ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年8号
特集
直接取引 vs 卸流通 合併で業態別の物流を追求する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2005 20 「合併で業態別の物流を追求する」 メディセオとの合併は業態卸への一歩 ――「業種卸」から「業態卸」への脱皮を以前から主 張してきましたね。
「これまでの『業種卸』は、どちらかというとメーカ ーを起点としたエージェント卸です。
メーカーの販売 代理店に近かった。
これに対して『業態卸』というの は、特定の小売り業態の店内作業まで考えて物流を 手掛けます。
業態に特有の売場やプロセス、コストま で論じてビジネスを展開するわけです」 ――物流ニーズが業態ごとにそれほど違いますか。
「分かりやすい例で説明しましょう。
コンビニエン スストアという業態では、誰かが一つにまとめて商品 を店に持ってきて欲しいというニーズがあります。
い くらカテゴリーごとにまとめても、雑貨が来て、食品 が来て、お菓子が来て、本も来るというのではお店は たまらない。
できるだけ納品をまとめるのが、この業 態のニーズです。
そして、このように特定の業態に応 じて物流を設計していくのが業態物流です」 「コンビニエンスストアの約三〇坪の店舗のなかに 置いてある日雑分野の商品は、おおよそ一〇〇〇S KUあります。
一方、当社の『RDC』(在庫型汎用 物流拠点)で扱っている商品の数は二万近い。
二万 SKUの中から一〇〇〇SKUをピッキングして出 荷するという作業は、非常に効率が悪い」 ――過去の日本では、小売り業態のニーズに基づいて 中間流通を形成してこなかった? 「そういうことです。
ただ間違えてはいけないのは、 業態卸といっても、ある業態の扱う商品すべてを供給 するわけではありません。
お客様の業態について、オ ペレーションや売場の管理まで含めて最適になるよう に一緒に考えていくことが重要です。
それくらいのス キルを持った卸でなければ生き残れないのです」 非食品卸の強者連合が生まれた理由 ――日雑卸と加食卸が一緒になってグロサリー卸が生 まれるとみていたため、今回の合併は意外でした。
御 社にとっては順当な選択だったのですか。
「細かくて扱いにくい日雑と、薬や健康食品のオペ レーションは非常に似通っています。
たしかに食品卸 との統合も考えなかったわけではありません。
しかし、 ここで?頻度〞という切り口が非常に重要になるんで す。
我々の扱っている商品は配送頻度の低いものが多 い。
一方、食品は頻度が高い。
オペレーション上、大 きな違いがあります」 「これを無理に一緒にすると、どちらを優先すれば いいのかという話になってしまう。
そうであるならば、 似通った商品特性のものを集めた方が効果は出しやす い。
こうしたことから、やはり食品と非食品は分けて 考えた方がいいと我々は判断しました」 ――結果として、新会社は、ドラッグストアという業 態への傾斜をかなり強めたように見えます。
「現在の当社にとって最大のお客様はドラッグスト アで、四〇%以上の売上シェアがあります。
この業界 は今後もまだ大量出店が続くはずですが、一方で本格 的な競争の時代も迎えつつある。
そうしたときに、ど うしても手を付けざるをえないのが店内作業まで含む オペレーションの改革です。
つまり、誰かが中間流通 できちっと商品をまとめれば、もっと効率が高まるの ではないかという仮説が容易に成り立つわけです」 「とはいえ、我々が医薬品メーカーさんと簡単にお 取引できるわけではありません。
お客様に仕入れてい ただくのも容易ではない。
やはり餅は餅屋で、それぞ れに特殊なノウハウとか歴史があります。
それが今回 パルタック副社長山岸十郎 日雑卸大手のパルタックと、医薬品卸最大手のメディ セオホールディングスが10月1日付で合併する。
新会社の 売上規模は2兆円超。
非食品卸のトップ企業同士が業種 を超えて手を結んだことにより、業種卸から業態卸への 流れが加速する。
(聞き手・岡山宏之) 21 AUGUST 2005 特 集 は、本当にヒョウタンから駒みたいな話で、メディセ オさんと一緒になることが決まりました」 ――新会社の物流の取り組みでは、まずはОTC(大 衆薬)とか医薬部外品から着手するのですか? 「もちろんそうなります。
まずは、その部分のコスト を下げられないようでは話になりません」 ――病院向けや調剤薬局向けの物流に対しては今後、 どのようなアプローチになるのでしょう。
「何よりも、我々がお客様の現場を学ぶのが先です。
病院の状況であるとか、開業医のあり方、調剤薬局な どについて知ることで、それぞれに物流の起点を考え る必要があります。
病院に納品すれば終わりなのでは なく、そこからどうやって病棟に運び、どのように患 者さんのところまで運ぶのか。
このすべてをどうすれ ば正確に安くできるのか。
そういったことを考えてい ったとき、はじめて物流の起点も見えてきます」 「病院の先生方と話す必要もあるでしょうし、我々 の話に耳を傾けていただけるのかという懸念もありま す。
小売業に対するよりもっと時間がかかるかもしれ ない。
ただし、医療費をどんどん縮小しなければ病院 の経営が大変だということは間違いありません。
あら ゆるムダについて徹底的に削減していきます」 価格交渉のためのコストはなくなる ――卸売業の上位寡占化が進み、それぞれの業界の勢 力図がハッキリしたことで、業種をまたいだ合併の機 が熟したという面もあったのでは? 「そう言われてみると、そうですね。
最終的に卸が お客様と一緒にお店を作っていこうとすれば、どうし てもパイプを太くせざるをえません。
そうしなければ 安くできない。
ここから、似たような商品を扱ってい るA社、B社、C社の卸三社と取引をする理由は何 なのかという話が出てくるわけです。
価格を比較しな ければ安く買えないという話が現実にあることは否定 しません。
ただ、こうした付き合い方が今後もずっと 続くかといえば、僕にはそうは思えない」 ――どう変わるのでしょう。
「何年か前にアメリカのスーパーバリューが『アドバ ンテージ・プログラム』というのを始めました。
すべ ての原価を取引先に公開して、こういう発注だったら コストはいくら、こういう配送だったらいくらという ことをやっています。
ようするに、コストオン方式の ビジネスモデルを完全に実現しています」 「これによって何が起こるかというと、取引にまつ わる疑心暗鬼がなくなるんです。
小売りさんがちょっ と気を抜くと、卸が高くもってくるんじゃないかとい う時代が長かったことは事実です。
しかし、そういう 価格交渉をする時間のムダ、コストのムダを考えてみ てください。
メーカーは販促金の精算や交渉に追われ ながら、卸にきて価格交渉をしては小売りさんに行く。
その結果を持って卸とまた相談し、再び小売りさんに 行く。
価格を決めるまでに、いったいどれくらい費用 をかけているのでしょうか。
この費用を日本の消費者 が払い続けてくれるとは、とうてい思えません」 ――しかし、そうしたムダを消費者が排除するために は、誰かがムダのないサプライチェーンを実現してく れなくては選択のしようがありません。
「その通りです。
しかし、ヨーロッパでもアメリカで も、そんな状態はとうの昔に終わっている。
オープン プライスとメニュープライシングに変わり、買うとき の条件しだいで価格が決まるようになっています。
ウ ォルマートであろうが、小さな小売業者であろうが、 同一の条件に基づいて判断できる。
今後は、日本の中 間流通も同じ方向に進まざるをえないはずです」 卸売業全業種ランキング 順位 会社名 売上高(億円) 業 種 メディセオ・パルタックHD 20,600※ 新しい業態卸 1 メディセオHD 16,658 医薬品 2 スズケン 13,300 食品 3 国 分 13,221 食品 4 菱 食 12,674 食品 5 アルフレッサHD 11,953 医薬品 6 日本アクセス 7,724 食品 7 日本出版販売 7,145 書籍・CD・ビデオ・楽器 8 トーハン 6,445 書籍・CD・ビデオ・楽器 9 東邦薬品 6,035 医薬品 10 伊藤忠食品 5,056 食品 11 加藤産業 5,002 食品 12 三井食品 4,940 食品 13 明治屋 4,539 食品 14 あらた 4,205 化粧品・日用雑貨 15 日本酒類販売 4,060 食品 16 パルタック 4,000 化粧品・日用雑貨 注1)※の売上高は2005年3月期連結(メディセオHD)と2005年9月期単体予想(パ ルタック)の合算数値 注2)スズケン、アルフレッサHD、東邦薬品、パルタックの売上高は、今期予想数値 出典)チェーンストアエイジ

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