ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年2号
特集
物流企業番付平成20年版 トライネット

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

トライネット ──市況高騰の波に乗る「海上運賃の総合商社」 上半期で通期計画の七五%を達成 ──二〇〇八年三月期の業績見通しは?  「前期から引き続き好調を維持しています。
上半 期だけで、通期で計画していた売り上げの約七割五 分を達成することができました。
前期の売上高約三 八二億円に対し、今期は約四四〇億円を見込んでい ます」 ──年率二ケタの伸びが続いてます。
 「当社はもともとNVOCC(非船舶運航業者) として一九八五年に設立されましたが、以前は限ら れた貨物しか扱っていませんでした。
〇二年に、三 井物産グループの国際輸送の中核会社として位置付 けられたことで、新しいスタートを切りました。
以来、 国際物流事業は大きく成長しています。
〇三年には 三井物産物流本部から不定期船事業の移管も受けま した。
現在は国際物流事業、不定期船事業、プラン ト輸送事業の三つが当社の柱になっています」 ──そこで国際物流事業と呼んでいるのは主にコ ンテナ貨物の一貫輸送ですね。
それに対して不定 期船事業とは、どのような事業なのでしょう。
 「不定期船事業では、鉄鉱石、石炭、穀物など梱 包されない貨物、つまりドライバルク貨物を輸送し ています。
シンガポールの兄弟会社では船を保有す る船主業も行っていますが、当社は船舶を保有せず に借りた船を運航し、貨物を運びます」  「不定期船の運賃はマーケットの相場で決まります。
不定期船の相場は〇三年頃から上がり始め、今は史 上最高の高値圏にあります。
不定期船の代表的な運 賃・用船料の指数『BDI』(バルチック海運指数。
八五年を一〇〇〇とする)は昨年初めて七〇〇〇を 突破し、一万を超える局面もありました。
〇二年ま で一〇〇〇前後で推移していたものが、〇三年から の五年間で一〇倍になったわけです」  「この市況高騰が当社の追い風になっています。
輸送だけでなく、荷主とキャリアを仲介するブロー カーとしてのコミッション・ビジネスでも、高水準 の運賃相場がプラスになっています」 ──市況が高騰すると、船の調達コストも上がる のではないですか。
 「その通りです。
もともと不定期船事業は、どの タイミングでどれだけ船をおさえたかによって、非 常に大きく業績を左右される相場商売なんです。
そ の点、当社の現在の船隊は、市況が高騰する以前に 調達していたものです。
我々の先輩たちの先を読ん だ仕込みが功を奏して今その恩恵を享受している格 好です」 ──では、市況によっては大きく痛手を受けかね ないということにもなりますね。
 「運賃や用船のレートは株式などと同様、日ごと に変わります。
デイリーなのか数年単位か、どうい うレンジで相場をみるかによって、マーケットに対 する対応が変わってきます。
それでもばくちと違っ て統計も研究しながら相場観を養い、目安としてい る一定の水準の間で船を調達すれば、大きな負けは 出ない。
当社はBDIが二〇〇〇まで下がっても損 失は出ない体制になっています」 ──今後のマーケットの見通しは。
 「マーケットを牽引しているのは中国、ロシア、イ ンドなどの経済活況です。
このまま原料調達の増 加が続けば船舶の需給はタイトなまま推移するた め、マーケットも底堅いというのが一般的な見方です。
しかし現在の相場が高値圏にあることは確かで、積 極的に船の仕込みをしていくタイミングではないと  三井物産グループの海上輸送を担当する子会社として、 コンテナ船の国際物流事業、不定期船事業、プラント輸 送事業の3事業を展開している。
このうち不定期船の運 賃相場は過去5年間で一時は10倍にも高騰した。
その恩 恵を大きく享受している。
     (聞き手・梶原幸絵) トライネット 信岡正章 社長 注目企業トップが語る強さの秘訣総合9位 FEBRUARY 2008  18 みています」 ──不定期船事業での強みは何ですか。
 「当社は総合商社の子会社であり、不定期船の売 上高に占める三井物産の割合は六割を占めています。
親会社がトレーディングをしているドライバルク貨物 の流れ、性質、それを運ぶために必要な船型を全て 熟知しています。
三井物産の貨物に合わせたポート フォリオを組めるため、非常に堅実な運航オペレー ションが可能です」 ──不定期船事業の売上高に占める比率は。
 「今はおよそ六割、約二五〇億円です。
利益面で 不定期船事業が占める比率は大体五割になります。
コンテナ貨物の輸送を行う国際物流事業の売上高は 約一三〇億円、約三割ですが、こちらは利益が安定 しており、非常に堅実なビジネスといえます」 ──三井物産グループにはトライネットのほかに、 国内物流や倉庫などを行うトライネット・ロジス ティクスがあります。
それぞれ、どのような位置 付けになるのでしょう。
 「当社のベースでありコアとなるのは海上輸送で すが、グループとしてはこの数年、“ As if we are a single company”を合い言葉に協業を積極的に進め ています。
物流本部グループの事業会社が一体とな って、営業を含めた顧客対応をしています」 ──荷主とのインターフェースを考えれば、トラ イネット・ロジスティクスと統合するという考え 方もありそうです。
 「統合は選択肢の一つですが、デメリットも考えら れます。
例えば組織が大きくなることで、小回りが きかなくなることもある。
得意分野も不鮮明になっ てしまいます。
個人的にはコアビジネスを明確にして、 集中・特化していく方がよいと考えています」 ITや金融機能を強化 ──今後の課題は。
 「今のところ当社の国際物流事業は日本発着の貨 物がメーンです。
しかし、世界のコンテナ物流では アジアから北米、欧州への流れが中心です。
そこに 足がかりを築いていかなければなりません。
また、 プラント輸送事業は電力やガスのプラントなどのプロ ジェクト貨物を輸送するものですが、売上高は数十 億円とまだまだ規模的に小さい。
ここを大きく育て ていきたいと考えています」  「先ほど説明したように、〇二年から〇三年にか けて当社は質的に大きく変わりました。
これは第二 の創業といえます。
以来四年間、毎年増収増益でき ましたが、今後は課題を克服し、第三の創業をやら なければなりません」  「当社は海上輸送で勝負し、海上輸送に関わるあ らゆる機能を果たす“海上運賃の総合商社”だと 自分たちを位置付けています。
海上運賃を一つの商 品として捉え、運賃という商品をさまざまに加工し、 総合力を発揮して運賃に付加価値を付けたサービス を展開していきたい。
ITやFT(金融技術)とい った要素をもっと取り込んだサービスを仕上げてい くつもりです」 ──具体的にはどのようなサービスでしょうか。
 「受発注と輸送の一元管理やシステムを通じたブッ キング(船腹予約)、B/L(船荷証券)の閲覧など、 ITを使って顧客に提供できるサービスはいろいろ 考えられます。
FTでは当面、物流本部が行ってい る船舶ファンド事業を物流本部と協力しながら大き なビジネスに育てていきたい。
また、貨物の代金決 済サービスも検討していきたいと考えています」 “第2の創業”から業容を大きく拡大  三井物産は物流事業で日本、中国、東南アジア、 米州、欧州それぞれに“トライネット”ブランドを 冠した現地法人を設立。
世界五極体制を構築し ている。
トライネットはこの中の日本法人。
国際 物流事業、不定期船事業、プラント輸送事業を 行うが、この3つを一社で提供する会社は珍しく、 三井物産の貨物を背景とした運賃競争力も大きい。
 2002年〜03年の“第2の創業”から業容を拡大 し、不定期船事業を開始する一方、国際物流事 業では06年、小口混載専業のNVOCC、ジャパ ンスターを買収。
LCL(コンテナ一本に満たない 小口貨物)輸送に事業領域を広げた。
また同年、 不定期船事業からプラント輸送事業を独立させて いる。
02年以前は三井物産からの出向者数人で 業務を行っていたが、独自の人材採用を開始し、 08年現在、人員は派遣社員を含めて150人に増 加している。
本誌解説 (BDI) 10,543 2,902 2,220 図2 BDI 推移 Baltic Dry Index 1985.1.4=1000 5,450 5,519 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 05 年3月期 06 年3月期 07 年 3 月 期 07 年 06 年 05 年 04 年 03 年 02 年 (見込み) 08 年3月期 図1 トライネットの業績推移 (単位:億円) 売上高 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 当期利益 19  FEBRUARY 2008 特 集《平成20 年版》

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