ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年9号
特集
3PL市場2007 伝統的倉庫業とは事業構造が全く違う

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

「伝統的倉庫業とは事業構造が全く違う」  海外事業の拡大を目的に今年4月、大規模な組織改 革を行った。
それまで外販とグループ向けに分かれて いた営業組織を統合、国内事業と海外事業の垣根もな くした。
国内市場で培った3PL のノウハウを、人材ご と海外事業に投入する。
リスク覚悟の先行投資も辞さ ない構えだ。
      (聞き手・大矢昌浩) 3PL事業の世界展開を本格化 ──日本の3PL市場の規模が既に一兆円を大きく 超えていることが明らかになりました。
 「そんな程度ではないだろうと見ています。
3PL の定義にもよりますが、国内の物流市場が二〇兆円 だとすれば、その三割近くあってもおかしくはない。
その意味では日本の3PL市場はまだ導入期であっ て、成長期を迎えてはいないという認識です」  「実際、今は景気がいいためにアウトソーシングの 機運が少し落ちてきている。
〇三年から〇五年頃に は、当社は物流子会社の再構築を3PLの一つの切 り口として位置付けていました。
実際、子会社の買 収の打診や、物流部門の既存スタッフの受け入れな どを望む荷主が少なくなかった。
3PLを利用した リストラです。
しかし、その後、景気が回復したことで、 物流子会社にメスを入れようという動きはむしろ後 退している」 ──しかし、昨年末に日立物流は資生堂の子会社を 買収しています。
 「資生堂さんの英断だったと思います。
業績好調で ありながら、先々まで考えて一番良いタイミングで子 会社を手放された。
国内の化粧品市場は既に成熟し ているという読みだと思います。
我々も3PLとして 全く同じことを感じています。
国内で既存顧客の自 然増を期待するのは、もう無理です」  「何もしなくても既存顧客の仕事が毎年四〜五% ずつ伸びた時代が、以前はずっと続いていました。
黙っ ていても物流企業は成長できた。
社員の給料も上げ られた。
しかし、この一〇年は既存荷主の仕事は横 ばい、あるいは減少する傾向にあります。
国内市場 には既に頭打ち感が出ています。
今後は限られたパ イの争奪戦です」 ──その対策として海外事業の強化を挙げている。
しかし、これまでの日立物流の海外展開はグループ 会社を対象とするものがメーンで、外販には出遅れ た感がある。
 「正直なところ、これまでは国内で一つひとつの仕 事を定着させるのに手一杯でした。
しかし、最近に なって、国内については事業の仕組みや社員のマイ ンドなど、やっていけるという自信がついてきた。
今 はどんな分野の仕事であっても安心して受託できる。
その足固めを使って海外に展開したい。
ようやく海 外に手を出す準備が整ったと感じています」 ──日系企業の海外進出は既にかなりのレベルまで 進んでいます。
今から日立物流が出て行って、既存 の協力会社を押しのけるのは容易ではない。
 「先に海外進出した物流企業にそれほど先行者利 益があるとは思えません。
また当社は国際物流といっ てもフォワーディングだけで勝負しようとは考えてい ない。
海外市場においても当社の競争力の源泉は、 やはり物流センター周りです。
国内事業で蓄積した オペレーションを海外でも武器にしていく。
人材も 国内で3PL事業を担当していた人間を海外に投入 する。
当社独自のアプローチで展開していきます」 ──エリアとしては?  「北米では既に一定のネットワークを築いています。
中国では内陸部に向かう国内配送網を構築する。
ま たインドには先行投資で拠点を用意しようと考えて います。
リスクはありますが、金額的には許容でき る範囲です。
当面、海外事業は収益的には楽ではない。
しかし、業績の良い今のうちに、それをやっておくべ きだという判断です」 ──これまでの日立物流の3PL事業を振り返ると、 SEPTEMBER 2007  18 Interview 日立物流 長谷川伸也 執行役常務グローバル営業開発本部長 19  SEPTEMBER 2007 3PL市場 2007 特集 やはり九〇年代末にパートナーシップを結んだイオン グループの案件がメルクマールとなっています。
この 案件で日立物流は大きな投資リスクを背負いました。
 「基本的に3PLはリスクの小さなビジネスです。
例えば立派なホテルを建てても、客が来なければすぐ に経営が行き詰まってしまいますが、3PLで荷主 の専用拠点を新設する場合には、一〇年から一五年 の長期契約を荷主と結ぶことができる。
そこに大き なリスクはありません」 ──荷主に契約を切られることはあります。
 「もちろんです。
しかし、ある日突然、契約を切ら れるわけではない。
しっかりとした対応ができていれ ば、契約を切られるケースは非常に稀です。
しかも 契約の打ち切りを言い渡されてから契約が終了する までには半年なり一年なりの時間がかかる。
次の手 当ても比較的しやすい」  「たしかにイオンさんの案件で当社は小さくない投 資をしました。
京都の大山崎には延べ床三万坪の専 用センターも新設している。
しかし万が一、イオン さんにそこを出て行くと言われても、拠点を転用す ることは十分に可能です。
そうしたリスクも見越し て投資をしている」 汎用型拠点に先行投資 ──それだけの規模を持ち、しかも特定荷主専用に 設計されたセンターを、他の荷主に転用することが 簡単だとは思えません。
 「立地条件が良く、オペレーションがしっかりして いる施設は必ず埋まります。
もちろん、条件の良く ない土地に中型以下の特定荷主専用施設を作ってし まえば話は別です。
その荷主に出て行かれたら転用 のしようがない。
実際、それで困っている物流会社 をたくさん知っています。
そのため当社は立地や規 模の点で転用の難しい施設は賃貸で確保し、自己投 資はしない方針をとってきました」  「しかもイオンさんのような専用センターは当社の 場合は例外的であって、他はほとんどが汎用センター です。
通常、当社が自己投資で新しいセンターを建 設するときは、半分は既に荷主が決まっている。
残 りの半分は先行投資になりますが、それも予めター ゲットを定めておき、そこに入居することでメリット のある荷主に提案するかたちで、汎用型拠点を中心 に展開しています」 ──拠点は本来なら賃貸より自己投資のほうが有利 なのですか。
 「もちろんです。
自前で土地まで購入して上物を建 てたほうが利益率はずっといい。
土地の償却を考え なければ、坪当たりのコストは倍も違ってくる。
物 流一等地に施設を所有していれば、営業の懐も深く なる。
賃貸倉庫を五〇〇〇坪借りるのであれば、常 時五〇〇〇坪使う荷主でないと算盤が合わない。
し かし、自社倉庫であれば多少の空きが発生すること も覚悟で、シーズンものなど物量の波動の大きな仕 事でも受け入れることができる。
それが老舗倉庫企 業の非常に大きな武器になっている」 ──それでは資産をムダに使っていることになる。
 「確かにそうです。
しかし、それが伝統的な倉庫業 のビジネスモデルです。
あるいは倉庫料をタダにして 運送や庫内作業の仕事をもらうというビジネスが従 来はまかり通ってきた。
ところが当社の場合は、も ともと資産を持っていないために同じビジネスモデル をとれなかった。
配送や庫内作業だけでなく、倉庫 でも稼がなくてはならない。
そのために3PLとして のノウハウを磨くしかなかったのです」 05年4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 06年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 07年1月 2月 3月 マスターフーズコスモス薬品 イオンフォレスト シスメックス キリンウェルフーズ三菱マテリアル タカノフーズ【日用品】某社 【熱器具】某社 【日用品】某社 イトーキ 【精密機器】某社 【医療機器】某社 【グローバル】某社 参天製薬 参天製薬 【医療・福祉】某社 【医療・福祉】某社 【医療・福祉】某社 コープ東北 サンネット 昭和冷蔵 【その他】某社 【卸】某社 エレコム コナミGr 【医療・福祉】某社 【小売】某社【小売】某社 【小売】某社 イオン 【小売】某社 【小売】某社【小売】某社【小売】某社 【小売】某社 エージーエム コーポレーション 【小売】某社 【小売】某社ユニーマルカイイオン【卸】某社東京豊島青果 キヤノン キヤノン キヤノン 【生活・アミューズ メント】某社 【生活・アミューズ メント】某社 【電機・機械】某社【医療・福祉】某社 【食品】某社【その他】某社 クラリオン キヤノンニコン クラリオン 【医療・福 祉】某社 メーカー系 流通系 日立物流の主な3PL 事業立ち上げ案件( ’05 年度〜 ’06 年度)

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