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41 APRIL 2008
本誌でもお馴染みの鈴木孝之プリ
モリサーチジャパン代表が新刊「イオ
ンが仕掛ける流通大再編!」(日本実
業出版社)を三月一日に上梓した。 日
本の小売市場における業界再編の行
方と、流通構造の変化について、イ
オンの動きを中心に解説している。
マーケットシェア一〇%、売上高で
一兆円の規模が、今後の日本市場で
生き残るチェーンストアの条件になる
と著書は主張する。 この閾値を超え
たチェーンストアはメーカーやベンダ
ーに対して圧倒的な発言力を持つこ
とになる。 その結果、価格競争力や
品揃えといった基本的な競争要因に
おいて、中堅以下のチェーンストアと
格段の違いが出てくるという見方だ。
既に市場では規模の拡大を目指し
た合従連衡が急ピッチで進んでいる。
その中心にいるのがイオンだ。 二〇〇
一年、同社はジャスコからイオンに社
名変更すると同時に「二一世紀ビジ
「イオンが仕掛ける流通大再編!」
鈴木孝之プリモリサーチ代表が新刊
ョン」を発表。 二〇一〇年にはグル
ープ売上高七兆円を実現して世界の
小売業トップ一〇位以内を目指すと
いう「グローバル
10
」を目標に掲げた。
実際その後、イオンはヤオハンやマ
イカル、いなげや、ダイエーなどを、
M&Aによってグループ内に吸収し規
模を急拡大させた。 ただし現状では、
その成果は現れていない。 収益性が
伸びないことから、今年二月末には
それまでの拡大路線を転換し、利益
重視に改めて舵を切るという経営方
針の変更を余儀なくされている。
それでも筆者は、イオンが現在「最
も頼りになる小売業になりつつある」
という。 同グループの売上規模は四・
八兆円に上っている。 目標には及ば
なくても、その影響力は国内市場で
は群を抜く。 今やライバルのセブン&
アイに代わって業界リーダーとしての
地位を確立したという評価だ。
本誌は前号(〇八年三月号)の特
集「流通業の物流」で、ロジスティク
スの見地から流通業界の再編と、そ
の影響をレポートした。 同特集では
「PBと圧倒的購買力がメーカーを襲
う」という見出しで著者のインタビュ
ー記事も掲載している。 本書と合わ
せて読むことで、日本の流通業界に
対する理解はいっそう深まることに
なるだろう。
『イオンが仕掛ける流通大再編!』
鈴木孝之著 日本実業出版社
(本体価格一四〇〇円)
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