ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年8号
物流IT解剖
日新

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2008  62 近代化の遅れた業務に いち早くシステム導入   日新は国際物流をメーンとする独立 系の物流企業だ。
二〇〇八年三月期 の連結売上高二二七七億円のうち六 割を国際物流事業が占める。
中国物 流では日本通運や山九と並ぶ“御三 家”とされ、東アジアと欧州を鉄道で 結ぶ「シベリア・ランドブリッジ」も 他社に先駆けて開拓した。
海上輸送 を中心とするNVOCC(複合一貫 輸送業者)としても、長らく大手有 力メーカーのサプライチェーンの一翼 を担ってきた。
 同じく港湾事業者の横顔をもつ山 九と比較されることも多いが、手掛 けている業務はかなり異なる。
山九 が鉄鋼業や石油化学など重厚長大型 の産業に強いのに対し、日新は自動 車メーカーや精密機器メーカーなどの 製品や部品の輸出入を中心に扱って きた。
国際物流の分野における総合 物流業者を標榜しており、日常的に 競合しているのはむしろ日通や大手 航空フォワーダーだ。
 情報システムの活用には、早い時期 から積極的に取り組んでいる。
一九 六七年にIBMのコンピュータを導入 し、経理や会計処理などに使いはじ めた。
管理業務の負担を軽減するの が当初の狙いだったが、ほどなくシス テムの適用範囲を業務系に拡大。
ト ラック輸送の原価計算を皮切りに、コ ア業務である港湾事業にも導入して いった。
 七〇年代に港運部に所属し、その 後は二〇年以上にわたりシステム部門 に在籍していた同社・営業推進部の 中村和彦主席はこう述懐する。
 「当時の港の仕事は三六五日、二四 時間だった。
正月休みもなければ、五 月の連休もない。
船は朝から晩まで 港にいる。
私自身、昼間は現場に行 き、事務所に戻ってからB/L(船荷 証券)やマニフェスト(積み荷目録)、 荷役作業の請求書などをつくる毎日 を送っていた。
仕事が多く、どうし ても夜中までかかってしまう。
こうし た業務を効率化するためにコンピュー タを使おうと思った」  現在の日新には、「総合システム部」 というIT部門がある。
しかし七〇 年代には、まだ専門のセクションはな かった。
そこで中村氏は経営企画的 な役割を担っていた「社長室」に相 談。
その結果、「手伝えないが、独自 にやるのであればやってもいい」と いう許可を得られたため、港運業務 のシステム開発に自ら着手した。
 付き合いのあったIBMなど複数の ITベンダーに声をかけ、最終的にフ ィリップス社のマシンを採用した。
記 録媒体に磁気テープを使う独特なコ ンピュータでシステムを構築し、八〇 年に「港湾・輸出入システム」を稼 働。
翌八一年にはNECの「ACO S」による「船社・代理店システム」 も稼働させた。
こうして受注から作 国際展開を支える低コストのIT活用 自前主義とパッケージ利用を両にらみ 日 新  ホンダやシャープなど有力メーカーの国際物流を幅広く担っている。
約70 年前に横浜港で港湾事業者として事業活動をスタートし、日本企業の海外 進出とともに業容を拡大させてきた。
システム活用は自前主義を基本とし ながら、近年はERP(統合業務パッケージ)やWMS(倉庫管理システム) など、欧米で評価の高いパッケージソフトも利用している。
営業推進部の中村和彦主席 港湾システム 第17 回 《概要》港湾業務に関連する書類作成などを効率化するため、約40年前にコン ピュータを導入した。
これを契機にシステム開発を本格化し、国際物流を全面 的にカバーできる仕組みを構築してきた。
 年間ITコストは日新の単体売上高1392億円(08年3月期) の約1.1%。
情 報子会社を持っていないため、「総合システム部」が元請けとなって各分野のI Tベンダーを使い分けている。
 最近では先進的なパッケージソフトの導入も進めている。
例えばWMSにつ いては、国内では自社開発システム、米国と中国では米マンハッタンのパッケ ージを使っている。
双方の評価には社内でも賛否両論があり、今後については 社内の議論を見守る必要がありそうだ。
◆本社組織  本社「総合システム部」に30 人余りの社員と、外部ITベンダーの常駐者4 人が在籍している。
自前主義を標榜しているだ けに、過去のピーク時には50人以上が在籍し ていた。
だがシステム開発のツールを自ら構築 するなどしてスリム化してきた。
◆情報子会社  なし 63  AUGUST 2008 早い時期から社会的な信用も確立し ていた。
 高度成長期に一気に国際展開を図 った日系メーカーにとって、日新は国 際物流を包括的に任せられる数少な いプレイヤーだった。
近年の国際物流 市場では、航空フォワーダーや国際イ ンテグレーターの躍進が著しい。
だが 海上輸送を中心とする分野では、依 然として日通や日新など老舗企業が 存在感を発揮している。
 とはいえ、日新の情報システムは、 国際インテグレーターや3PL事業者 のそれと比べると小規模だ。
IT投 資の金額も少ない。
同社は現在、単 体売上高(〇八年三月期に一三九二 億円)の約一・一%、年間一五億円 程度をシステムに投じている。
連結ベ ース(〇八年三月期の連結売上高は 二二七七億円)でも、ほぼこのコス トでまかなっている。
 フェデックスやUPSなどの国際イ ンテグレーターは年間一〇〇〇億円 規模のIT投資を継続している。
国 内の大手航空フォワーダーも連結売上 高の一%前後を投じている。
こうし た事例と比較すると、同じ国際物流 事業者でありながら日新のIT投資 は大幅に少なくみえる。
 一つは業務領域の違いが影響してい る。
日新は、輸送リードタイムの長い 海上輸送を中心に企業間物流を手掛 けている。
海上輸送を使った企業間 の国際物流のスケジュールは、もとも と悪天候の影響などによる輸送の遅れ を見込んで幅を持たせてある。
スピー ドを付加価値として、そのためにI Tを高度化しているエクスプレス事業 者や航空フォワーダーとは、企業戦略 における情報システムの位置づけが根 本的に違う。
 日新が今年一月に稼働させた「グロ ーバル・データベース・システム」(G 業管理、請求までを連携させたシステ ムを段階的に整備していった。
 その後も航空貨物システムや経理シ ステムなどを開発していき、八八年 には在庫管理を含む物流業務全般を カバーする新たな物流システム「MO NO」を稼働。
陸海空のフォワーディ ング業務をまかなえる仕組みへと発展 させてきた。
日系企業の海外進出を インフラ面から後押し   日新の物流事業者としての強みは、 なんといっても港湾業務にある。
三八 年に川崎で事業を開始して以来、横 浜港での仕事を足がかりに国内外の 物流ネットワークを整備してきた。
多 くの競合他社に先駆けて六八年には 国際複合一貫輸送をスタート。
海外拠 点も拡充してきた。
 国内物流と違って、国際物流を任 せられる事業者は限られている。
最 大のポイントは、国境をまたぐ輸出入 業務を迅速にこなせるかどうか。
そこ では事業許可や有効なインフラの有無 がものをいう。
その点、日新は、横 浜で港湾事業を手掛け、外航船社と のパイプも太かった。
 そうした優位性を活かす一方で、日 通や財閥系の倉庫事業者とほぼ同じ 時期の一九五〇年に東証一部に上場。
国際物流 ※RC=リターナブル・コンテナ 「グローバル・データベース・システム」(GDBS)によるサプライチェーン管理 (海外ベンダーから部品を日本に輸入し、日本の工場に搬入するケース) 日 新 日新 日新現法 日新 海上・航空システム 日新 海上・航空システム (発注・在庫・トレース情報) 発注情報 在庫情報(アラート情報) 生産情報 RC返品情報 出入荷情報 RC返品情報 輸出情報 輸入情報 輸入・通関・配送 配送・搬入・搬出 通関・輸出 入出荷情報 在庫情報 RC在庫情報 生産計画 発注情報 出荷依頼情報 部品情報 在庫情報(アラート情報) 貨物トレース情報 請求情報 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 入庫処理 RC管理 在庫管理出荷処理配車管理 検品伝票 配送 トラック 出荷検品 ピッキング 庫内管理 入庫 入庫検品 分納受付 得意先 ベンダー GDBS Information Platform ICタグ・バーコードハン ディーによる入出庫管理 ロケーション管理 適正在庫管理 物流のみにとどまらないサービス ●荷主業務の全体を最適なサービスで提供 ●生産計画受領から納品先までを連動させ最適な物流計画 ●情報共有プラットフォーム機能を活用しVMI実現 ●バイヤーズ・コンソリデーションサービスとして海外先から商品調達指示  を容易に実現 物流 RC返却 情報 RC管理 出荷確認 メーカー工場 システム 業務作業 日新WMS AUGUST 2008  64 DBS)は、いかにも同社らしい仕 組みだ。
このシステムでは、取扱貨物 の在庫状況やトラッキング情報を世界 規模で一元管理できる。
主要システム が外部に対して閉ざされたホスト系で あることから、荷主がインターネット 経由でデータにアクセスできるように 工夫した。
 その名称からは、世界規模で標準 化された巨大な統合システムを連想す るかもしれない。
しかし、実体は違 う。
日新が現地法人レベルで使ってい る在庫管理システムや、海上貨物や航 空などの業務システムは、従来と同様、 まったく別々に動いている。
GDBS は、こうした既存システムのデータを 荷主に提供するための外付けシステム にすぎない。
 輸送リードタイムの短縮にシステム を使うのであれば、このように屋上 屋を架す仕組みは望ましくない。
世界 規模でシステムの標準化や統合を図ら なければ、スピード競争に遅れをとっ てしまう。
狙いは別にある。
必要な データを荷主にローコストで提示でき ることこそが競争力の源泉になると いう発想だ。
ここに日新のIT戦略 の特色がある。
IT子会社を持たずに 可能なかぎり自社開発   
韮庁贈咾魍発するために日新は、 オープンなOSであるリナックスで動 くIBMのメインフレームを採用して いる。
ここに米オラクルのデータベー スを載せて、システムの安定性と、外 部に向けて開かれた環境を両立させよ うとした。
昨年に開発した時点では、 ほとんど前例のない最先端の試みだっ たという。
 このように先進的なプロジェクト を、日新はすべて自社の「総合シス テム部」の仕切りで進めた。
ハードは IBM、データベースはオラクル、プ ログラム開発は日本ユニシスと外部事 業者を使い分けながらも、全体のシ ステム開発はあくまでも「総合システ ム部」のメンバーがコントロールした。
同部には現在、三〇人余りの社員と、 それ以外に外部ベンダーから四人の常 駐者が在籍している。
 他の多くの大手物流事業者と違っ て、日新はグループに情報子会社を持 っていない。
このため「総合システ ム部」の人材だけでIT活用をこな さなければならない。
しかも「当社 は自前主義だ。
基本的には開発まで 含めて全部、自分でやりたい。
もち ろん物理的に無理な部分は外部に頼 むが、そういったシステムでも運用は 全て自分たちでやる」と総合システム 部・システム営業チームの石田英教課 長は強調する。
 とくに付き合いの深いITベンダー がいるわけでもない。
ハードについ てはIBMやNECとの取引が多い が、システムを開発するときにはそ の都度、入札によってパートナーを選 んでいる。
開発するシステムの内容は、 使用する記述言語やデータベースの設 計、画面の構成に至るまで事細かく 指示する。
 このため過去のピーク時には「総合 システム部」の従業員は五〇人を超え ていた。
システム開発を効率化できる 独自ツールを構築するなどして、自 前主義のまま現状の三〇数人にまで 減らしてきた。
メンバーの勤務地は東 京・横浜・大阪の三カ所に分散して おり、それぞれに開発や運用を手掛 けながら営業マンとの同行セールスま で手掛けている。
 自前主義にこだわるのは、システ ム開発のスピードを重視しているため だ。
「当社が日通や近鉄エクスプレス などの大手に勝つためには、対応の 早さが不可欠だ。
今は時間で勝負が 決まる。
こういう仕組みが欲しいと 言われたら、それから一、二週間で システムを開発して使ってもらうとい った対応が求められている。
いちい ち外部に頼んでいたら間に合わない」 (石田課長)。
 かつては「総合システム部」の中で の役割分担がもっと明確で、東京と 関西に営業をサポートする人員が在籍 し、開発はホストの保守業務も手掛け る横浜でまかなっていた。
ところが、 この体制では情報伝達などに時間が かかった。
このため現在は、東京と 関西で営業サポートを担っている社員 が、それぞれに開発まで手掛けるよ うになっている。
ERPやWMSでは 有力パッケージも採用   もっとも三〇人余りの担当者だけ で、自前主義を貫くことの限界も自 覚している。
必要に応じてシステム開 発のアウトソーシングもすれば、最近 では定評のあるパッケージソフトも採 用している。
〇二年に着手した「i プラン 21 」という新会計・経営情報 システムの開発プロジェクトでは、全 社横断的に集めた社員が検討した結 果、SAPの「R/3」を採用した。
 稼働後の運用こそ「総合システム パッケージ活用 総合システム部システム営業チ ームの石田英教課長 自前主義 65  AUGUST 2008 ッタン社のWMSを導入した。
「荷主 ごとに異なる管理のやり方を標準化 しようという狙いがあった。
多言語 への対応や、パラメーターさえ設定す ればすぐに使える点も評価した」と 中村主席は説明する。
 ただし、こうしたパッケージの利用 には社内でも賛否両論がある。
「例外 を認めないため、しっかりと標準化さ れている」という好意的な評価があ る一方で、「例外を認めないから使い にくい」という声もある。
 だがカスタマイズは作業の標準化を 阻害する。
パッケージソフトを導入時 にカスタマイズすれば、バージョンア ップのたびに対応コストも発生してし まう。
年間のITコストが一五億円程 度の日新にとっては許容しがたい出費 になる。
このため現実には一切カス タマイズせずに導入しており、これが 「使いにくい」という声を招く一因に なっている。
 
廝唯咼僖奪院璽犬瞭各を推進して きた中村主席としては、「お客さんご とに異なる帳票類や請求書などは、W MSの中にあるデータだけ使い、外付 けで別のシステムを作る仕組みになっ ている。
標準的なシステムを使いこな そうと思ったら、操作がわずらわしく なるのはある程度まで仕方ない」と 割り切っている。
モータープールの管理を 独自システムで効率化   このように最近の日新は、自社開 発とパッケージ利用の狭間で揺れてい る面がある。
それでも自前主義を捨て ようとはしないのは、目に見える効果 があるからだ。
同社は今春、大手自 動車メーカーの「モータープール」を 管理するユニークなシステムを稼働し た。
モータープールとは、国内工場で 生産した完成車を、輸出のための船 積みをする前に一時保管しておくスペ ースである。
 千葉県で管理している約二四万平 方メートルのモータープールには、常 に約七〇〇〇台の車両が置かれてい る。
荷主の指示に従って、日新がこ の中から当該車両をピックアップして 必要な処置を施す。
棚卸し作業も毎 日、実施している。
 モータープールの管理業務そのもの は、何十年も前から請け負っていた。
この業務はかつてベテラン作業者の勘 と経験に依存していた。
当然、相応 の人件費がかかる。
作業者が代わる と作業効率が一気に落ちてしまうと いった悩みも抱えていた。
これを改善 するため、敷地内に無線LANを張 りめぐらせ、一台ずつバーコードでロ ケーションを管理できる仕組みを自社 開発した。
 考え方はシンプルだ。
あらかじめシ ステム上でモータープールを細かいマ ス目に分割し、三カ所のアンテナから 距離を測って当該車両の所在地を特 定している。
これによって、どこに、 どの車両があるのかを管理できるよ うにした。
車を動かすときには、そ の都度、車に貼られているバーコード をスキャンして位置情報を登録しなお す。
システムの開発時にはICタグの 導入も検討したが、コスト面からバー コードに軍配が上がった。
 このシステムによって日新は、日々 の棚卸し作業の手間を軽減し、モー タープールの管理効率を高めることに 成功した。
荷主に対しても、従来は 「検収票」に手書きで記していた車体 のキズなどの情報を、ネット経由でパ ソコンに表示できるようになった。
自 前主義の強みを上手く発揮できた事 例といえるだろう。
 今年一〇月に更新される「Sea─ NACCS」(海上貨物通関情報処理 システム)に対応する、複数のシステ ム開発が現在、最終段階を迎えてい る。
「総合システム部」は、その対応 に追われている。
自社開発と外部活 用の間で揺れながらも、IT活用の高 度化は待ったなしで進められている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 部」でまかなっているが、システム開 発には協力ITベンダーを使った。
こ のときIT部門としては、すでに米 国の現地法人がオラクル製の会計ソフ トを導入していたため、日本でもオラ クル製品を採用することを提言した。
しかし同ソフトの日本市場での普及が いま一つということもあって、SA Pに落ち着いた。
 在庫管理システムについても、国内 では自社開発の「MONO」を使っ ているが、海外では一部でパッケージ を採用している。
中国では〇五年に、 米国では〇六年に、いずれも米マンハ 自動車物流 日新が運用しているシステムの主なラインナップ 経営情報 システム ● グループウェア=Note/Domino ● B(I Buisiness Inteligence)=SAP BW ● 会計システム(財務・管理)=SAP R/3 ● 人事システム                 ● 船社代理店システム ● コンテナターミナルシステム(「CATOS」) ● 国際複合輸送システム(海上混載、コンテナドレーなど) ● 海上貨物システム(輸入通関、作業進捗管理など) ● 航空貨物システム(輸出入通関) ● 引越システム ● 在庫管理システム=WMS(「MONO」、「Manhattan」、個別在庫管理など) ● トラック配送システム(ローリー運行管理、共同配送、求貨求車など) ● 得意先情報交換システム(各種EDI) ● インフォメーション・プラットフォーム ● 貨物追跡管理システム ● VMI ● インターネット在庫照会 ● e-Custome(r 輸出入情報照会)    顧客向け システム業務システム

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