ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年1号
特集
日系企業の国際物流 新興市場の物流事業モデルを模索

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2008  18 それが〇五年には一六%に低下。
代わって3PL(第 三者物流)へのアウトソーシングが一六・一%から三一 %と倍増している。
原材料取引でも買い手側から売り 手側に、物流の担い手は移っている。
また調査回答数 は少ないものの小売業でも3PLの利用は過去五年間 で五・九%から一七%に急進したという。
 一方の日本は国内貨物輸送量が既に頭打ちで、物 流市場の規模も縮小傾向にある。
荷主だけでなく日 系物流企業にとっても、中国内販市場は魅力がある。
手を上げれば、仕事はいくらでもある。
ただし、外 資系が新興国の国内物流で利益を上げるのは容易で はない。
実際、中国に進出した日系物流企業の大半 は国際フォワーディングで挙げた利益を、内販物流で 食い潰しているのが実情だ。
 現地の内販物流の売上高は一拠点当たり一億円か ら数億円規模に過ぎない。
日本人駐在員を一人派遣 しただけで、利益は飛ぶ。
しかも価格競争の厳しさ は国際物流の比ではない。
〇七年の一年間で中国の 実勢燃料価格は大幅に値上がりした。
しかし、運賃 への転嫁は全く進んでいない。
 荷主に値上げを要請すれば、その下をくぐる競合 がすぐに現れる。
中国のトラック運送市場は車両を 個人所有する無数の“一人親方”が底辺を支えてい る。
国営企業が払い下げた古い車両に、大幅な過積 載も厭わない無謀な運行でコストアップを吸収してし まう。
サービス品質を落とせない優良物流企業ほど 苦しい経営を余儀なくされる。
 そのため一定の企業規模を超えると民間の物流ベ ンチャーの成長がストップしてしまう。
P&Gの内販 物流のパートナーとしてノウハウを蓄積し、他の外資 系荷主に取引を広げて急成長を遂げた現地系の宝供 物流は〇七年にP&Gとの3PL契約を打ち切られ 新興市場の物流事業モデルを模索  中国の物流市場規模はGDPの伸び率を上回るペースで 成長を続けている。
ただし過当競争で現地系物流企業でさ え事業収益性は悪化する傾向にある。
日系物流企業が利益 を捻出するのは至難の業だ。
それでも中国市場は素通りで きないと判断した日系物流企業はリスク覚悟で内販シフト を進めている。
              (大矢昌浩) 物流市場規模は日本の一・五倍?  中国物流・調達連合会は二〇〇七年一〇月、中国 の物流市場が年間二兆元規模(約三〇兆円)に上っ ていると発表した。
日本の物流市場は現状で約二〇 兆円規模とされる。
中国はその一・五倍だ。
中国の 〇六年のGDPが二一兆元(約三二〇兆円)で日本 の六割程度であることに加え、中国ではいまだ自家 物流が大半を占めていることを考えると俄には信じ がたい数字だ。
 その原典となる同連合会の統計を見ると、物流市 場規模を示す〇七年の第3四半期までの「物流業増 価値」は前年比一七・六%増の一兆一三一一億元と なっている。
その内訳としては運輸業が八割を占め、 八三五七億元で前年比一六・六%増。
他の倉庫業、貿 易業、配送・加工・包装業、郵政業も、それぞれ前 年比で二桁以上の伸びを示している(図1)。
 この統計の信憑性について北京交通大学経済管理 学院の汝宜紅増値物流研究所所長は「少なくとも現 時点では最も権威のある統計数字であり、中国の物 流市場がGDPの伸び率以上の成長を続けているこ とは間違いない。
我々の調査でも荷主企業の物流ア ウトソーシングは急拡大している」と説明する。
 かつての中国では製造から物流、販売に至るサプ ライチェーンを国営企業がそれぞれ自前で運営してい た。
商取引は売り手市場で、買い手側が商品を引き 取りにいくのが常識だった。
その後、市場経済が浸 透し民間企業が台頭してきたことで商慣行は買い手 主導にシフトしている。
これに伴い物流のアウトソー シングが徐々に拡がってきた。
 汝所長の調査(図2)によると、一九九九年の時 点では完成品の二四・一%を買い手側が運んでいたが、 第2部内販シフト進める日系物流企業 解 説 19  JANUARY 2008 特集 た。
九八年に赴任した当初、同社は赤字続きで清算 寸前の状態だった。
中国で生産した商品を海外の消 費地に出荷するための在庫拠点という位置付けで拠 点を新設したが、輸出商品は増値税の還付の関係で 生産後すぐに出荷されてしまう。
保管ニーズなどな かった。
 背水の陣で内販物流にターゲットを転換した。
現地 系と競合する国内物流は当然、価格競争が激しい。
し かし川下の流通加工や温度帯管理など、他社が手を 出さない手間のかかるサービスに活路を求めた。
「摘 み取り式用のマテハンを手作りしたり、儲からないコ ンビニ物流をあえて受託して施設を一日二回転させ たり、現場で細かな工夫を積み重ねてノウハウの蓄積 と人材育成を進めた」と白部長。
人件費の割高な日 本人は使わず、現地化も徹底した。
 〇一年の中国のWTO加盟によって、その努力が 実を結んだ。
内販への本格参入を狙う外資系荷主を 中心に新規受託が相次いだ。
北京太平洋の業績は一 気に好転し、それ以降は年率二五%ペースで収益の 拡大が続いた。
現在、同社は約五〇〇人のスタッフ を擁し、年間約一億元(約一五億円)を売り上げる に至っている。
 同社の事業展開を伊藤忠では中国物流の成功モデ ルと位置付けている。
そのため白部長を本部に呼び 戻し、北京太平洋を含め中国に九社ある傘下の物流 現地法人の指揮をとらせている。
しかし「どこの国 でも国内物流は人間系の極めて泥臭い商売。
机の上 の計算だけではどうにも動かない。
拠点の数だけ現 場を動かせる人材を育てる必要がある。
それだけに 手間も時間もかかる。
北京太平洋のモデルを横展開 するのは、そう簡単なことはできない」と、白部長 は覚悟を決めている。
たもようだ。
 「もともと宝供はP&Gの物流を大幅なディスカウ ント料金で請け負っていた。
P&Gとの取引実績を 他の荷主の営業に利用する狙いだ。
しかし燃料高騰 などコストアップ要因に耐えきれず、値上げを申請し たが断られた。
P&Gは宝供のサービス品質自体に も不満を持っていたようだ」と関係者は説明する。
 もっとも中国は現在、空前の物流不動産ブームに 沸いている。
宝供のような有力物流企業には各地の 自治体から拠点誘致が集まるため、好条件で不動産 を取得できる。
それを資産運用することで、本業よ りもはるかに高い収益性を確保できる。
手間がかか り環境も悪化する一方の物流高度化を諦め、手っ取 り早く儲けられる商売にシフトする現地系物流企業 は後を絶たない。
 外資系物流企業による現地系の買収も進んでいる。
米フェデックスは〇七年、それまで中国市場の合弁相 手としてきた民間宅配会社の大田集団(DWTグル ープ)から、国際宅配便の集配機能と国内宅配便事 業を総額四億ドルで買収した。
これらの事業の年間 売上高は明らかにされていないが、四億ドルをずっ と下回る規模と推測されている。
中国の物流市場は 今やバブルの様相を呈してきた。
現場力の強化で利益を捻出  それに比べて、日系物流企業の内販物流進出の足 取りは極めて地味だ。
各社とも現地企業との競争を できる限り避けながら、ニッチなサービスで利益の出 る事業モデルを模索している。
 北京物流協会の副会長を務める伊藤忠(中国)の 白松剛物流部部長は〇七年六月まで伊藤忠傘下の北 京太平洋物流の総経理を約七年間に渡って務めてき 運輸業 倉庫業 貿易業 配送・加工・包装業 郵政業 増値額合計= 市場規模 8357 億元 539 億元 1343 億元 867 億元 150 億元 11311 億元 16.6%増 18.3%増 16.5%増 31.3%増 15.2%増 17.6%増 図1 2007 年第3 四半期中国物流総計 原材料取引の場合 図2 国内取引の物流の担い手 56% 46% 19% 18% 25% 36% 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 2005 1999 2005 1999 完成品取引の場合 31.0% 16.1% 53.0% 59.8% 16.0% 24.1% 供給者が納品3PLが納品 3PLが納品 購買側が引き取り 供給者と3PLが納品購買側が引き取り 事業増値額前年同期比 北京交通大学経済管 理学院の汝宜紅増値 物流研究所所長 伊藤忠(中国)の白松剛 物流部部長 JANUARY 2008  20 近鉄エクスプレス 車両二〇〇〇台を投入し配送網  近年、中国国内物流への積極的な展開が目立つ のが近鉄エクスプレス。
中国での中核会社の北京 近鉄運通運輸有限公司(北京近鉄)は二〇〇七 年十二月、上海・浦東新区に倉庫面積四万三六 〇〇平方メートルの国内物流専用倉庫を開設した。
自社保有ではなく賃借だが、設計段階からかかわ ることで設備を近代化。
これまで分散していた倉 庫を集約し、業務効率の向上を図る。
 高床式で荷役機器なども欧米や日本と同様のレ ベルのものを導入。
荷主に配送情報を提供するため、 コールセンターも設置した。
流通加工やクロスドッ クの機能を備え、トラックのほか、鉄道、航空輸 送につないでいる。
 同倉庫では日系、欧米系荷主企業の貨物を中心 に薄型テレビやデジタルカメラ、プリンターと補修 部品などを取り扱う。
〇八年から本格稼働する予 定だが、需要が多いためスペース不足も予想され るという。
 配送体制も強化する。
現在、上海地区での自社 車両は一一六台だが、三年以内に倍増させる。
市 内配送向けの小型車両を拡充するとともに、長距 離路線での自社運行と大型車両への切り替えを進 めていく。
 北京近鉄の車両運行台数は全国で二〇〇〇台に も上る。
このうち自社車両は九五〇台。
うち、国 内輸送用は全国で二九五台だ。
国内物流業務にか かわる人員は一四七九人、拠点は四三拠点に達し た。
こうした大規模な投資を行っている背景には、 中国国内の消費の拡大に伴い「内販物流の物量は どんどん増えている」(北京近鉄の稲村寿通董事長) 一方、ローカル企業がなかなか育たず、サービス レベルが上がらないことがある。
 単に利益を追求するだけなら、大きな投資を伴 う近代的な設備は要らず、オペレーションに人手 をかけ、コストを抑えればいい。
しかし、リード タイムの短縮など今後の内販物流に対するニーズ の高度化を見越し、日系物流企業として高付加価 値なサービスを提供するため、大型倉庫の建設を 決定、自社運行の拡大も推進する。
国内物流のコ ストは上がる一方だが、設備と管理体制を充実さ せて品質の向上を図り、差別化していく戦略だ。
 北京近鉄は今では国際、国内の物流を行う総合 物流会社だが、ライセンスの関係もあり、もとも とは国内物流から業務をスタート。
以来十一年間、 国内物流に取り組んできた。
「モノが動いている ということは、ビジネスチャンスがある」(同)と の考えで、将来の市場拡大に備えている。
 「中国でも国内物流市場は必ず育つ。
設立以来 国内物流に取り組んできた当社なら、やりきれる と考えている」と稲村董事長。
将来国内物流で利 益を出していくためにサービスレベルの向上に力 を注いでいる。
「単純な3PLではなく、中国で も当社が国内物流を企画・提案、運営していくの が目標」(同)だ。
伊藤忠商事 「康師傅」の物流を3PL化  伊藤忠商事は〇四年、台湾の頂新国際集団傘 下で中国最大手の食品事業グループ、康師傅控股 有限公司の物流子会社、頂通(開曼島)控股有 限公司に資本参加。
国内ネットワークを一気に拡 大した。
 「康師傅」は一九九〇年代から事業を拡大し、 北京近鉄運通運輸の稲村寿通 董事長 4万3600?の国内物流専用 倉庫を新設し、設備を近代化 21  JANUARY 2008 特集 即席麺で中国最大手の規模に成長、飲料でも一、 二位を争う規模を誇る。
大手小売業の納品ルール は厳しく、慣れない物流業者では対応が難しいた め、物流子会社の頂通を通じて自社物流網を構築 してきた。
 頂通は地域統括会社として瀋陽頂通物流有限 公司、北京頂通物流有限公司、上海頂通物流有 限公司、重慶頂通物流有限公司、広州頂通物流 有限公司を設立し、その傘下に支店を整備。
頂 新グループの中で主に地域の配送拠点から店舗へ の納品までを行い、全国ネットワークを完成させ ていた。
 一方、生活消費財の市場は沿岸部から内陸部に 拡大し、物流ニーズも高まっているが、全国をカバー する3PLは少ない。
伊藤忠商事は頂通に五〇% を出資し、自社のノウハウと頂通のネットワーク を合わせ、全国規模での3PLを開始した。
〇四 年時点では頂通の売上の九〇%が康師傅向けだっ たが、今では四〇%になっている。
それだけ外部 荷主が増えた。
日系顧客の売上高比率は現在二五% で、このほか欧米系、中国系、アジア系企業を顧 客に抱える。
 頂通の自社拠点は六四拠点。
チベットを除く全 省に展開する。
倉庫保管、配送に加えて流通加工 も行い、従業員は一八〇〇人、総倉庫面積は三万 平方メートルの規模だ。
取扱品目は食品、日用品、 化粧品など。
一日当たりの配送量は六〇万ケース、 納品は五九〇〇件に達する。
 納品先は販売代理店やハイパーマーケット、スー パー、コンビニや小規模店舗などで、「ほぼすべ ての流通チャネルをカバーしている」(頂通〈開曼 島〉控股有限公司の藤村俊樹総裁)。
各チャネル の納品ルールに精通しているため、「例えば顧客 が沿海部の基幹市場から内陸市場にまで販路を広 げる際、SCM戦略を変更してもそれに応えられ る」(同)のが強みだ。
 車両は自社と定期傭車を合わせて一〇〇〇台。
各都市の市内への配送が多くを占め、地域ごとに 規制が異なるため傭車は多いが、TMSにより自 社で配車と輸送管理を行い、TMSに入力した作 業結果情報をKPI(業績評価指標)管理にも 活用し、品質を管理している。
定時納入率は九八 〜九九%、破損はほぼゼロに近いという。
 幹線では華東地区と華南地区で自社車両によ るJIT便(定時輸送サービス)を提供しており、 今後は幹線輸送の機能を強化し、自社専用の幹線 便を増やして品質の向上とコスト合理化に取り組む。
 グループ内での連携も強化している。
伊藤忠商 事は中国で「伊藤忠集団中国物流網」のブランド のもと、主にフォワーディングを行うアイ・ロジ スティクスの現地法人を含め九社を展開する。
こ の中で、例えば総合物流を展開する北京太平洋物 流は生産財とアパレル物流に強みを持つが、頂通 はアパレルをほとんど取り扱っていない。
今後は、 百貨店への共同納入などを検討し、配車の効率化 とサービス向上を図っていく考えだ。
 品質を向上する上で重要なのが人材だ。
人材獲 得の観点からも、充実した育成制度を設けている。
日本的な物流管理とサービス、内部統制などにつ いて教育するため、日本での研修を行うほか、中 国では年二回、全国からグループの社員五〇人を 集めた研修を実施。
ナショナルスタッフから幹部 が育ち、伊藤忠商事本社に転籍する社員もでるな ど成果が上がっている。
佐川急便 中国郵政と組み全土で代引配送  佐川急便の持株会社・SGホールディングス (SGH)傘下の佐川グローバルロジスティクスと、 中国保利集団傘下の保利科技との合弁会社・保利 佐川物流は、中国全土の二〇〇〇都市を対象とし 頂通(開曼島)控股の藤村俊 樹総裁 北京太平洋物流ではピース ピッキングや流通加工など内 販向けの川下物流も手掛ける JANUARY 2008  22 た代金引換(代引き)輸送サービスの準備を進め ている。
これに先立ちSGHグループの佐川グロー バルロジスティクスは〇六年十二月に中国郵政傘 下の中国速逓服務公司(中速)と国際宅配で業務 提携を行っている。
その提携範囲を中国国内の宅 配便事業に拡大することを検討している。
 保利佐川が集荷した日系荷主の荷物を中速が配 送するかたちで全国の配送ネットワークを手当す る。
佐川グローバルロジスティクスの鳥海志郎経 営企画部中国担当部長は「日系荷主企業の内販 事業は債権回収が最大のネックになっている。
債 権回収問題さえクリアできれば、荷主は商圏を一 気に拡大できる。
中国全土を対象とした代引き輸 送サービスで、そうしたニーズに応えていきたい」 という。
 中速は中国郵政のEMS(国際宅配便)運営 会社であると同時に、国内宅配便市場の事実上の 最大手でもある。
その配送インフラは日本の宅配 便と大差のないレベルにあるとされる。
車両には 携帯端末を配備し、配送完了情報を無線で飛ばす 機能も備えている。
そのデータも含めた貨物のステー タス情報を保利佐川の情報システムを通じて荷主 に提供する。
 現在、中速は国内に約五万台の車両を擁し、国 内二〇〇カ所の都市で翌日配達を実現している。
中国郵政傘下にあるため、配送車両は都市部の通 行規制や駐車規制などの制約も受けない。
この配 送網を利用することで、保利佐川は日系荷主から 全国全土の内販物流を一手に引き受けられる体制 を整える。
 中速側の提携の狙いも日系荷主の獲得にある。
中速の代引き宅配便の決済額は〇六年で既に八〇 〇億円規模に上っている。
〇七年は一〇〇〇億 円規模に達する見込みだ。
ただし代引き宅配便は 返品や受け取り拒否などの消費者問題が絡むため、 国営の中速としては荷主の審査基準を厳しくせざ るを得ない。
そのため代引きを利用できる荷主の 数はこれまでごく限られていた。
日系荷主の審査 や与信を保利佐川に任せることで、荷主数の大幅 な拡大を図る。
 鳥海部長は「中速の代引き宅配は通販向けのB to Cがメーンとなっているが、今後はそれをB to Bにも拡げていきたい。
ベンダーと小売店の取引 に小口の代引き輸送サービスを使うことで、ベン ダー側では債権回収を心配することなしに販路を 拡げられる。
小売店側でも店頭在庫の最小化が図 れる」と意気込んでいる。
日本通運・三菱商事 上海浦菱で内販物流に対応  上海浦菱儲運有限公司は三菱商事が九六年に設 立したトラック業者。
〇五年、三菱商事と日本通 運が中国国内物流で提携したのに伴い、現在はそ の中核となって活動している。
〇五年に総経理と して日本通運から派遣された波多野守一氏に続き、 このほど日本で陸運を担当していた金岡英幸氏が 着任。
運行体制の強化・拡充を進めている。
提携 後、八〇都市に向けた定期混載便を開始し、〇七 年九月には幹線ルートで往復混載サービスを始めた。
 日本通運が経営に参画したのをきっかけに、工 場間物流にも業容を拡大し顧客基盤を拡充してい るが、設立時から内販物流向けの配送網を築いて きた。
内販物流はエリア、品目ともに複雑なため 容易ではない。
例えば日用雑貨ではペンキが危険 品に含まれることもあり、アルコール分を含むも のや液体貨物は危険防止と専門運送業者の保護の ため、規制が厳しい。
「まず運べるかどうかを詳 細に調べることから始まる」(波多野総経理)が、 どこまで明文の規定があるかが不明な上に、各省 によって規制内容は異なるという問題もある。
 各省ごとに車両の登録税も異なるため、一台当 たりのコストは変わってくる。
各都市では市街地 に配送するための通行証が それぞれ必要だ。
「運 送業は国としては最も保護したい産業。
小規模な 地場の運送業者が守られるような仕組みになって いる」という。
このため、外資系物流業者はロー カル企業との価格競争にならないよう、差別化し なければならない。
 上海浦菱はデジタル関連製品、薄型テレビや事 務機器、日用雑貨、光学機器、タイヤなどを取り 上海浦菱儲運の波多野守一総 経理 上海浦菱儲運の金岡英幸部長 特集 23  JANUARY 2008 扱い、確実性、安全性などの品質を保証すること で外資系としての差別化を図っている。
例えば確 実性。
ローカルのトラック業者は貨物が少なけれ ば配送を断ることもあるというが、上海浦菱は荷 主の立場で安定輸送に努めている。
 「協力企業とうまくパートナーシップを組む」(金 岡部長)ことで、梱包にも傷が付かないように管 理するなど、ダメージを防止。
拠点には自社の人 員を配置し、運行と追跡情報の管理を行っている。
問題が発生しても迅速に対応する体制を整え、「安 心を裏付けとしたサービスを提供している」(波 多野総経理)。
 拠点は上海本社を含めて二一拠点。
上海での自 社車両は六〇台、全国では傭車を含めて三〇〇〜 四〇〇台を運行し、月間一〇〜一五万立方メー トルの貨物を取り扱う。
各地のハブ拠点からの二 次配送で協力企業を選定する際には、?会社の規 模、?機能的に会社が動いているかなどの社内体 制、?どの路線に強いか──などを調査する。
営 業許可証のコピーや税務署への届け出などもチェッ クした上で協力企業を決定し、ネットワークを運 用している。
住友商事 日本の通販物流を現地に移植  住友商事は中国での戦略事業の一つとして、通 販物流を本格化させている。
中国の購買形態は現 物を確かめてから買う“現物主義”が基本で、カ タログ販売やテレビ通販は成り立たないといわれ てきた。
しかし、こうした購買形態は変わりつつ ある。
通販市場は着実に拡大し、単価も上がって きているという。
日系の通販会社も事業を開始し 始めている。
 住友商事は日本国内でもテレビ通販やネット通 販などの物流業務を一括受託し、物流子会社の住 商グローバル・ロジスティクスが千葉県習志野市 の茜浜物流センターをハブに検品や返品業務、カ スタマーサービスなども含めたフルフィルメント業 務を行っている。
 茜浜物流センターでは〇七年に第二期工事が竣 工し、延べ床面積を約八万一〇〇〇平方メートル に拡大したが、現在ほぼ満床状態。
中国での中核 会社の一社、住商国際物流(上海)有限公司の 藤原仁董事総経理は「我々はB to Cの物流に実績 ある唯一の商社」(住商国際物流〈上海〉有限公 司の藤原仁董事総経理)とアピールする。
 こうした日本国内でのノウハウを中国に移植し、 B to Cの物流業務と小売店への個別配送を実施、 「荷主が販売を伸ばすための物流機能とノウハウを 提供している」(藤原董事総経理)。
 その中心となるのが〇六年、上海に開設した 一万五〇〇〇平方メートルの青浦物流センターだ。
日本国内で利用しているWMSを導入し、情報シ ステムを駆使して集荷から検品、仕分け、ピッキ ング、ラベルの貼り付けなどの流通加工と梱包を 行い、消費者や店舗向けに配送している。
 注文に応じて一つの配送先に複数の商品を詰め 合わせるという高度なオペレーションを行い、通 販向けでは三〇〇〇〜五〇〇〇SKUを取り扱う。
店舗向けを合わせた一日当たりの取り扱いは四〇 〇〇〜五〇〇〇ピース、配送先は二〇〇〇〜二五 〇〇件に上っている。
 配送先には特に制限を設けず、中国全土を対象 としている。
個々の荷主によってリードタイムの 基準は異なるが、午前中に受注した商品について は上海市内であれば最短で午後には配送する。
上 海近郊は一日、華南地域は三〜四日、重慶は一週 間弱。
緊急のものは航空輸送と鉄道輸送で対応する。
 住友商事は鉄道輸送に強みをもつ中国の大手物 流業者、遠成集団と提携している。
遠成が運行し ている高速鉄道サービスも活用可能だ。
配送に関 しては佐川急便などとの合弁会社、上海大衆佐川 急便物流有限公司と協力。
上海市内では代引きも 行っている。
このほか、配送地域と商品特性によっ て選定した複数の外注先と連携し、配送網を組み 立てている。
 〇七年には住商国際物流が普通貨物の国内輸 送免許を取得し、中国国内輸送の元請けとなる体 制も整えた。
今後は自社車両による配送も手掛け、 華南や華北、内陸部のグループの現地法人との連 携を強化し住友商事グループとしての一貫サービ スを提供する。
 通販物流のニーズは荷主によってさまざまだ。
「顧 客の条件をいかに満たしていくかを考え、商社系 物流会社としての機能を提供していく」と藤原董 事総経理。
青浦物流センターでは返品処理業務の 開始やコールセンターの設置などを検討し、茜浜 住商国際物流(上海)の藤原仁 董事総経理 JANUARY 2008  24 物流センターと同様に受発注から返品まで一貫し た通販物流サービスを行う考えだ。
青浦物流セン ターの規模も段階的に拡大する計画で、将来的に は六万平方メートルへの拡張を想定している。
 青浦物流センターは国際輸送にも対応している。
小口貨物のCFS(コンテナ・フレート・ステー ション:コンテナ一個に満たない貨物を集め、コ ンテナにバンニング/デバンニングする)としての 機能を備え、高速RORO船により日中間輸送に も接続。
グループとして国際輸送と日中双方の物 流センターにより、グローバルSCM構築のため のインフラ、機能を整えている。
キユーソー流通システム 三温度帯インフラを構築  キユーソー流通システムは〇六年、上海に中国 初の現地法人、上海丘寿儲運有限公司をグループ の全額出資で設立した。
常温の配送センターに続き、 〇七年一〇月には冷蔵・冷凍の低温センターを開 設。
常温・冷凍・冷蔵(チルド)の三温度帯の食 品物流事業を本格展開する体制を整えた。
 事業の柱は二つ。
冷凍・冷蔵物流とタンクロー リーによる食品原料の輸送だ。
親会社のキユーピー 向けには杭州工場への原料輸送と杭州から上海市 場向けの配送、杭州、南京、成都、重慶の代理 店への輸送を行いマヨネーズとジャムを取り扱っ ている。
低温センターが稼働し、アセットが揃っ たため、今後は上海を中心に日系の食品メーカー などの物流受託を広げ、外販比率五割以上を目指す。
 中国の食品輸送では一部を除き温度管理が確立 されていない。
牛乳も常温輸送が可能なロングラ イフ牛乳が主流だ。
しかし、海外での生活経験が ある中国人や外国人を中心にチルド牛乳の需要は 拡大している。
冷凍食品の市場も着実に育ってい るが、冷凍・冷蔵の食品に対応した輸送体制が整 備されていない。
低温物流へのニーズはある。
 品質管理の厳しい日系メーカー向けに冷凍・チ ルドの保管・輸送インフラを提供し「中国国内の 低温物流をきっちりと行っていく」(上海丘寿儲 運有限公司の岡田宏郎董事長/総経理)。
物流セ ンターを核に集荷と保管、届け先までの幹線輸送 や配送を手掛け、中国国内に限らず、輸出入貨物 も取り扱っていきたい考えだ。
上海地区で納品先 や温度帯、種類が同じ貨物を混載していく仕組み を作り、共同配送に向けた取り組みも進める。
 そのために、上海でも日本国内同様のアセット を整備した。
低温センターは〇℃〜五℃、五〜一 五℃、マイナス一八℃の温度帯管理を行い、冷凍 倉庫の面積は一六〇〇平方メートル、冷蔵倉庫は 七〇〇平方メートル。
常温倉庫一四〇〇平方メー トルと合わせ、保管能力は三七〇〇平方メートル となる。
 車両は常温車が五台、冷凍・冷蔵車が六台、タ ンクローリーが五台の計一六台。
特に冷凍・冷蔵 車の内部は可動式の仕切りで区切ることができる ため、冷蔵、冷凍貨物を同時に輸送可能だ。
タン クローリーのタンクはステンレス製を採用している。
「台数は少なくともいいものを揃えている。
他社 に負けない品質を強みにしていきたい」と岡田董 事長/総経理は抱負を語る。
 これらのハードを活かすために、ソフト面にも 力を入れている。
グループによる独資で設立した ため、二四時間・三六五日のサービス提供も可能 だ。
センターのオペレーションや配送についても 作業時間を記録し、効率向上につなげている。
加 えて、冷凍・冷蔵車三台にGPSを試験的に搭載。
温度管理と運行管理の体制を強化するため、デジ タルタコグラフも導入する方針だ。
上海丘寿儲運の岡田宏郎董事 長/総経理 上海市内の低温センターと車 両。
日本と変わらない設備 を備えた 25  JANUARY 2008 特集 双日 低温物流で食品卸事業に斬り込む  〇七年二月、双日は北京三元集団との合弁で三 温度帯の物流インフラを擁する北京三元双日食品 物流(三元双日)を設立した。
同一〇月から営業 を開始している。
三元双日の西村卓美董事副総経 理は「当社は卸機能を持った低温物流企業だ。
品 質の高い三温度帯物流に与信や決済機能、あるい は海外からの調達機能をプラスすることで付加価 値のあるサービスを提供していく」という  合弁相手の北京三元集団は乳製品や加工食品の 製造・販売のほか、北京マクドナルドや北京スター バックスなどの外食事業を傘下に持つ国営企業で、 北京周辺に二〇〇〇カ所以上の販売先を持ってい る。
この販売・物流チャネルを食品流通のプラッ トフォームに改造して日系食品メーカーに提供する。
 三元双日の資本金は六〇〇〇元(約九億円)。
うち五一%を三元集団が、四九%を双日が出資し た。
現在、三元双日は北京市内北部の通州区に三 温度帯管理機能を備えた延べ床一万平方メートル の物流センターを建設中で、北京オリンピックの 開催される今年夏までには稼働させる予定だとい う。
保有車両台数は現在約一三〇台。
今後、段 階的に配送車両を増やしていく計画で、四〇〇台 分以上の市内通行許可証を確保している。
 日系企業が価格競争の厳しい中国の国内物流事 業で利益を生むのは容易ではない。
とりわけ双日 のような総合商社にとって、国内物流はメーンの ビジネスにはなり得ない。
しかし今後の成長が確 実な中国の国内食品卸売市場に本格参入するに は物流インフラが不可欠。
その点、現地の物流企 業のサービス品質はまだ信頼できるレベルにない。
教育するにも時間がかかる。
一方の外資系物流企 業ではコスト高についてしまうと判断した。
 ここ数年、中国の一般家庭には冷蔵庫や電子レ ンジが急速に普及している。
冷凍食品市場の拡大 は必至だ。
しかし定温物流のインフラは絶対的に 不足している。
温度管理を必要とする食品に荷物 を絞り、卸機能まで付加することで、倉庫や車両 などへのインフラ投資を回収できると弾いている。
日新 高級食材を日本から混載輸送  「ローカルのフォワーダーはシステム面での対応 を含めて頭角を現してきている。
差別化のポイン トは海外拠点を活用した中国発着の国際物流を取 り扱い、顧客のドアからドアまでサービスを提供 すること」と、日新上海事務所の小澤功司所長 は語る。
現在の拠点は九社・七九拠点、人員は一 三〇〇人(香港を除く)。
日本人駐在員は五二人だ。
日本を含めたグループ全体の事業観点から、中国 事業に取り組む。
中国国内では〇五年、シノトラ ンスとの事業協力で合意し合弁会社を設立したこ とにより、シノトランスのネットワークも全国的に 活用可能になった。
また、現地法人九社の連携を 強化し、幹線輸送や華東地区でのシャトル便の定 時運行を行うなど、物流機能を強化している。
 家電や機械類、化学品などの取り扱いに加えて、 現在注力しているのが食品関連。
〇七年九月から は、日本から上海向けの生鮮食品を対象とした海 上混載便「フード・エクスプレス・サービス」を 開始した。
リーファーコンテナを利用し、上海で 提携する冷凍・冷蔵倉庫でデバンニング後、要望 により代理通関や配送も行う。
日本の食材を上海 のスーパーや卸向けに販売するための小口輸送は 航空輸送が主でこうしたサービスは珍しく、引き 合いは多いという。
食品分野では今後、菓子類や 飲料の共同配送にも取り組んでいく方針だ。
(梶原幸絵) 日新上海事務所の小澤功司所 長 北京三元双日食品物流の西村 卓美董事副総経理 写真上の三輪車は伝統的な牛乳配達に 使われているもの

購読案内広告案内