ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年8号
特集
脱デルモデル 家電のサプライチェーン統合

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

調達と物流の統合でコスト半減  ソニーサプライチェーンソリューション(SSCS) の谷敷誠社長は、「グローバル・ロジスティクスとは、 国際間輸送の管理のことだと昔は勘違いしていた。
国 際調達や海外の販売物流を我々が手がけるようになる とは考えていなかった。
一言で物流子会社といっても、 役割は以前とは全く様変わりした」という。
 
咤咤達咾脇鵝察算闇四月、ソニーの物流子会社 であるソニーロジスティクスと、部品調達を手がけて いたソニートレーディングインターナショナルを合併し て設立した機能子会社だ。
それまで別々に活動して いた物流と部品調達の機能を統合することで、業務 効率化につなげる狙いだった。
 〇八年三月期のSSCSの「純売上高」は約一五 〇〇億円。
ただし、ここには部品を調達して、ソニー グループの工場や事業所向けに販売した商社機能の売 り上げは含まれていない。
それを含めた「総売上高」 は約一兆五〇〇〇億円にも上っている。
 もともとソニーの海外物流は、ソニー本体の海外営 業本部に所属する物流支援グループがあたっていた。
その後、物流支援グループは物流本部に昇格。
それを 旧ソニーロジスティクスが吸収した。
さらに海外現法 の下で各地の販売物流を担当していた組織もSSC Sの設立を契機に徐々に取り込んでいった。
一連の組 織改革は今年終了した。
 
咤咤達咾論源妻流だけでなく、新興国の国内販 売物流にも深く入り込んでいる。
現在、韓国、台湾、 上海、香港、タイ、ドバイ、インド、カナダ、中南米、 欧州、メキシコなど世界十一の国や地域にSSCSの 拠点を構え、各エリアの販売物流責任者を現地に送り 込んでいる。
 もっとも十一拠点のうち五拠点は現地スタッフが責 任者を務める。
「各地のレギュレーションや国内配送 のネットワークの実情については現地の人間でなけれ ば理解できないところがある。
現地の人間なら何か と融通も利く。
日本から転勤させるよりコスト的にも 安い」と谷敷社長は説明する。
 実際、現地スタッフを責任者に据えると、ロジステ ィクスの設計は違ったものになっていく。
まず協力物 流会社の顔ぶれが日系物流会社から現地企業に変わ る。
さらにはアウトソーシングの線引きがシフトする。
従来はフォワーダーに任せていた通関書類の作成を内 製化した地域もある。
現地の行政が荷主の出荷責任 を重視し始めたことに対応したものだ。
この手のリス ク判断も現地の事情に精通したものでないと難しい。
 一方で世界中に散らばった組織を統合するために、 「GSS(国際輸送)」、「G─
稗丕蓮聞餾歡潅4霖蓮法廖 「LOGNET(物流品質・技術)」など、テーマ別に 六つの会議体を組織している(表1)。
年に数回、そ れぞれ四〇人前後のスタッフを世界中から集めて国際 会議を開催している。
そこではRFIDの活用からパ レット積みの方法、部品の品質管理に至るまでの様々 な案件について、ナレッジの共有と方針の徹底を図っ ている。
 グローバル・ロジスティクスの統合効果は、調達部 品の物流コストに最も大きく現れた。
改革の対象とな った部品の調達物流費が、それ以前と比べて半分以 下に低減した。
基本的にSSCSが介在するのは国 際調達する部品に限られるため、その量はソニーグル ープ全体で購買量の二割程度に過ぎない。
それでも年 間数十億円規模のコスト削減が実現できた。
 一般に部品物流は、組み立て前の状態で運ぶために 輸送効率が完成品よりもぐっと落ちる。
ソニーの場合、 AUGUST 2008  16 家電のサプライチェーン統合  グローバル・ロジスティクスの最適化には、従来の国際間 輸送の管理とは全く違うレベルのマネジメントが求められる。
製品設計からアフターサービスまでの各プロセスの活動をグ ローバルに統合してロジスティクスを利かせる。
それによっ て単なるコスト削減以上の効果を実現できる。
日系家電メ ーカーは既に動き出している。
(柴山高宏、フリージャーナリスト・岡山宏之) 第1部 特集脱デルモデル その物量は完成品の二〜三倍に上るという。
しかし、 従来、調達部品の物流は管理の蚊帳の外に置かれて いた。
その担当部署となる調達部門の関心は、部品 ベンダーの選定と部品の購買価格に向いている。
物流 管理はコア・コンピタンスではない。
物流は協力会社 に任せておけばいいという意識が根強かった。
 ソニーの経営陣はそこにメスを入れるべきだと判断 した。
その手段が物流子会社と調達子会社の統合だ った。
以前のソニーロジスティクスは3PL企業とし て外販に打って出る志向を持っていた。
その位置付け を改めた。
谷敷社長は「外販は必要ない。
ソニーグル ープに貢献するため、グループ内に専念するよう本部 から指示を受けた」という。
 日本の大手家電メーカーはソニーをはじめ、どこも 物流子会社を持っている。
高度経済成長時代に物流 子会社は末端の系列小売店への輸送力を安定的に確 保するという役割を担っていた。
しかしその後、国 内の家電市場が成熟し、トラック運送が買い手市場に 様変わりしたことで、その存在意義が改めて問われ ることになった。
 日立物流や三洋電機ロジスティクスのように株式を 公開して自立に向かう物流子会社が出てくる一方、そ れが難しい場合には外部への売却も覚悟する必要があ った。
しかしソニーは物流子会社をグループ内にとど め、機能子会社としてグループ経営に貢献させる道を 選んだ。
SSCSには、アウトソーシングできない役 割を果たすことが期待された。
調達と物流の統合が、 その試金石だった。
 ソニーグループのベースカーゴを持つ旧ソニーロジス ティクスが船会社と契約している条件を、部品の調達 物流に適用するだけでも確実にコストメリットは出る。
そのうえで部品の国際輸送を集約管理することで輸送 効率を向上できる。
理屈は簡単だった。
しかし、そ の実現は一筋縄にはいかなかった。
 独立した会社組織として活動していた調達部門は、 独自の企業風土を持っている。
ソニーの製品力とコス ト競争力のカギを握る重要な機能を担っているだけに プライドも高い。
とりわけ物流部門に対しては格上意 識を持つ傾向にあった。
それだけに物流部門が自分の 領域に手出しすることには抵抗がある。
 
咤咤達咾鷲門内に閉じこもりがちなサイロ型の既 存組織を破壊し、ゼロベースで組織を再編した。
物流 部門と調達部門の人事異動も意識的に進めた。
一連 の改革には、三年もの月日を要した。
それでも谷敷 社長は「同じグループ内でさえこれだけ時間がかかっ た。
アウトソーシングしていたら、いつまでたっても 統合などできなかっただろう。
しかも、その効果は予 想していた以上に大きかった」と達成感を得ている。
 実際、調達部門の意識は大きく変わった。
新製品 や新拠点の立ち上げの際には、安く早く高品質に運ぶ ためにはどうすればいいかと、真っ先に物流を考える 習慣がついた。
物流部門にも積極的に相談をもちか ける。
ソニーは一〇年度末までにBRICsにおける 売上高を現在の二倍の二兆円に拡大する計画だ。
そ こでSSCSの果たす役割は大きい。
 「我々は裏方に徹する。
自分たちの規模や利益を求 める必要もない。
機能子会社として全てグループに還 元すればいい」と谷敷社長はいう。
しかし、その言 葉とは裏腹に、グループ支援に徹することで再び外販 の可能性も開けてきた。
部品の国際調達ネットワーク に相乗りしたいという外部からの相談が増えている。
外販拡大を目的にするのではなく、共同化による効 率化が実現できるのであれば断る必要もないと考えて いる。
17  AUGUST 2008 SSCSの谷敷誠社長 国際 海上・航空料金に関する会議 IPO に関する会議 物流品質、物流技術に関する会議 国際航空輸送に関する会議 部品品質に関する会議 外航船利用に関する会議 表1 SSCS における会議体 GSS G-IPO LOGNET SAS G-PQA NVOCO SSCSが国際輸送に使用して いるケース。
内梱包が不要で、 折り畳むことができる。
現在 1万8000個使用している 松下も管理組織を再編  松下電器産業も動き出している。
昨年七月、本社内 に「グローバルロジスティクス本部」を新設した。
従 来は国際物流だけを担っていた「海外業務本部」と、 国内物流だけを担当していた「物流統括グループ」を 統合。
分断されていた国内外の物流管理を一元化し た。
 同時に、グループ内で主に国内物流の実務を担当し ている松下ロジスティクスと、製品や部材の輸出入業 務などを担うパナソニックトレーディングサービスジャ パンを、新設部門の管轄下に配置し、実務面でも国 内と海外の融合を進めた。
 今年四月から同社のグローバルロジスティクス本部 長と調達本部長を兼務している板崎康二役員は、「以 前の当社は、国内と海外のロジスティクスを見事なま でに分けていた。
事業ドメインによって、業務プロセ スや仕事のやり方も違った。
これをコーポレートに集 約し、効率化していこうとしている」と機構改革の 狙いを説明する。
 かつての松下は、「事業部制」による商品分野ごと の縦割り管理と、業務内容や担当地域による分業体 制を徹底していた。
同社はテレビや冷蔵庫、電球、半 導体、自動車関連機器など多岐にわたる製品を扱っ ている。
これを国際物流のインフラがほとんど整って いなかった一九三〇年代から、自ら設立した貿易会 社を使って世界中で販売してきた。
 六〇年代になると早くも海外生産を積極化した。
世 界各地で発生する調達・販売業務を処理する機能会 社を相次いで設立。
本社内にも国際商事部門やグロー バル調達部門を置いた。
結果として、競合他社とは 比較にならないほど縦横に細分化されたサプライチェ ーンができあがった。
これが過去には有効に機能した のだが、近年は業務内容の重複などによる弊害も目 立つようになっていた。
 二〇〇〇年に就任した中村邦夫社長(現会長)が 「破壊と創造」という旗印のもとで推進した構造改革 は、こうした旧弊を改めるサプライチェーン改革でも あった。
事業部をドメインごとに括りなおす事業再編 や、国内市場での「家電流通改革」を断行。
物流面 でも、系列販社と役割を分担していた国内オペレーシ ョンを松下ロジスティクスに集約していった。
 中村社長の後を受けて〇六年六月に就任した大坪文 雄社長は、昨年の四月から新中計「GP3計画」を スタートしている。
海外販売の二ケタ増などグローバ ル市場を強く意識した営業戦略を掲げる一方で、一〇 年三月期に売上高一〇兆円、ROE(株主資本利益 率)一〇%を目指すという経営目標を設定している。
これに呼応するかたちで発足したのが「グローバルロ ジスティクス本部」である。
 国内外の物流管理の組織を一元化するだけにとど まらず、担当役員が調達担当とロジスティクス担当を 兼務することでサプライチェーンを一気通貫で効率化 していく。
ITを駆使したSCMの高度化に取り組 んでいる情報部門とも連携をとりながら、グローバル レベルで物流コストを削減し、連結在庫を半減させる ことが新設部門に期待されている。
 しかし、世界を網羅する複雑で巨大なサプライチェ ーンは、その全貌を正確に把握すること自体が容易な ことではない。
パイオニアは昨年二月、技術生産部に 新たに物流戦略グループを設置した。
サプライチェー ンの全体最適化の視点から生産プロセスを改革するこ とが目的だ。
 技術生産部生産戦略部物流戦略グループの立田寛 AUGUST 2008  18 松下電器産業の 板崎康二役員 特集脱デルモデル マネージャーはまず、調達から生産、販売に至るグロ ーバル・サプライチェーンを「ノードフロー」と呼ぶ 地図に整理する仕事に取り組んだ。
この作業に大変な 手間と時間がかかった。
そしてノードフローを作って いく課程で痛感させられた。
 既に出来上がったサプライチェーンのボトルネック を見つけて、それを改善するというアプローチではビ ジネスの変化のスピードに追いつかない。
そこで発想 を転換した。
前段階にさかのぼって、新たに製品や 拠点を起ち上げる時点で最も効率的なサプライチェー ンを組むかたちにアプローチを変更することにした。
設計と物流の統合に挑む  グローバルな拠点配置は従来から生産部門が立案し てきた。
そこでは生産コストが最優先され、物流への 配慮がなかった。
在庫に対する意識も薄かった。
製品 の大部分を国内工場で生産していた時代には、自分の 目で在庫の山を目にするため、意識も働いた。
しかし 水平分業が進み、前後の工程が海外に移っていったこ とで当事者意識も薄れていった。
 そこにロジスティクスの思想を持ち込んだ。
新規プ ロジェクトに物流戦略グループが参画するほか、機能 子会社のパイオニアシェアードサービス(JPS)が 物流面から助言する体制を作った。
コンテナに一〇〇 個しか積めない荷物が、設計や梱包を工夫すること で倍積める。
製造コストや梱包費が多少余計にかかっ ても輸送費まで含めたトータルコストは安くなる。
そ んな発想が生産部門からは出てこない。
生産コストの 上昇を嫌って、そこまで計算しようとしない。
 そこをJPSがカバーする。
JPSの青山美民ロジ スティクス事業部企画・管理グループゼネラルマネー ジャーは「物流戦略グループがプロセス改革の枠組み を書く計画系だとすれば我々は実行系。
製品や梱包 のサイズを何センチにすると、これだけの効果が出る という具体的な数字を示すことがその役割だ」と説 明する。
 物流戦略グループの設立から約一年半が経過し、設 計や開発のプロセス改革に成果が見えてきた。
これ をテコに次は計画プロセスの改革に斬り込むつもりだ。
同社は〇四年三月に従来の月次生産を週次に短縮し、 これに合わせてサプライチェーン計画ソフトを導入し て生産計画の立案作業をシステム化した。
 計画のバケットを小さくしたことによる効果は得ら れた。
しかし、計画作業をシステムに依存するように なったことで、人手で柔軟に生産計画を調整する機 能は失われてしまった。
そこで改めて判断機能を人 間に戻し、それをシステムがサポートするかたちにプ ロセスを修正したいと考えている。
立田マネージャー は「そのほうが当社のビジネスモデルにはマッチする。
大きな効果が得られるはずだ」と自信を持っている。
 パイオニアは伝統的に、趣味性が強く価格帯の高め なニッチ商品を得意とする。
需要予測が難しく在庫の 変動が極端に大きい。
また一般の量産品と比較して アイテム当たりの生産ロットは小さい。
総合家電メー カーのように消費地に生産を分散することはできない。
それだけ輸送距離とリードタイムは長くなる。
さらに は自主規格部品や特殊な組み立て技術を必要とする 製品が多く、アウトソーシングにも向かない。
 「当社には独自の商品戦略とビジネスモデルがある。
他の大手総合家電メーカーとは商品特性もサプライチ ェーンの地図も違う。
ロジスティクスも当然、他社と はひと味違ったかたちになってくる」。
そんな考えに 基づいて、立田マネージャーは同社ならではグローバ ル・ロジスティクス戦略を練っている。
19  AUGUST 2008 JPSの青山美民 ロジスティクス事業部 企画・管理グループゼ ネラルマネージャー パイオニアの立田寛 技術生産部生産戦 略部物流戦略グルー プマネージャー

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