ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年8号
ケース
現場改善 SBSホールディングス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2008  44 現場改善 SBSホールディングス ダイエー出身の改善活動のプロを招き 開始1年半で「物流合理化賞」を受賞 トヨタ流改善の新興企業への適用  「一年半近くやってきたのに、またやり直 しか。
ダイエーの再生はちょっと時間がかか りそうだな」──。
二〇〇六年の夏、ダイエ ーの物流子会社ロジワンの取締役という立場 ながら、親会社の依頼で小売りの店舗オペレ ーションを対象とする改善活動に注力してい た雨宮路男氏はそう感じた。
 当時のダイエーは、産業再生機構の影響下 で経営再建を進めていた。
日本ヒューレット・ パッカード出身の樋口泰行ダイエー社長(現マ イクロソフト日本法人社長)ら経営陣は、既 に多くの実績を積み上げていたロジワンの改 善活動を高く評価。
このノウハウを親会社の 店舗オペレーションの改善にも利用しようと 考えた。
 かつてダイエーに在籍していた時代にIE (インダストリアル・エンジニアリング)の担 当者として店舗運営に携わった経験をもって いた雨宮氏もこれを快諾し、樋口社長などが 主導する「店舗オペレーション改善プロジェク ト」に参画した。
まずは全国一〇カ所のモデル 店舗を対象に改善活動を実施することになり、 雨宮氏も五、六カ所を指導していた。
 ところが〇六年八月、産業再生機構が保有 していたダイエー株、三三・六%をすべて丸 紅に譲渡することを決定。
経営再建の主導権 は、樋口氏を社長の座に引っ張り出した投資 ファンドのアドバンテッジパートナーズから丸 紅に移ることが明らかになった。
 これを受けて樋口社長は、一定の役割を終 えたと判断して自ら辞任を表明(樋口泰行著 『変人力』ダイヤモンド社より)。
結果として、 店舗オペレーション改善プロジェクトも宙に浮 いてしまった。
地道な改善活動が経営層の都 合で頓挫してしまうことに、雨宮氏は徒労感 を禁じえなかった。
 ちょうどその頃、SBSホールディングス の鎌田正彦社長から、改善担当の役員として の入社を請われていた。
鎌田社長の壮大な意 気込みと、トップ自ら改善活動をグループの 武器にしようとしている姿勢に共感した。
雨 宮氏としてはダイエーを最後まで支えたい気 持ちもあったが、敬愛していたダイエー創業 者の中内㓛氏は前年にすでに亡くなっていた。
転職を決意し、〇六年十一月にSBS入りす ることになった。
 
咤贈咾任浪甬遒法▲哀襦璽彜覿箸トヨタ 系企業出身のコンサルタントによる改善指導 を受けた経験があった。
いったんは成功した かに見えた。
ところがコンサルタントが去る と、タガが外れたように現場は元の状態に戻 ロジワンでトヨタ流の現場改善を主導しいた人 物を昨年11月に招聘し、持ち株会社に「改善統括 部」を新設した。
相次ぐ企業買収で急拡大したグ ループの求心力を高める手段の一つとして改善活動 を位置づけている。
着手からわずか1年半で、日本 ロジスティクスシステム協会(JILS)の「物流合理 化賞」を受賞するという成果を手にした。
SBSホールディングスの雨 宮路男執行役員 45  AUGUST 2008 ってしまった。
この経験も踏まえて白羽の矢 を立てたのが、過去七年間にわたる活動でロ ジワンにトヨタ流の改善活動を定着させてい た雨宮氏だった。
 ダイエーが一九九九年にトヨタにコンサル を依頼した関係で、ロジワンも一年間だけト ヨタの担当者から正式に指導を受けた。
これ を機にトヨタ流の改善活動をスタートし、そ の後はほぼロジワン独力で活動を推進。
ダイ エーグループの中で随一の成果を積み上げて いった。
日本ロジスティクスシステム協会(J ILS)が主催する表彰制度の常連にもなり、 〇六年度の「物流合理化賞」も受賞している。
こうした手腕に鎌田社長も注目した。
改善活動の「三カ年計画」を策定  
咤贈咼曄璽襯妊ングスは、佐川急便出身 の鎌田氏が八七年に設立した関東即配という 企業を前身としている。
当初は軽トラックを 使った即日配達サービスや環境物流などを手 掛ける物流ベンチャーとして頭角を現した。
〇 三年にジャスダックに上場して資金を得てか らは積極的なM&Aに打って出た。
 〇四年に雪印物流(現フーズレック)を買 収したのを皮切りに、〇五年には東急ロジス ティクス(現ティーエルロジコム)、〇六年に は生協の物流に強い全通を傘下に加えた。
こ れによって上場時には一九四億円(〇三年一 二月期)だった連結売上高が、一四七一億円 (〇七年一二月期)に拡大。
グループ企業も 約四〇を数えるほどになった。
 旺盛な成長意欲は一向に衰える気配がない。
鎌田社長は「数年のうちに三〇〇〇億円まで 伸ばすことを計画して」おり、いずれは「企 業数一〇〇社、連結売上高五〇〇〇億円の体 制を構築する」という野心的な目標を公言し ている。
そのSBSがトヨタ流の改善活動に 眼をつけたのは、急拡大する事業基盤を現場 レベルで底上げし、作業の標準化などによっ てグループ全体の実力を強化したいという狙 いがあるためだ。
 もっとも〇六年十一月一日に雨宮氏が入社 した時点では、すべてが白紙の状態だった。
組 織をゼロから立ち上げ、グループ内に改善活動 を定着させることを求められた。
鎌田社長と 雨宮氏が組織のあり方を相談した結果、持ち 株会社であるSBSホールディングスにグル ープ全体を視野にいれた「改善統括部」を設 置。
そして各事業会社の中に「改善推進部」 といった名称で専門部署を配して改善の実務 にあたることにした。
 改善活動を最初に本格化する対象としてテ ィーエルロジコムを選び、雨宮氏が同社の改善 推進部長(執行役員)を兼務することになっ た。
発足時の体制は極めて小規模だった。
S BSの改善担当者は雨宮氏と若手社員の二人 だけ。
ティーエルにも雨宮氏を含めて三人し かいなかった。
雨宮氏以外の三人のメンバー はいずれも二〇代の若手ばかりで、改善活動 の経験はまったくなかった。
 まず一カ月かけて、雨宮氏は全国六〇カ所 余りのティーエルの事業所をすべて見てまわ った。
自分の目と耳で現場の状況を確認する ためだ。
そして十二月中旬になると、ロジワ ン出身の改善のスペシャリストたちが五人、雨 宮氏の後を追うかたちでSBSの「改善統括 部」に合流した。
これで改善活動を推進して いくためのコアの人材が揃った。
 〇六年の十二月いっぱいかけて、「改善活 動の三カ年計画」をグループ戦略として策定 「改善活動3カ年計画」の進捗状況 予定 改善事例発表会 ティーエルロジコム フーズレック 全通 2007 年度 6/23(土) 1/12(土) 6/21(土) 1/10 (土) 6月 上期 6モデル支店 (19チーム) 62 支店 (102チーム) 63 支店 (95チーム) 9モデル営業所 (21チーム) 44 営業所 (51チーム) 3モデル事業所 (4チーム) 25 事業所 (38チーム) 29 事業所 4 事業所 9 事業所 4 事業所 179 3モデル事業所 (5チーム) 26 事業所 (30チーム) 1モデル事業所 (2チーム) 3モデル事業所 (3チーム) 2モデル事業所 (2チーム) 164 (221チーム) 77 (132チーム) 6 (19チーム) 下期上期下期 2009 年度 上期下期 SBSロジコム 【関東即配事業】 合計(事業所数) SBSポストウェイ 【メーリングサービス】 総合物流システム 【KR 事業】 2008年度 ティーエルグループ 3社 AUGUST 2008  46 した。
初年度となる〇七年度は、上期・下期 の二段階に分けてティーエルに改善活動を普 及させる。
〇八年度からはフーズレックなど 他の事業会社に活動を拡大していき、三年間 でグループ全体に改善体質を浸透させる、と いう内容だ。
 この計画を昨年一月に、SBSがグループ の関係者を集めて毎年、東京ビッグサイトで催 している全社会合で発表した。
これは改善活 動の本格的なキックオフであると同時に、関 係者に対する?宣言?でもあった。
ロジワン では七年かかった。
それを三年間で実現しよ うという、かなり背伸びをしたスケジュール だった。
 「企業の経営者というのは常に結果を求め る。
そして進化を実感できなければすぐに飽 きてしまう。
これはQC活動でも同じだが、 だいたい一年間が限界だ。
一年たって目に見 える変化がなければ、経営陣はダメだったと 考えて新たな手を打とうとする。
しっかりと 経営トップに直結した組織を持ち、あえて三 カ年という区切りを明確にしながら活動を推 進していく必要があった」と雨宮氏。
 かつてダイエー時代にIEの担当者として 店舗運営に携わったときには、中内氏の強力 なリーダーシップに後押しされた活動が、か えって現場から乖離してしまう一因になった。
ロジワンで活動を軌道にのせてから、いざダ イエーの店舗改善へと踏み込んでいったとき は経営陣の協力体制が持続せずに頓挫してし い。
発表内容をあらかじめ改善のプロが指導 することで、活動のプロセスや成果を関係者 全員に分かりやすく提示する。
さらに事前に プレゼンテーションの練習などを積むことで、 イベントとしての完成度を高め、セレモニー として盛り上げることも重要だ。
 結果として、これから改善活動に取り組ん でもらう人たちを刺激し、「われわれにもで きる」とか「今度は自分たちの番だ」と前向 きな気持ちになってもらわなければならない。
本人たちがやる気さえ起こせば、実際の活動 そのものは「改善統括部」の人材がいくらで もバックアップできる。
 ロジワン出身の改善のプロたちが手取り足 取り指導することで、それなりの水準の活動 にできる自信が雨宮氏にはあった。
そうやっ て一つの形を作っていくなかで、やり方を真 似てもらい、参加者に改善活動のイロハを身 につけてもらう。
そうすることで新たな改善 まった。
これらの経験から、経営者の理解と バックアップが継続のカギであることを痛感 させられていた。
新たな体質を根づかせるコツ  ティーエルの全事業所を回ってみて、雨宮 氏はひとつの大きな課題に気づいた。
ティー エルの社員全般の傾向として、同じ職場での 勤続期間がかなり長い。
なかには三〇年も一 つの職場から動いたことがないという人もい た。
過去のダイエーが?一八カ月ローテーシ ョン?と称して人事異動を繰り返していたの とは対照的だった。
 人が異動すれば、組織全体の業務の標準化 や、知識の横展開といった効果が自然に生ま れる。
逆に他部門との人的な交流や情報交換 が少ないと、その職場にしか通用しない仕事 のやり方になってしまいがちだ。
一つの職場 しか知らない人材は、本人も自覚しないうち に?保守的?になりがちで、現状の否定をで きなくなってしまう。
 現場と対話を重ねるうちに分かったのは、テ ィーエルが、異なる業務を扱う三つの企業が 合併した過去の影響をいまだに引きずってい るということだった。
合併前の企業系列をま たぐ人材の交流が少なく、それが当たり前の 空気ができあがっていた。
 そこでまず雨宮氏は、半年ごとに催す「改 善事例発表会」を最大限に活用していった。
発 表会の効用は、現場作業者の顕彰だけではな 06 年11 月から改善活動を本格化した 雨宮氏が執行役員としてSBSホー ルディングスに入社。
グループの事 業を横断的に改善する目的で「改善 統括部」が発足 改善活動の「3 カ年計画」を策定 第1 回 改善事例発表会を開催 第2 回 改善事例発表会を開催 「改善マン育成教育(初級)上期分」 開講 日本ロジスティクスシステム協会 (JILS)の「全日本物流改善事例大会 2008」でフーズレックグループの 東北ウイングの発表事例「レイアウ ト変更による動線の改善と品質改善 による生産性の向上」が「物流合理 化賞」を受賞 6月第3 回 改善事例発表会を開催 06年11月 07年1月 6月 08年1月 4月 6月 47  AUGUST 2008 のプロを育てていこうというわけだ。
 昨年六月の第一回の改善事例発表会では、 着手からわずか半年という時間的な制約もあ って、現場の活動そのものはまだ限定的だっ た。
ティーエルの全国の拠点のうち六カ所を モデル事所とし、そこで計一九チームが活動 を展開。
その中から六チームが発表した。
あ くまでも最初の一歩にすぎなかったが、SB Sグループの年次総会と同じ東京ビッグサイ トに五五六人もの関係者を集めた。
 六チームの発表を、鎌田社長をはじめとす るグループの事業会社の経営陣が、所定の項 目にしたがって採点していく。
こうすること で現場レベルの活動に経営陣を巻き込んでい く狙いがある。
これを集計して最高得点を得 たチームに「社長賞」が贈られた。
関係者の 評価はおおむね良好で、プレゼンの質の高さ に驚いた参加者も少なくなかった。
 この第一回の発表会に際して雨宮氏は、次 のステップをにらんだ?仕掛け?もしていた。
ティーエルの全国の改善担当者たちを、発表会 の開催前から毎月のように本社に集めて、モ デル事業所の活動内容の報告や基礎教育など を行っていたのである。
このように経営陣と 現場の双方を刺激するツールとして、改善事 例発表会をフル活用していった。
JILSの「物流合理化賞」を受賞  効果はてきめんだった。
若手社員の多くが 感激し、改善活動に前向きに対応するように なった。
昨年の下期には、第二回の発表会に 向けてティーエル全社とフーズレックなどの事 業会社から計一三二チームが参加した。
この 中から予選会を勝ち抜いた一〇チームが、今 年一月の発表会に臨んだ。
 初回の内容に鎌田社長らが自信を深めたこ ともあって、第二回からは物流業界の新聞記 者なども会場に招いた。
このような社内行事 を外部に公開することには抵抗感を示す人た ちも少なくない。
しかし、内外の関係者に成 果を実感してもらい、活動を盛り上げていく ことが何よりも必要だと考えていた雨宮氏は、 部外者の招待にこだわった。
 この昨年下期の活動は、期待していた以上 の成果をもたらした。
第二回の発表のなかで フーズレックの一〇〇%子会社である東北ウ イング(岩沼物流センター)が行った「レイ アウト変更による動線の改善と品質改善によ る生産性の向上」という事例が、別に申請し ていたJILSの「全日本物流改善事例大会 二〇〇八」で「物流合理化賞」(物流業務部 門)を受賞したのである。
 この事例では、食品販売業を営む荷主から 受託している物流業務の生産性を高めること に挑んだ。
改善チームのメンバー六人がまず 現場の問題点を一〇〇個抽出し、整理してい った。
そのうえで作業別にどれだけの労力が 費やされているのかを数値化。
付帯作業にす ぎない「仕分け・梱包」に全体で最大となる 三〇%のマンアワー(人時)が費やされてお り、多くのムダがあることが判明した。
 次いでムダが発生してしまう原因を追究し ていった。
「なぜ?」を何度も繰り返した結果、 「レイアウトが設備上の都合だけで組まれ、作 業者と通行人の動線が考慮されていない」と いう?真因?にたどりついた。
改善チームは また、作業ミスを手直しするムダが多いこと にも着目した。
こうしたムダを減らしていく ことで、当該作業の生産性を一五・五%向上 させることに成功した。
 さらには、改善した品質を維持する目的で、 作業者が朝礼のために集まる場所に「管理ボ ード」を設置。
ここに物量や事故件数グラフ、 作業マニュアルなどを掲示して、生産性や品 質に対する作業者の意識を高めていった。
 たしかに絵に描いたようにスマートな改善事 例といえる。
もっとも、実はこの事例は、S BSの第二回の発表会では、決勝に進んだ一 半期ごとに開催している改善事例発表会 東京ビッグサイト(国際会議場)、参加 19 チームのうち上位6 チームが発表 参加者…556 人 社長賞…「シュート下の作業生産性向上」 (ティーエルロジコム・東扇島 支店・一般TC チーム) 東京ビッグサイト(国際会議場)、参加 132 チームのうち上位10 チームが発表 参加者…694 人 社長賞…「有料道路費の削減・燃費の向 上」(ウィングトランスポート: フーズレックグループ・川口営 業所・配送チーム) 東京ビッグサイト(国際会議場)、参加 221 チームのうち上位10 チームが発表 参加者…632 人 社長賞…「変動費管理の徹底による自車 損益の黒字化」(ティーエルロジ コム・横浜金沢支店・重量品チ ーム) 07/6/23 第2回 08/1/12 第3回 08/6/21 第1回 一般事務を担当していた。
しかし、仕事にな じめず、一度は会社を辞める決意を固め「退 職願い」まで提出していた。
たまたま改善活 動のために同センターに駐在していた雨宮氏 が、その話を小耳に挟んで声を掛けた。
夜遅 くまで一人で仕事をしている中島さんの姿を 日頃から見かけていたためだ。
 あらためて退職の理由を尋ねてみると、「こ の会社では自分のやりたいことができないか ら」という答えが返ってきた。
雨宮氏は「改 ここで改善活動の内容を正しく評価する眼を 養うことが、現場でムダを指摘できることに つながる。
こうした経営者が次に現場に行っ たとき、担当者の視線で発言することが「現 場力」を高める有効な後押しになる。
 
咤贈咾硫善活動三カ年計画は、いまや前 倒しで進められている。
これほどスムーズに SBSの改善活動が立ち上がったのは、雨宮 氏の経験と、鎌田社長の受け入れ体制がうま く噛み合ったことが大きい。
トップの全面協 力のもとで必要な組織が設置され、明示され た計画に基づいて活動が進められた。
これは 改善活動の?総本山?ともいうべきトヨタが 忠実に守っている原則でもある。
教育体系の整備を推進中  改善の意識をグループ内に定着させるとい う段階を早くもクリアしつつあるSBSの改 善部門は、既に次の段階をにらんだ活動に入 っている。
改善体質を定着させるためには、 特定の組織や個人が引っ張るだけでは足りな い。
現場レベルの活動を牽引できる人材をど んどん再生産していく循環を生み出す必要が ある。
そのために今年四月、「改善マン育成 教育(初級)」をスタートした。
 そのカリキュラム作りなどを担当しているの が、雨宮氏を追って〇六年十二月にSBS入 りした改善統括部の中島由未さんである。
〇 一年に大卒でロジワンに入社した中島さんは、 川崎の物流センターに配属され、一年間ほど AUGUST 2008  48 〇チームのなかで第五位の優秀事例にすぎな かった。
それでもJILSの改善事例大会の 審査内容を熟知する雨宮氏が、あえてこの事 例を選んで提出していた。
 「何よりも内容が分かりやすい。
小さな現 場できちんと問題発見をしながら、真因をつ かんで改善するというプロセスも明確にでき ている。
出すならこれしかないと最初から決 めていた」  狙い通りこの事例は、JILSに提出され ていた発表のなかでもダントツの高い評価を 受けた。
改善活動の内容はもとより、フーズ レックの改善推進・品質管理室の上森みさき さんによる平易かつ堂々とした発表にも好感 が持たれた。
SBSにとっては、改善活動を スタートしてからわずか一年半で得た華々し い成果だった。
 このような追い風もあって、SBSグルー プの改善活動は拡大していった。
〇六年六 月に開催した第三回の発表会には、グループ 全体から計二二一チームが参加。
これを勝ち 抜いて決勝で発表された一〇チームの活動の ?質?は着実に底上げされていた。
「全社活動 として根づかせるためには、まだまだ参加チ ームが少ない」(雨宮氏)と課題を挙げれば キリがない。
それでも、ここまでを見る限り、 きわめて順調とみていいだろう。
 経営陣による審査もこなれてきた。
前述 したように改善発表会には、審査を通じて経 営者を改善活動に巻き込んでいく機能もある。
★ ★ ★物流合理化賞 ◎物流合理化努力賞 ヤマトシステム開発 日本トランスシティ 日本ロジテム アシックス物流 佐川グローバルロジスティクス 高末 サッポロ流通システム オカムラ物流 日本通運 アサヒロジ ロジワン フーズレック 全日本物流改善事例大会2008で「物流合理化賞」を受賞 日時 2008年4月23日(水)9:30〜17:00 発表テーマ 『レイアウト変更による動線の改善と品質改善による生産性の向上』 (第2回SBSグループ改善事例発表会優秀事例) 発表者 上森みさき(フーズレック?改善推進・品質管理室) 参加者 96社 210名 日本ロジスティクスシステム協会会長 三村明夫氏より表彰状授与 東北ウイング 佐伯さん フーズレック 上森さん JILS 三村会長 発表企業(15社の優秀事例発表) オムロン ヤマハ発動機 長浜キヤノン 物流業務部門物流部門 東北ウイング(株)(フーズレックグループ) JILS主催『全日本物流改善事例大会2008』岩沼物流センター 部隊に異動してくることになった。
 改善活動の経験はまったくなかったため、先 輩を見ながらゼロから学んでいった。
慣れて くると、全国各地の現場に改善の指導者とし て赴くようになった。
現場で経験を積む一方 で、ロジワンの社内発表会に提出された案件 を、現場の発表者に代わってJILSの改善 事例大会でプレゼンをするといった役割もこ なした。
これがロジワンが物流合理化賞を受 賞するという実績につながった。
 このように改善活動について実地で学んで きた経験を、自分なりに整理して、SBSで 「改善マン育成教育(初級)」のためのカリキ ュラムとしてまとめた。
過去六年間の体験を ベースに中島さんが素案を作り、雨宮氏らと 相談を重ねながら、実践的かつ網羅性のある 改善マニュアルに練り上げた。
 この教材を使った第一回の講座を、今年四 月から開講した。
ティーエルの改善担当者を 中心に三二人の参加者を集めて、毎月一回ず つ三カ月で計三回、午前九時から一七時まで の丸一日を費やして研修を実施した。
初回だ けに、参加者に「楽しかった」とか、「身に つくことを学べて役に立った」と感じてもら えるような工夫を随所に凝らした。
 初回の反応が良かったことから、この七月 から開講した第二回の講座では三つのクラス を設けた。
それぞれ三〇人前後の受講者を対 象に、初回の反省を踏まえて修正したカリキ ュラムに基づく授業を行っていく。
一回当た りの受講者をもっと増やすことができれば人 材育成のスピードアップが図れる。
しかし、グ ループ討議などを効果的に実施するためには、 一クラスの人数をこれ以上にするのは難しい のだという。
 むしろ人材育成を加速していく仕組みとし ては、初級の研修を終えた人たちを有効に活 用していくほうが現実的だ。
第一回の講座の 際には改善統括部のメンバーがこなした「コ ーディネーター」という指導役を、二回目は第 一回の受講者だった六人が肩代わりする。
改 善教育の担当者もまた、実践的な活動を通じ て再生産していこうというわけだ。
 「今年度の下期の研修では、一回目の反省 を踏まえて見直したカリキュラムを安定させた い。
そしてグループ各社の改善担当者たちが 主体になって動かせるようにしていく。
でき れば私たち改善統括部のメンバーは中級や上 級のカリキュラムづくりに注力していき、二 〇一〇年度までの三カ年で、それぞれのカリ キュラムを軌道にのせられればと思っている」 と中島さんは意気込んでいる。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 善部隊に来れば、キツイかもしれないけれど 自分でやりたいことをできるかもしれない。
考えてみないか?」と慰留した。
その場では 「考えさせてください」と引き取った中島さ んだったが、数日後に退職願いを撤回。
改善 49  AUGUST 2008 SBSホールディングス 改善 統括部の中島由未さん 「改善マン育成教育(初級)」の研修カリキュラムを高度化中 1 会社の基本認識 2 物流の基本認識 3 現場の実態認識の手法と技術 4 問題・課題の抽出力 5 改善企画策定能力 6 手法・技術活用力 7 実行計画策定力 8 目標設定能力 9 実行推進力 10 教育・指導力 11 トラブル対応力 12 コミュニケーション力 13 評価指標設定力 14 進捗管理力 15 目標達成力 16 定着化力 ?ビジネス計数 ?現状のコスト分析 ?診断スコアカード ?問題点発見 ?なぜなぜ分析 ?施策立案 ?目標設定 ?効果検証 ?評価・標準化 ?ISO ?ディベート ?他社事例紹介 改善リーダーに能力内容 求められる能力 現場活性 サイクル カリキュラム 問題発見 真因追究 目標設定 施策立案 施策実行 評価 検証 標準化 現状把握力 4 項目 改善企画力 4 項目 改善実行力 4 項目 評価・定着力 4 項目 Mind Improve 【改善活動】 キャリアアップ診断キャリアアップ診断 Ver.2 一部見直し  カリキュラムの 一部見直しを図る と共に改善サイク ルに沿った診断項 目に更新する

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