*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
NOVEMBER 2007 22
「住宅物流市場でトップシェア目指す」
グループ向けは倍増できる
──完全子会社化で上場を廃止した狙いは?
「これまで大和ハウスグループは、グループ企業同
士が切磋琢磨して、各社が上場を一つのゴールとし、
最終的にキャピタルゲインを得るという子会社政策を
とってきました。 しかし、その結果としてグループ企
業同士で事業が重なる部分が増えてきた。 グループ各
社の事業領域の切り方で、世の中の変化と合わない
部分も目立ってきた。 そのために改めて事業を再編
して、グループの経営資源をもっと活かしていこうと
いう狙いです」
──具体的には?
「例えば当社にとっての最大荷主は大和ハウス工業
なわけですが、他にもグループ会社はいくつもあるの
に、これまでは取りこぼしていた。 グループ全体の
物流の半分も取り込めていなかった。 金額的にはグ
ループ向けは一三〇億円程度しか現状ではやれてい
ない。 しかし全体では推定で三〇〇億円近くの物流
コストが掛かっているはずなんです。 それを当社に集
約していきたい」
──しかし大和物流は財務的に余裕があり、完全子
会社化で、キャッシュを親会社に吸い上げられてしま
うという面もあるのでは。
「キャッシュフローについても、グループで集約し
たほうが効率はいい。 当社単独で資金を調達するよ
りも有利な条件を引き出せる。 そういうメリットを活
かすことで投資を加速することができる。 実際、当
社はここ数年で八万坪近い拠点の新設を行っていま
す。 これからも物流不動産事業は積極的に拡大して
いく計画です」
──不動産ファンド事業にも手を広げる?
「それは考えていません。 物流不動産事業といって
も当社の場合、六〜七割は当社が自分の物流事業で
使用する物件の確保と運用で、残りの三割程度を賃
貸倉庫として回すというイメージです」
──グループ向けのサービスで利益を出すことは許さ
れなくなるのでは。
「それもバランスです。 そのために当社と同時に完
全子会社化された大和工商リース、ダイワラクダ工業
の三社で毎月、経営会議を開いています。 お互いの
経営状態のプレゼンをしながら、グループ会社の配当
をどうするか、サービス料金水準をどうするか、い
わゆる“握り”を決めている」
──外販についてはどうなりますか。 完全子会社化
を機に外販からグループ向けに軸足を移せという指示
はありませんでしたか。
「むしろ逆です。 仮にグループの物流を全て取り込
んだとしても、それだけでは意味がない。 大和ハウ
スの住宅市場におけるシェアは三%程度に過ぎませ
ん。 集合住宅を含めても一割もない。 グループ統合
はあくまでひとつのプロセスであって、我々の目的は
グループの物流を基盤にして外販を増やしていくこと
にあります。 他のハウスメーカーやサプライヤーなど
にも、お役に立てる物流機能を整備していくことが
狙いです」
──現在の外販比率は。
「六〇%ぐらいです。 つまりグループ向けの物流よ
りも外販のほうが既に圧倒的に多い」
──外販拡大には、完全子会社化が足かせになるの
では。 グループ会社のライバルメーカーが拒否反応を
起こす恐れがある。
「私自身、ハウスメーカー各社のトップと色々話を
する機会がありますが、誰もそんな次元でモノを考
2006年7月、大和ハウス工業による完全子会社化によって
上場を廃止した。 これを逆にテコとしてグループ向け物流事
業の倍増を狙う。 グループの資金力を背景に積極的な投資を
行い、外販事業の拡大も加速させる。 住宅物流市場でナン
バーワンのシェアを握ることが目標だ。 (大矢昌浩)
大和物流 舘野克好 社長
上場廃止──グループ経営戦略の転換
23 NOVEMBER 2007
えてはいない。 現場の最前線では熾烈な競争を繰り
広げていても、経営層は物流や調達などはアライアン
スしたほうがいいと分かっている。 ちょうど今も親
会社と競合するメーカーの物流を請け負うことで話を
進めている最中です」
──ということは、住宅物流や建材物流全体の市場
で、どれくらいのシェアやポジションを占めるかとい
うことを重視している。
「その通りです。 住宅や建材の物流市場でナンバー
ワンになることが当社の長期的なビジョンです」
──その市場規模はどれくらいあるのですか。
「残念ながら信頼の置けるデータはありません。 そ
れでも住宅産業全体が約三〇兆円と言われていて、そ
のうち材料費が六割くらいですから、物流コストが
数%だとしても、相当な規模がある。 ただし現状で
は、そのすべてが物流企業の売り上げになっている
わけではなく、建材卸などの仕事になっている」
──住宅物流という括りでは最大手は恐らく積水ハ
ウス系のセンコーです。 決算書によれば前期、住宅物
流で五一七億円を売り上げている。
「それに対して当社は恐らく今期で四〇〇億円程度
です。 何とか早くセンコーさんに追いつきたい。 物流
業にとって売上規模はやはり重要です。 規模を拡大
しないとセンターの効率も車両の効率もなかなか上が
ってこない」
──当面の売り上げ目標は?
「現在、大和ハウスが二〇一〇年をメドとする中期
経営計画を策定中です。 これに合わせて当社として
も一〇年の売上目標の数字を検証しているところで
す。 まだ確定していませんが、 相当に意欲的な目標
となります。 それを達成するためにM&Aにも、さ
らに積極的に取り組んでいくことになる」
建材市場の改革を支援
──住宅は歴史の古い産業であるだけに、物流の商
慣行などにも癖がありそうです。
「とくに建材メーカーとハウスビルダーの間の流通
は多段階になっています。 全国問屋のほかに各地に
地域問屋があり、良くも悪くも、ユーザーの痒いと
ころに手が届くサービスをしている。 それだけコスト
もかかっている。 それに対して建材メーカーはもっと
ユーザーに近づきたいと考えている。 ハウスビルダー
もまた調達の合理化を望んでいる。 そのお手伝いを
我々は手掛けていきたい」
──具体的なスキームは。
「例えばサッシであれば、今までは窓枠を町のガラ
ス屋や建材屋に納入して、そこでガラスを組んで現
場に納品するといった流通経路だった。 それが今は
メーカーが自分の工場でガラスを組んで直接現場に納
品するようになっている。 ただし帳合いだけは従来
通りの流通経路を流れている。 そういうシーンがか
なり増えています」
「それに対して当社はサッシだけでなく、他の建材
も当社のセンターに取りそろえて現場にセットで納品
する。 設置やゴミの回収も請け負う。 さらには現場
の要望やクレームを情報として吸い上げて、それをメ
ーカー側に伝える。 そうした付加価値の高い仕組み
をメーカーに提案しています」
──しかし、そのスキームでは建材卸と直接バッティ
ングします。
「一部は競合します。 しかし、建材卸はもともと地
元の工務店をメーンの販売先にしている。 我々と被
るところもあっても、完全にはバッティングしません。
棲み分けていくことになると思います」
特集
会社概要
1959年、大和ハウス工業の構内作業と梱包を
メーンとする作業子会社、大和梱包として設立。
61年、大和自動車運輸に社名を変更し一般運送
事業に進出。 89年大和物流に社名変更。 95年、
株式を店頭公開。 06年7月、大和ハウス工業が
大和物流を完全子会社化したことで上場廃止。
●大和物流の業績推移
16
14
12
10
8
6
4
2
0
400
350
300
250
200
150
100
50
0
(単位:億円)
02 年
3 月期
01 年
3 月期
03 年
3 月期
04 年
3 月期
05 年
3 月期
06 年
3 月期
07 年
3 月期
売上高(左軸)
経常利益(右軸)
|