ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年11号
物流不動産市場レポート
東海圏愛知を中心に施設の新規着工活発化ニーズ増も賃料水準に変動見られず

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート 第5回 シービー・リチャードエリス 名古屋支店インダストリアル営業部 石川治夫 生駒データサービスシステム 曽田貫一 77  NOVEMBER 2007 東海圏 愛知を中心に施設の新規着工活発化 ニーズ増も賃料水準に変動見られず の施設が多い。
一方、トヨタ自動車を中心に 自動車関連の工場や物流施設が点在する三河 エリアでは、割安な土地価格や、ジャストイン タイムに代表される物流効率を極限まで高め ようとする荷主のニーズも影響し、低層の物 流施設が強く好まれる傾向がある。
 同県では二〇〇五年頃から物流施設のみな らず工場新設の動きが活発化したため、現在 では工業用地の売物件が希少となり、工場新 設の際の候補エリアは岐阜県や三重県にまで 拡がっている。
 しかし、土地に対する引き合いが増えてい るにも関わらず、首都圏のように工業エリア の土地価格が急騰する事例はあまりみられな い。
これは工業用地の主要な買い手である製 造業などのコスト意識が高いことや、土地価 格の上昇を牽引する不動産ディベロッパーの動 きが、国内の他地域と比べると少ないという 土地柄も影響しているかもしれない。
 物流施設の賃貸マーケットをみると、物流エ リアにおける中・大型クラスの施設ニーズは底 堅いものの、前述のとおり物流施設を建設可 能な用地が残っておらず、ニーズが顕在化し ていない。
また、既存の空室物件についても 愛知の用地不足で周辺県に注目  東名高速道路や国道一号線などの大動脈が 走る東海圏は、全国的に見ても景況感が良い エリアだ。
この圏域の中心都市は愛知県であ るが、首都圏に隣接する静岡県、四日市市を 中心とした三重県、東海環状自動車道が整備 されつつある岐阜県にも物流施設は展開され ている。
また三重県や岐阜県は、愛知県内の 工業用地の逼迫に伴い、企業の進出が多くみ られるようになった。
このように、愛知周辺 県にも注目が集まっている。
愛知県 わずか三年で着工量倍増  愛知県では名古屋港を中核とする湾岸エリ アや、内陸の交通の要衝である小牧エリアに物 流施設が集積している。
このエリアには、首 都圏や関西圏と同様に容積率が限度いっぱい 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 10.0 5.0 0.0 −5.0 −10.0 −15.0 (円/ 坪) (%) 2002 年2003 年2004 年2005 年2006 年2007 年上 図1 愛知県の募集賃料推移 3,400 3,230 3,260 3,300 3,580 3,160 8.5 1.2 0.9 −5.0 −11.7 募集賃料 前期比 出典:Warehouse Market Report(シービー・リチャードエリス株式会社) 物流不動産市場レポート る。
また、名古屋市へのアプローチが良好な 四日市市などに、名古屋市に向けた消費財を 取扱う物流拠点を新設するケースがみられる。
 物流施設の供給動向として、今年の七月、鈴 鹿市にホンダの「鈴鹿物流センター(延床面 積約一六万平米)」が稼働した。
今後は二〇 〇八年八月、亀山市に日本トランスシティの物 流施設が竣工予定だ。
岐阜県 東海環状道開通に期待  内陸に位置する岐阜県では、東海環状自動 車道が二〇〇五年三月に一部区間で開通した。
愛知県豊田市を起点に岐阜県を通って、三重県 の四日市市を終点とする幹線道路だ。
現在は豊 田東JCT(愛知県豊田市)から美濃関JCT (岐阜県美濃市・関市)まで開通しており、東 海圏の主要な環状線として期待が大きい。
 同自動車道の開通効果もあって、以前はあま り分譲が進まなかった土岐市においても企業進 出が相次いでいる。
また、旧来より繊維産業が 盛んな地域だったこともあり、現在でもアパレ ルなどの物流拠点がみられる。
地場物流会社の要求水準が厳しく、空室消化 が進んでいる印象には乏しい。
賃料水準は過 去五年間、一進一退を繰り返しており、大き な変化がないことも同県の特徴といえる(図 1)。
 物流施設の着工量をみると、二〇〇三年の 三三万九〇〇〇平米から二〇〇六年の七六万 六〇〇〇平米へと、三年間で倍以上増加して いることがわかる(図2)。
東海圏全体でみて も、二〇〇三年の七四万三〇〇〇平米から二 〇〇六年の一五九万八〇〇〇平米へと急増し ており、同県が周辺県を巻き込む形で供給を 活性化させている。
 今後は、二〇〇七年十二月、春日井市明 知町地内にAMBプロパティジャパンによる 「AMB春日井(延床面積約十二万一〇〇〇 平米)」や、二〇〇八年三月、小牧市新小木に プロロジスによる「プロロジスパーク小牧(同 約五万七〇〇〇平米)」などの大型施設が竣 工予定だ。
三重県 メーカー工場周辺に施設集中  三重県といえば、シャープの液晶テレビの 生産工場である亀山工場があることで有名だ。
他にも鈴鹿市の本田技研工業、四日市市の三 菱化学や東芝など、日本を代表するメーカー のマザー工場が立地し、関連会社や取引先の 物流拠点も点在している。
 同県には大都市間を結ぶ東名高速道路のよ うな主要高速道路は走っていないものの、前 述の工場周辺を中心に物流拠点が点在してい (千?) 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2002 年2003 年2004年2005 年2006 年 121 116 339 139 547 494 161 181 107 211 97 284 136 160 322 766 351 853 743 994 1,075 1,598 403 226 104 図3 静岡県の募集賃料推移 図2 東海圏の物流施設の着工量の推移 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1.0 0.5 0.0 -0.5 −1.0 −1.5 −2.0 −2.5 −3.0 −3.5 −4.0 (円/ 坪) (%) 2002 年2003 年2004年2005 年2006 年2007 年上 募集賃料 2,970 2,950 2,850 2,750 2,750 0.3 2,960 −0.7 −3.7 −3.5 0.0 前期比 出典:Warehouse Market Report(シービー・リチャードエリス株式会社) 出典:建築着工統計(財団法人 建設物価調査会) 岐阜県 愛知県 静岡県 三重県 NOVEMBER 2007  78 79  NOVEMBER 2007 静岡県 賃貸型施設の供給不足  静岡県は首都圏と東海圏〜関西圏を結ぶエリ アであり、温暖な気候や恵まれた水資源もあっ て、古くから工場が多数集積している。
近年で は愛知県同様に、工場新設や拡張のニーズが活 発であったため、現時点では首都圏寄りのエリ アでは分譲中の工業団地がほとんどない。
ここ 数年の景気拡大で工業団地の分譲消化が早期に 進んだ県のひとつといえる。
経済産業省の工場 立地動向調査においても、毎年のように工場立 地件数の全国上位にランクインしており、日本 有数の工場集積地といえる。
 同県内には首都圏や関西圏のような賃貸型の 大型物流施設はほとんどなく、工場の一部と して機能する施設が多い。
したがって、工場と 同様に自社所有が中心である。
同県内でみら れる賃貸型の物流施設は、既存自社倉庫の利 活用の一環であるケースが多く、賃貸をベース とする物流不動産市場という視点で見ると、現 時点では大きなマーケットとは言い難い。
 物流施設の供給動向は、景気低迷期の二〇 〇二年や二〇〇三年でも二〇万平米前後の物流 施設の着工がみられるなど、直近の二〇〇六年 に急拡大している三重県とは様相が異なる(図 2)。
今後は二〇〇八年二月に、静岡市清水区 に清水港振興の「興津国際流通センター2号棟」 が竣工予定だ。
 限定的ながら物流施設の賃貸マーケットをみ ると、メーカーを中心とする企業活動が活発で あるため、施設に対するニーズ自体は増加傾向 にある。
しかし、施設の賃料水準が上昇する気 配はみられず、ほぼ横ばいで推移している(図 3)。
 二〇〇五年に開港した中部国際空港は、 国際物流大手であるUPSが貨物専用機 の乗り入れを発表するなど、国際物流拠 点としての地位を徐々に高めている。
同 空港では、空港島の東北部に愛知県企業 庁分譲による、「空港島総合物流ゾーン」 が設けられている。
一見すると普通の物 流団地と変わりないが、団地内を航空コ ンテナがムカデのような乗り物に載って運 搬されているなど、空港に隣接する物流 団地ならではの光景がみられる。
ちなみに、 空港島総合物流ゾーン内の道路は私道(全 ての道路ではない)で、無ナンバー車両 の通行が認められている。
セントレアの物流団地事情

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