*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
OCTOBER 2007 36
物流不動産大手のプロロジスは今年、
欧州進出一〇周年を迎えた。 これを記
念して企画された同社の欧州施設見学ツ
アーに本誌も参加。 現地の環境対応型物
流センターを視察した。 その様子をレポー
トする。 (柴山高宏)
フランス
欧州初のソーラーパネル設置
パリのシャルル・ド・ゴール空港から
約一時間の距離に位置する「プロロジス
パーク・シャンテロープ」は、周囲を広
大な自然に囲まれた平屋型の施設四棟か
ら構成される。 素晴らしい景観をバック
に巨大な施設が立ち並ぶ様子は圧巻だ。
このほかに二棟が現在建設中で、完成す
ると総延べ床面積は二五万平米にもなる
という。
欧州に見る環境対応型センター
プロロジスの物流施設を回る
同施設では、ソーラーパネルが二〇〇
七年五月から稼働している。 屋上にソー
ラーパネルを設置するのは、ヨーロッパ
においては物流施設に限らず一般の商
業建築物を含めて初めてのことだという。
毎月約四四六キロワット、年間にして約
四〇万キロワットを発電している。
ただし電力の貯蔵は技術的に難しいた
め、発電した分はいったん地元の電力会
社に売却してから再び購入するかたちを
とっている。 同事業にはフランス政府か
らの補助金が出ているため、電力会社
の買い取り価格は通常よりも高いという。
その結果、年間でパネル設置コストの八%
に当たる収益を生み出している。
チェコ共和国
採光シャッターで省電力に貢献
プラハまでわずか十一キロという近距
離に位置する「ウツジュ」は、中欧地
域における初の環境対応型施設だ。 ト
ラックバースのシャッターに窓を取り付け、
自然採光を活かして消費電力の低減につ
なげている。
施設の外壁には「壁面緑化システム」
を導入している。 壁に植物を絡ませるか
たちで育成し、CO2等排出ガスの浄化
を行っている。 旧共産圏で発展途上にあ
る地域でありながら、環境への配慮も忘
れぬあたりが、欧州が環境先進国と呼ば
れる所以なのだろうと感心した。
ポーランド
線路を敷きインターモーダルに対応
ワルシャワまで四〇分と、交通アクセ
スが良好な「テレシン」は鉄道の引き込
み線を敷いており、インターモーダルに
対応している。 線路はテナントからの提
案を受けた上で、後から引き込んだ。 こ
の線路はポーランド全域をカバーするだ
けでなく、ベルリン、モスクワまで続い
ている。
プロロジスでチェコ共和国・スロバキ
ア地区担当責任者を務めるヤコブ・ペリ
カン氏は「EU全土でのモーダルシフト
は各国による鉄道インフラの整備状況の
違いやコスト面の問題もあり、なかなか
実現は難しい。 テナント企業からの要望
もまだ少ないのが現状だ。 しかし、イン
ターモーダルの流れは今後必ずくる。 そ
のための先行投資的な意味合いも込めて
線路を敷いている」という。
また、同国では欧州進出一〇周年を記
念した記者会見が、中欧本社のあるワル
シャワで行われ、世界各国のメディアが
同社の欧州における今後の戦略について
耳を傾けた。
同社のローランド・ハーマン南ヨーロッ
パ地区担当社長は「昨今のテナント企業
は環境対応型施設を求める傾向が顕著
だ」と指摘。 そして「品質の良さはもち
ろんのこと、次のステップとして最も重
要なのが環境対応だ。 将来的にこの取り
組みは物流不動産業界のスタンダードに
なるだろう」と、環境対策の持つ重要性
を説明した。
さらに同氏は、「私達は環境対策を戦
略の一環として位置付け、取り組んでい
る。 環境対策を前面に押し出した施設を
展開することで、用地確保の際に地主や
周辺地域のコミュニティ、政府の理解が
格段に得やすくなった。 このメリットは
大きい」と自信を覗かせた。
「シャンテロープ」のソーラーパネル
欧州ではパネルの普及がまだ進んでいない
「テレシン」の鉄道引き込み線
インフラを整えても、賃料に反映できないの
が実情だ
「ウツジュ」の自然採光シャッター
アイデアを活かした環境対策を積極的に導入
し、物流コスト削減を実現している
|