2007年10月号
特集
特集
グローバル静脈物流の新展開
グローバル静脈物流の新展開
使用済み製品の廃棄から、再利用を前提とした製品ライフサイク
ルの管理へ、環境規制の進んだEU では、メーカーの管理コンセプ
トがシフトしつつある。
この動きに対応して3PL のDHL エクセルサ プライチェーンは、「アセット・リカバリー・サービス(資産回復サー ビス)」と呼ぶ国際的なリバースロジスティクスを提案している。
環境規制でメーカーの負担が増大 当社DHLエクセルサプライチェーンでは、完成品 の販売後に発生するロジスティクスを「アフターマー ケットサービス」という名称で括り、その一つとして リバースロジスティクスを手がけています。
当社のリバースロジスティクスには基本的に二つ フォーカスがあります。
一つは、使用済み製品を顧客 から回収するフローを作る、文字通りのリバースロジ スティクスです。
もう一つは、リサイクルを前提に資 産価値を持った製品を回収する「アセット・リカバリー・ サービス(資産回復サービス)」と呼ぶサービスです。
このうちリバースロジスティクスの部隊には、二〇 〇三年二月にEU議会が発行した「WEEE(Waste from Electrical and Electronic Equipment:廃家電・ 電子製品)指令」に対応した専門チームを設けています。
家電・電子機器のメーカーを対象に、自社製品の回収・ リサイクルを義務づけるもので、二〇〇五年八月から 本格的に運用が始まりました。
この法律によって、EUにおいて家電・電子機器 製品のメーカーは自社製品のライフサイクル全体を通 して責任を負わなくてはならなくなりました。
すなわ ち使用済み製品を使用者が処分するのではなく、メー カーが自分たちのコストで回収しリサイクルしたこと を証明しなくてはならなくなったのです。
以前のように、 売ったら終わりというわけにはいかなくなりました。
WEEE指令の実際の運用方法は国によって違い ます。
例えばドイツでは、一般家庭用製品はオフィス で使用されていたものであっても全て家庭用として定 義していますが、他の国では家庭用とビジネス用の間 に明確な一線を引いています。
SOHOで使っている 機器は家庭用なのかビジネス用なのかという議論など もあり、全ての国が独自に解釈をしました。
これによって、メーカーには非常に複雑なかたちで 管理義務が課せられることになりました。
メーカーは 製品を回収してリサイクルする一連のプロセスを、財 務的・事務的な面からカバーする必要があります。
そ れと並行して、実際にどうやって回収するのか、それ をどうやって監査するのかというロジスティクス管理 を実施しなければなりません。
このことはサプライチェーンにどのような影響をも たらすでしょうか。
回収・リサイクルには、もちろん コストがかかります。
英国ではWEEE指令を遵守す るために、メーカーは年間二億一七〇〇万ポンドから 四億五五〇〇万ポンドのコストを負担することになる という試算が出ています。
欧州委員会でも、ほとんど のWEEE製品について一%〜二%のコスト増になる と見ています。
その多くはロジスティクスコストです。
この最適化 にはコントロールが必要です。
規模の経済が働くため、 ネットワーク化する必要があります。
自社だけではと てもできません。
それを最適化できるベンダーと手を 組む必要があるのです。
リサイクルにしても、ただリサイクルするというだ けでなく、EUや各国の規制に合致した方法で、確 実に実施する必要があります。
例えば中国をはじめ とした非OECD国に使用済み製品を輸出するのは、 安く済む方法かも知れませんが、環境と現地の人たち の健康には大きな害をもたらします。
実際、欧州ではリサイクルを調べる多くの調査によっ て、現地のゴミ捨て場の様子などのショッキングな画 像が、メディアを通じて広く一般に報道され、大きな 社会的関心を呼びました。
そこに使用済みの自社製品 DHLエクセルサプライチェーン ケリー・モック アジア太平洋地区 シニア・バイスプレジデント DHLエクセルサプライチェーン ドナルド・マクガーヴァ 北アジア地区 シニア・バイスプレジデント 第4部 OCTOBER 2007 24 が映し出されたメーカーは、ブランド価値を大きく損 ねてしまったことになります。
こうしたリスクを避け るためには、例えばEU内の大規模なリサイクルセン ターと提携するといったことを考える必要があります。
廃品回収から資産回復サービスへ EUでビジネスを展開するメーカーが次にすべきこ とは何か。
それを図1に整理してみました。
戦略とオ ペレーションを縦軸に、内部要因と外部要因を横軸に して、四つのボックスに、製品、流通戦略、および要 因の検討を示したものです。
まずプロダクトデザイン のところで環境に配慮する。
そしてリサイクルを念頭 において、製品のセカンドライフ、再利用について考 える必要があります。
そのために修理や回収を行うこ とも必要になります。
例えば商品寿命のサイクルの短縮、技術革新をいち 早く採り入れた製品のアップグレードと交換は、大幅 な残余価値のある機器を回収することにつながります。
またWEEE指令などによって、より多くの機器が回 収されるようになることで、その残余価値を利用可能 にする低開発諸国への貢献やプログラムが、企業の社 会的責任として浮上してきます。
組み立てと分解を容易にし、回収した製品からパー ツを再利用するためのモジュール化が進み、ビジネス モデル自体も製品の販売という従来のかたちからリー スやサービス契約などへ多様化していくでしょう。
環 境対策を進めることで、ロジスティクスだけでなく、 プロダクトデザインをはじめとしたマーケティング全般 が複雑になっていきます。
このような動きに対応するために当社は「アセット・ リカバリー・サービス」を手がけています。
これまで はサービスロジスティクスと言っても、何か修理が必 要だということであれば、必要な部品をできるだけ早 く現場に送り込むところまでを管理するという考え方 が主流でした。
ところが、それが変わってきているの です。
理由の一つはやはりコストです。
フィールドに残っ ている在庫を、できるだけ早く回収して、それをサプ ライヤーに戻すことによって、その在庫をバランスシー トから省くことができる。
それだけコストを減らせる ことになります。
二点目は品質です。
パーツに何か欠 陥があるのであれば、それを早く回収することによって、 何が悪いのかを分析して、素早く改善する。
そして三 つ目はWEEEのような環境規制にともなう法令遵守 です。
商品が使われるライフサイクル全てにわたりメー カーが責任を持つようになったことで、たとえコスト がかかっても環境には対応するべきだという意識に変 わってきています。
これは一昨日まで私が滞在してい た中国でも同じでした。
今や中国企業もサステナビリ ティを約束できなければ取引を失うことになると、ハッ キリと自覚しています。
そこには当社の成長の機会があると考えています。
現在、欠陥品を回収して修理し、元に戻すというグロー バルロジスティクスに、通常で六〇日〜九〇日のリー ドタイムがかかっています。
これに対して当社は一〇 日でそれをカバーしています。
これはベスト・イン・ クラスだと自負しています。
当社にとってリバースロジスティクスは、現状では 決して収益性の高い事業であるとは言えません。
しか し、グローバルロジスティクスにおけるリーダー的存 在を自負する当社にとって、リバースロジスティクス は戦略のカギになる重要な部分であり、その重要性は 今後ますます大きくなっていくと考えています。
(談) 図1 製品、流通戦略、および要因の検討図2 DHL のアセットリカバリーサービスの領域 戦 略オペレーション ■顧客サービス ■寿命末期の段階で困 難のない製品回収 ■新しい機器との交換 ■根本原因解析(製品 欠陥) ■経済的利益 ■残余価値を取り戻す ■再利用機器(セカン ドライフ) ■スペアパーツの取り 出し ■市場戦略 ■顧客維持 ■グリーンイメージと 企業市民権 ■顧客の使用/振る舞 いに関する情報 ■研究開発との閉じた 情報の輪 ■規制環境 ■WEEE 指令 ■ROHS 指令 内部要因外部要因管理、制御、そして報告 ソーシング、契約、サプライチェーンマネジメント、 ネットワークサービス、下請け契約者の監査、付加価値サービス 卸業者/ ハブで回収 ユーザーで 回収 選別/集約 センターに 輸送 選 別 スペア パーツ回収再利用 修理/改修転 売 家庭で回収 自治体で 回収 処理 センターに 輸送 処理リサイクル 業者に輸送リサイクル ビジネス WEEE 家庭 WEEE 資産回復サービス 特集環境物流の進め方 25 OCTOBER 2007
この動きに対応して3PL のDHL エクセルサ プライチェーンは、「アセット・リカバリー・サービス(資産回復サー ビス)」と呼ぶ国際的なリバースロジスティクスを提案している。
環境規制でメーカーの負担が増大 当社DHLエクセルサプライチェーンでは、完成品 の販売後に発生するロジスティクスを「アフターマー ケットサービス」という名称で括り、その一つとして リバースロジスティクスを手がけています。
当社のリバースロジスティクスには基本的に二つ フォーカスがあります。
一つは、使用済み製品を顧客 から回収するフローを作る、文字通りのリバースロジ スティクスです。
もう一つは、リサイクルを前提に資 産価値を持った製品を回収する「アセット・リカバリー・ サービス(資産回復サービス)」と呼ぶサービスです。
このうちリバースロジスティクスの部隊には、二〇 〇三年二月にEU議会が発行した「WEEE(Waste from Electrical and Electronic Equipment:廃家電・ 電子製品)指令」に対応した専門チームを設けています。
家電・電子機器のメーカーを対象に、自社製品の回収・ リサイクルを義務づけるもので、二〇〇五年八月から 本格的に運用が始まりました。
この法律によって、EUにおいて家電・電子機器 製品のメーカーは自社製品のライフサイクル全体を通 して責任を負わなくてはならなくなりました。
すなわ ち使用済み製品を使用者が処分するのではなく、メー カーが自分たちのコストで回収しリサイクルしたこと を証明しなくてはならなくなったのです。
以前のように、 売ったら終わりというわけにはいかなくなりました。
WEEE指令の実際の運用方法は国によって違い ます。
例えばドイツでは、一般家庭用製品はオフィス で使用されていたものであっても全て家庭用として定 義していますが、他の国では家庭用とビジネス用の間 に明確な一線を引いています。
SOHOで使っている 機器は家庭用なのかビジネス用なのかという議論など もあり、全ての国が独自に解釈をしました。
これによって、メーカーには非常に複雑なかたちで 管理義務が課せられることになりました。
メーカーは 製品を回収してリサイクルする一連のプロセスを、財 務的・事務的な面からカバーする必要があります。
そ れと並行して、実際にどうやって回収するのか、それ をどうやって監査するのかというロジスティクス管理 を実施しなければなりません。
このことはサプライチェーンにどのような影響をも たらすでしょうか。
回収・リサイクルには、もちろん コストがかかります。
英国ではWEEE指令を遵守す るために、メーカーは年間二億一七〇〇万ポンドから 四億五五〇〇万ポンドのコストを負担することになる という試算が出ています。
欧州委員会でも、ほとんど のWEEE製品について一%〜二%のコスト増になる と見ています。
その多くはロジスティクスコストです。
この最適化 にはコントロールが必要です。
規模の経済が働くため、 ネットワーク化する必要があります。
自社だけではと てもできません。
それを最適化できるベンダーと手を 組む必要があるのです。
リサイクルにしても、ただリサイクルするというだ けでなく、EUや各国の規制に合致した方法で、確 実に実施する必要があります。
例えば中国をはじめ とした非OECD国に使用済み製品を輸出するのは、 安く済む方法かも知れませんが、環境と現地の人たち の健康には大きな害をもたらします。
実際、欧州ではリサイクルを調べる多くの調査によっ て、現地のゴミ捨て場の様子などのショッキングな画 像が、メディアを通じて広く一般に報道され、大きな 社会的関心を呼びました。
そこに使用済みの自社製品 DHLエクセルサプライチェーン ケリー・モック アジア太平洋地区 シニア・バイスプレジデント DHLエクセルサプライチェーン ドナルド・マクガーヴァ 北アジア地区 シニア・バイスプレジデント 第4部 OCTOBER 2007 24 が映し出されたメーカーは、ブランド価値を大きく損 ねてしまったことになります。
こうしたリスクを避け るためには、例えばEU内の大規模なリサイクルセン ターと提携するといったことを考える必要があります。
廃品回収から資産回復サービスへ EUでビジネスを展開するメーカーが次にすべきこ とは何か。
それを図1に整理してみました。
戦略とオ ペレーションを縦軸に、内部要因と外部要因を横軸に して、四つのボックスに、製品、流通戦略、および要 因の検討を示したものです。
まずプロダクトデザイン のところで環境に配慮する。
そしてリサイクルを念頭 において、製品のセカンドライフ、再利用について考 える必要があります。
そのために修理や回収を行うこ とも必要になります。
例えば商品寿命のサイクルの短縮、技術革新をいち 早く採り入れた製品のアップグレードと交換は、大幅 な残余価値のある機器を回収することにつながります。
またWEEE指令などによって、より多くの機器が回 収されるようになることで、その残余価値を利用可能 にする低開発諸国への貢献やプログラムが、企業の社 会的責任として浮上してきます。
組み立てと分解を容易にし、回収した製品からパー ツを再利用するためのモジュール化が進み、ビジネス モデル自体も製品の販売という従来のかたちからリー スやサービス契約などへ多様化していくでしょう。
環 境対策を進めることで、ロジスティクスだけでなく、 プロダクトデザインをはじめとしたマーケティング全般 が複雑になっていきます。
このような動きに対応するために当社は「アセット・ リカバリー・サービス」を手がけています。
これまで はサービスロジスティクスと言っても、何か修理が必 要だということであれば、必要な部品をできるだけ早 く現場に送り込むところまでを管理するという考え方 が主流でした。
ところが、それが変わってきているの です。
理由の一つはやはりコストです。
フィールドに残っ ている在庫を、できるだけ早く回収して、それをサプ ライヤーに戻すことによって、その在庫をバランスシー トから省くことができる。
それだけコストを減らせる ことになります。
二点目は品質です。
パーツに何か欠 陥があるのであれば、それを早く回収することによって、 何が悪いのかを分析して、素早く改善する。
そして三 つ目はWEEEのような環境規制にともなう法令遵守 です。
商品が使われるライフサイクル全てにわたりメー カーが責任を持つようになったことで、たとえコスト がかかっても環境には対応するべきだという意識に変 わってきています。
これは一昨日まで私が滞在してい た中国でも同じでした。
今や中国企業もサステナビリ ティを約束できなければ取引を失うことになると、ハッ キリと自覚しています。
そこには当社の成長の機会があると考えています。
現在、欠陥品を回収して修理し、元に戻すというグロー バルロジスティクスに、通常で六〇日〜九〇日のリー ドタイムがかかっています。
これに対して当社は一〇 日でそれをカバーしています。
これはベスト・イン・ クラスだと自負しています。
当社にとってリバースロジスティクスは、現状では 決して収益性の高い事業であるとは言えません。
しか し、グローバルロジスティクスにおけるリーダー的存 在を自負する当社にとって、リバースロジスティクス は戦略のカギになる重要な部分であり、その重要性は 今後ますます大きくなっていくと考えています。
(談) 図1 製品、流通戦略、および要因の検討図2 DHL のアセットリカバリーサービスの領域 戦 略オペレーション ■顧客サービス ■寿命末期の段階で困 難のない製品回収 ■新しい機器との交換 ■根本原因解析(製品 欠陥) ■経済的利益 ■残余価値を取り戻す ■再利用機器(セカン ドライフ) ■スペアパーツの取り 出し ■市場戦略 ■顧客維持 ■グリーンイメージと 企業市民権 ■顧客の使用/振る舞 いに関する情報 ■研究開発との閉じた 情報の輪 ■規制環境 ■WEEE 指令 ■ROHS 指令 内部要因外部要因管理、制御、そして報告 ソーシング、契約、サプライチェーンマネジメント、 ネットワークサービス、下請け契約者の監査、付加価値サービス 卸業者/ ハブで回収 ユーザーで 回収 選別/集約 センターに 輸送 選 別 スペア パーツ回収再利用 修理/改修転 売 家庭で回収 自治体で 回収 処理 センターに 輸送 処理リサイクル 業者に輸送リサイクル ビジネス WEEE 家庭 WEEE 資産回復サービス 特集環境物流の進め方 25 OCTOBER 2007
