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佐高 信
経済評論家
67 APRIL 2008
今年度出した『国畜』(KKベストセラーズ)
に入っている鈴木宗男と私の対談で、私が守
屋武昌前防衛次官はなぜ四年も次官のポスト
にいられたのかと尋ねると、鈴木は、
「やっぱり誰かの大きな支えがあったんだと
思います」
と答えた。
「それは誰ですか」
と畳みかけると、一度は「時の政権」と言い、
私が「というと小泉純一郎」と突っ込んだら、
こう続けた。
「そうですね。 彼は特に小泉さんの信頼が
厚かった。 だから四年もいられたんでしょう。
小泉さんがアメリカ行く時も連れて行ったんで
すから、政府専用機で」
こんなことは初めてだった。 だから“守屋
疑惑”の「生みの親」は小泉だと私は指摘し
つづけているのだが、マスコミはこうした視
角から守屋疑惑を追っていない。
また、防衛産業の主力、いや、横綱は三菱
重工だろうに、守屋との関連で、山田洋行とか、
日本ミライズのような、いわば幕下級の会社
しか登場していない。
こうした中での二〇〇七年十二月三日付の
『産経新聞』の次の記事は、その後フォローさ
れているのか。
《防衛専門商社「山田洋行」の米国現地法
人が、リチャード・アーミテージ元国防副長官
と側近の会社に、過去七年間で総額一〇〇万
ドル(約一億一〇〇〇万円)余りをコンサ
ルタント料として支出していたことが三〇日、
分かった。 アーミテージ氏の副長官在任中も支
出が続いていた。 日本で防衛官僚や政治家に
接待や資金提供をしていた山田洋行元専務の
宮崎元伸容疑者(六九)らが、日本の防衛政
策に大きな影響力を持つ米政府関係者の人脈
作りにも多額の資金を投じていた実態が浮か
んだ》
元特捜検事の田中森一は、元日本共産党幹
部の筆坂秀世との対談『どん底の流儀』(情報
センター出版局)で、宮崎は仲の良かったアー
ミテージに一〇〇万ドルを渡して、その見返
りに、日本ミライズがGEから逆指名される
ようGEに圧力をかけてもらったのではないか、
と推測する。 となると、これは“逆ロッキー
ド事件”とも言える大疑獄へ発展するという
のである。
そして、こう付け加える。
「下手をするとGEは、(日本の)防衛省だ
けでなくアメリカ政府とも取引できなくなっ
てしまう。 GEがアメリカ政府と取引できな
くなってしまったら、アメリカの防衛にも大
きな影響を及ぼす。 アメリカの国防にまで影
響を与えかねないような大問題に日本の特捜
検察が手をつけられるのかという話なんだな」
もちろんと言っていいのかどうかわからな
いが、手はつけられないだろう。
特捜の敏腕検事だった田中が、なぜ、検事
をやめて裏社会にも関わる弁護士となったの
か。 田中は自ら、こう告白する。
大阪で共産党系の黒田了一が知事を二期や
った後に落選し、岸昌さかえ
が当選した。
その岸の贈収賄事件を田中がつかみ、勇ん
で検事正のところに捜査資料をもっていった
ら、海軍兵学校上がりの怖い人だった検事正
は、田中を、
「お前、どこ見て仕事しとるんや! せっ
かく自民党の府政になっとるのに、たかだか
五〇〇〇万円くらいの贈収賄で、また大阪を
共産党政権に戻すんかい! 要らんことする
な!」
と一喝した。
そして、立件への決裁をしてくれず、つぶ
されてしまった。
それまで、田中は特捜をオールマイティだ
と思っていた。 しかし、そうではないことを
直に体験させられて、一九八七年に検察を辞
めることになる。 読者はそれでも検察を信じ
られるだろうか。
産経新聞が報じた“逆ロッキード事件”疑惑
時の政府与党に翻弄される特捜検察の限界
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