2007年9月号
現場改善
現場改善
通販会社Y社の物流インフラ構築
85 SEPTEMBER 2007
のある光景だった。
現在は一大ビューティーサ ロンに成長したP社の事務所が、かつては同じ ような状況だった。
私が訪問した当時、P社は新宿の本社事務 所で商品の入荷から保管、検品、出荷業務を 行っていた。
その後、P社は我々日本ロジファ クトリー(NLF)のサポートを受け、外部倉 庫を借り、物流業務のアウトソーシングに踏み 切った。
これによって初めて、P社の物流機能 は本格的に動き出したのであった。
Y社も同じ 時期に来ているようであった。
私の訪問に対し、Y社側ではS社長自らが 出迎えてくれた。
S社長は米国の大学で薬学を 専攻し、一〇年前に来日してビジネスを開始し た起業家である。
その相談内容は明確であった。
“倉庫を探して欲しい”という。
既に一部の商品は外部倉庫に保管しているも 化粧品をネット通販 関東に本社を置く通販会社Y社は、米国製 の化粧品やマウスケア製品など、約七〇〇アイ テムを扱っている。
販売ルートは九割がインター ネット通販で、残りが専門店や百貨店への卸販 売だ。
現在の年商は約一八億円。
年々、売り上げ は伸びている。
国内ではあまり見かけない珍し い商品を多く扱っていることから、雑誌やマス コミに取り上げられる機会が多く、そのたびに 自社ホームページのアクセス数が上がり、事業 拡大へとつながっている。
私がY社を訪ねると、事務所には所狭しと商 品が積み上げられていた。
商品の山に埋もれる ように、社員たちが受注処理や出荷作業に追 われている。
私にとっては、以前にも見たこと のの使い勝手が悪い。
そこで、もっと規模の大 きな倉庫に移り、現在は事務所で保管している 商品と合わせて拠点を一カ所に集約したい。
そ の具体的な施設と協力業者の選定が、我々に 対する要望であった。
この倉庫移転に当たり、S社長は三つのシナ リオを用意していた。
A案:物流の保管と運営 全てを第三者にアウトソーシングする。
B案: 事務所併設型の倉庫を借り、管理を自社で行う。
C案:事務所とは別に倉庫会社の施設を借り、 管理を自社で行う、という選択肢であった。
Y社にとって物流は競争力の源泉(コア・ コンピタンス)とは言えない。
そのため本来で あれば、A案のフルアウトソーシングが正攻法 だろう。
ただし、それには問題があった。
専門 技術者の確保である。
Y社が取り扱う商品のなかには、「責任技術 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第56 回 伸び盛りのネット通販ベンチャー。
それまで物流は事務 所の一角で社員たちが自分で処理してきたが、売り上げの 拡大によっていよいよ限界が見えてきた。
本格的に物流イ ンフラを整備する時期だ。
社長自ら指揮をとり、倉庫の選 定とアウトソーシングの検討に入った。
通販会社Y社の物流インフラ構築 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、8 9年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 者」と呼ばれる専門的な管理者の設置を義務 づけられているものが少なくない。
具体的には ?管理薬剤師の資格を有する者、もしくは?大 学または高校で物理、化学、金属、電機、機械、 薬学、医学、歯学の専門課程を終了し、三年 以上の実務経験を有しているものが、その対象 となる。
それまでY社ではS社長自らを「責任技術者」 として届け出を行っていた。
これをアウトソー シングするには、協力物流会社側で有資格者 を確保することが条件になる。
しかし、管理薬 剤師は人材難で、大手物流会社といえども社 内に有資格者を在籍させている会社は多くはな い。
そのため業務自体は物流会社にアウトソー シングしながらも、現場に荷主企業側で手当て した有資格者を常駐させているケースも珍しく ない。
この問題に加えて、協力物流会社のセンター 運営ノウハウに対する懸念もあった。
S社長と 話し合った末、A案のフルアウトソーシングは 第二ステップのテーマとして位置付け、当面は 見送ることになった。
そうなると、次はB案の事務所併設型かC 案の倉庫専用かという判断である。
これについ ては、現状の事務所の家賃水準を検討した結果、 相場に比べて割安感があり、事務所の移転によ るコストメリットが小さいことから結局、C案 が選択された。
具体的な倉庫施設の選定では、次のことを 条件とした。
?本社事務所から車で一五分〜二〇分の距離 ?保管料は現在一部の商品を保管している賃 貸倉庫と同等レベル(これは決して探すこと が困難な水準ではなく、いくつかの倉庫会社 を当たることが可能なレベルであった) ?二〇フィートコンテナのデバンニングが可能 であること(平屋あるいは一階部分を利用し たい) ?商品汚れが生じる恐れのある施設(埃や粉塵 の出る施設)は避ける。
我々NLFは、この条件を満たすことので きる物流会社や倉庫会社を探した。
その結果、 前述のビューティーサロンチェーンP社のパー トナーを務めている中堅倉庫会社のL社に打診 することになった。
L社はY社の希望エリアに 倉庫を数カ所所有していたからである。
L社の専務に連絡をとったところ、タイミン グ良く“空き”があるという。
しかもL社は社 内に「責任技術者」の有資格者を数名抱えて いるということであった。
中堅倉庫会社として は稀なケースといえる。
L社の持つ空き物件のうち、予算面も含めて Y社の条件に合う施設が二カ所あった。
L社と 打ち合わせを行った上で、そのうち保管料の安 いA倉庫をY社に紹介することにした。
賃貸倉庫を選定 私とL社の担当者がY社を訪れ、S社長と の三者面談を行った。
まずはL社の会社概要 を案内し、次にA倉庫の紹介に入った。
提示 した保管料はY社の当初予算を二〇%ほど下 回っている。
それに気を良くしたS社長は具体 的な質問を次々にぶつけてくる。
メザニン(中 2階)も使用できること、外部の出入りを規制 するセキュリティ面の充実、繁忙期の人員補充 の対応などを説明すると、かなり乗り気になっ てきた。
ただし、本社事務所からの距離には懸念があ るようだった。
S社長は、出荷などの庫内管理 を担当している社員も一度本社に出勤させた後 で、車で現場に向かわせたいという意向を持っ ていた。
そのため本社事務所からA倉庫の移動 時間が大きなポイントとなっていたのだ。
念のため、もう一つの候補だったB倉庫も紹 介した。
本社事務所との直線距離はA倉庫と ほぼ変わりないが、道路のアクセスが良いため 移動時間は五分強ほど短い。
しかも近くに駅が あるため、将来社員を直接倉庫現場に出勤さ せることになった場合にも便利であった。
ただ し保管料はA倉庫に比べると一〇%ほど高い。
三者面談の後、L社の担当者がいない席で、 S社長にL社の感想を聞いてみた。
「倉庫会社 としては申し分ない。
繁忙期にヒトの補充対応 をしてもらえるのも助かる。
しかし、できれば B倉庫の方が近いため、そちらを使いたいのだ が、費用は変わってくるのがどうも」というコ メントであった。
少し痛いところを突かれた感があった。
コス SEPTEMBER 2007 86 トの問題以外にも、現場の「5S(整理・整頓・ 清掃・清潔・躾)」のレベルや所長の管理能力 など、トータルで見た場合には、A倉庫の方が Y社には適していた。
その旨をS社長に説明し、 一応の理解は得られたものの、十分に納得して もらえているかは分からなかった。
数日後、L社の営業担当の案内でA倉庫を 視察することになった。
Y社からはS社長のほ かにも二名の関係者が同行した。
この日は渋滞 もなく一〇分余りでY社本社事務所から現地 に到着した。
移動時間は物件選定の重要ポイ ントになっていたため、私は内心、ほっと胸を なでおろしていた。
即断即決が功を奏す 到着後、現場の案内と質疑応答を四〇分ほ どで終えると、S社長はすぐに切り出した。
「OK! ここに決めます。
よろしくお願い します」 起業家らしい即断即決であった。
結果として、 Y社は良い買い物をしたといえる。
後になって 聞いた話であるが、現場周辺はこのところ借庫 ニーズが高く、A倉庫にはY社の他にも三社が 商談中であった。
この日から一〇日後、商品の引越しが完了 した。
さらに引越し完了から一カ月も経たない うちに、今度はY社の他事業部門であるアパレ ル製品の保管もA倉庫に委託されることになっ た。
これは今回のA倉庫の業務内容とL社の 対応にS社長が満足していることのあらわれで あろう。
当初、第二ステップとして先送りした 運営業務のアウトソーシングまで現在は視野に 入ってきた。
いまだ物流市場においては荷主企業と協力会 社のミスマッチが頻繁に発生している。
その理 由を物流会社は荷主の無理な要望に求める傾 向が強い。
しかし私の見る限り、ミスマッチの 多くは、物流会社側の提案力の欠如が原因と なっている。
物流会社側に中立的、客観的な 提案力と厳密な原価計算に基づいたコスト管理 能力があれば、ミスマッチのほとんどは解消で きる。
しかし、現実は理想とはほど遠い状況にある。
今回のケースでも私は、荷主企業と物流会社と の商談に通訳の存在が必要であることを痛感し た。
荷主に対して一般的な解決方法や事例を 紹介し、一方で物流会社に対して荷主のニーズ を専門用語で伝えるのである。
この温度差を埋めるために、第三者機関とし ての3PLが必要になっている。
今回のケース では我々NLFがその役割を果たした。
しかし、 それは本来、物流会社自身の企業努力によっ て埋められていくべきものなのではないだろう か。
87 SEPTEMBER 2007 物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、 日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説 明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描 写。
本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) \1,890(税込) 2005年3月発行 白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます! 本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) \1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」 湯浅和夫 著 (かんき出版) \1,575(税込) 2005年2月発行 物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
現在は一大ビューティーサ ロンに成長したP社の事務所が、かつては同じ ような状況だった。
私が訪問した当時、P社は新宿の本社事務 所で商品の入荷から保管、検品、出荷業務を 行っていた。
その後、P社は我々日本ロジファ クトリー(NLF)のサポートを受け、外部倉 庫を借り、物流業務のアウトソーシングに踏み 切った。
これによって初めて、P社の物流機能 は本格的に動き出したのであった。
Y社も同じ 時期に来ているようであった。
私の訪問に対し、Y社側ではS社長自らが 出迎えてくれた。
S社長は米国の大学で薬学を 専攻し、一〇年前に来日してビジネスを開始し た起業家である。
その相談内容は明確であった。
“倉庫を探して欲しい”という。
既に一部の商品は外部倉庫に保管しているも 化粧品をネット通販 関東に本社を置く通販会社Y社は、米国製 の化粧品やマウスケア製品など、約七〇〇アイ テムを扱っている。
販売ルートは九割がインター ネット通販で、残りが専門店や百貨店への卸販 売だ。
現在の年商は約一八億円。
年々、売り上げ は伸びている。
国内ではあまり見かけない珍し い商品を多く扱っていることから、雑誌やマス コミに取り上げられる機会が多く、そのたびに 自社ホームページのアクセス数が上がり、事業 拡大へとつながっている。
私がY社を訪ねると、事務所には所狭しと商 品が積み上げられていた。
商品の山に埋もれる ように、社員たちが受注処理や出荷作業に追 われている。
私にとっては、以前にも見たこと のの使い勝手が悪い。
そこで、もっと規模の大 きな倉庫に移り、現在は事務所で保管している 商品と合わせて拠点を一カ所に集約したい。
そ の具体的な施設と協力業者の選定が、我々に 対する要望であった。
この倉庫移転に当たり、S社長は三つのシナ リオを用意していた。
A案:物流の保管と運営 全てを第三者にアウトソーシングする。
B案: 事務所併設型の倉庫を借り、管理を自社で行う。
C案:事務所とは別に倉庫会社の施設を借り、 管理を自社で行う、という選択肢であった。
Y社にとって物流は競争力の源泉(コア・ コンピタンス)とは言えない。
そのため本来で あれば、A案のフルアウトソーシングが正攻法 だろう。
ただし、それには問題があった。
専門 技術者の確保である。
Y社が取り扱う商品のなかには、「責任技術 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第56 回 伸び盛りのネット通販ベンチャー。
それまで物流は事務 所の一角で社員たちが自分で処理してきたが、売り上げの 拡大によっていよいよ限界が見えてきた。
本格的に物流イ ンフラを整備する時期だ。
社長自ら指揮をとり、倉庫の選 定とアウトソーシングの検討に入った。
通販会社Y社の物流インフラ構築 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、8 9年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 者」と呼ばれる専門的な管理者の設置を義務 づけられているものが少なくない。
具体的には ?管理薬剤師の資格を有する者、もしくは?大 学または高校で物理、化学、金属、電機、機械、 薬学、医学、歯学の専門課程を終了し、三年 以上の実務経験を有しているものが、その対象 となる。
それまでY社ではS社長自らを「責任技術者」 として届け出を行っていた。
これをアウトソー シングするには、協力物流会社側で有資格者 を確保することが条件になる。
しかし、管理薬 剤師は人材難で、大手物流会社といえども社 内に有資格者を在籍させている会社は多くはな い。
そのため業務自体は物流会社にアウトソー シングしながらも、現場に荷主企業側で手当て した有資格者を常駐させているケースも珍しく ない。
この問題に加えて、協力物流会社のセンター 運営ノウハウに対する懸念もあった。
S社長と 話し合った末、A案のフルアウトソーシングは 第二ステップのテーマとして位置付け、当面は 見送ることになった。
そうなると、次はB案の事務所併設型かC 案の倉庫専用かという判断である。
これについ ては、現状の事務所の家賃水準を検討した結果、 相場に比べて割安感があり、事務所の移転によ るコストメリットが小さいことから結局、C案 が選択された。
具体的な倉庫施設の選定では、次のことを 条件とした。
?本社事務所から車で一五分〜二〇分の距離 ?保管料は現在一部の商品を保管している賃 貸倉庫と同等レベル(これは決して探すこと が困難な水準ではなく、いくつかの倉庫会社 を当たることが可能なレベルであった) ?二〇フィートコンテナのデバンニングが可能 であること(平屋あるいは一階部分を利用し たい) ?商品汚れが生じる恐れのある施設(埃や粉塵 の出る施設)は避ける。
我々NLFは、この条件を満たすことので きる物流会社や倉庫会社を探した。
その結果、 前述のビューティーサロンチェーンP社のパー トナーを務めている中堅倉庫会社のL社に打診 することになった。
L社はY社の希望エリアに 倉庫を数カ所所有していたからである。
L社の専務に連絡をとったところ、タイミン グ良く“空き”があるという。
しかもL社は社 内に「責任技術者」の有資格者を数名抱えて いるということであった。
中堅倉庫会社として は稀なケースといえる。
L社の持つ空き物件のうち、予算面も含めて Y社の条件に合う施設が二カ所あった。
L社と 打ち合わせを行った上で、そのうち保管料の安 いA倉庫をY社に紹介することにした。
賃貸倉庫を選定 私とL社の担当者がY社を訪れ、S社長と の三者面談を行った。
まずはL社の会社概要 を案内し、次にA倉庫の紹介に入った。
提示 した保管料はY社の当初予算を二〇%ほど下 回っている。
それに気を良くしたS社長は具体 的な質問を次々にぶつけてくる。
メザニン(中 2階)も使用できること、外部の出入りを規制 するセキュリティ面の充実、繁忙期の人員補充 の対応などを説明すると、かなり乗り気になっ てきた。
ただし、本社事務所からの距離には懸念があ るようだった。
S社長は、出荷などの庫内管理 を担当している社員も一度本社に出勤させた後 で、車で現場に向かわせたいという意向を持っ ていた。
そのため本社事務所からA倉庫の移動 時間が大きなポイントとなっていたのだ。
念のため、もう一つの候補だったB倉庫も紹 介した。
本社事務所との直線距離はA倉庫と ほぼ変わりないが、道路のアクセスが良いため 移動時間は五分強ほど短い。
しかも近くに駅が あるため、将来社員を直接倉庫現場に出勤さ せることになった場合にも便利であった。
ただ し保管料はA倉庫に比べると一〇%ほど高い。
三者面談の後、L社の担当者がいない席で、 S社長にL社の感想を聞いてみた。
「倉庫会社 としては申し分ない。
繁忙期にヒトの補充対応 をしてもらえるのも助かる。
しかし、できれば B倉庫の方が近いため、そちらを使いたいのだ が、費用は変わってくるのがどうも」というコ メントであった。
少し痛いところを突かれた感があった。
コス SEPTEMBER 2007 86 トの問題以外にも、現場の「5S(整理・整頓・ 清掃・清潔・躾)」のレベルや所長の管理能力 など、トータルで見た場合には、A倉庫の方が Y社には適していた。
その旨をS社長に説明し、 一応の理解は得られたものの、十分に納得して もらえているかは分からなかった。
数日後、L社の営業担当の案内でA倉庫を 視察することになった。
Y社からはS社長のほ かにも二名の関係者が同行した。
この日は渋滞 もなく一〇分余りでY社本社事務所から現地 に到着した。
移動時間は物件選定の重要ポイ ントになっていたため、私は内心、ほっと胸を なでおろしていた。
即断即決が功を奏す 到着後、現場の案内と質疑応答を四〇分ほ どで終えると、S社長はすぐに切り出した。
「OK! ここに決めます。
よろしくお願い します」 起業家らしい即断即決であった。
結果として、 Y社は良い買い物をしたといえる。
後になって 聞いた話であるが、現場周辺はこのところ借庫 ニーズが高く、A倉庫にはY社の他にも三社が 商談中であった。
この日から一〇日後、商品の引越しが完了 した。
さらに引越し完了から一カ月も経たない うちに、今度はY社の他事業部門であるアパレ ル製品の保管もA倉庫に委託されることになっ た。
これは今回のA倉庫の業務内容とL社の 対応にS社長が満足していることのあらわれで あろう。
当初、第二ステップとして先送りした 運営業務のアウトソーシングまで現在は視野に 入ってきた。
いまだ物流市場においては荷主企業と協力会 社のミスマッチが頻繁に発生している。
その理 由を物流会社は荷主の無理な要望に求める傾 向が強い。
しかし私の見る限り、ミスマッチの 多くは、物流会社側の提案力の欠如が原因と なっている。
物流会社側に中立的、客観的な 提案力と厳密な原価計算に基づいたコスト管理 能力があれば、ミスマッチのほとんどは解消で きる。
しかし、現実は理想とはほど遠い状況にある。
今回のケースでも私は、荷主企業と物流会社と の商談に通訳の存在が必要であることを痛感し た。
荷主に対して一般的な解決方法や事例を 紹介し、一方で物流会社に対して荷主のニーズ を専門用語で伝えるのである。
この温度差を埋めるために、第三者機関とし ての3PLが必要になっている。
今回のケース では我々NLFがその役割を果たした。
しかし、 それは本来、物流会社自身の企業努力によっ て埋められていくべきものなのではないだろう か。
87 SEPTEMBER 2007 物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、 日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説 明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描 写。
本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) \1,890(税込) 2005年3月発行 白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます! 本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) \1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」 湯浅和夫 著 (かんき出版) \1,575(税込) 2005年2月発行 物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
