ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年8号
ケース
物流事業化 スタートトゥデイ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2008  40 物流事業化 スタートトゥデイ アパレルのネット通販で急成長 自前の物流を武器に新事業に進出 六八〇のブランドが集う街  スタートトゥデイが運営するファッション通 販サイト「ZOZOTOWN」のトップペー ジを開くと、さまざまなショップが軒を連ね た仮想の街が現れる。
ヨーロッパの古いホテ ルを模した建物があるかと思えば、その先に は現代アートのような奇抜な建造物、お菓子 でできた家まである。
どれも個性的だ。
 気になる店をクリックしてみる。
その店の 新着アイテムや限定販売品などの情報が写真 入りで掲載されている。
イメージムービーで 店内の様子を見ることもできる。
広々とした ガーデンテラスのアプローチ、サンルームから 明るい光が差し込み、Tシャツやジャケットが ディスプレイされた店内は落ち着いた雰囲気 に包まれている。
 球形をした建物の全体が水槽になっていて、 商品棚の周りを魚が泳いでいる店もある。
バ ーチャルショップならではの演出だ。
こうし た店内を一軒一軒のぞくだけでも楽しい。
街 の情景は現実の時間帯に合わせて変わってい く。
気がつけば茜色の空はいつのまにか群青 色になり星が輝き始めていた。
 「ZOZOTOWN」には現在、九二の店 舗が出店している。
六八〇のブランドを扱い 常時二万アイテムを揃えている。
高感度な若 者に人気の高いカジュアルブランドばかりだ。
八一万人いるサイト会員の平均年齢は二七・ 四歳。
男女の比率はほぼ半々。
過去一年以内 に商品購入実績のあるアクティブ会員が四割 を占めており、一人当たりの年間平均購入額 は五万円を超える。
 スタートトゥデイが「ZOZOTOWN」 を立ち上げたのは二〇〇四年の十二月。
わず か三年後の〇七年度には商品の取扱高が一七 〇億円となり、ファッション分野で国内最大 規模のショッピングサイトに成長した。
 会社設立は今から十年前の一九九八年だ。
当初はハードコア・パンクと呼ばれる音楽ジャ ンルの輸入CDやレコードのカタログ販売を 手がけていた。
同社の前澤友作社長は元ロッ クミュージシャンで、バンド活動で渡米した際 スタートトゥデイはファッション通販サイトの運 営で急成長を遂げたベンチャー企業だ。
自前主義を 貫き、物流もシステム設計からオペレーションまで すべて自社で手がける。
今後は同社の物流機能やシ ステムを、ECサイトの運営を目指すアパレルメーカ ーなどに提供する新規事業にも乗り出す計画で、今 年3月に物流拠点の拡充を行った。
180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 170.9 億 33.8% 66.2% 40.5% 64.8% 59.5% 35.2% 117 万2,413 件 スタートトゥデイの事業取扱高と出荷件数 (単位:億円) 04 年05 年06 年07 年度 ( 単位:千件) 事業取扱高 出荷件数 《事業取扱高》 《出荷件数》 自社販売受託販売 41  AUGUST 2008 に日本ではあまり知られていないバンドのC Dをライブコンサート会場などで入手し、知 人らに販売するようになったのが事業化のき っかけだ。
 
達槌稜笋聾コミで評判を呼び、二〇〇〇 年にはカタログからオンライン販売に切り替え た。
さらに、CDだけでなく新たにアパレル商 材にも着目。
CDのときと同様に?自分達の 好きなものを紹介したい?というスタンスで、 ストリート系・裏原宿系のメンズファッション を対象にネットでの販売に乗り出した。
原宿 や代官山のブランドに出店を呼びかけ、〇〇 年一〇月にファッションオンラインショップの 一号店をオープンした。
 原宿や代官山のショップで売られている人 気ブランドの商品は生産数量が少なく、当時 こういった商品をネットで販売するケースはほ とんどなかった。
商品を卸す側にはブランド イメージが崩れることへの警戒心も強かった。
 それは今でも基本的に変わっていないとい う。
出店への理解を得るために同社は、商品 の仕入れをすべて買い取りにして自社で在庫 リスクを負う取引形態とし、ブランドイメー ジに合うようサイト上の店舗のデザインにと ことんこだわる姿勢を貫いている。
 通常なら原宿のショップに開店前から並ば ないとなかなか手に入らない希少性の高い商 品が、同社のオンラインショップを利用すれ ば手軽に購入できる。
顧客の強い支持を得て、 オンラインショップにはその後レディースやキ ッズ向けブランドも加わり、店舗数は順調に 拡大していった。
やがてこれらの店が一つの サイトに集まり街ができた。
それが「ZOZ OTOWN」だ。
大手セレクトショップも出店  この頃からユナイテッドアローズやビーム ス、シップスといった大手セレクトショップも 「ZOZOTOWN」に注目し、テナントと して出店するようになった。
これに伴い同社 は、従来の買い取りによる自社販売だけでな く、新たに受託販売方式を取り入れた。
 それまでの取引先については従来通り、年 に二回の受注会で同社のバイヤーが商品を買 い付けて自社で販売する。
需要予測を誤った 時の品切れや在庫リスクは自ら負わなければ ならない。
 一方、大手セレクトショップとの取引では、 商品を仕入れずにオンラインショップでの販売 を受託し手数料を受け取る。
大手セレクトシ ョップは商品数が多く、マーチャンダイジング も自社で行う。
販売機会ロスを防ぐために売 り上げ動向を見ながら商品を補充していく店 舗運営を志向するため受託販売形態をとるこ とにした。
ただし自社販売と同様に商品の在 庫はスタートトゥデイの倉庫で預かる。
物流 をはじめとするフルフィルメントのオペレーシ ョンはすべて受け持つ。
 受託販売を開始した初年度にあたる〇六年 三月期は、自社販売と合わせた「ZOZOT OWN」の取扱高が四六億円で、このうち受 託販売の比率は三五%だった。
これが〇八年 三月期には取扱高一七〇億円のうち受託販売 が六六%を占め比率が逆転している。
同様に 店舗数も現在の九二店舗のうち五九店舗が受 託販売だ。
 受託販売の増加とともに同社の成長も加速 した。
自社販売の売り上げに受託販売の手数 料収入などを加えた〇八年三月期の売上高は 八五億円で、〇六年三月期実績のおよそ二・ 五倍になっている。
〇七年十二月には東証マ ザーズへ株式上場も果たした。
新入社員は全員、最初に物流現場に配属 される。
庫内の棚まで特注し、デザイン性 に配慮している。
AUGUST 2008  42  この間に物量も大幅に伸びた。
〇六年八月 にはそれまでオフィス兼用だった倉庫のスペ ースが足りなくなり、千葉県内に一五〇〇坪 の倉庫を借りた。
さらに今年三月には、習志 野市茜浜に完成した「プロロジスパーク習志 野?」の二フロア三五〇〇坪を賃借して移転 した。
 一般に、ネット通販に進出した企業が事業 を拡大する際には物流業務を外部に委託する ケースが多い。
だが同社は、店舗デザインの 制作だけでなくフルフィルメントについても あくまで自前にこだわり、物流システムの構 築からオペレーションまですべて自社で手が ける方針を堅持している。
 同社には現在アルバイトを含めて二〇〇人 の社員がいる。
その多くが「ZOZOTO WN」の顧客だった人たちで、平均年齢は二 五・一歳。
新規に採用されるとまずはフルフ ィルメント部に配属されて、通常一年近く物 流業務を担当する。
オペレーションを通じて 商品の知識を身につけさせ、ブランドを見る 目を養わせるためだ。
現在、フルフィルメン ト部には一〇〇人が所属している。
早くから単品管理を導入  同社の物流センターには常時二万アイテム、 三〇万点の商品が保管されている。
商品の入 荷は春夏と秋冬の二シーズンに分かれ、ピー ク時には日に一万点近い入荷がある。
入荷し た商品にはすべて自社管理コードをつけ単品 販には不向きと言われる。
試着や素材感を確 認できないところが最大の弱点だ。
にもかか わらず同社のネット販売がスタート当初から 順調に顧客を獲得できたのは、扱う商品の希 少性と顧客層の特異性に要因があった。
 フルフィルメント部の梅澤孝之ディレクタ ーは、同社がファッションネット通販を開始し た頃からのサイトの顧客でもある。
扱う商品 に惹かれて四年前に入社したという同社では 典型的な社員の一人だ。
ディレクターは当時 のヘビーユーザーの心境を「どうしても欲しか った商品がネットで買えるというだけでイン パクトがあり、ワクワク感でいっぱいだった」 と代弁する。
 だがブランドの数が増えるとともに顧客層も 変わってきた。
同社には?ユーザー社員?が 多く、顧客の声が届きやすい環境にある。
そ のなかで、かつてのようにブランド目当ての 購入者ばかりではなく、購入時にサイズを気 にするユーザーもかなり増えていることがわ かってきた。
このため近年では、サイトで商 品の情報をいかにわかりやすく紹介するかに 力を注いでいる。
それを担っているのが物流 センターだ。
 物流センターでは、新規に入荷した商品を 棚に入庫する前に、一点ずつ写真撮影し、サ イズごとに採寸を行う。
入荷検品が済むと、 クリエーターと呼ぶフルフィルメント部のスタ ッフがスタジオでまず商品の撮影を行う。
デ ザインや色・柄、モデル着用時のイメージな 管理を行っている。
 商品を発注する際にバイヤーが商品情報を コンピューターに登録し、メーカーのブラン ド品番を自社の管理コードに置き換えておく。
物流センターでは入荷・検品時に自社管理コ ードのバーコードが入った「タックシール」を 数量分発行し、これを商品単品につけてバー コードを読みながら入出庫・在庫管理や作業 の進捗管理を行う。
 オフィス内に商品を保管していた時代から、 試行錯誤しながら物流システムの高度化に努 めてきた。
盆傾Щ歇萃役経営管理本部長は 「アパレル商材を対象にしたB to Cの物流シス テムとしてはかなり水準が高いと思う。
オペ レーションのノウハウも現場に蓄積されてお り、外部委託するよりはるかに効率よく運営 できる自信がある」と言い切る。
 物流センターでは「写真撮影」や「採寸」 といった、一般の物流拠点では見られない業 務も受け持っている。
これもファッションオン ラインショップ「ZOZOTOWN」を運営 するうえでは大切な工程だ。
 一般にファッション性の高い商品はネット通 盆傾Щ歇萃役経営管理本 部長 43  AUGUST 2008 どさまざまな角度から商品の情報を伝えるた め、一つの商品につき平均六〜七カットを撮 る。
その際に生地の手触りや風合いなどの素 材感についても、クリエーターが感じるまま にコメントをメモする。
 撮影が終了すると画像を処理してサイトに 掲載するための編集作業が始まり、これに並 行して商品の採寸が行われる。
S・M・Lな どのサイズごとに肩幅・袖丈・着丈・胸囲な どを順に計測する。
パンツなどはウエスト・ ヒップ・股上・股下・太もも・裾回りまで細 かく採寸を行う。
採寸の終わった商品をスト ックヤードへ入庫する一方、バイヤーが画像 やコメント、サイズなどのデータを最終チェッ クして「ZOZOTOWN」のサイトに商品 をアップし、販売を開始する。
 ネット販売では商品の注文が二四時間いつ でも入る。
同社では、午前八時までに受けた オーダーについてはその日のうちにピッキン グ・出荷作業を行い、宅配便で発送している。
 年間の出荷件数は一一七万件(〇七年度実 績)で、一オーダー当たりの平均ピース数は 一・五九。
この数字から同社のサイトの購買 傾向として「一点買い(単品オーダー)」の 比率が高いことが窺える。
これを念頭に置い て、単品オーダーのピッキング・梱包・出荷 までを最短の動線で短時間に処理するオペレ ーションの仕組みを作った。
 これによって作業効率が高まった半面、「複 数買い」オーダーが増えると生産性が低下し てしまうという問題に直面した。
そこで、今 回の物流センターの移転を機に、複数買いの ピッキングに種まき方式によるシステムを新た に導入し、「一点買い」とはオペレーションを 別にした。
新システムの導入によって、複数 買いのピッキング時間が二分の一に縮まるな ど効果が上がっているという。
取引先と情報連携  昨年からは受託販売の取引先と情報の連携 に取り組んでいる。
入荷する商品の情報を取引 先に事前に登録してもらい、物流センターで入 荷処理をする際にこの情報を活用して業務を効 率化する。
一方、物流センターの在庫情報も取 引先と共有する。
取引先は在庫情報を見なが ら売れ筋商品の追加発注を行い、販売機会の 損失防止に役立てることができる。
昨年七月 にユナイテッドアローズと開始し、これまでに 大手四社との情報連携を実現している。
 同社がこのように、物流機能の拡充や取引 先との情報連携を相次いで進め事業基盤の強 化を図るのは、新たな事業展開への布石でも ある。
今年五月にEC事業の支援を目的とす る子会社を設立した。
アパレルメーカーが単 独でオンラインショップの運営に乗り出す際 に、同社の物流機能やサイト運営システムな どを提供し、サイトデザインの制作からフルフ ィルメント関連業務までを支援する会社だ。
 中核事業であるファッションオンラインシ ョップ「ZOZOTOWN」は既に店舗数が 九〇を超えた。
「ZOZOのブランドイメージ を維持するためには、この先店の数を増やし ても一〇〇店くらいまでが限度」(盆啓萃 役)と同社では見ている。
 今後も成長を続けるためには新たな収益源 の確保が必要になる。
その一つとして着目し たのがEC支援事業だ。
支援という形でなら、 「ZOZOTOWN」のブランドイメージに合 わない商品も対象に事業領域を広げることが できる。
物流もシステムも自前にこだわって きた同社だからこそ、こうした事業化の発想 が生まれた。
 「ピッキング方法の改善で(購買傾向の違う サイトの物流業務を受託する際の)課題も克 服できた。
現状のシステムで外部向けにも充 分対応が可能だ」と梅澤ディレクターは自信 を見せる。
 価格帯の比較的高いブランドを多数そろえ たサイトとして、「ZOZOTOWN」はア パレルEC市場でゆるぎない地位を確立した。
今度はその運営ノウハウを武器に新たなビジ ネスモデルに挑む。
(フリージャーナリスト・内田三知代) フルフィルメント部の梅澤 孝之ディレクター

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