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MAY 2008 48
売上高の六割超は自動車関連
今回は日本梱包運輸倉庫を取り上げたい。
顧客セグメントでみると、自動車および自動
車部品に強みを持ち、同分野の売上高比率は
二〇〇六年度実績で六二%に上る。 中心はホ
ンダグループで売上高の三〇%強を占めてい
る。 それ以外では、住宅関係(売上高比率一
五%)や農機関係(同五%)の取り扱いに強
い。 また、営業利益率で八・二%と物流業界
でも屈指の収益性を誇っている点も特徴の一
つと言えよう。
過去一〇年の業績を振り返ると、積極的な
設備投資を通じた事業基盤の強化/拠点整備
の推進、効率性の追求により収益拡大を図っ
てきた。 〇三年度は主要顧客の商品販売停滞、
環境対策費や法定福利費、退職給付費用の負
担増といったマイナス要因が重なったため、営
業減益を余儀なくされたが、それを除けば長
期にわたっての営業増益を果たしている。 営
業利益率は二〇〇〇年前後の九%台から若干
低下している。 しかし、これはセールスミッ
クス(販売割合)の変化が主因であり、本来
的な収益性は損なわれていないとみている。
とはいえ、物流業界を取り巻く環境そのも
のは必ずしも良好とは言い難い。 そこで持続
的な成長を維持するべく策定した経営計画で
対外的に初めて公表したのが、〇五年度〜〇
七年度の中期経営計画「KKH
'07
計画」だっ
た。 名称は改善、改革、変革の各頭文字から
取ったものである。 「企業体質の変革を実行
し、存在感のある企業を目指す」を掲げた。
同計画で挙げた〇七年度の数値目標は連結
売上高一五五〇億円、営業利益一三〇億円。
〇七年度第3四半期時点での業績予想はそれ
ぞれ一五八二億円、一三三億円である。 計画
の目標数値を上回る見込みが示されているも
のの、足元の状況をかんがみれば、計画線程
度で落ち着くのではないだろうか。 単体業績
は対計画比でやや苦戦しているものの、連結
では新規連結効果やタイをはじめとした海外
子会社の収益貢献などが寄与している。
日本梱包運輸倉庫
積極的な設備投資で高い収益性を維持
労務関連コストの増加が懸念材料
自動車関連物流に強みを持ち、業界屈指の
収益性を誇っている。 今後も増収増益基調を維
持する見通しだが、荷動き鈍化や労働需給の
逼迫がみられるなど、事業環境は厳しい。 国
土交通省による燃料サーチャージ制に関するガ
イドラインも、外注費の負担増につながる可
能性がある。 いかに持続的な利益成長を果た
していくのかが問われている。
一柳 創
大和総研 企業調査第一部
第39回
連結業績と自動車関連売上高の推移
03 年度04 年度05 年度06 年度
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
140
120
100
80
60
40
20
0
89
59
69 68 72
107
117 121
売上高
営業利益純利益
自動車関連売上高
1181 696 1240 741 1346 815 1481 919
単位:億円
49 MAY 2008
〇七年度は一七〇億円を投資
中期経営計画で掲げた事業戦略を振り返っ
てみよう。
「自動車関連物流の営業強化によるメーカ
ーシェア拡大」、「顧客の海外シフトに合わせ
た国際一貫物流拡大と海外現地法人の業務
範囲拡充」といった辺りは成果が上がった分
野ととらえている。 〇六年度下期には三菱自
動車ロジスティクスの物流業務を行う菱自運
輸を完全子会社化した。 同社とは三菱自動車
向けの完成車輸送事業分野でエリア面での補
完関係にある。 こうした動きも前述の戦略に
沿ったものだろう。
主要荷主のノックダウン輸出も順調に拡大
している。 実際、自動車・自動車部品関連
の売上高の推移を見ると、〇三年度実績の六
九六億円から〇四年度は七四一億円、〇五年
度は八一五億円、〇六年度は九一九億円に増
加。 〇七年度も四〜十二月期実績で前年同期
から一〇%伸長を果たしている。
また、「物流効率化・付加価値物流のコン
サルティング強化による既存・新規顧客の業
務獲得」、「事業領域の拡大」といった施策も、
倉庫・梱包セグメントの状況から、着実に成
果に結び付けているものと判断している。 流
通加工等のサービス拡充を通じ、付加価値を
提供することで、物流の上流工程への進出も
進んでいるのではないだろうか。
こうした動きを踏まえると、特定顧客との
結びつきの強さとともに、特殊車両や倉庫拠
点をはじめ、自社資産を有効活用してきたこ
とも高収益の背景にあると思われる。 このた
め、将来を占う上で拠点整備の状況には注意
を払うべきだと考えている。 同社の設備投資
額をみると、一九九八年度から〇二年度の
五カ年平均で年間五〇億円規模であったもの
が、〇三年度に一〇〇億円を超え、〇四年度
以降も高水準で推移している。 〇六年度には
一二〇億円強の水準となった。 こうした積極
的な設備投資が現在の収益を支えているとい
えよう。
MAY 2008 50
〇七年度の状況をみると、住宅機器関連や
自動車部品を対象とした北九州物流センター
(投資額一八億円、延べ床面積一万八〇〇〇
平方メートル)をはじめ、鈴鹿など国内六カ
所の拠点開設を進めてきた。 同時に、神戸や
静岡、群馬等での用地取得もあり、投資総額
は一七〇億円程度になったとみられる。 〇八
年度にかけては取得した用地での建物投資を
進める見通しであり、一三〇〜一四〇億円規
模の投資を進めると推定される。
海外でも拠点整備を進めている。 北米やタ
イ等が順調なほか、中国拠点の拡充が目立つ。
南京では中国で一〇カ所目となる倉庫を建設
しており、二期工事を含めれば一万六〇〇〇
平方メートルの倉庫整備を計画している。 結
果、中国における倉庫保有面積は四万平方メ
ートル規模となろう。
人件費や外注費に上昇要因
改めて外部環境に目を転じれば、荷動き鈍
化懸念とともに、コスト面でのプレッシャー
が残っている。
売上面では、新たな拠点整備を通じた押し
上げが待たれるところだ。 四半期ごとの業績
推移をみると、〇七年度は四〜六月期が一
〇%増収、七〜九月期が六%増収、一〇〜十
二月期が二%増収となっている。
費用面では、やはり労務関連コストの負担
増リスクが懸念材料であろう。 労働需給のタ
イト化と賃金水準の上昇圧力、燃料価格の高
騰等は、人件費や外注費の上昇要因ととらえ
ている。 足元では、国土交通省がトラック業
界での燃料サーチャージ(燃料特別付加運賃)
制導入支援のためのガイドラインを発表した。
これは適正運賃収受に向けた支援材料である
反面、外注費の負担増につながる可能性があ
る。 また、軽油引取税等の暫定税率期限切
れについては、確かに収支面でのプラス要素
ではあるものの、今後の情勢は流動的であり、
多くは期待できないだろう。
中期経営計画は〇七年度を最終年度として
いる。 同年度の決算発表と前後して、新中期
計画が発表される見通しだ。 荷動き全般の鈍
化や労働需給のタイト化をはじめとした厳し
い事業環境ではある。 しかし基本的には拠点
拡充を背景とした顧客獲得により、いかに持
続的な利益成長を果たしていくかが問われて
いくこととなろう。
あえて現計画で積み残した課題を挙げると
すれば、車両や倉庫の資産効率改善、
to
C
市場への進出といった辺りか。 特に車両等は
乗務員の労務管理問題等がボトルネックにな
ったのではないかと推察される。 いずれにせ
よ、拠点整備の成果、得意とする自動車関連
ビジネスの増収効果により、増収増益基調を
維持するものと大和総研ではみている。
その他、資本市場に身を置くものとしては、
財務戦略や資本政策についてのビジョンにも
期待したい。 近年の積極投資の関係から、有
利子負債の水準は〇六年度上期をボトムに増
加傾向にある。 もともと資本蓄積が充分にあ
り、レバレッジを効かせる必要が高まってい
たとの認識であり、こちらは特に課題とはな
らないだろう。 むしろキャッシュフローの使
途として、株主還元の在り方がポイントだと
考えている。 連結配当性向二〇%との基準が
示されているが、同社および市場の環境をか
んがみれば、もう一歩踏み込んだ対応が待た
れる。
ひとつやなぎ・はじめ
一九九七年三月早稲田大
学理工学部土木工学科卒。
同年四月大和総研入社、
企業調査部インフラチー
ムに配属。 九九年から物
流担当に。
著者プロフィール
(円)
《出来高》
日本梱包運輸倉庫の過去10年間の株価推移
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