*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
NOVEMBER 2007 4
しています。 今後の日本経済にもいい
影響を与えるのではないでしょうか」
年間一〇〇〇万?の更新需要
──〇二年の事業開始から、過去五
年間の日本市場の変化をどうとらえ
ていますか。
「大きな変化の一つは、物流・流通
がビジネスの中で重要視されてきたと
いうことです。 物流・流通の効率化が
どんどん求められるようになりました。
不動産はわれわれのような専門家に売
却し、賃貸した方が有利だと日本企業
も気づき始めました」
「日本の倉庫の在庫は四億数千万?
といわれ、毎年およそ一〇〇〇万?
の更新ニーズがあるとみられています。
このニーズに対応していくには多くの
年月が必要です。 単純に古い倉庫を建
て替えるのではなく、新しいサプライ
チェーンに対応した大型の施設を、よ
りよい場所に建てる必要があります。
そのためにノウハウを活用し、効率的
で安価な物流を施設面から支援してい
きたいと思っています」
──日本市場の特徴は。
「欧米に比べて物流施設のための用
地が非常に少ないことです。 しかし、
物流効率化新法(流通業務の総合化お
よび効率化の促進に関する法律)によ
り、市街化調整地域でも物流施設を開
オフバランス化は進む
──松下ロジスティクスの物流施設
取得の経緯を教えてください。
「松下グループは二〇〇三年に日本
企業として国内で初めて当社の物流施
設を利用していただいた顧客であり、
当時米国でも当社の施設を使っていた
だいていました。 こうしたパートナー
シップの中で、全体の物流に関する戦
略的な相談も受け、当社が専業者とし
て物流施設を買い取った後、松下グル
ープに賃貸し、ともに運営していくと
いう話になりました」
──取得価格の八五〇億円については。
「適正な価格だと思っています。 松
下グループとはグローバルに関係を構
築しています。 当社だけでなく、松下
グループにもメリットがなければいけ
ません」
──今回の案件では一七棟を一括取
得しましたが、松下ロジスティクスに
リースバックするのは一五棟です。 地
方の物件はテナントの確保が容易では
ありません。 そうした物件を保有す
ることについては。
「顧客が望めば一括して引き取って
賃貸し、顧客にとって不要な物流施
設については不動産会社として見極
め、処理するというソリューションを
提供できるからこそ、当社は単純に収
益物件だけを買うファンドとは違うの
です。 これまでにも、三洋電機グルー
プの物流施設四棟の取得実績がありま
す。 今年は資生堂物流サービスの売却
に伴い、資生堂の物流施設八棟も一括
で取得しました」
「また、松下ロジスティクスから取
得してリースバックしない二棟のうち
一棟は既に別の顧客に賃貸しています。
残り一棟については物流施設として賃
貸するのか、建て替えるのか、売却す
るのかをこれから精査し、適切に処理
したいと考えています」
──今後も日本企業に同様のスキー
ムを提案していく計画ですか。
「売却する企業にとっては物流不動
産の所有・管理というノンコアのビジ
ネスをわれわれに委ね、コアビジネス
に集中することで、資本・業務を効
率化できるというメリットがあります。
“セール&リースバック”を拡大するた
め、資産を多く保有する企業のマーケ
ット・リサーチを行い、積極的に提案
しています」
──物流施設の所有から賃貸、とい
う傾向は続くと思いますか。
「松下グループのように先進的な企業
がトレンドを作り、他のメーカーなどに
もオフバランス化が広がることを期待
ジェフリー・H・シュワルツ プロロジス 会長兼CEO
「日本企業の物流資産を買い進める」
プロロジスは九月、松下ロジスティクスが国内一七カ所に保有する全
物流施設を取得した。 取得価格は八五〇億円に上り、国内の物流不動
産取引としては過去最大の規模となる。 今後も日本企業の物流資産の
オフバランス化を支援し、日本での所有・運営資産額を二〇一〇年ま
でに現在の倍の一兆円規模まで積み上げる考えだ。 (聞き手:梶原幸絵)
5 NOVEMBER 2007
発できる可能性が出てきました。 同法
も活用し、施設の開発を進めていきた
いと考えています」
「事業を行う中で感じたことは、日
本では物流業務に関する規制、特に港
湾に関わる規制やルールが他国に比べ
て多く、厳しいということです。 これ
では周辺国の港に比べて、競争力を失
うことになりかねません。 港湾の競争
力の低下は当社の事業にも間接的に影
響するため、日本港湾の競争力の維
持・向上を望んでいます」
──物流施設の用地が高騰していま
すが。
国で事業を展開し、特に日本には大
変な力を注いできました。 日本での所
有・運営資産額は飛躍的に伸び、五六
〇〇億円に達しています。 運営・開発
中の面積は三三八万?(今年九月時
点)です。 アジアでは日本以外でも投
資を積極化するため、日本の比率は相
対的に下がりますが、一〇年時点の資
産規模は倍増する見込みです」
──アジアで次のターゲットとなるの
はどこですか。
「インドにチームを置いていますが、
開拓には時間がかかるでしょう。 しっ
かりと基盤を作りながら展開を進めて
いこうと考えています」
「アジア以外では、中東、ロシア、ブ
ラジルに注目しています。 われわれは
設立一四年の若い企業です。 欧州では
一〇年、日本では五年、中国では四年
の歴史しかありません。 このため、ま
だまだ潜在的な発展の余地は大きいと
みています」
「当社のコストだけが上がっているわ
けではないので、マーケットの中で競
争力を失うわけではありません。 逆に、
保有する物流施設の資産価値は上がっ
ています。 また、不動産価格が上昇す
ることで日本経済が安定していくのは
よいことです。 当社は投機的に不動産
を買いに走ったことはありません。 日
本は非常に大きな、よい市場です。 価
格の上下に関係なく、長期的な視野で
用地を確保し、顧客のニーズに応える
ものを作っていきたい」
「現在の地価上昇は売却益を狙った
投機によるものではなく、実需に裏付
けられています。 需要を超えれば価格
は自然に落ち着くとみています」
三年間で五六〇〇億円を倍増
──サブプライムローン問題の影響は
ありますか。
「サブプライムローン問題により、投
資家は不動産や不動産会社の質を精査
するようになりました。 このため、物
流施設、顧客ともに質に優れたわれわ
れへの投資が増加した形です。 不動産
ブームでサブプライムローンに資金が
流れていましたが、普通の状態に戻っ
たといえるでしょう」
──今後の目標は。
「当社は世界二〇カ国でサ
ービスを提供し、顧客数は四
七〇〇社に上っています。 総
所有・運営資産は三〇〇億
ドル(今年六月末時点)に
達しました。 これを一〇年に
は六〇〇億ドルに引き上げま
す。 目標は十分達成可能であ
り、さらに上回る可能性もあ
ります。 日本を含むアジアは
最重要地域です。 総所有・運
営資産のうち、アジアのシェ
アは一五%(同)ですが、一
〇年には二〇〜二五%に持ち
上げる計画です」
「アジアでは日本、中国、韓
Jeffrey H.Schwartz
日本担当社長・アジア担当プレジ
デント兼COO、国際投資委員会
会長などを務め、05 年1 月CEO
に就任。 今年五月会長を兼務。 ハ
ーバード大学大学院経営学部で経
営学修士号、エモリー大学で栄誉
理学博士号。 入社以前は米国フロ
リダ州最大の産業施設開発会社の
創設者・共同経営者だった。
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2010
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
1 兆円
7,726 42,129
………
……
……
日本における所有・運営資産額
1$=120 円で換算
(単位:百万円)
87,402
174,633
268,040
388,238
562,918
東京
横浜
新潟
仙台
福島
名古屋
大阪
神戸京都
広島
北九州
福岡
札幌
盛岡
稚内
旭川
釧路
函館
青森
宇都宮長野金沢
松江
熊本
鹿児島
秋田
盛岡
扇町
富谷
郡山?
草加
浦安
湘南
滋賀
奈良
泉佐野
札幌
摂津
門真
福岡
筑紫野
安芸高田
広島
●敷地面積:33万1800 ?
●延べ床面積:41万4600 ?
松下ロジスティクスから17棟を一括取得
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