込みといった特別対応を 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは9 月18 日( 火) 「SOLE2007 Conference“ Logistics: The Keystone of Mission Success” 参加報告」を予定している。
フォーラム は年間計画に基づいて運営しているが、 単月のみの参加も可能。
1 回の参加費は 6,000 円。
ご希望の方は事務局(sole-joffi ce@cpost.plala.or.jp) までお問い 合わせください。
CCR(中央司令室、左上)で作業の進捗を管理する ※パンフレットより

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