ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年1号
特集
日系企業の国際物流 ロシア向けルートのインフラ事情

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

上田 誠 三井住友海上火災保険 海損部 物流安全サービスグループ 課長代理 ロシア向けルートのインフラ事情  BRICsの一角を占めるロシアは近年市場としての注目を集める ようになってきた。
経済面での急成長と日系企業の進出増加により、 今後は製品だけでなく多くの部品、部材もロシアに輸送されるこ とが予想されている。
2007年8月から9月にかけ実施した現地調査 に基づき、ロシア向け輸出部品・部材にかかわる物流ルートの実態、 物流にかかわるリスクとその対策について解説する。
シ経由でロシア国境を通過するルートなども関心が高 まっているという。
 ただ調査検討時点の情報では、シベリアランドブリ ッジは中国・韓国企業が中心で日系企業の利用が少 ないこと、日系企業にとってウクライナやベラルーシ 経由の物流はまさにこれから検討ないし活用が開始 される段階であったこと等の背景より、より多く活 用されているフィンランドルート、今後活用が見込ま れるエストニアルート、そしてサンクトペテルブルク港 を活用する直送ルートというフィンランド湾を中心と した三ルートに絞り調査を実施した。
1 フィンランドルート ?フィンランドの港湾  最近はロシア国内でも大型倉庫が相次いで建設さ れており、港湾設備の整備なども順次行われている 状況にあるものの、急増する物流量に十分に対応で きる状況とはいえない。
通関面での事情もあり、従 来から行われていたフィンランド経由の物流(フィン ランドの港湾で荷揚げし、トラックでロシア国内に製 品・部品を輸送する)は今後も重要なルートの一つ であり続けるものと考えられる。
フィンランド湾に面 したフィンランドの港湾は、西からハンコ港、ヘルシ ンキ港、コトカ港、ハミナ港と四つの主要港があり、 各港湾の特徴は次の通りである。
■ハンコ港  フィンランド最大の完成車取扱い港。
年間四〇万台 以上の完成車が取り扱われ、約半数はロシアに輸送 される。
日本、韓国、米国、ドイツ、フランス、イ タリアなど多くの車種が取り扱われているが、収容 能力の限界が近いとコメントする港湾関係者もいる。
JANUARY 2008  38 1 ロシアの経済事情と日系企業の進出  ロシアの輸出総額の四割は石油と石油製品が占め ている。
このため近年の原油価格高騰の恩恵を受け、 経済危機に直面した一九九八年以降、毎年平均六% を超える経済成長を達成し、この傾向は当面続くも のと考えられている。
著しい経済成長を背景に、高 級消費財である完成車や家電製品の消費は好調で、 特に最大消費地のモスクワ(人口約一〇四〇万人: 国内第一位)とサンクトペテルブルク(人口約四六〇 万人:同二位)近郊については多くの企業が注目し ており、ロシア関連の報道を目にする機会も格段に 増加している。
これら製品を得意とする日系企業の 輸出額も大幅に拡大している。
 二〇〇四年の日本からロシアへの輸出額は三四〇 〇億円であったが、二年後の〇六年には八四〇〇億 円と二・四倍に急増し、〇七年は一〜一〇月実績で 既に一兆円を超過するなど、拡大基調が続いている。
輸出額の急増だけでなく、自動車関連産業を中心に サンクトペテルブルクやその近郊への進出が急速に進 展していることから、今後は多くの部材、部品もロ シアに輸送されることが予想されている。
2 ロシア向け物流ルートの現状  製品や部品をロシアに輸送する際の物流ルートとし て以前、日本で最もよく知られていたルートは、シベ リア鉄道によって極東ロシアからモスクワやサンクト ペテルブルクまで輸送する「シベリアランドブリッジ」 と思われる。
最近ではウクライナのオデッサ経由でロ シア国境を通過するルートや欧州域内の生産拠点・物 流拠点からトラックで製品・部品を輸送し、ベラルー 第6部 特集 ■ヘルシンキ港  フィンランドの中心港であり、コンテナ、ばら積み 貨物、完成車など多様な製品を取り扱っている。
た だ都心部に近く、敷地を拡張できる後背地がないこ とから、貨物取扱量の増加に対応するため新港を建 設、〇八年末から稼働する予定となっている。
■コトカ港  近年コンテナおよび完成車の取り扱いが急増して おり、コンテナ取扱量はヘルシンキ港を抜いてフィン ランド第一位となった。
約五二〇ヘクタールを占める 広大な敷地を生かして完成車ヤードを増設するなど、 急速に成長している。
■ハミナ港  コンテナ取扱量は現在フィンランド第四位である が、一〇年までにコンテナヤードや完成車ヤードを拡 張する予定であり、隣接するコトカ港、エストニアの ムーガ港と激しい競争を行っている。
 フィンランド各港湾のファシリティーは比較的充実 しており、また、急成長するロシアマーケットやそれ に伴って増加する物流をにらんだ開発計画を推進し ていることがうかがえる。
フィンランドは欧州域内で も有数の先進国であり、労働者の高い権利意識に基 づく港湾ストライキの発生(関係者の説明によれば 近年は若干荷役が遅れる程度という)やロシア、エ ストニアに比べ高い賃金(コスト面の優位性はない) など課題がない訳ではないが、今後もロシア向け物流 のメインルートとして活用されるものと考えられる。
?フィンランドの道路状況  走行したフィンランド湾沿いの幹線道路の状況につ いては特段大きな問題はなく、日本の高速道路と同 じような感覚で走行することができる。
橋梁工事や 道路舗装等の作業やタイヤのバースト片、小動物との 接触痕などを時折見かけることあるが、いずれも日 本の道路でも散見されるものであり、物流上特段大 きなリスクがあるとは思われない。
冬季には除雪作 業や凍結防止剤の散布なども行われており、比較的 トラックが走行しやすい環境が整っているものと考え られる。
?フィンランド/ロシア国境の状況  ハミナ港から国道七号線(E 18 )を約三〇キロメー トル東に進むとフィンランド/ロシア国境に到着する が、国境手前約一〇キロメートル付近より、国境通 過の手続きを待つトラックが車列を作って待機してい る状況に遭遇する。
コンテナ車、完成車を輸送する キャリアカー、欧州域内輸送で通常使用されるカバー タイプ(ターポリンタイプ)のトラック、小型のボッ クスタイプトラックなどさまざまなトラックが待機し ている。
ハミナ港から国境までは片側一車線の道路 が続くが、トラックの渋滞を想定し、ロシアに向かう 右側車線のみ多くの箇所で道路の拡張工事が行われ ていた。
国境を通過すると、フィンランドで積み荷を 受け取るため、ロシアから出国する手続きを待つトラ ックが反対車線に待機していた。
 多くのトラックが国境を通過するために待機を余儀 なくされているが、その原因はロシア側のシステムイ ンフラが老朽化していること、税関職員が少ないこ と、提出書類が多岐に渡り複雑であること、などに あるといわれている。
クリスマスシーズン前の十一月 から十二月にかけては製品の輸送量が一年の中で最大 39  JANUARY 2008 フィンランド税関舎 ロシア エストニア ラトビア フィンランド サンクトペテルブルク港 ウスチルーガ港 シラマエ港 ノブゴロド モスクワ ヘルシンキ港 コトカ港ハミナ港 ハンコ港ムーガ港 パルディスキ港 になるが、三〇キロメートルとも五〇キロメートルと もいわれるトラックの車列ができるといわれており、 国境を通過するだけで三日程度かかるケースもあると コメントするトラックドライバーもいた。
2 エストニアルート ?エストニアの港湾  サンクトペテルブルクまでの距離の近さを生かして エストニアの港湾で荷揚げをし、トラックでロシア国 内に製品・部品を輸送するエストニアルートが近年注 目されており、特に欧米企業を中心に利用が広がっ ている。
フィンランド湾に面するエストニア主要港湾 は西側からパルディスキノーザン港、パルディスキサ ウス港、ムーガ港、シラマエ港。
各港湾の特徴は次の 通りである。
■パルディスキノーザン港  ロシア系商社によって運営されており、完成車や ばら積み貨物などが取り扱われている。
敷地面約二 〇ヘクタールと港湾規模は小さく、荷役機器も十分 ではないため、現時点では一般貨物の取扱量を急増 させるのは難しい。
■パルディスキサウス港  タリン港湾局の管轄で運営されており、完成車や 鉄スクラップ、木材などが取り扱われている。
敷地面 積は約五〇ヘクタールと小さいが、将来的な開発計画 もあり、完成車荷役の中心港として成長すると考え られる。
■ムーガ港  タリン港湾局の管轄で運営されているエストニア最 大のコンテナ取扱い港であり、近年取扱量の増加が著 しい。
フィンランド湾対岸のハミナ港と同じく前年比 二〇%以上の増加率となっており、エストニアルート の主要港として成長する可能性が高い。
■シラマエ港  シラマエ港湾局の管轄で運営がなされており、ロ シア国境まで二七キロメートルとロシアに最も近い場 所に位置する港湾。
しかし、現在は化学品と木材の 荷役が中心で、敷地の大半は開発途中である。
開発 が終了すれば、ロシアに近い立地条件を生かしエスト ニアの主要港となるものと考えられる。
 エストニア各港湾のファシリティーは必ずしも十分 とはいえないが、フィンランド同様急成長するロシア マーケットやそれに伴って増加する物流をにらんだ開 発計画を推進していることがうかがえる。
〇七年四 月のレーニン像撤去問題でロシアとの政治的緊張が高 まる状況もあったが、エストニアは元来ロシアとの経 済的な結びつきが強く、人口の少ない同国の政策と して、ロシアマーケットをにらんだ物流に力を入れる ことが示されている。
フィンランドよりも優れたコス ト面の優位性や官民一体となった貨物誘致の取り組 みが成功すれば、ロシア向け物流ルートの中でメイン ルートの地位を築いていくものと思われる。
?エストニアの道路状況  ロシア向けトラックが走行する基幹道路はムーガ港 やシラマエ港が面する国道一号線(E 20 )である。
照 明設備やガードレールが少ないものの、一部を除い て舗装状態は良好だ。
まれに大鹿が道路上を横断し、 トラックと衝突事故を起こすケースはあるようだが、 JANUARY 2008  40 フィンランド税関 舎手前では、待機 するトラックの大 渋滞が発生 シラマエ港の開発用地 エストニア最大のコンテナ港、 ムーガ港 パルディスキノーザン港。
完成車やば ら積み貨物の取り扱いが中心 特集 1 ロシアの港湾 ?サンクトペテルブルク港  サンクトペテルブルク港はロシア最大の港湾であり、 フィンランド湾に面する港湾の中でも最大の貨物取 扱量を誇る。
港湾は大きく分けて、第一貨物地区か ら第四貨物地区および木材港の五つに分かれている。
五つの地区の一つ、第三貨物地区にあるFCT(フ ァーストコンテナターミナル)では同港全体で扱われ るコンテナ(〇六年で一四五万TEU)の約三分の 二が取り扱われている。
ヤード自体は比較的良好な 状態にあり、通関検査も屋根のある場所で行われて いるが、税関職員がカッターをもって無造作にカート ンを切り裂いていく状況も散見されるなど、貨物の 安全という観点からはまだまだ十分とはいえない状 況といえる。
サンクトペテルブルク港においても、物 流の増加を背景にコンテナ取扱量が急増しているため 通関に時間がかかり、引き取りまで三〜四日かかる ケースも珍しくないとのことである。
 同港第一貨物地区や第二貨物地区ではコンテナの ほかに、木枠梱包された大型機械や鋼材などの一般 貨物も取り扱われているが、ヤードは汚く、舗装状 態もかなり悪い。
雨濡れ注意のケアマークが施された 機械設備が屋外ヤードに長期間放置され、雨ざらし で破損した木枠梱包内の設備機械に錆損が発生して いる状況を見るだけでも、荷扱いが十分ではないこ とが理解できる。
港湾内でトラックが走行する道路も 全般的にメンテナンスが十分ではないが、第四貨物地 区の一部では、フィンランド資本によって完成車専用 ヤードが新設されるなど変化がみられる区域もある。
?ウスチルーガ港 41  JANUARY 2008 フィンランド同様、冬季には除雪作業や凍結防止剤の 散布などが行われており、比較的トラックが走行し やすい環境といえる。
?エストニア/ロシア国境の状況  シラマエ港から国道一号線(E 20 )を約三〇キロ メートル東に進むとエストニア/ロシア国境に到着す る。
国境手前約七キロメートル付近より、国境通過 の手続きを待つトラックが車列で待機していた。
フィ ンランド同様、コンテナ車、キャリアカー、欧州域内 輸送で通常使用されるカバータイプのトラック、小型 のボックスタイプトラックなど多様なトラックが待機 している。
 国境の都市ナルバは古城の美しい観光地でもあり、 トラックの渋滞が美観上問題となったことから、〇 七年四月、エストニア政府は二〇〇台程度のトラック が駐車できる専用駐車場を設けた。
しかし、増加す る物流と国境通過手続きの遅延により、待機するト ラックを収容しきれず、道路上でのトラック待機が依 然として続いている状況にある。
エストニア政府は 迅速な越境を推進しているが、ロシア政府関係者が 「一日に国境を通過できるトラックは八〇台」と語っ たとの報道があったように、エストニア国境もフィン ランド国境と同様の問題を抱えているといえる。
国 境を通過した後のロシア側の状況も同じである。
待機 する車輌が少ない場合でも「国境を通過するのに二 〜三日程度かかるのが通常、最大では九日間待機し た」とコメントするトラックドライバーもあり、フィ ンランド以上に時間がかかる実態にあると言える。
3 ロシア国内の物流ルート エストニア国境の様子 サンクトペテルブルク港FCT。
ヤード状態は比較的良好 サンクトペテルブルク港第2貨物地区。
ヤードは汚く、舗装状態もかなり悪い  サンクトペテルブルク港が市街地付近に位置し、敷 地の拡張が難しいこと、トラックの往来が激しく市街 地付近の渋滞緩和が重要な課題になっていることな どを背景に、新規港湾開発の必要性が高まっており、 現在サンクトペテルブルク港の南西約一二〇キロメー トルの場所にウスチルーガ港が建設されている。
同港 の建設は予定よりも遅れており、現時点では木材お よび石炭の荷役が行われているのみであるが、開発 が計画されている敷地は非常に大きく、フィンランド 湾沿岸の港湾の中では最大の敷地面積になる予定で ある。
予定通り進めば一〇年に完成し、完成後はサ ンクトペテルブルク港の代替港として重要な港湾にな ると考えられる。
2 ロシア国内の道路状況 ?フィンランド国境からサンクトペテルブルク  大半のトラックが利用する基幹道路(M 10 )をサン クトペテルブルクまで走行した。
フィンランドから国 境を越えてロシア国内に入ると道路の路面状態が明ら かに悪くなるのが分かる。
轍のあとがはっきりと残 っており、必ずしもメンテナンスが十分ではないもの の国境付近から離れるに従って、整備状況は良好に なる。
?エストニア国境からサンクトペテルブルク  エストニアとサンクトペテルブルクを結ぶ基幹道路 (M 11 )を走行した。
国境通過後、サンクトペテルブ ルク市街まで残り三〇キロメートル地点までは、道路 状況が極めて劣悪である。
舗装が剥げて補修されて いない箇所や補修されても段差が解消されていない 箇所が非常に多く、衝撃に弱い製品などはコンテナや トラック荷台での固縛をかなりしっかり行わないと、 JANUARY 2008  42 連続した振動による破損事故につながるものと考え られる。
ウスチルーガ港はこの国道から北に五〇キロ メートル程度一般道を走行した場所にあるが、この 一般道も道路状態は悪い。
?サンクトペテルブルクからモスクワ  非常に多くのトラックが走行している基幹道路(M 10 )をモスクワまで走行した。
フィンランド、エスト ニアからモスクワに向かうトラックや、サンクトペテ ルブルク港で荷揚げされたコンテナ貨物などがモスク ワに向けて走行している一方で、モスクワで通関手 続きをし、再度サンクトペテルブルクのディーラー向 けの完成車を輸送するキャリアカー等のトラックとす れ違うこともよくある。
 サンクトペテルブルク─モスクワ間は約七二〇キロ メートルであるが、途中ノブゴロド付近の道路状態が 悪いという問題はあるものの、全般的にはよく整備 されている。
普通乗用車での走行時間は一〇時間半 程度、平均時速は七〇キロメートル弱であった。
トラ ックの場合には途中休憩を挟み、一・五日〜二日程 度の時間を要することになるが、冬季の輸送におい ては日中が短く周囲が暗くなることや、積雪の影響 によって速度を落とさざるを得ないこともあり、夏 季の一・七倍の時間(三〜四日)がかかるケースも ある。
4 物流リスクと対策 1 冬季の輸送  物流リスクの一点目は、この地域ならではの「寒 さ」といえる。
冬季は非常に寒くなり、フィンランド ロシア国内道路のパーキング エストニア国境通過後のロシア 国内道路。
路面の状況は劣悪 特集 湾でも凍結の影響によって砕氷船による先導が必要 なケースもある。
コンテナ内の貨物も凍結する可能性 があるため、温度変化に敏感な貨物や、機械類など で油や水などが機械の中にある場合などでは注意が 必要となる。
仮に温度調節の可能なコンテナ(いわ ゆるリーファーコンテナ)であっても、あまりの寒さ に中の製品が凍るケースもあるとのことである。
 また陸上輸送においては、トラックが使用するガ ソリンが夏季用と冬季用に分かれている。
夏季用は 安価であるものの凍結防止剤が含まれていないため、 夏季用ガソリンを冬季に使用すると輸送途上で凍結す ることもある。
実際に、ある運送会社ではコスト削 減のため残っていた夏季用ガソリンを使用したため、 輸送途上でガソリンが凍結し、ドライバーがガソリン を暖めたことによって火災事故に繋がった事例もあ る。
こうした観点からは運送会社の選択も物流リス クを軽減する上では重要となる。
2 港湾での水濡れリスク  サンクトペテルブルク港第二貨物地区では屋内倉 庫施設はあるものの費用を支払わない限り、確実に は倉庫内に保管されない実態にあるようである。
機 械類や雨ぬれが問題になる貨物を輸出する場合には 運賃に保管費用が含まれているのか、保管場所は確 保されているのか、現地の荷役業者に指示が伝わっ ているのか、という点まで明確にしておくことが重 要になる。
3 港湾での破損リスク  サンクトペテルブルク港第二貨物地区やエストニア のパルディスキノーザン港、サウス港など、いくつか の港湾にはガントリークレーンがなく、ショアクレー ンでコンテナ荷役が行われるケースがある。
ショアク レーンでのコンテナ荷役はコンテナが動揺する場合が 多く、貨物の荷崩れにつながることが多いため、コ ンテナ内で貨物の積み付けを適切に行うことが重要と なる。
 また、通関検査の際に税関職員が無造作に貨物を 取り扱うケースも多いため注意が必要となる。
検査時 に立ち会うこと、あるいは立ち会いが難しい場合には 輸送ルートを変更するなどの対策も必要と思われる。
4 陸上輸送中の破損リスク  フィンランド湾周辺およびサンクトペテルブルク─ モスクワ間の道路環境で注意を要するのは、エストニ ア国境通過後のロシア国内道路とサンクトペテルブル ク─モスクワ間のノブゴロド付近である。
この付近の 陸上輸送がある場合には、トラック内の積み付けを 十分行うことや、梱包や緩衝材を通常より多くする などの対策も重要となる。
5 陸上輸送中の盗難リスク  ロシア国内輸送中の盗難事故は近年減少している ようであるが、〇七年八月頃ノブゴロド付近で偽警 察官による盗難が発生したとの情報もある。
ロシア では州境に小さな警察署があり、警察官が頻繁にト ラックを止めている状況が散見される。
トラックは書 類不備や重量、速度制限など違反が見つかる可能性 が高いので対象になるようだ。
警察官の命令を無視 するわけにもいかないため、ドライバーは停止せざる を得ない状況になる。
盗難リスクの対策に抜本的な 対策はないが、一定の輸送量がある場合には、複数 のトラックでコンボイを組んで輸送させるなどの対策 を検討することも重要となる。
43  JANUARY 2008         上田 誠(うえだ・まこと) 1996 年3 月一橋大学卒業、同年4 月三井海 上火災保険入社、海損部輸出貨物グループ(主 に輸出貨物の事故処理)。
2004 年4 月同部物 流安全サービスグループ(主に物流リスクマネ ジメント)、現在に至る。

購読案内広告案内