2007年11月号
値段

日立物流

NOVEMBER 2007  50 3PL事業の収益性が向上  日立物流は、日立製作所が株式の約五三% を保有する物流子会社である。
メーカー系物流 子会社ではアルプス物流や三洋電機ロジスティ クスなどが上場しているが、同社はいち早く非 グループ会社向けの売上拡大に成功した物流子 会社といえよう。
グループ外の売上高を伸ばし た背景には、一九八五年以降の複合一貫輸送 サービスや、情報・保管・輸配送の物流サー ビス「HB─TRINET(トライネット)」の 立ち上げなどがあろう。
 一九九〇年に東証第一部に上場した後、知 名度向上とともにグループ外顧客の獲得に注 力。
情報システムの強みを背景に、同業他社に 先駆けてシステム物流に着手したが、サービス 開始当初は必ずしも順風満帆な出だしとはい えなかった。
システム物流サービスを始めた一 九九〇年代には、一般的には3PLという概 念が根付いていなかったためと考えられる。
顧 客には物流部門を自社で保有し、売上や在庫 などの物流情報を外部業者と共有するような 物流アウトソーシングの発想が希薄だった。
 一九九〇年代後半になると、企業の資産リス トラが本格化するとともに、物流自体も経営戦 略の一貫として捉えられるようになり、システ ム物流が注目を集めることとなった。
ただ、当 時の株式市場ではシステム物流に対する見方は 冷ややかだった。
「東京モノレール」を売却した 二〇〇二年三月期の連結営業利益率は前年の 三・七%から二・五%に低下し、改めて本業で ある物流事業の収益性の低さが目立っていた。
 株式市場の見方が大きく変わったのは、シス テム物流の収益貢献が示された二〇〇四年三月 期以降。
システム物流自体の営業利益率は非開 示だが、全社の連結営業利益率は二〇〇三年三 月期の二・二%から、二〇〇四年三月期には 二・八%と、〇・六ポイント改善した。
利益率 改善は人員整理などコスト削減によるものでは なく、システム物流の売上伸張によるものだっ たため、市場は同社の経営戦略を高く評価した。
 二〇〇七年三月期には営業利益率は三・九% にまで改善している。
また、過去五年間でシ ステム物流の売上高は一・五倍に伸び、全社売 上高に占める割合は五八%から七二%に拡大。
システム物流の増収が利益率改善に寄与した格 好だ。
 ただ、同業他社のケースをみても、3PL事 業は必ずしも高い収益性を保証するものではな いことが分かる。
3PL事業が収益性改善に 貢献するには、規模の拡大やシステマチックな コストコントロール、物流品質など多くの顧客 満足を満たす必要がある。
日立物流が3PL で高い収益性を確保できるのは、一九九〇年 代の事業立ち上げ時の混乱や赤字案件を経験し たことなどにより、ノウハウを蓄積したためと みられる。
国際物流には出遅れ感  二〇〇八年三月期の会社業績予想は売上高 日立物流 3PL事業の収益貢献が鮮明に 課題は国際物流の規模拡大  日立物流の評価は二〇〇四年三月期を境に大き く変わった。
同社が「システム物流」と呼ぶ3P L事業の収益貢献が明らかになったからだ。
今やシ ステム物流事業の売上比率は七二%にも達してい る。
一方、出遅れた感のある国際物流のテコ入れ にはアライアンスの強化やM&Aが必要だろう。
土谷康仁 メリルリンチ日本証券 調査部 第34回 51  NOVEMBER 2007 三三〇〇億円(前期比八・六%増)、経常利益 一三二億円(同八・五%増)、当期利益七三億 円(同七・六%増)。
営業利益率は前年比〇・ 一ポイント改善の四・〇%を目指す。
事業別売 上高では、国内物流事業が前期比九・六%増、 国際物流事業が同七・八%増、その他事業が同 〇・九%減を見込む。
システム物流では二〇件 以上の案件を立ち上げることを目標にし、引き 続き高い増収率を狙う。
 二〇〇八年三月期の会社計画では新規連結 子会社となった「日立物流コラボネクスト(日 立物流が九〇%、資生堂が一〇%の株式を保 有)」の業績寄与(二〇〇六年三月期実績は売 上高一八三億円、経常利益八・六億円)を見込 んでいる。
ただ、 今期は暖簾代の 償却負担なども あるため、連結 営業利益への貢 献は二〇〇九年 三月期以降とな ろう。
現在、同 子会社は資生堂 の川上物流を手 掛けるが、中期 的には川下物流 や国際物流を含 めた一貫物流を 狙うことも可能 とみられる。
 メリルリンチ 日本証券では日 立物流の二〇〇八年三月期業績は会社計画並 みと予想しているが、事業別にみると会社想定 とは若干異なる点がある。
国内物流ではシステ ム物流において会社想定以上の物流センター稼 動があるとみて、会社計画を上回る業績を予想 している。
一方、第一四半期(四〜六月)決 算から判断して、国際物流は北米におけるボー ダー物流が、会社計画に対して若干苦戦する可 能性があると予測する。
 日立物流は、二〇一〇年度までの経営ビジョ ンでグローバルシステム物流の拡大を課題に掲げ ている。
同社の国際物流は同業他社に比べ、や や拠点展開等で出遅れた面があることは否めな い。
今後の国際物流の規模拡大には既に提携関 係にある郵船航空サービスとのタイアップに加 え、さらなるアライアンスやM&Aの必要性が あろう。
キャッシュの活用法に注目  二〇一〇年度の業績目標は売上高五〇〇〇 億円、営業利益二五〇億円、営業利益率五・ 〇%である。
現時点でのメリルリンチ日本証券 の判断は、二〇一〇年度の目標達成はやや難し いというものだが、目標達成のためのツールは 着々と準備しているという印象である。
 例えば二〇〇五年四月に開始した「物流プラ ットフォーム事業」。
同業種の顧客の物流を効率 的に運営し、物流コスト低減と受注拡大を狙う ものだが、順調に進捗しているとみられる。
ま た、前述の「日立物流コラボネクスト」の利益 貢献も期待できそうだ。
 日立物流は株主資本が六四・〇%(二〇〇 七年三月期実績)と高く、デット・エクイテ ィ・レシオ(有利子負債/株主資本、同)比率 も〇・一倍と健全な財務状態にある。
株価バ リュエーション(指標)は二〇〇八年三月期予 想PER(Price Earning Ratio:株価収益率) で二〇倍、PBR(Price Book value Ratio: 株価純資産倍率)で一・一倍、EV(企業価 値)/EBITDA(利払い前・税引き前・減 価償却前・その他償却前利益)倍率(簡易買 収倍率)で七・五倍の水準である。
 株価判断で多用される予想PERは同業他社 の一五倍、東証市場平均の一八倍と比較して高 めの水準にある(二〇〇七年九月二八日時点)。
これは中期的な利益成長性が評価されていると ともに、PBRが一倍に近い水準にあることが、 株価をサポートしている面もあるといえる。
 今後はシステム物流のさらなる売上拡大に加 え、キャッシュの有効活用が投資評価の鍵にな るだろう。
現状では、システム物流の着実な受 注、キャッシュの有効活用手段としてのM&A や倉庫投資も順調に進捗している。
一方、リス ク要因としては3PL事業の競争環境の悪化、 従業員不足などが挙げられる。
(円) 日立物流の過去10年間の株価推移 《出来高》 つちや やすひと 九七年三 月神戸大学大学院卒。
九八年 四月和光証券入社。
その後、三 菱証券などを経て、二〇〇五 年一〇月にメリルリンチ日本証 券に入社。
運輸セクター担当 のアナリストとして活躍して いる。
著者プロフィール

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