ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年6号
物流不動産市場レポート
埼玉県県南部と一六号線沿線に施設集中圏央道整備で今後の企業進出に期待

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート JUNE 2008  80 良物件に対する需要が堅調で、空室も比較的 早く消化している。
しかし、競争力がない物 件については空室が長期化している。
賃料水 準は、当社が調査を開始した一九九七年以降 下落傾向だったが、ここ数年は横ばい傾向で推 移しており、近年の動向を見る限り下げ止まっ た感がみられる(図2)。
県南部 需要は高いが用地確保が困難  外環道沿線の戸田市、川口市は、荒川を挟 んで東京都に隣接している。
古くから交通の 要衛として機能しており、JR埼京線、高速 道路網の発展とともに住宅化が進行している。
都心部への交通利便性が高いため、県内で最 も物流施設に対する需要が高いエリアだ。
 同じく外環道沿線の越谷市には、首都圏内 陸部で有数の物流施設集積地である「越谷流 通団地」が存在し、大手物流会社等の大型施 設が集積している。
都内やさいたま市中心部 への配送拠点として利便性が高く、施設規模 を問わず、物流施設に対する需要は堅調に推移 している。
しかし、住宅化の進行等の理由に より、大型施設の用地確保が難しく、物流施 設の供給は限定的になっている。
 不動産投資家等の開発動向を見ると、昨年、 コマーシャル・アールイーが三郷市に「CRE 三郷物流センター(延べ床面積一万九八三〇平 米)」、オリックス不動産が越谷市に「越谷ロジ スティックセンター?(同九五八三平米)」を 竣工させるなど、大型施設が供給された。
今 賃料は近年横ばいで推移  東京都内の慢性的な用地不足から、埼玉県 を含む都心周辺地域での倉庫着工が進んでい る。
物流拠点の統廃合などの動きもあって、新 規供給される倉庫は大型化している。
 大型施設を建設可能な用地が都心湾岸部に はほとんど残っていないため、結果として外環 道沿線の戸田市や川口市、越谷市を含む埼玉 県南部や、首都圏の一般環状線である国道一 六号線沿線など、都心へ一定の交通アクセスを 持つ立地に施設が集中している。
近年は、不 動産投資家等の動きが活発化しており、県北 部の関越道IC、東北道IC周辺に大型施設 が建設されるケースも見られる。
 インフラの整備も進んでいる。
昨年七月、圏 央道が中央自動車道八王子北JCTなど一部 区間で開通し、今年四月には比企郡川島町の 川島町ICが開通した。
近年、圏央道沿線の 交通利便性の向上を見込んで企業が進出する 動きが見られるなど、工業団地の分譲消化も 好調だ。
 圏央道周辺では今年四月に、入間市の入間 IC付近に大型アウトレットモール「三井アウ トレットパーク入間」がオープンするなど、商 業施設も進出している。
行政の公表資料によ ると、今後五年程度で関越道と東北道が連結 する予定で、広域管轄可能な物流施設立地と して、ポテンシャルの向上が期待される。
 倉庫の新規着工面積は、二〇〇四年、〇五年 と上昇しており、回復傾向にある(図1)。
〇 六年は減少に転じたものの、それでも六〇万 平米を超えている。
昨年も〇六年と同水準を 維持している。
不動産投資家による計画案件 は引き続き多いが、市街化調整区域が多いた め、賃貸化については賃料設定の難しさから 足踏みするケースがみられる。
 賃貸市況を見ると、新規供給物件などの優 第12回 埼玉県 県南部と一六号線沿線に施設集中 圏央道整備で今後の企業進出に期待 シービー・リチャードエリス インダストリアル営業本部 白木真司 生駒データサービスシステム 鈴木公二    81  JUNE 2008 良施設が供給されていることが、需要を牽引 している。
県南部に比べ用地が確保しやすく、 土地価格も低廉なので、同エリアへの供給が進 んでいる。
 近年の不動産投資家等の開発動向は、昨年、 プロロジスが杉戸市に「プロロジスパーク杉戸 ?(同十二万七二三一平米)」を竣工した。
ま た、今年以降、野村不動産インベストメント・ マネジメントが春日部市と川越市に「ランドポ ート春日部(同三万一四三〇平米)」、「ランド ポート川越(同八万三三六三平米)」、プロロジ スがさいたま市岩槻区に「プロロジスパーク岩 槻(同三万一八九五平米)」の竣工を予定して いる。
年以降もプロロジスが三郷市に「プロロジスパ ーク三郷?(同六万一三〇二平米)」、ラサール インベストメントマネジメントが吉川市に大型 施設の開発を計画している。
一六号線沿線 低廉な賃料で供給進む  国道一六号線沿線は古くから工業団地・産 業団地が見られ、首都圏近郊の製造拠点、物 流拠点として企業が進出している。
県南部に 比べ都心から離れてはいるが、賃料水準が低 廉であることや、平屋の中・大型倉庫等の優  埼玉県では、一〇年までに延べ床 面積で七〇万平米を超える大型施設 の供給が予定されている。
ここ数年は、 不動産投資家等による大型施設の開 発は首都圏湾岸部が中心だったが、今 年以降同県で大型施設の供給が相次 ぐことで、地場の物流会社から注目 を集めている。
 施設の供給増加要因として、圏央 道の整備が大きな影響を与えている。
圏央道のIC周辺には、物流施設の みならず、前述の三井アウトレットパ ーク入間やコストコなど大規模商業施 設が続々と進出している。
IC周辺 に物流拠点を構えるある物流企業は、 通常使用しているIC周辺に大規模 な商業施設が進出したことにより渋滞 が発生し、隣のICの使用を余儀なく されたという。
 物流企業にとって高速道路が整備さ れるメリットは大きいが、商業施設の 進出により周辺道路の交通事情がか えって悪化する可能性も秘めている。
大規模商業施設の進出が 物流企業の思わぬ落とし穴に 図1 埼玉県の新規着工面積と件数 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 (?) (棟) 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 床面積棟数 図2 埼玉県の中・大型物流施設の募集賃料 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 -5.0 -10.0 -15.0 -20.0 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007年 上期 2007年 下期 4,150 4,260 4,140 3,880 3,800 3,770 4,000 4,210 4,150 -5.3 2.7 -2.8 -6.3 -2.1 -0.8 6.1 5.3 -1.4 変動率 (%) 平均賃料 (円/坪) (円/坪) (%)

購読案内広告案内