2008年2月号
SOLE

食品残渣を肥料・飼料にリサイクル資源循環型社会の実現に貢献

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics FEBRUARY 2008  86 食品残渣を肥料・飼料にリサイクル 資源循環型社会の実現に貢献  SOLE日本支部では、毎月「フ ォーラム」を開催し、ロジスティク ス技術、ロジスティクスマネジメン トに関する活発な意見交換、議論を 行い、会員相互の啓発に努めている。
十二月度のフォーラムでは食品残渣 リサイクルを取り上げ、環テックシ ステムズの西出昌史マーケティング マネージャーを講師に迎えて開催し た。
スーパー、レストランなどで生 ごみとして扱われる食品の残渣をバ イオコンポスト化し、肥料・飼料と してリサイクルを実現している事例 をお話しいただいた。
配合飼料価格は四年で一・四倍  始めに西出氏より、食品残渣のリ サイクルに関する法令およびその背 景について、次のような説明があっ た。
 「食品リサイクル法」(食品循環資 源の再生利用等の促進に関する法 律)では、食品製造業、食品卸売 業など個々の食品関連事業者ごとに 再生利用実施目標を設定し、国全体 での食品再生利用の促進・強化を 目指している。
また法律の中で、食 品残渣の再生利用先として飼料を最 優先にすることを掲げている。
 背景には、近年のエネルギー価格 の上昇基調による食料のバイオ燃料 への転換と飼料価格の高騰や、食料 自給率の維持・向上という政策が ある。
 実際、配合肥料の価格はとうも ろこしなどのバイオ燃料への転換を 背景に、二〇〇七年七月時点で〇 三年四月に比べ約一・四倍となって いる。
とうもろこしなどの濃厚飼料 を主な飼料とするブロイラー、飼育 豚、採卵鶏などでは生産コストに占 める飼料の割合が六〇%を超えてお り、飼料価格の高騰は畜産業者にと り大問題である。
また、飼料自給率 が一〇%向上すると食糧自給率が一 %向上するとの報告もある。
このた め、食品残渣のリサイクル化はこれ からの社会が実現すべき大きな課題 である。
食べられるものすべてを再生  食品残渣を再生利用するには「焼 却処理」、「温風乾燥処理」、「炭化処 理」などいくつかの方法がある。
環 境に与える負荷、循環性などでそれ ぞれ特徴があるが、肥料・飼料へ の再生利用としては、今回事例とし て発表のあった「バイオコンポスト 処理」が最も優れているとの説明が あった。
 バイオコンポスト処理では、図1 の処理プロセスに示すように約七〇 ℃の高温下で発酵菌を使用し、食 品残渣を六〜八時間で分解する。
発 酵菌には内城菌と呼ばれる複合壌 菌を使用する。
このプロセスを経る と、金属類、プラスチックなどを除 き、人が食べられるものはほぼすべ てが肥料・飼料として再生利用可 能とのことである。
ただし、砂糖、 塩、油などを大量に含んでいると発 酵菌の分解力が低下するため、これ らはあらかじめとり除く必要がある。
 再生した肥料には土壌改善、果樹 などの糖度向上、病気の予防効果が みられ、また、飼料として使用する 場合は家畜の病気感染防御、体重 増、糞臭の軽減などの効果があると のことである。
実際、豚の肉質がよ くなり高値で販売できる、ネギ、ナ シなどの農産物の品質が向上したな ど、畜産業、農業を営むユーザーか らの評判もよいという。
 環テックシステムズが考える食品 リサイクルは、図2に示す全体像の ようにバイオコンポスト処理技術を 利用して食品残渣を肥料・飼料に 再生処理し、農作物、あるいは家畜 の生産に利用するものである。
コン ポスト処理の原料となる食品残渣は スーパーの食品部門、給食センター、 レストランなどから出る残飯、食品 加工廃棄物などである。
実際にはこ れら食品残渣に発酵菌と発酵を促進 するためのフスマ(麦ぬか)、ある いは米ぬかを混ぜたものを、専用の コンポスト処理用機器によりコンポ 図1 バイオコンポスト処理プロセス。
肥料・飼料への再生利用 では最も優れた処理方式という。
3 時間後 8時間後 製品 1時間後 投入直後 生ゴミ 調整剤 内城菌 投入時・水分調整60%(米ぬか・フスマ等) 内城菌1 10000 87  FEBRUARY 2008 要となる。
例えば、肥料の販売は例 年六月と十二月がピークであり、ボ トムの九月とは八倍〜九倍の差があ る。
 このほかにも食品残渣、および製 品である肥料・飼料の品質管理に課 題がある。
例えば、成分の安定性、 トレーサビリティの確立は今後取り 組むべき課題といえよう。
 リサイクルはロジスティクス分野 における最新テーマの一つである。
今回、講師の西出氏から大変詳細な 説明をしていただいた。
食品リサイ クルをビジネスとすることの困難な 点、打開策、将来像などについて、 フォーラム参加者との間で活発な質 疑応答、議論が交わされた。
リサイ クルを含めたロジスティクスのあり 方を考える有意義なフォーラムであ った。
スト処理する。
 コンポスト処理用機器は、環テッ クシステムズが設計、調達するもの で、これを食品残渣の発生するスー パーなどの事業所に設置する。
この 機械に毎日食品残渣を投入し、コ ンポスト処理によりできた肥料・飼 料をユーザーである農家などに引き 渡す。
コンポスト処理の時間は先に 示したように六〜八時間であるた め、夕方に原料を仕込むと翌朝に は肥料・飼料が出来上がることに なる。
標準的なコンポスト処理機の 能力は一バッチ当たり一〇〇リット ル(八五キログラム)。
一日に二バ ッチのサイクルで行うと、一日当た り二〇〇リットル(一七〇キログラ ム)を処理できる仕様である。
既に 一五年前から稼働しており、延べ三 五〇台の納入実績があるとのことで あった。
納入先も、食品関係に加え、 水産・漁業関係、ホテル・宿泊施設、 学校、病院、一般企業の食堂など幅 広いという。
微妙なコストバランス  環テックシステムズは、食品リサ イクルではコンポスト処理用機器お よび発酵菌(内城菌)の販売からコ ンポスト化により生じる肥料・飼料 の引き取り、農家などへの流通・販 売までを基本的なビジネスモデルと している。
 食品残渣の発生する事業所では、 通常それぞれが属する地方自治体 が条例で定める収集運搬処分手数 料を支払い、食品残渣を処理する。
つまり、収集運搬処分手数料より も、コンポスト処理用機器の投資費 用、運用費用が安ければ、事業所が 機器を購入して食品リサイクルの一 環を担うことに合理性が生じる。
ま た、肥料・飼料のユーザーは、コン ポスト処理した肥料・飼料により農 作物、家畜の生産量が増加、あるい は品質が向上すれば、これらを使用 することになる。
現在のところ、こ のビジネスモデルは収集運搬処分手 数料とコンポスト化費用などの微妙 なバランスの上で成立しているよう である。
ロジスティクス面では課題も  ロジスティクス上の視点からは、 この食品リサイクルのビジネスモデ ルにはいくつかの課題がある。
 例えば、コンポスト処理機器を設 置できる規模の事業所は限られてお り、しかも地理的に分散している。
そのため肥料・飼料の回収に時間 と輸送費用がかかる。
事業所への往 きと帰りでは、トラックの積載量に 大きな差が出る。
製品である肥料・ 飼料の原料が発生する地域とユーザ ーが多い地域とは通常一致しない。
また、ユーザーへの配送は小口のこ とが多く、配送コストがかかる。
農 家の現場に合わせ、フレコンバッグ、 ビニール梱包など複数の製品荷姿を 用意することも必要となる。
 すなわち、効率的なリサイクルの 実現には、ロジスティクスの観点か ら需要と供給のバランスが取れた顧 客開拓が重要であることがわかる。
大きなリサイクルの環を作るよりも、 地域密着の小さなリサイクルの環を 複数確立することが重要のようであ る。
そのためには、新たな製品の開 発によるユーザーの拡大も必要であ ろう。
 さらに、肥料・飼料の生産と使用 には季節的なギャップがあり、それ を調整するための在庫スペースが必 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは2 月26日(火)現 場見学会「クリナップいわき事業所 ジ ャストインタイムの生産性とロジスティク ス」を予定している。
このフォーラムは 年間計画に基づいて運営しているが、単 月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局( solej- offi ce@cpost.plala.or.jp)までお問 い合わせください。
有機肥料飼料 健康な農作物健康な家畜 図2 環テックシステムズによる    食品残渣リサイクルの概要 給食産業・飲食業・食品産業 流通業・農林水産業・一般家庭 残飯・食品加工廃棄物 水産加工廃棄物 畜産し尿・汚泥 コンポスト 処理機械 有料で引き取り 発酵菌 (内城菌) 発酵促進剤 (米ぬか・フスマ)

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