2007年11月号
特集

物流子会社政策 「上場はひとつのプロセスに過ぎない」

NOVEMBER 2007  26 「上場はひとつのプロセスに過ぎない」 自動車物流をグローバル展開 ──ついに東証一部上場を果たしました。
上場に至 る経緯を教えてください。
 「二〇〇五年にバンテックと東急エアカーゴ(現バ ンテックワールドトランスポート、以下VWT)が経 営統合しました。
ここがひとつのスタート地点にな ったと思います。
〇一年に日産からMBO(マネジ メント・バイ・アウト:会社経営陣による買収)した 時は、英国系投資ファンドのスリーアイと当社経営陣 の共同出資というかたちでした」  「その後〇三年にスリーアイが保有していた全ての 持ち株(発行済み株式の六一・七%)を、みずほキ ャピタルパートナーズ(以下、みずほCP)が買い取 りました。
スリーアイからすれば、みずほCPに売っ たことがひとつの出口だったわけです。
これを我々 はセカンドMBOと呼んでいます」  「当社の新たな株主となったみずほCPは、東急エ アカーゴの株主でもありました。
この両社を統合する ことで、自動車物流の国内ネットワークとグローバル ネットワークを兼ね備えた特色のある物流企業グルー プができあがりました。
一部上場を目指せる、売る 以外の選択肢ができたということです」 ──外資系のスリーアイと国内系のみずほCPでは、 投資スタンスの違いはありましたか?  「私が当社に来る前の話なのでスリーアイのことは よくわかりませんが、みずほCPの場合は短期でど うこうというよりは、中・長期的に株式を保有して、 価値を上げて上場していく。
ある期間を経て上場に イグジットしていくという日本的な投資スタンスだと 認識しています。
しかし出口といっても我々事業者 にとっては、むしろこれからが本番です」 ──売上高は〇五年度の一三八九億円から〇六年度 の一五一一億円へと、順調に伸びています。
 「やはり東急エアカーゴと統合したことのシナジー 効果が大きい。
〇六年度で金額にして三〇億円程度 の効果は出ている。
もともと両社の荷主はほとんど かぶっていませんでした。
それが統合後にバンテック がメーンとする自動車部品をVWTでも扱うようにな ってきた。
フォワーディング事業は扱うボリュームが そのままキャリアに対する価格交渉力になるので、売 り上げだけでなく収益面でも良い影響を及ぼしてい ます」  「しかしまだまだ不十分です。
現状ではフォワーデ ィングとロジスティクスで分かれている窓口を、顧客 ごとに一本化しないといけません。
両社が本格的に ひとつのチームを組織して、新しいサービスを作って いきます。
バンテックの自動車物流を中心にしたロジ スティクスと、東急エアカーゴの電子関係や機械関係 にウェイトを置いたフォワーディングのハイブリッド 化、これが私達のアピールポイントです。
この両社の 強みにリソースを集中していきます」  「当社のロジスティクス事業の売り上げの七五%は 自動車関連です。
自動車物流の市場ではボリューム、 ノウハウの両面からみて日本でトップクラスであるこ とは間違いありません。
これをひとつの軸にしてい きます。
もうひとつの軸は、自動車関係のロジステ ィクスとセットになったフォワーディングです。
現在、 VWTでは自動車関係のロジスティクスがわかる人材 の育成を急いでいます」 国内市場はM&Aで切り崩す ──フォワーディングの先にある海外における国内物 流。
出先国内で必要になるのは、自動車物流事業の  ゴーン改革で親会社の日産自動車から切り捨てられMBO で独立したバンテックが、9月18日、東証一部上場を果たし た。
日本におけるMBOの先行事例として注目を集めた同社 は、東急エアカーゴとの経営統合や、複数の物流子会社の買 収などを経て拡大路線を突き進んでいる。
  (大矢昌浩) バンテック・グループ・ホールディングス 篠田紘明 社長 新規上場──親会社からの完全独立 27  NOVEMBER 2007 運用です。
バンテックのノウハウは海外市場でも売れ ますか。
 「先頃、ハンガリーの物流会社で伊藤忠商事の子会 社『ユーラシア・スペッド』へ資本参加しました。
今 年の三月に伊藤忠からお話をいただき、二五%を出 資しました。
我々の自動車物流のノウハウが海外でも 十分に通じるからこそ、話が来たのだと思います」 ──中国も含め、新興国の国内物流は利益の確保が 難しい。
やればやる程赤字になっていくことも考え られますが。
 「みんな一斉に進出していけば、最初は当然、価 格競争になります。
しかし、その後しばらくすると クオリティを追求するメーカーが出始める。
そこで初 めて利益が出せる。
実際、先のハンガリーのユーラシ ア・スペッドも相応の利益が出ています。
結局、海 外へ進出していく上で大切なことは、この会社に頼 まざるを得ないというノウハウをどれだけ持っている かということです」 ──一方で日本の国内市場は、すでに成熟していて 規模の拡大は期待できない。
 「パイ全体が大きくなることがない中で、いかにし てシェアを高めていくかというのは確かに大きな課題 です。
そのために当社は〇六年に同じ自動車部品物 流のゼクセルロジテックを買収しました。
これまで当 社は自動車メーカーとティア1(一次部品メーカー) 間における物流がメインでしたが、ティア2(二次部 品メーカー)に踏み込んでいきたい。
そのためにも、 この買収は非常に効果的でした」 ──今後もM&Aを計画していますか?  「財務的な指標でいうとIRR( Internal Rate of Return:内部投資収益率)で税引き後、一〇%以上 の収益を確保できることが条件になります。
業務的 にどういうシナジーが出てくるかも重要です。
その中 でいい案件があれば前向きに検討します」 ──M&Aには業務統合の問題が常につきまとう。
 「輸送ルートや倉庫をどうするかといった技術的な 問題や営業面の棲み分けは、これまで複数回のM& Aを経験したことで、ノウハウが身に付きました。
そ れよりも問題は情報システムです。
買収した企業とシ ステムを一本化するためには、数十億円単位での投 資が必要になります。
シェアードサービス的な間接業 務の集約も必要です」 金融と物流の融合で新サービス ──篠田社長は銀行マン出身です。
物流企業の経営 をどのように捉えていますか。
 「金融業と物流業は非常に良く似ています。
いず れも正面に出て行って主役を演じるのではなく、黒 子としてクライアントの取引に付加価値をつけて手 数料を受け取るビジネスです。
実際、金融業界のオ ペレーション・サービスという概念は物流の世界に おいてもそのまま使えると思います。
ITを駆使し てカネ、情報、ドキュメントの流れに付加価値をつ けてフィーを稼ぐ」  「私は九〇年代の初頭に当時の富士銀行でオペレー ション・サービス部門を新設する責任者を務めました。
日本では初めての試みでしたが、大きなビジネスに成 長しました。
その時の経験がなかったら、物流企業 の経営という仕事をお受けすることもなかったかも 知れない」 ──その経験はバンテックグループの具体的なサービ スとして商品化できそうですか。
 「現在、検討しています。
物流と金融は必ず結び付 くはずです」 特集 バンテックワールド トランスポート 1976 年6月 東急グループのフォワーディング 企業として東急エアカーゴを設立 1954 年1月 日産自動車の子会社、横浜輸送 として設立 2004 年12 月 MBOにより東京急行電鉄から独立 2005 年2 月 バンテックワールドトランスポー トへ商号変更 1997 年10月 バンテックに社名変更 2001年1月 MBOにより日産自動車から独立 2003 年8月 セカンドMBO バンテック 2005 年3月バンテックおよびバンテックワールドトランスポートの2社が株 式交換によりバンテックホールディングスの100%子会社に 2006 年3月バンテックホールディングスが株式移転によりバンテック・グ ループ・ホールディングスの100%子会社に 2007 年9月東京証券取引所第1部に上場 平成19 年3 月期の業績 国内物流事業 55.9% 844億8600万円 国際物流事業 39.7% 599 億4600万円 その他の事業 4.4% 66 億7400万円

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