2008年7月号
ケース
ケース
コスト削減 松下電器産業
JULY 2008 38
コスト削減
松下電器産業
(パナソニック オートモーティブシステムズ社)
カーオーディオの通い箱を標準化
異型製品の輸送・荷役効率を改善
事業統合で物流管理も一元化
松下電器産業では、カーオーディオやカー
ナビゲーションシステム、ETC装置などの車
載用機器を扱う事業部門を、社内カンパニー
の「パナソニックオートモーティブシステムズ
(PAS)社」が担っている。
二〇〇三年一 月に行われた松下グループの事業再編に伴い、 松下電器のカーエレクトロニクス事業推進セ ンター、営業本部、松下通信工業のカーマル チメディア事業、九州松下電器のカーナビ事 業などを統合して発足した。
PAS社の国内生産拠点は現在、長野県の 松本工場一カ所で、開発設計拠点は横浜にあ る。
近年では米国や中国、タイなど海外への 生産移管が進み、海外工場から日本市場へ供 給する製品が増えている。
車載用機器には大きく二つの流通チャネル がある。
自動車メーカーの純正品として指定 された工場に納めるパターンと、パナソニック の自社ブランド製品として量販店やカー用品 専門店などの小売店を通じ一般ユーザーに販 売するパターンだ。
チャネルによって物流体制も異なる。
純正 品は、納品先となる自動車メーカーの工場の 近辺に在庫を置いている。
部品の納入代行基 地を運営する物流会社に、在庫管理やピッキ ング、工場への納入業務を委託している。
自 動車メーカーの工場の立地に合わせ、PAS 社では関東・中部・中国の各地区に業務委託 先を確保し、それぞれの工場が求める多数回 納入に対応している。
一方、小売店ルートの市販品は、札幌・仙 台・草加(埼玉)・小牧・大阪・広島・福岡 の計七カ所の物流センターに在庫を持ち、こ こから各県に一〜二カ所配置しているエリア 拠点を経由して小売店へ配送している。
小売店ルートの物流センターはいずれもグ ループ会社の松下ロジスティクスが運営し、P AS社の製品だけでなく家電製品など松下グ ループの他の製品も扱っている。
センターか らの配送も松下ロジスティクスのネットワーク をグループで共同利用することで、顧客から の一括配送の要請に対応するとともに効率化 を図っている。
〇三年に事業統合した当初、純正品につい ては物流管理を工場と営業所で別々に行って いた。
松本工場でつくった製品を三地域の業 務委託先倉庫へ輸送するまでを工場の物流担 当者が管理し、委託先倉庫から自動車メーカ ーの工場へ納めるまでを三地域を管轄するそ れぞれの営業所が管理していた。
統合後まもなくPAS社は、物流の一元管 理を実現するため本社にグローバルロジスティ クスセンター(GLC)を発足させた。
スタ ッフ部門として工場や営業所の物流担当者と 連携しながら物流を統括し、生産・販売活動 で発生する物流コストを全社的に把握してグ ローバルな視点からコスト削減のための改善 策を講じることが狙いだ。
松下電器産業はカーオーディオのデザイン変更に 対応して、通い箱の見直しに取り組んでいる。
自動 車メーカー向けにパネル部分が大きい異型製品の納 入が始まり、従来の通い箱の積載率が著しく悪化し たことがきっかけだ。
消費者の嗜好に合わせて今後 も異型の製品は増えると見て、海外での流通も視野 に入れ標準化を図っていく考えだ。
39 JULY 2008 GLCは国内だけでなく海外拠点も対象に 純正品と市販品の物流をトータルに管理する。
海外では製品の供給とともに工場での部品調 達についてもコスト管理の対象にしている。
既にいくつもの成果があがっている。
自動 車メーカー向けの納入方法は自動車メーカー の工場や納める製品によって違いがある。
それ によって同社の物流拠点の配置も変わる。
例 えばシートヒーターは自動車メーカーではなく シートメーカーに納める。
このように部品サ プライヤーの拠点が納入先となるケースが関 東地区ではとくに多く、これに対応するため にサブ拠点が必要になっている。
サブ拠点ま で含めると関東地区では松本工場からの納入 先が二〇カ所近くになる。
事業統合当初は松本工場から二〇カ所の拠 点へ、それぞれ四トン車を仕立てて輸送して いた。
どの拠点も毎朝の作業開始前に納品す る必要があったためだが、輸送効率は明らか に悪かった。
そこでGLCでは拠点ごとに作 業体制を確認し、問題のないところから一〇 トン車で三、四カ所を回るラウンド走行に切 り替えた。
一方、松本工場から最も遠い中国地区への 輸送では、自動車メーカーの物流子会社の協 力によって通い箱の回収便をほかの部品メー カーと共同利用するルートを構築し、効率化 を図っている。
また海外工場でつくった製品は従来、名古 屋港で陸揚げして松本工場にいったん搬入し、 品質検査を行ってから各地の拠点へ転送して いた。
国内の輸送が錯綜しコスト高になって いた。
このため製品を納入する拠点に最も近 い港で陸揚げし、松本工場を経由せずに直接 輸送する方法に変えた。
検査は海外工場の生産品質が安定してきた こともあり、製品によっては抜き取り検査に 切り替えたり、全品検査する必要のあるもの についても納入代行拠点に製品の検査まで委 託するなどの対応をとっている。
グローバルな視点で改革 最近は原油価格の高騰から、とりわけグロ ーバルな拠点間輸送のコスト上昇が大きな問 題になっている。
GLCでは松下電器本社と の連携を密にし、海外の拠点が新たに販路を 広げる際には松下電器の既存のネットワーク を積極的に活用するよう促すなど、輸送コス ト削減を支援している。
今後は海外工場が調達する部品の選定につ いても、GLCが物流コストの切り口からサ ポートする。
資材調達部門と連携して動き始 めたところだ。
さらには工場の生産品目自体 についても需要地までの輸送を考慮して見直 しを検討していくという。
上野隆GLC所長 は「GLCという組織ができたことで、こう したグローバルな物流改革への端緒が開けた」 と意欲を見せる。
昨年からGLCではコスト削減の一環で荷 姿の改善に取り組んでいる。
一つは自動車メ ーカーへ納めるカーオーディオの通い箱の規格 見直しだ。
自動車メーカーにサプライヤーがカ ーオーディオなどの製品を納める時には通常、 段ボールではなく通い箱を使う。
自動車工場 ではラインサイドのパレットに積まれた通い箱 を一台ずつ積み降ろし、箱の中から製品を取 り出して作業を行う。
この一連の作業がスム ーズに流れるよう、自動車メーカーはサプラ イヤーに対して、荷扱いしやすく、中の製品 を取り出しやすい通い箱で納めるよう求めて いる。
また通い箱には作業性に加えて、品質面で の条件もある。
輸送中の振動によるダメージ を回避し、埃を防ぐなどの機能が求められる。
通い箱の規格を決定するに当たっては、保管 効率や輸送効率とともに、これらの要件を満 たす必要がある。
松下グループでは十年ほど前に自動車メー カー向け製品の通い箱を標準化し、梱包容器 メーカーの規格の一つである「TP343」 に統一している。
カーオーディオには「DI N」と呼ばれるサイズの規格がある。
一DI 上野隆GLC所長 JULY 2008 40 Nの規格は高さが五〇ミリで横幅が一七八ミ リ。
かつてのカーオーディオはこのサイズが主 流で、TP343もこれに準拠している。
TP343の外寸は横幅が五〇三ミリ、縦 幅が三三五ミリ、高さが二八八ミリで、製品 をホールディングするための中敷きを入れて 一DINの製品を六台収納できる。
国際間の 輸送も想定してパレットをはじめトラックやコ ンテナとの整合性にも配慮した規格になって いる。
T11型パレットに一層当たり八ケー ス収まる。
工場の出荷時は八ケースを三層に パレタイズした荷姿で、十トントラックに二〇 パレット分を積載できる。
松下グループでは早い時期に国内外で流通 する主力機種の通い箱をすべてこの標準タイ プに一本化したことが、これまで工場の作業 や輸送・保管など物流の効率化に大きく寄与 してきた。
大型パネルの登場で効率悪化 その後、CDとMDデッキの複合機やDV Dプレーヤー、ナビゲーションシステムなどを 搭載した多機能型のカーオーディオが登場し 普及したことに伴い、新たに二DINという 規格が加わった。
一DINの二台分のサイズ で高さが一〇〇ミリあり、TP343の通い 箱には三台しか収納できない。
従って積載効 率は二分の一に落ちる。
それでも多機能化し て製品の単価も上がったため、入り数の減少 によるコストアップは吸収できていた。
目(TP363)と三つ目(TP443)は、 TP343をそれぞれ横方向と縦方向に一・ 五倍にしたサイズで製品が二台入る。
TP463が、最も効率はいい。
TP34 3の縦幅を二倍にしただけなのでT11型パ レットに従来の半分の四ケースがぴたりと収 まる。
トラックやコンテナの規格とも合致す る。
ほかの二つはT11型の規格に合わず一 回り大きいサイズのパレットに積むことにな る。
その場合トラックへの積載率がTP46 3と比べて一割も落ちる。
最終的にGLCで はTP463を大型パネルの通い箱とする方 ところが昨年から、こうした規格に全く当 てはまらない異型の製品を、某自動車メーカ ーへ納めることになった。
このメーカーが九 州の工場で生産する米国向けの新車に搭載さ れるもので、箱型ではなく、アンプやチュー ナーなどの部分は従来のまま、パネル部分だ けが大きくなった形をしている。
室内デザイ ンに統一感を出すため、オーディオパネルの 色がエアコン吹き出し口などのついたコンソー ルと同色になるよう一体成形した製品だ。
この製品だと、TP343の通い箱には一 台しか入らない。
二DIN規格のものと比 べても入り数は三分の一に減る。
十トン車に 一DINの製品なら二八八〇台積めたのに対 し、大型パネルの異型製品は四八〇台しか積 めない。
単純計算すると輸送効率は五分の一 以下だ。
二DINの規格が出た時とは違って 製品単価がそれほど上がるわけでもないため、 コストアップが大きな打撃になる。
昨今のユーザーの嗜好を反映して、自動車 のモデルチェンジのタイミングで、異型製品へ のデザイン変更を検討しているメーカーはほか にもある。
すでに別のメーカーからも同様の 発注を受けている。
この動きはいずれ海外に も波及すると見て、GLCでは全世界で共通 利用することを前提に異型製品の通い箱の標 準化に着手した。
三つの規格が候補に上がった。
一つ目(T P463)は従来のTP343規格の二倍の サイズで大型パネルの製品が三台入る。
二つ 600 台 総負荷重量 100 100 100 100 3459kg 150 150 150 76 2635kg 150 150 135 82 2847kg 135 135 135 82 2847kg 従来品 1 台/ TP343 3 台/ TP463 2 台/ TP363 2 台/ TP443 輸送 効率 保管 効率 荷役 効率 作業 負荷 TP343 TP463 TP363 8ケース・3 段/ パレット×20=480 4ケース・3 段/ パレット×20=240 6ケース・3 段/ パレット×20=360 図1 3つの規格を比較検討した 41 JULY 2008 針を固めた。
だが納入開始までに自動車メーカーの合意 を得ることはできなかった。
ラインサイドで 通い箱の積み降ろし作業をするときの重量に 問題があったからだ。
TP463に製品を三 台積むと総重量は十三・二キロになる。
労働 基準法で定める上限の二〇キロよりは軽いが、 自動車メーカーでは独自に厳しい基準を設け ており、十三・二キロではその基準を若干オ ーバーしてしまうのだ。
しかし異型製品が一台しか入らない従来の 通い箱をそのまま使うと、ラインサイドの保 管スペースが二DINの製品と比べて三倍も 必要になり、荷役回数も一気に三倍に増えて しまう。
三台入りのTP463の方が、同じ 台数の車を生産するときの総負荷重量はむし ろ少ない。
GLCは自動車メーカーにこの点 を強調し、双方の物流効率化と環境への負荷 軽減という観点からTP463規格の導入に 理解を求めた。
実際、昨年夏から異型製品の納入が始まっ た九州工場向けの輸送では、通い箱の入り数 が減ったことによる影響が、CO2の排出量 に如実に現れていた。
中部地区の拠点を経由 する九州工場向けのルートで、空箱の回収も 含めた輸送によるCO2の排出量が、〇六年 度には九一・〇トンだったのに対して、〇七 年度は一七九・九トンと二倍に増えた。
一方、 自動車工場の側でも荷役効率の悪化が明らか になっていた。
こうした実態を背景に自動車メーカーから 大型通い箱への同意を得ることができ、今年 の三月下旬にTP463の通い箱での納入が スタートした。
TP463に切り替わったこ とで〇八年度はこのルートのCO2排出量を三 〇トン削減できる見込みだ。
TP463はこの自動車メーカーだけでな く、今年から異型製品の納入が始まったもう 一社向けにも導入している。
製品の仕様が違 っても、中敷を変えることにより同じ通い箱 で対応できるようにした。
「この規格を異型製品の標準通い箱として これからグローバルに展開していきたい。
メ ーカーごとに個別に対応するのではなく、環 境やコストの面からこれがベストだという通 い箱を新製品が出る前に作って、我々の方か ら提案できるようにしたい」と上野所長は話 す。
そのためにGLCは五月、商品設計や品質 保証、工場の製造担当、営業所のメンバーを 集めてプロジェクトチームを発足した。
各部門 から問題点を出し合い、重さや強度など通い 箱の最適な基準を設定していく。
中敷につい てもいくつかのパターンに標準化を進める考 えだ。
市販品の梱包サイズも改善 今年に入って、市販品の梱包見直しも実施 している。
品番の読み間違いが多発したため だ。
業務委託先の松下ロジスティクスの現場 を訪ねると「商品によって文字の大きさが違 っていて読みにくい」という声が耳に入った。
そこで製品の開発設計を担当した部署にこ の問題をぶつけたところ、それまで設計担当 者が品番の表記や梱包サイズを決める際に、物 流の効率性を全く考慮に入れていなかったこ とが分かった。
この一件をきっかけに、六月 に発売予定の新製品について梱包仕様を一か ら見直すことにした。
仕様の検討には設計担 当とGLCのほかに松下ロジスティクスのメ ンバーも加わった。
この見直しによって大きく変わったのは梱 包のサイズだ。
それまでは二DINの規格を 一DINずつ並べて緩衝材で固定し過剰梱包 していたのに対して、新製品は二DINを一 体で梱包する形に変えた。
これにより梱包サ イズはひと回り小さくなり、従来ならパレッ トに四〇台しか積めなかったのが、新モデル は五六台積めるようになった。
GLCの試算によれば、松本工場から七拠 点を経て全国に供給するまでの輸配送で、旧 モデルに対して新モデルはCO2の排出量を年 間に二三・三トン削減できるという。
「通い箱や梱包一つとっても改善の要素は いくらもある。
地道に改善を積み重ねること でコストやCO2をもっと減らせる」と上野所 長。
〇八年度は荷姿改善による効果を含め〇 六年度比で一一七トンのCO2排出量削減を 目指している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
二〇〇三年一 月に行われた松下グループの事業再編に伴い、 松下電器のカーエレクトロニクス事業推進セ ンター、営業本部、松下通信工業のカーマル チメディア事業、九州松下電器のカーナビ事 業などを統合して発足した。
PAS社の国内生産拠点は現在、長野県の 松本工場一カ所で、開発設計拠点は横浜にあ る。
近年では米国や中国、タイなど海外への 生産移管が進み、海外工場から日本市場へ供 給する製品が増えている。
車載用機器には大きく二つの流通チャネル がある。
自動車メーカーの純正品として指定 された工場に納めるパターンと、パナソニック の自社ブランド製品として量販店やカー用品 専門店などの小売店を通じ一般ユーザーに販 売するパターンだ。
チャネルによって物流体制も異なる。
純正 品は、納品先となる自動車メーカーの工場の 近辺に在庫を置いている。
部品の納入代行基 地を運営する物流会社に、在庫管理やピッキ ング、工場への納入業務を委託している。
自 動車メーカーの工場の立地に合わせ、PAS 社では関東・中部・中国の各地区に業務委託 先を確保し、それぞれの工場が求める多数回 納入に対応している。
一方、小売店ルートの市販品は、札幌・仙 台・草加(埼玉)・小牧・大阪・広島・福岡 の計七カ所の物流センターに在庫を持ち、こ こから各県に一〜二カ所配置しているエリア 拠点を経由して小売店へ配送している。
小売店ルートの物流センターはいずれもグ ループ会社の松下ロジスティクスが運営し、P AS社の製品だけでなく家電製品など松下グ ループの他の製品も扱っている。
センターか らの配送も松下ロジスティクスのネットワーク をグループで共同利用することで、顧客から の一括配送の要請に対応するとともに効率化 を図っている。
〇三年に事業統合した当初、純正品につい ては物流管理を工場と営業所で別々に行って いた。
松本工場でつくった製品を三地域の業 務委託先倉庫へ輸送するまでを工場の物流担 当者が管理し、委託先倉庫から自動車メーカ ーの工場へ納めるまでを三地域を管轄するそ れぞれの営業所が管理していた。
統合後まもなくPAS社は、物流の一元管 理を実現するため本社にグローバルロジスティ クスセンター(GLC)を発足させた。
スタ ッフ部門として工場や営業所の物流担当者と 連携しながら物流を統括し、生産・販売活動 で発生する物流コストを全社的に把握してグ ローバルな視点からコスト削減のための改善 策を講じることが狙いだ。
松下電器産業はカーオーディオのデザイン変更に 対応して、通い箱の見直しに取り組んでいる。
自動 車メーカー向けにパネル部分が大きい異型製品の納 入が始まり、従来の通い箱の積載率が著しく悪化し たことがきっかけだ。
消費者の嗜好に合わせて今後 も異型の製品は増えると見て、海外での流通も視野 に入れ標準化を図っていく考えだ。
39 JULY 2008 GLCは国内だけでなく海外拠点も対象に 純正品と市販品の物流をトータルに管理する。
海外では製品の供給とともに工場での部品調 達についてもコスト管理の対象にしている。
既にいくつもの成果があがっている。
自動 車メーカー向けの納入方法は自動車メーカー の工場や納める製品によって違いがある。
それ によって同社の物流拠点の配置も変わる。
例 えばシートヒーターは自動車メーカーではなく シートメーカーに納める。
このように部品サ プライヤーの拠点が納入先となるケースが関 東地区ではとくに多く、これに対応するため にサブ拠点が必要になっている。
サブ拠点ま で含めると関東地区では松本工場からの納入 先が二〇カ所近くになる。
事業統合当初は松本工場から二〇カ所の拠 点へ、それぞれ四トン車を仕立てて輸送して いた。
どの拠点も毎朝の作業開始前に納品す る必要があったためだが、輸送効率は明らか に悪かった。
そこでGLCでは拠点ごとに作 業体制を確認し、問題のないところから一〇 トン車で三、四カ所を回るラウンド走行に切 り替えた。
一方、松本工場から最も遠い中国地区への 輸送では、自動車メーカーの物流子会社の協 力によって通い箱の回収便をほかの部品メー カーと共同利用するルートを構築し、効率化 を図っている。
また海外工場でつくった製品は従来、名古 屋港で陸揚げして松本工場にいったん搬入し、 品質検査を行ってから各地の拠点へ転送して いた。
国内の輸送が錯綜しコスト高になって いた。
このため製品を納入する拠点に最も近 い港で陸揚げし、松本工場を経由せずに直接 輸送する方法に変えた。
検査は海外工場の生産品質が安定してきた こともあり、製品によっては抜き取り検査に 切り替えたり、全品検査する必要のあるもの についても納入代行拠点に製品の検査まで委 託するなどの対応をとっている。
グローバルな視点で改革 最近は原油価格の高騰から、とりわけグロ ーバルな拠点間輸送のコスト上昇が大きな問 題になっている。
GLCでは松下電器本社と の連携を密にし、海外の拠点が新たに販路を 広げる際には松下電器の既存のネットワーク を積極的に活用するよう促すなど、輸送コス ト削減を支援している。
今後は海外工場が調達する部品の選定につ いても、GLCが物流コストの切り口からサ ポートする。
資材調達部門と連携して動き始 めたところだ。
さらには工場の生産品目自体 についても需要地までの輸送を考慮して見直 しを検討していくという。
上野隆GLC所長 は「GLCという組織ができたことで、こう したグローバルな物流改革への端緒が開けた」 と意欲を見せる。
昨年からGLCではコスト削減の一環で荷 姿の改善に取り組んでいる。
一つは自動車メ ーカーへ納めるカーオーディオの通い箱の規格 見直しだ。
自動車メーカーにサプライヤーがカ ーオーディオなどの製品を納める時には通常、 段ボールではなく通い箱を使う。
自動車工場 ではラインサイドのパレットに積まれた通い箱 を一台ずつ積み降ろし、箱の中から製品を取 り出して作業を行う。
この一連の作業がスム ーズに流れるよう、自動車メーカーはサプラ イヤーに対して、荷扱いしやすく、中の製品 を取り出しやすい通い箱で納めるよう求めて いる。
また通い箱には作業性に加えて、品質面で の条件もある。
輸送中の振動によるダメージ を回避し、埃を防ぐなどの機能が求められる。
通い箱の規格を決定するに当たっては、保管 効率や輸送効率とともに、これらの要件を満 たす必要がある。
松下グループでは十年ほど前に自動車メー カー向け製品の通い箱を標準化し、梱包容器 メーカーの規格の一つである「TP343」 に統一している。
カーオーディオには「DI N」と呼ばれるサイズの規格がある。
一DI 上野隆GLC所長 JULY 2008 40 Nの規格は高さが五〇ミリで横幅が一七八ミ リ。
かつてのカーオーディオはこのサイズが主 流で、TP343もこれに準拠している。
TP343の外寸は横幅が五〇三ミリ、縦 幅が三三五ミリ、高さが二八八ミリで、製品 をホールディングするための中敷きを入れて 一DINの製品を六台収納できる。
国際間の 輸送も想定してパレットをはじめトラックやコ ンテナとの整合性にも配慮した規格になって いる。
T11型パレットに一層当たり八ケー ス収まる。
工場の出荷時は八ケースを三層に パレタイズした荷姿で、十トントラックに二〇 パレット分を積載できる。
松下グループでは早い時期に国内外で流通 する主力機種の通い箱をすべてこの標準タイ プに一本化したことが、これまで工場の作業 や輸送・保管など物流の効率化に大きく寄与 してきた。
大型パネルの登場で効率悪化 その後、CDとMDデッキの複合機やDV Dプレーヤー、ナビゲーションシステムなどを 搭載した多機能型のカーオーディオが登場し 普及したことに伴い、新たに二DINという 規格が加わった。
一DINの二台分のサイズ で高さが一〇〇ミリあり、TP343の通い 箱には三台しか収納できない。
従って積載効 率は二分の一に落ちる。
それでも多機能化し て製品の単価も上がったため、入り数の減少 によるコストアップは吸収できていた。
目(TP363)と三つ目(TP443)は、 TP343をそれぞれ横方向と縦方向に一・ 五倍にしたサイズで製品が二台入る。
TP463が、最も効率はいい。
TP34 3の縦幅を二倍にしただけなのでT11型パ レットに従来の半分の四ケースがぴたりと収 まる。
トラックやコンテナの規格とも合致す る。
ほかの二つはT11型の規格に合わず一 回り大きいサイズのパレットに積むことにな る。
その場合トラックへの積載率がTP46 3と比べて一割も落ちる。
最終的にGLCで はTP463を大型パネルの通い箱とする方 ところが昨年から、こうした規格に全く当 てはまらない異型の製品を、某自動車メーカ ーへ納めることになった。
このメーカーが九 州の工場で生産する米国向けの新車に搭載さ れるもので、箱型ではなく、アンプやチュー ナーなどの部分は従来のまま、パネル部分だ けが大きくなった形をしている。
室内デザイ ンに統一感を出すため、オーディオパネルの 色がエアコン吹き出し口などのついたコンソー ルと同色になるよう一体成形した製品だ。
この製品だと、TP343の通い箱には一 台しか入らない。
二DIN規格のものと比 べても入り数は三分の一に減る。
十トン車に 一DINの製品なら二八八〇台積めたのに対 し、大型パネルの異型製品は四八〇台しか積 めない。
単純計算すると輸送効率は五分の一 以下だ。
二DINの規格が出た時とは違って 製品単価がそれほど上がるわけでもないため、 コストアップが大きな打撃になる。
昨今のユーザーの嗜好を反映して、自動車 のモデルチェンジのタイミングで、異型製品へ のデザイン変更を検討しているメーカーはほか にもある。
すでに別のメーカーからも同様の 発注を受けている。
この動きはいずれ海外に も波及すると見て、GLCでは全世界で共通 利用することを前提に異型製品の通い箱の標 準化に着手した。
三つの規格が候補に上がった。
一つ目(T P463)は従来のTP343規格の二倍の サイズで大型パネルの製品が三台入る。
二つ 600 台 総負荷重量 100 100 100 100 3459kg 150 150 150 76 2635kg 150 150 135 82 2847kg 135 135 135 82 2847kg 従来品 1 台/ TP343 3 台/ TP463 2 台/ TP363 2 台/ TP443 輸送 効率 保管 効率 荷役 効率 作業 負荷 TP343 TP463 TP363 8ケース・3 段/ パレット×20=480 4ケース・3 段/ パレット×20=240 6ケース・3 段/ パレット×20=360 図1 3つの規格を比較検討した 41 JULY 2008 針を固めた。
だが納入開始までに自動車メーカーの合意 を得ることはできなかった。
ラインサイドで 通い箱の積み降ろし作業をするときの重量に 問題があったからだ。
TP463に製品を三 台積むと総重量は十三・二キロになる。
労働 基準法で定める上限の二〇キロよりは軽いが、 自動車メーカーでは独自に厳しい基準を設け ており、十三・二キロではその基準を若干オ ーバーしてしまうのだ。
しかし異型製品が一台しか入らない従来の 通い箱をそのまま使うと、ラインサイドの保 管スペースが二DINの製品と比べて三倍も 必要になり、荷役回数も一気に三倍に増えて しまう。
三台入りのTP463の方が、同じ 台数の車を生産するときの総負荷重量はむし ろ少ない。
GLCは自動車メーカーにこの点 を強調し、双方の物流効率化と環境への負荷 軽減という観点からTP463規格の導入に 理解を求めた。
実際、昨年夏から異型製品の納入が始まっ た九州工場向けの輸送では、通い箱の入り数 が減ったことによる影響が、CO2の排出量 に如実に現れていた。
中部地区の拠点を経由 する九州工場向けのルートで、空箱の回収も 含めた輸送によるCO2の排出量が、〇六年 度には九一・〇トンだったのに対して、〇七 年度は一七九・九トンと二倍に増えた。
一方、 自動車工場の側でも荷役効率の悪化が明らか になっていた。
こうした実態を背景に自動車メーカーから 大型通い箱への同意を得ることができ、今年 の三月下旬にTP463の通い箱での納入が スタートした。
TP463に切り替わったこ とで〇八年度はこのルートのCO2排出量を三 〇トン削減できる見込みだ。
TP463はこの自動車メーカーだけでな く、今年から異型製品の納入が始まったもう 一社向けにも導入している。
製品の仕様が違 っても、中敷を変えることにより同じ通い箱 で対応できるようにした。
「この規格を異型製品の標準通い箱として これからグローバルに展開していきたい。
メ ーカーごとに個別に対応するのではなく、環 境やコストの面からこれがベストだという通 い箱を新製品が出る前に作って、我々の方か ら提案できるようにしたい」と上野所長は話 す。
そのためにGLCは五月、商品設計や品質 保証、工場の製造担当、営業所のメンバーを 集めてプロジェクトチームを発足した。
各部門 から問題点を出し合い、重さや強度など通い 箱の最適な基準を設定していく。
中敷につい てもいくつかのパターンに標準化を進める考 えだ。
市販品の梱包サイズも改善 今年に入って、市販品の梱包見直しも実施 している。
品番の読み間違いが多発したため だ。
業務委託先の松下ロジスティクスの現場 を訪ねると「商品によって文字の大きさが違 っていて読みにくい」という声が耳に入った。
そこで製品の開発設計を担当した部署にこ の問題をぶつけたところ、それまで設計担当 者が品番の表記や梱包サイズを決める際に、物 流の効率性を全く考慮に入れていなかったこ とが分かった。
この一件をきっかけに、六月 に発売予定の新製品について梱包仕様を一か ら見直すことにした。
仕様の検討には設計担 当とGLCのほかに松下ロジスティクスのメ ンバーも加わった。
この見直しによって大きく変わったのは梱 包のサイズだ。
それまでは二DINの規格を 一DINずつ並べて緩衝材で固定し過剰梱包 していたのに対して、新製品は二DINを一 体で梱包する形に変えた。
これにより梱包サ イズはひと回り小さくなり、従来ならパレッ トに四〇台しか積めなかったのが、新モデル は五六台積めるようになった。
GLCの試算によれば、松本工場から七拠 点を経て全国に供給するまでの輸配送で、旧 モデルに対して新モデルはCO2の排出量を年 間に二三・三トン削減できるという。
「通い箱や梱包一つとっても改善の要素は いくらもある。
地道に改善を積み重ねること でコストやCO2をもっと減らせる」と上野所 長。
〇八年度は荷姿改善による効果を含め〇 六年度比で一一七トンのCO2排出量削減を 目指している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
