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SEPTEMBER 2005 50
本誌の在庫関連特集などでお馴
染みのシーコムスの関口壽一代表
が『図解
よくわかる在庫起点経
営』(日刊工業新聞社)を上梓し
た。 独自の在庫理論をベースにし
て、ウォルマートに代表される流
通外資に対抗するための日本型流
通システムの新しいモデルを提示
している。
在庫とは何なのか。 在庫とは悪
であり、減らせばいいものなのか。
本書は、そんな本質的な問いに始
まり、基本的な在庫理論の紹介か
ら欧米市場における取り組み、そ
して日本市場における在庫起点経
営の実践方法まで、専門用語や学
術用語をできるだけ避け、分かり
やすく解説している。
流通を取り巻く環境は、日本と
欧米では大きく異なっている。 大
手小売りと大手メーカーが市場を
支配している欧米とは異なり、日
本では中間流通の担い手として卸
が大きな役割を果たしている。 こ
の違いを無視して欧米のSCMの
ノウハウを日本に導入しようとす
るには無理がある。 著者はそう指.
摘する。
そして日本型流通システムの良
さを残しながら、欧米型流通シス
テムの優れた点を採り入れる必要
があるとして、在庫管理を起点と
した新たな日本型流通システムの
モデルと、その具体的な導入方法
を解説している。
代表著者の関口氏はライオンの
流通政策担当として長年、日用雑
貨品業界における在庫問題に従事
してきた。 その経験を基に独自の
在庫管理システムを開発。 ライオ
ンの社内ベンチャーとしてシーコ
ムスを設立し、現在、国内の有力
流通業者を対象にソリューション
を提供している。 実務に裏打ちさ
れているだけに、本書で展開され
ている現状分析や理論にも説得力
がある。
関口壽一ほか著『図解よくわかる在庫起点経営』
独自の在庫理論から日本型流通システムを提示
総合マテハンメーカーのダイフクはこのほ
ど、愛知県の小牧事業所の生産部門の一部
を滋賀事業所に移転することを決定した。 工
場棟二棟の建築、工作機械の更新などを行
い、生産性向上・事業拡大を図る。 移転するのは、自動倉庫システムおよび工
作の二工場。 移転の主な狙いは、自動仕分
け機などを生産する滋賀の工場と自動倉庫シ
ステム工場を「物流システム工場」として統
合することにより、物流センター向けシステ
ムの一貫生産体制を構築し、生産効率を向
上させること、そして設計・管理等の重複業
務を集約することで得られる人材を一般製造
業向け自動化機器や海外市場の開拓要員と
して活用して事業を拡大することにある。
これにより、同社は自動倉庫や自動仕分け
機などの物流システムの生産額を二〇〇九年
度に、二〇〇五年度の三〇%増に拡大する
予定だ。 今年九月の建屋着工、設計系子会
社などを含む関係従業員約二〇〇人の異動
などを経て、二〇〇六年三月頃から生産を
順次開始するという。
工場移転後も、小牧事業所のその他の工
場や施設は営業・工事・サービス・ソフトウ
ェアなどの部門が中部地区の要として活用す
るほか、グループ企業の電子機器メーカーが
機能を拡充して操業を続ける。 一部跡地は、
東名・名神高速道路の小牧インターに近い
利便性を生かし、倉庫用地として賃貸などの
利用方法も検討する。
同社は「インダストリアル・パーク構想」
の下、一九七〇年に東京ドーム球場約二六
個分に相当する約一二〇万平方メートルの
事業所用地を滋賀県に取得。 世界一のマテ
ハン工場を目指し、大規模な土地造成を行
って、小牧や大阪から工場を順次移転してき
た。 現在、滋賀事業所には九つの工場棟のほか、総合展示場、事務・厚生棟、寮・社宅
などを保有している。
自動車生産ライン向けシステム事業、液
晶・半導体向けシステム事業、洗車機事業
などの生産機能は既に滋賀に集約し終えてい
る。 一方、物流センター向けなど物流システ
ム事業の生産は、小牧と滋賀に分散。 最近
は、自動倉庫システムと自動仕分け機を併用
する複合大型システムの受注が3PL事業を
中心に急増し、物流システム全体を見据えた
生産体制が求められていた。
ダイフクが小牧の工場を滋賀に移転
物流システム生産額三〇%増を図る
『図解よくわかる在庫起点経営』
関口壽一、川上慎太郎、寺島正尚著
日刊工業新聞社発行
定価一八九〇円(税込)
ダイフクは滋賀県蒲生郡日野町に
約120万平方メートルの広大な
事業用地を所有している
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