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特集脱デルモデル
31 AUGUST 2008
アフターサービスのグローバル化
──サービスサプライチェーンに対するグローバル化の影響
米アバディーングループ
上級管理職が直面している最も大きな課題、?サービ
ス組織が用いている業務改善プロセスおよび戦略的ア
クション、?技術ソリューションを導入することによっ
て得られたメリット(メリットがあった場合)を調べ
るための質問を行った。 さらにオンライン調査を補足
する形で回答企業の中から複数の企業を選んでインタ
ビューを行い、グローバルサービス戦略、実際の経験や
結果についての追加情報/検証内容をまとめた。
同調査の回答企業のうち現在グローバル規模でサー
ビス業務を展開しているとしたのは七六%だった。 技
術者の派遣や部品の物流に関するサービスモデルは各社
でさまざまであり、同じ会社でも地域ごとに異なって
いる場合もある。 しかし、自社のブランド価値を維持・
強化することを重視し、それを実現するために、サー
ビスを提供しているすべての地域で一貫性のある優れ
た顧客経験を提供しようと腐心している企業が非常に
多かった。 また、ローカライズされたサービスを求める
顧客の要求に応えつつ、グローバル規模でのサービスコ
ストを抑制することも、サービス担当上級管理職の大
きな関心事となってる。
アバディーンは、サービスの財務面、業務面、そし
て対顧客面でのパフォーマンスを測る重要な評価指標
を用いて、現在のパフォーマンスと過去二年間のパフォ
ーマンスの改善状況を測定し、調査対象企業を業界最
高水準の「優良企業」、「標準的な企業」、水準を下回
る「停滞企業」に分類した(図1)。
すると優良企業とそれ以外の標準・停滞企業とでは、
?過去二年間におけるサービスの収益性の改善率が三
倍以上、?過去二年間における顧客維持の改善率が四
倍以上、?技術ソリューションの導入によって実現さ
れた収益性、契約順守、顧客維持の改善率が二倍以上、
?サービスの収益性が約二倍などの開きがあった。
またアバディーンは、「PACE(プレッシャー、ア
優良企業はサービス業務を一元管理
アフターサービスのサプライチェーンに対するグロー
バル化の影響を探るため、アバディーングループは二〇
〇七年十二月から〇八年一月にかけ、世界各国の一八
〇人のアフターサービス担当上級管理職を対象とした
アンケート調査を行った(三五頁「調査回答企業の属
性」を参照)。
このうちオンライン調査では、?グローバル規模でサ
ービスを提供するためにサービス組織が費やしている
時間、およびその取り組みの度合い、?サービス担当
先進企業はアフターサービスのナレッジとロジスティクス機能をグロー
バルに一元管理している。 そこで必要とされる技術ソリューションの導
入も既に済ませている。 その結果として、あらゆる指標において同業他
社との大きな差別化を実現している。 米調査会社・アバディーングルー
プが発表した最新レポートを紹介する。
第5部
図1 パフォーマンス上位企業は優良企業
パフォーマンスの平均値
●サービスの収益性(サービス売上率) 39%
●顧客維持率のパフォーマンス(5段階評価) 4.2
●全体的な要員稼働率 88%
●過去2年間におけるSLA遵守の改善率 50%
●過去2年間におけるアセットのアップタイムの改善率 43%
●サービスの収益性(サービス売上率) 22%
●顧客維持率のパフォーマンス(5段階評価) 3.9
●全体的な要員稼働率 74%
●過去2年間におけるSLA遵守の改善率 12%
●過去2年間におけるアセットのアップタイムの改善率 8%
●サービスの収益性(サービス売上率) 20%
●顧客維持率のパフォーマンス(5段階評価) 3.4
●全体的な要員稼働率 61%
●過去2年間におけるSLA遵守の改善率 3%
●過去2年間におけるアセットのアップタイムの改善率 −2%
企業成熟度の定義
優良企業
パフォーマンスに関する
得点スコアの総計で
上位20%の企業
標準企業
パフォーマンスに関する
得点スコアの総計で
中位50%の企業
停滞企業
パフォーマンスに関する
得点スコアの総計で
下位30%の企業
AUGUST 2008 32
クション、ケイパビリティ、イネイブラー)」と呼ぶ評
価指数を採用してベンチマーキングを実施している。 効
率的で収益性の高いサービス業務をグローバル規模で展
開するためには、戦略的なアクション、組織的ケイパ
ビリティ(組織力)、技術的イネイブラー(実現要因・
手段)を組み合わせることが必要だという考え方に基
づいて作成された評価指標だ。 (図2)。
これによると優良企業のサービス部門は、サービス
関連業務の大半をグローバル規模で一元的に管理して
いる(図3)。 優良企業の過半数が地域単位で管理し
ているのは、要員、スケジュール/ルーティング、修理
関連のみである。 優良企業は重要なサービス関連業務
の管理・報告体制も一元化しているだけでなく、サー
ビス業務全体をシームレスに行えるようにする戦略的
な活動にも着手している。 要員、部品、情報というサ
ービスサプライチェーンを構成する重要な要素について
既にアクションを起こしている(図4)。
しかし、これら優良企業の多くは、すべての地域に
またがる一貫したサービス戦略が依然として欠けてい
ることが、グローバルなサービスパフォーマンスの向上
を実現するための重要課題であると認識している。
興味深いのは、戦略的なアクションとして技術ソリ
ューションの導入または刷新を検討している企業の割
合が、優良企業では二七%であるのに対し、標準企
業・停滞企業では四五%と、大きな差が出ていること
だ。 優良企業はグローバル機能を備えた技術ソリューシ
ョンの導入という点で大きく先行しており、過去の技
術投資によって、完全に統合された戦略的サービス管
理モデルの実現に向けて歩み出しているため、技術投
資を少なく済ませることができるようになっていると
いえる。
技術ソリューションで契約順守率を向上
グローバル機能を備えた技術ソリューションを活用
し、統合された業務プロセスを確立すれば、グローバ
ル規模でのサービス提供を効果的に行うことが可能に
なる。 これは対顧客パフォーマンスと財務パフォーマン
スの向上につながる。 優良企業は、グローバルなサー
ビス業務を支援する技術ソリューションを導入すること
によって、契約順守率を五三%向上させてい
る。
優良企業、標準企業、停滞企業の分類では、
同じクラスに分類された企業はパフォーマンス
レベルが同程度であるだけでなく、?業務プロ
セス、?組織体制、?ナレッジ管理、?技術導
入、?パフォーマンス管理、という五つの主要
カテゴリーにおいても共通の特性を示した。 図
5にまとめたこれらの特性は、ベストプラクテ
ィスのガイドラインとなるものであり、優良企
業のパフォーマンスと高い相関関係にある。
優良企業と停滞企業を比較すると、サービ
ス業務を地域ごとに評価・比較している割合
は優良企業は停滞企業の三倍以上であり、顧
客情報を一元化されたグローバル情報データベ
ースに格納している割合は約二倍、グローバル
な部品計画・調達プロセスを導入している割合
も約二倍となっている。 またパフォーマンスの
図3 優良企業はサービス関連業務を一元管理
価格設定
データ収集
部品調達
ナレッジ管理
余剰管理/廃棄
物流
コンタクトセンター
在庫(部品)管理
リバースロジスティクス
サービス関連業務を一元管理していると回答した優良企業に占める割合
79%
73%
68%
65%
0 20 40 60 80 100
(%)
59%
57%
57%
52%
共通の情報ウェアハウスの構築42%
38%
35%
31%
31%
0 10 20 30 40 50
(%)
27%
各地域の契約社員の労働力
プールへの組み込み
地域ごとのサービスモデルの確立
ロジスティクス機能の一元化
各地域への部品倉庫の設置
技術ソリューションの導入・刷新
図4 優良企業が実施している戦略的なアクション
86%
図2 優良企業のPACE フレームワーク
プレッシャーアクションケイパビリティイネイブラー
●一元化されたデータウェアハウス
/ナレッジ管理ソリューション
●サービス管理ソリューション(要員
および部品)
●要員管理ソリューション(スケ
ジュール/ルーティング管理にと
どまらない)
●グローバルな部品価格設定ソ
リューション
●契約社員の管理に対応したスケ
ジュール/ルーティング管理ソ
リューション
●ERP システムとの品目レベルの
統合機能を備えたサービス部品
計画システム
●ロジスティクス、リバースロジス
ティクス(静脈物流管理)、在庫管
理の機能を備えたベストオブブ
リードの部品管理ソリューション
●一貫した顧客経験
を提供し、ブラン
ド価値を維持・強
化する必要性
●契約社員と正社
員の統合
●複数の情報デー
タベースを1つの
サービス情報
データベースとし
て統合
●グローバル規模で
最適化された部品
調達システム
●すべてのサービス
業務に対応し、垂
直統合されたグ
ローバル規模の一
元的報告体制
●顧客情報をグロー
バル規模で管理す
る、一元化された
ナレッジ管理プロ
セス
●サービスの業務パ
フォーマンスと財
務パフォーマンス
を地域ごとに評
価・比較
特集脱デルモデル
33 AUGUST 2008
高い企業は業務をグローバル規模で効率よく行うため
の重要な機能として、管理と情報フローの一元化を実
現していた。
五つの主要カテゴリーそれぞれについての分析結果
は以下の通りであった。
?業務プロセス
サービス部品のサプライチェーンの管理(部品の計画、
価格設定、調達、フォワード/リバースロジスティクス、
在庫管理など)は、すべての企業においてグローバル
なサービス組織を管理する上での二大重要課題の一つ
と見なされていた。 優良企業の大多数は効率性をさら
に向上させるため、グローバル規模での部品管理の中
でも、特に計画と購買を管理するシステムおよび業務
プロセスを構築したいとし、四八%がそのための機能
を導入していると回答。 四三%がそのための手法を確
立する予定としていた。
?組織体制
サービス組織が、サービス提供に付随する各業務(部
品管理、データ収集、ナレッジ管理、リバースロジステ
ィクスなど)を一元的に管理するようになると、報告
体制は適切に組織に組み込まれ、パフォーマンスの向
上に大きな効果を発揮するようになる。 こうした報告
体制は、業務間の連携、意思決定の迅速化、サービス
業務のグローバル規模での把握に貢献する。
?ナレッジ管理
サービス組織の業務は情報に基づいて行われ、ほと
んどの場合、この情報フローは顧客が起点となる。 サ
ービス業務の提供範囲が地理的に広がると、顧客の所
在地は複数の地域にまたがるようになり、契約書も各
国語で記述されるようになるため、情報の収集と管理
はさらに複雑になる。 顧客情報を共通の情報ウェアハ
ウスで管理すると、サービス組織全体が情報へ容易に
アクセスできるようになり、その結果、業務効率の向
上、より的確な意思決定が可能になる。
?技術導入
調査結果からは、グローバルなサービス管理の主要
な構成要素(要員管理、データ管理、サービス部品管
理)のすべてにおいて、技術ソリューションがその実
現・支援に大きな役割を果たしていることがわかった。
優良企業はグローバルなサービスパフォーマンスの向上
を図るため、これらすべての要素について技術ソリュ
ーションを既に導入しているか、導入を予定している。
?パフォーマンス管理
サービス組織は、ビジネス手法や技術ソューションを
導入し、調達やベンダー管理におけるスケールメリット、
繰り返し可能なプロセスを活用することによって、グ
ローバル規模での効率性向上を図る一方、組織の深層
部にまでパフォーマンス管理を浸透させる必要性を認
識している。 優良企業の一部は、組織全体にわたる共
通のサービス基準や手法を確立しているが、ほとんど
の企業はパフォーマンス管理を依然として地域単位で
行っている。
サービス部品の価格設定と調達を一元化
優良企業は、価格設定と調達を含めてほぼすべての
部品関連業務を一元管理することに積極的な姿勢をみ
せている。 調査では、優良企業の八六%が部品の価格
設定を一元的に管理しており、七三%が調達を一元的
に行いたいと考えていることがわかった。 そして、グ
ローバルなサービスサプライチェーンを管理する上での
課題を図6のように挙げている。
また、あらゆるサービス組織にとって重要なのは、技
術者の配置計画と管理を適切に行うことである。 これ
は顧客満足度と収益性の双方に影響するため、企業
の経営層にとって最大の懸念事項となっている。 特に、
グローバルに事業を展開している場合には、言語や文
化、パフォーマンスに対する期待の違いといった問題も
関係するため、一層困難な課題になる。
図5 競争の枠組み(コンペティティブ・フレームワーク)
優良企業 標準企業 停滞企業
業務プロセス
組織体制
情報管理
技術導入
パフォーマンス
管理
48% 36% 26%
54% 48% 34%
71% 48% 39%
65% 63% 21%
●57%…一元化されたデー
タウェアハウスシステム
●59%…戦略的サービス管
理ソリューション
●62%…要員管理ソリュー
ション
●60% … 部品価格設定ソ
リューション
●49%…一元化されたデー
タウェアハウスシステム
●54%…戦略的サービス管
理ソリューション
●32%…要員管理ソリュー
ション
●57% … 部品価格設定ソ
リューション
●26%…一元化されたデー
タウェアハウスシステム
●48%…戦略的サービス管
理ソリューション
●36%…要員管理ソリュー
ション
●46% … 部品価格設定ソ
リューション
すべてのサービス業務に対応し、垂直統合された一元的な報告体制が
グローバル規模で確立されている
部品の計画、価格設定、調達のプロセスが企業全体にわたって確立されており、
グローバル規模で最適化されている
顧客情報をグローバル規模で管理する、
一元化されたナレッジ管理プロセスが確立されている
サービスの業務パフォーマンスと財務パフォーマンスを地域ごとに評価・比較する
以下のツールの選択と導入
AUGUST 2008 34
優良企業はすべてのサービス提供地域に正社員の技
術者を配置したいと考えており、四四%が専属の技術
者のみを配置、三六%が専属の技術者に加え、必要
に応じて契約社員の技術者を配置していると回答した。
ここで興味深いのは、優良企業が大きな課題として挙
げているのが言語や文化、人件費の違いへの対処など
ではなく、共通の手順の確立、共通のパフォーマンス
基準の策定、スタッフトレーニングの実施など内部的な
問題であることだ。
技術ソリューションの導入状況をみると、グローバル
にサービス業務を展開している優良企業の大半は、グ
ローバル規模でのデータ収集、部品管理、要員管理を
支援する技術的イネイブラーをすでにサービスサプライ
チェーン全体に導入しているか、これから導入すると
している(図7)。 調査では、優良企業の八七%が現
在導入している技術ソリューションには特定のグローバ
ル機能が備わっているとも回答した。
技術ソリューションを導入したサービス組織は、KP
I(業績評価指標)において、大幅なパフォーマンス
向上を果たしている。 収益性やSLA(サービス・レ
ベル・アグリーメント)/契約の遵守率、顧客維持率
において二ケタの改善率を示した。
優良企業の技術ソリューションの投資対効果は、そ
れ以外の企業よりも圧倒的に高い(図8)。 サービスに
関する主要な取り組みの最初のステップとして、業務
プロセスの文書化、評価、さらに必要に応じて再設計
を行い、効率性の最適化を図っている企業は、単に技
術ソリューションを導入するだけの企業と比べ、大幅
に高い効果を上げている。
改善のためのアクション
グローバル規模でのサービス提供に関して、停滞企業
レベルから標準企業レベル、標準企業レベルから優良
企業レベルにパフォーマンスを向上させるには、以下の
ようなアクションが改善の後押しになると考えられる。
停滞企業 成功への道
?重要なパフォーマンス指標を測定する
顧客、財務、業務に関するKPIのパフォーマンス
を測定していない企業は、停滞企業では四〇%以上に
上った。 パフォーマンスを改善するには、パフォーマン
スを測定するためのプロセスや規定を策定することが
必要である。
?SLAの順守に注力する
過去二年間におけるSLA順守率の改善率という重
要な指標において、優良企業は五〇%という数値を達
成しているが、停滞企業の改善率は三%にとどまった。
契約した顧客の期待に応えることはサービスを改善す
るために必要不可欠で
あり、さらなる収益機
会の基盤にもなる。
? 共通のパフォーマン
ス指標をグローバル
規模で導入する
サービスのパフォーマ
ンスを測定する共通の
指標を導入しているの
は、停滞企業ではわずか
三〇%だった。 特に、複
数の地域でサービスを提
供している組織の場合、
共通の指標を導入する
ことは、パフォーマンスをより正確に測定し、的確な
意思決定を下すことにつながる。
標準企業 成功への道
?サービスパフォーマンスデータの収集を一元化する
世界各地の主要な意思決定者が、必要に応じてサ
ービス情報を入手できる仕組みを構築している企業は、
標準企業ではわずか三八%だった。 サービス業務に関
する重要情報の収集と管理を一元化するシステムを構
築・運用すれば、必要な情報を確実に伝達し、的確な
意思決定を下すのに役立つ。
?顧客情報の一元管理システムを構築する
顧客についての情報を適切に管理することは、質の
高いサービスを提供する上で非常に重要である。 こうし
たシステムを導入しているのは、優良企業では七一%
であるのに対し、標準企業では半数未満(四八%)に
グローバル規模での
物流コスト25%
21%
17%
17%
0 10 20 30
各地域のプロセスの統合
複数の国のロジスティクス
サプライヤの管理
SLA 遵守のための
各地域における在庫保有
図6 優良企業が直面しているサービスサプライチェー
ンに関する課題
(%)
(%)
図7 優良企業における技術的イネイブラーの導入状況
情報ウェアハウス
サービス管理
在庫(部品)管理
部品価格設定
要員管理
アセット管理
48% 43%
59% 27%
59% 27%
60% 25%
62% 24%
65% 17%
0 20 40 60 80 100
導入済み導入予定
顧客維持率65%
24%
53%
26%
45%
0 20 40 60 80
(%)
16%
SLA /契約の遵守率
サービスの収益性
図8 技術ソリューション導入後の改善状況
全回答企業に占める割合標準/停滞企業優良企業
特集脱デルモデル
35 AUGUST 2008
留まった。
?部品サプライチェーン管理のための統合されたプロセ
スを確立する
標準企業は、サービスサプライチェーンの管理をグロ
ーバルなサービス組織を運営する上での重要課題であ
ると認識している。 サービス部品管理に関するあらゆ
る業務を共通のプロセスに統合し、これを企業全体で
活用すると、業務効率の向上とコストの削減を図るこ
とができる。
優良企業 成功への道
?すべての地域にまたがる統一されたサービス戦略の
策定に継続的に取り組む
共通の手法と評価指標を導入すると、管理を効率化
するとともに、業務全体を通じてスケールメリットを
享受できるようになる。 優良企業は標準・停滞企業と
比較して高いパフォーマンスを実現しているが、すべ
ての地域にまたがる完全に統一されたサービス戦略と
プロセスがまだ確立されていないことを重要課題に挙
げている。
?世界各地の意思決定者全員が必要に応じて情報を入
手できる仕組みを活用する
こうした仕組みを導入しているのは、優良企業では
五二%に上った。 これらの企業は適切な情報に基づい
て的確な意思決定を下すという点で、それ以外の企業
に対し圧倒的に有利な立場にある。 顧客やアセット、サ
ービスパフォーマンスに関する情報を格納する全社規模
のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメ
ント)システムやサービスベースのナレッジ管理ソリュ
ーションは、適切な情報に基づく意思決定のためのフ
レームワークとして活用できる。
?部品の輸送/物流コストを管理する
プロセスと情報フローを中心に戦略的なアクションを
実施している優良企業は、部品サプライヤーやロジス
ティクスプロバイダーと大口契約を締結できるという利
点を生かし、サプライチェーンコストを抑制できる立場
にある。 ただし、優良企業の三一%はこれをサービス
提供の管理に関する重要課題に挙げている。 サービス
部品管理のための技術ソリューションや3PL/4P
Lのプロバイダーは、効果的なコスト抑制に有効活用で
きる場合がある。
企業が販路と顧客基盤を複数の地域に広げるのであ
れば、サービス業務も国際展開の複雑さに対応できる
ようにしなければならない。 調査では、優良企業は一
元的な管理とビジネス手法を導入し、情報フローの改
善、サプライヤーと大規模かつ広範な協力関係を築く
ことで得られるスケールメリットの活用、グローバルな
パフォーマンス状況を測定するための統一された評価
指標の導入を行うことによって、課題に対処していた。
財務パフォーマンスと顧客維持率を改善するために
は、サービス提供における一貫性を企業全体にわたっ
て維持するための適切なプロセスと、データ、部品、お
よび要員の管理を自動化する適切な技術ソリューショ
ンを組み合わせた上で、確固たる一元的なアプローチ
でグローバルな戦略的サービス管理に取り組むことが必
要である。
サービジスティクス社について
サービジスティクス社は、米国ジョージア州
アトランタに本社を置き、補修部品管理、サー
ビス要員管理、サービスナレッジ管理、サービ
スプロセス管理、価格管理より構成される統合
された戦略的サービス管理(SSM : Strategic
Service Management)を提供するソリューシ
ョンプロバイダー。 非上場企業で、英国と日本
(東京)に地域拠点を構えている。
日本法人は二〇〇四年にアジア太平洋地域を
統括する拠点として設立され、グローリー、コニ
カミノルタビジネステクノロジーズ、コマツ、大
日本スクリーン製造、東芝テック、東芝メディ
カルシステムズ、ニコン、日立国際電気、富士
フイルムメディカル、LG電子(韓国)、ファウ
ンダー・テクノロジー(中国)等を主な顧客と
している。 http://www.servigistics.co.jp/
調査回答企業の属性
●回答者の職務分野分布……上級管理職15%、バイス
プレジデント(本部長相当)10%、ディレクター(部
長相当)21 %、マネージャー36 %、コンサルタント/
その他12%
●業界分布……コンピューター/オフィス機器31 %、通
信20 %、設備製造業15%など
●地理的分布……北米55%、欧州24%、アジア11%、
中東9 %、中南米1%
●企業規模……大規模企業(年商10億ドル以上)36%、
中規模企業(年商5000万ドル以上10億ドル未満)
39 %、小規模企業(年商5000万ドル以下)24%
●従業員数……大規模企業(従業員数1000人以上)
53%、中規模企業(従業員数100人以上999人以
下)24%、小規模企業(従業員数1人以上99人以下)
23 %
※本レポートは米調査会社のアバディーングループが二〇
〇八年一月に発表し、サービジスティクス社が邦訳した
「サービスサプライチェーンに対するグローバル化の影響」
を、両社の許可を得て本誌が抄録にまとめたものです。
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