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JUNE 2008 58
二〇一五年、中国の人口は一五億
人、インドは一四億人に達する。 その
時点で中国には約二〇%=二億八〇〇
〇万人、インドには約一〇%=一億三
〇〇〇万人の中流・富裕層が存在し
ているだろう。 その三年後の一八年に
は、中流・富裕層が三億人と一億五
〇〇〇万人規模に達しているはずだ。
今後のアジアビジネスは、中国とイ
ンドという二つ大国を軸にして拡大し
ていく。 中国とインドを結ぶ新たな物
流ルート「ガンダーラの道」が整備さ
れ、アジアにおけるモノの動きが大き
く変化する。 日本の物流企業は一日
も早く、その時に備えるべきだ。 本書
「物流の視点から考えたアジアのグロー
バル化」(ITSC静岡学術出版事業
部発行)はそう指摘する。
本書は、一九七八年の住友商事入
社以来、一貫して物流部門でキャリア
「物流の視点から考えたアジアのグローバル化」
住友商事物流部門出身の岩間正春氏が上梓
を重ねてきた筆者が、中国、韓国、イ
ンド、タイ、インドネシア、シンガポ
ール、ベトナム、UAEと、アジアの
国々に足を運び、最前線の現場で物流
ビジネスに取り組んだ体験から、アジ
アのグローバル化を解説したもの。
「近い将来、アジアの経済大国の座
を中国に持っていかれる可能性は十分
にある」と著者はいう。 中国の外貨準
備高は一兆ドルを超え、日本を抜き去
った。 国内自動車販売台数も〇六年
に日本を抜いて二位に躍り出た。 今年
にはいよいよ一〇〇〇万台の大台に乗
ろうとしている。 今後、一時的な景
気の調整はあったとしても、中国の経
済成長は止まらないと見る。
インド経済の拡大も続く。 インドの
タタ・モータースは一〇年に一台約三
〇万円の格安自動車、「ワンラック(一
〇万ルピーを意味する)カー」を発売
する。 これまで目玉がないと言われた
インドの輸出産業も、ワンラックカー
の出来次第で大きく飛躍する可能性が
ある。 産業構造の変化は当然、輸送
ルートに大きく影響する。
ほかにもオイルマネーに沸くUA
E、ロシアの台頭など、アジア経済は
大きく動いている。 その影響を念頭に
置いて、日本の物流企業は、アジアの
物流を再検討する必要があると著者は
指摘している。
『物流の視点から考えたアジアのグローバル化 ワンラックカー(三〇万円自動車)の衝撃と
新「ガンダーラの道」構想』
著者:岩間正春(いわま・まさはる)
発行所:ITSC 静岡学術出版事業部
定価:一〇〇〇円(税別)
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