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日立建機ロジテック
──新興国の建機需要拡大で急成長
物流面ではライバルとも協力
──昨年の弊誌「物流企業番付」では総合三位、
今期は二位に浮上しました。
「五年前に一〇〜二〇億円程度だった国際物流事
業の売上高が、今では一三〇億円近くにまで成長し
ました。 これはやはり親会社・日立建機の影響が大
きい。 二〇〇二年頃から日立建機は、グローバル展
開を急速に拡大しています。 その結果、現在は日立
建機の売上高の七割を海外事業が占めている。 それ
に伴って、当社の売上高も急激に伸びました」
──ちなみに一位は昨年と同様、ライバルのコマ
ツ物流です。
「親会社同士は競合していますが、物流面ではむ
しろ協力相手です。 実際、帰り便や共同便では協力
し合っている。 コマツは関西、日立建機は関東に工
場を置いている。 我々の車が関西へ行くと、コマツ
の荷物を積んで帰る。 逆もある。 子会社同士が直に
競争するという場面はありません」
──建機市場の今後の見通しは?
「長期的なトレンドとしては、BRICs(ブラ
ジル、ロシア、インド、中国)や、VISTA(ベ
トナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼ
ンチン)といわれる、新興国の旺盛な需要が今後も
市場を牽引していくと思います。 生活レベルをあげ
たいという思いは、どの国でも同じです。 そのため
には道路などのインフラ整備が避けては通れません。
また、インフラ整備に必要な鉄や石炭などの資源を
採取するにも建設機械が必要です。 これらを考慮す
ると、建機市場は今後二〇〜三〇年にわたって安定
して伸び続けると見ています」
──米国市場をどうみていますか。
「正直、米国市場にはそれほど期待していません。
サブプライム問題の影響が思っていた以上に根深く、
心配しています。 実際、親会社の米国市場の売り上
げも〇五年末あたりから落ちてきました。 昨年は在
庫調整も実施しました。 しかし米国で減少した分を
全て中国やロシア、中近東など新興国に回したとし
ても、まだまだ足りない。 世界的な供給不足には変
わりません」
──中国バブルの崩壊も懸念されていますが。
「確かに中国はこれまで年率一〇%といった破竹
の勢いで成長を続けてきたため、今年八月に開催さ
れる北京オリンピック後には踊り場にさしかかると
いう声があります。 しかし、建機に関する限り、需
要増は北京オリンピックや一〇年に開催される上海
万博だけが理由ではありません。 確かに、そのた
めの開発もありますが、中国全体の需要を考えると、
ごく一部に過ぎません」
「それよりも中国では現在、内陸部の開発が進ん
でいる。 内陸部の建機需要は高まる一方です。 その
ため、日立建機は中国の生産能力を大幅に増強しま
す。 〇六年度には年間五〇〇〇台だった生産能力を、
一〇年には三倍増の一万五〇〇〇台に引き上げます。
工場付近には物流センターも新設します。 大幅に増
える物量に対応するためです」
──物量が増えれば、それに伴うサプライチェー
ン上の問題も出て来ますね。
「例えばAの部品がたくさん余っているのに、B
の部品がないため、最終製品が作れない。 中途半端
な仕掛かり品が増えてしまう。 増産に伴い、そうし
た問題が見え隠れしてきました。 そこで当社は昨年
の八月から、取締役と課長の二名を物流コンサルタ
ントとして、中国に派遣しています」
親会社・日立建機のグローバル展開に追随。 中国やイ
ンドネシアなど新興国の旺盛な建設機械需要に支えられ、
2002年に104億円だった売上高を5年間で329億円に拡大
させた。 今年度中にも通関業やNVOCCの許可を得るなど、
業務範囲の拡大で、2010年には売上高570億円を目指す。
(聞き手・柴山高宏)
日立建機ロジテック 内藤博 社長
注目企業トップが語る強さの秘訣総合2位
FEBRUARY 2008 14
「日立建機の中国の現地法人内に物流事業部を設
けてもらい、そこで当社のコンサルタントが物流事
業部長として陣頭指揮をとっています。 当社のロジ
スティクスのノウハウを現地のスタッフに指導し、物
流センターも我々の提案をもとに設置しています。
システム作りにも携わっています。 センターは今年
の夏頃には稼働する予定です」
親会社の海外工場に物流コンサル
──中国以外でもコンサル派遣を考えています
か?
「インドネシアへの派遣を予定しています。 インド
ネシアも現在工場増設の真っ最中で、現状で一五〇
〇台くらいの年間生産能力を、一〇年には倍の三〇
〇〇台にする計画です。 オランダのアムステルダム
でも同様です。 いずれも中国同様に新工場に併設す
るかたちで、物流センターの設置が検討されています。
そうなれば当社もまたコンサルとして参加していき
ます」
「国内でもひたちなか、滋賀、竜ヶ崎の工場で増
産に向けた投資を行っています。 油圧ショベル、ク
レーン、ホイールローダー、ミニショベルといった日
立建機の主力四製品は、受注残が半年から一年の単
位でたまっています。 増産となれば当然物流が発生
します。 今年から来年にかけてはその対応に追われ
そうです」
──ロジテックは現在、中国、インドネシア、オ
ランダ、フランスに駐在員事務所を置いていま
す。 一方、日立建機の地域別売上高をみると、米国、
アフリカ、中近東、オーストラリア向けも大きい。
これらの国々向けの物流にはどのように携わって
いるのですか。
「今のところ当社の仕事はF O B( Free On
Board :本船積込渡し)まで。 用船は商社が担当し
ています。 現時点では他の国への進出計画もあり
ません。 ただし業務範囲は拡大していきます。 ま
ずは通関業、NVOCC( Non Vessel Operating
Common Carrier :非船舶運航業者)の資格を取得
します。 今年の三月に欧州で資格をとり、その後は
中国でも取得する計画です」
当社はまだまだ成長する
──外販については?
「現在の外販比率が五%くらい。 一〇%を目標に
徐々に拡大していきたい。 しかし、それよりもまず
は当社の売上高の九五%を占める日立建機とグルー
プ会社に対して、価格競争力・品質の両面でよりよ
いサービスを提供することが第一です。 現状ではま
だグループ内の物流の四割くらいの仕事しか取り組
めていません」
「株式上場も今のところ視野には入れていません。
業績だけみれば既に上場を検討できるレベルにある
かもしれませんが、上場してやっていくにはまだま
だ実力不足です。 人材も不足していますし、急激に
成長を遂げてきたため、社内体制の整備が追いつい
ていません。 会社としてはまだまだこれからです」
──〇八年三月期の業績見通しは?
「今期(〇八年三月期)の売上高は四〇〇億円を
超える見通しです。 一〇年に売上高五七〇億円を
目標にしています。 グループ内だけでもまだ六割近
い仕事を取りこぼしており、日立建機とグループ会
社の物量は増える一方です。 これらを取り込むこと
で、十分到達可能な数字です。 当社はまだまだ成
長します」
国内市場の低迷をグローバル化で克服
日立建機の物流子会社2社、出荷梱包をメーンとする建
機発送エンジニアリングと、構内物流の日立建機サポート
エンジニアリングの合併によって99年に設立した。 これを
機に日立建機は本社物流部門を廃止し、管理機能をロジテッ
クに全面移管した。 合併初年度の2000年3月期の売上高
は65億7000万円で、そのほとんどが国内物流だった。
今でこそ活況に沸く建機市場もバブル崩壊から2000年
初頭までは国内需要の低迷に苦しんでいた。 日立建機も
例外ではなく大幅な人員削減も含むリストラまで余儀なく
された。 ところが、その後の中国ブームで状況が一変。 海
外需要の急拡大で業績は一気に好転した。 ロジテックも親
会社に歩調を合わせて国際物流に急展開することで成長の
波に乗っている。
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図1 日立建機ロジテックの業績推移
02
年3月期
03
年3月期
04
年3月期
05
年3月期
06
年3月期
07
年3月期
売上高
経常利益
15 FEBRUARY 2008
特 集《平成20 年版》
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