ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年11号
特集
物流子会社政策 完全子会社化を活かし川上物流を拡大

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2007  24 「完全子会社化を活かし川上物流を拡大」 外販活動は今後も継続 ──これまで株式公開は物流子会社の“ゴール”と いわれてきました。
 「われわれにとっては、あまりゴールという意識は ありませんでしたね。
当社が一九九〇年に株式を公 開したのは資金調達が大きな目的の一つでした。
そ れと人材採用です。
学卒を採用しようとしても、当 社の規模で未公開では、なかなか良い人が集まらな い。
しかも上場すれば、既存社員のモラルも上がり、 やる気も出ます。
株式を公開することで親会社はキ ャピタルゲインも得られる。
さまざまな要素がありま した」 ──上場に当たって、ハードルはありましたか。
 「基本的な条件は株式公開を目指す段階で既に整っ ていました。
上場時の売上高は三三億円で経常利益 は四億二五〇〇万円です。
外販も四割以上あったと 思います。
もともと当社の経営陣に、親会社だけに 頼っていてはいけないという意識があったことが大 きかった」 ──一〇%以上という利益率は物流企業としては異 例です。
親会社から、儲けすぎだ、運賃を下げろと いったプレッシャーは受けなかったのですか。
 「当時バンダイは伸び盛りだったということもあり、 そうしたことはありませんでした。
人事面でも植民 地的な感覚はそれほどなかったと思います。
実際、当 社の場合、物流子会社といっても経営陣の顔ぶれは 社長を除けば他は基本的にプロパー社員の叩き上げで す。
そういう意味で、上場しやすい文化だったとい えるかもしれません」 ──それが二〇〇六年に一転して完全子会社になっ たわけですが。
 「バンダイとナムコの統合に伴い、新たに親会社と なったバンダイナムコホールディングスから話があり ました。
大きくなったグループの物流効率化にもっと 寄与してほしいということですね。
当初は外販拡大 をストップしてグループ向けに特化して欲しいという 要請までありました。
しかし、グループだけに特化 してしまうとベンチマークするものがなくなってしま います。
市場競争力のない物流子会社には存在価値 などないと訴え、外販もきっちり行っていくという ことを認めてもらいました」 ──上場廃止によって、子会社として経営ビジョン を描くことが難しくなりませんか。
 「上場を廃止して、改めて当社の存在意義を問い直 したときに考えたことは、グループに不可欠な機能 を担おうということです。
グループ各社が中核事業 に専念する中、物流業務を幅広く行うことで全体を 最適化し、競合他社よりも優位な物流サービスを必 ず実現しようと」 ──しかし、親会社への貢献は、子会社の業績には マイナスに働く。
 「グループの物流コスト削減が、当社にとって痛みを 伴うことは事実です。
実際、上場廃止と同時に、運 賃料率の見直しを行いました。
グループ向けの運賃 をかなり厳しい金額まで下げました。
グループへの貢 献の本気度をみせたんです。
削減効果は約二億円に 上りました。
これは一部の株主のみに利益を還元す ることになりますので、一般株主がいては不可能な 施策でした」  「資産デフレの進行で簿価を割り込んでいた不動産、 つまり不良資産も処理しました。
例えば大阪に当社 が五分の四程度、残りを他の会社が使っていた倉庫 がありましたが、その会社にも提案し、一棟すべて  2006年1月、バンダイナムコホールディングスによる完全子会社 化で上場を廃止。
それ以降、自立からグループへの貢献に大きく 舵をきった。
グループ向け運賃の値下げや不良資産の処理、売上 高を減らすことになる物流業務の海外移管など、上場時代には手 を付けられなかった改革を次々と実行に移している。
(大矢昌浩) バンダイロジパル 馬場範夫 常務 上場廃止──グループ経営戦略の転換 25  NOVEMBER 2007 を物流不動産開発の日本レップに売却しました。
現 在、同社に建て替えてもらっていますが、竣工後は 一棟すべて当社が借り受けます。
これも特損を出す わけですから、上場していたらなかなか難しい。
完 全子会社化によって、こうした思い切った施策も実 行できたわけです」  「国際一貫物流を活用した合理化も進めています。
当社は香港と上海に現地法人を置いていますが、中 国では物量としては大きな仕事をしていても、売上 げ・利益ともに国内事業に比べて金額規模はどうし ても小さくなります。
しかし、グループ全体にとって は数字以上に重要な意味を持つ仕事です」 海外シフトで割高な国内物流を回避 ──国際一貫物流による合理化とは?  「日本向けの在庫を現地で保管するようにしました。
香港の物流センターに在庫を集約して、必要に応じて 東京港と神戸港に分けて出荷します。
これによって 東京で保管し地方に配送していた時と比べて、保管 費用と国内の陸送費用を合理化できる。
国内の横持 ち輸送に大型トラックを一台走らせる運賃は、香港 から東京に運ぶコンテナ運賃と大差ない金額になりま すから、この効果は大きい」  「ただし、国内の倉庫渡しではなく現地の倉庫渡し で生産工場から調達することになるため、親会社の 仕入れ自体を変更する必要がある。
そのため香港に 当社の子会社とは別に合弁会社を作り、東莞で製品 の検査・検針を行うなど、川上の分野に業務範囲を 広げています」 ──そうした業務範囲の拡大も完全子会社化が一つ のキッカケになっている。
 「以前は外販の拡大のため、卸や小売店向けの川下 の分野に注力していました。
現在もそうした物流は 提供しています。
一貫物流の提供をうたうからには、 川下物流に関するノウハウやシステムは維持していか なくてはならない。
しかし川下物流は変化が激しく 価格競争も厳しい」 ──完全子会社化で特定のメーカー系列の色合いが強 まると制約も出てくる。
 「そこで今後は、どんどん川上に入っていこうと思 っています。
単純にものを運ぶ物流であれば、当社 がやる必要性はありません。
親会社の製品の取り扱 いのノウハウを持ち、生産工程にまで入り込めること が当社の最大の売りになります」 ──七月、会社分割を行い、ロジパルエクスプレスを 設立しました。
 「3PLだけを追求していくと、現業がおろそかに なってしまいかねません。
一方で、グループへの貢 献というビジョンがありますから、倉庫など当社のア セットをグループに押しつけることもできません。
こ のため、最適な3PLを提案するバンダイロジパルと、 当社の資産をフルに活用するための現場力を持つロジ パルエクスプレスに分割しました。
3PLや国際物流 と、現場というそれぞれの守備範囲でスキルを高め ていこうということです。
今後もスピード感を持って 展開していきたいと思っています」 ──親会社の経営統合で、グループとなったナムコの 物流業務の取り込みは進んでいますか。
 「今年から当社が一番大きなセンターを運営させて もらえるようになりました。
プロジェクトが実り、や っとスタートできたというところです。
ナムコの方で も当社へのシフトを進めてくれています。
ナムコ向け の売上げは昨年は約一億円でしたが、今年は五億円 くらいになりそうです」 特集 メーカー 協力メーカー 協力メーカー 協力メーカー 工場A 工場B 工場C 検 査 検 査 検査バンダイロジパル中国倉庫 香港港 蛇口港 東京港 お台場 神戸 神戸港 納品先 北海道地区 東北地区 東京地区 名古屋地区 大阪地区 中国四国地区 九州地区 入荷実績・出荷指示 ●割高な国内の陸送と保管を中国に移管した 会社概要 1963年、玩具メーカーのバンダイの物流 子会社として設立。
90年、株式を店頭公 開。
2005年9月、バンダイとナムコが経 営統合しバンダイナムコホールディングス を設立。
06年1月、バンダイナムコホール ディングスの100%子会社化により上場 を廃止。
07年2月期の売上高は約95億 円。
経常利益4億7000万円。

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