ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年9号
海外Report
仏郵政公社の国際BtoB物流

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

61  SEPTEMBER 2008  今年七月末に日本郵便との包括提携を発表した仏郵政公社「ラ・ポスト」。
同社の物流部門「ジオポスト(GeoPost)」グループで積み合わせ輸送(LT L)のオペレーションを担うDPDのマニュイ・ストイメノス上席副社長が、ア ジアの物流会社とのパートナーシップを前提とした国際物流戦略を解説する。
(取材・編集 本誌欧州特派員 横田増生) 仏郵政公社の国際B to B物流 アジア発欧州向け貨物に照準  
庁丕弔蓮∧郵政公社「ラ・ポスト」の子 会社の一つで、小包やロジスティクス業務を担 当しています。
母体となるラ・ポストは、売 上高でみると欧州ではドイツポストに次いで 二位、世界的に見ても五位の規模を誇ってい ます(図1)。
 ラ・ポストの二〇〇六年の売上高は二〇一 億ユーロ(三兆三五六七億円)で、その二 〇%強が小包とロジスティクス部門の売り上 げです(図2)。
この小包とロジスティクス部 門を、ラ・ポストは「ジオポスト(GeoPost)」 という独立した会社組織に再編しました。
一 九九九年のことです。
 現在では、ジオポストを持ち株会社にした 四つの子会社を設けています(図3)。
その うち、ジオポスト・フランス、ジオポスト・ヨ ーロッパ、ジオポスト・インターナショナルの 三社は、それぞれのエリアで物流サービス商 品の企画やセールスを担当しています。
 それに対してDPDは欧州域内のLTL (積み合わせ輸送)のオペレーションを担当す る部門という位置付けです。
DPDの取り扱 う貨物の対象は三一・五キロまでの小包です。
現在の取引企業は三〇万社で、一日の取扱貨 物は二〇〇万個となっています(図4)。
 
庁丕弔呂海譴泙把垢で月をかけて、欧州 域内における強力なネットワークの構築を進 めてきました。
しかしそれを現在、大幅に変 更する必要に迫られています。
ここ数年、荷 主が急速に生産拠点や調達を海外に移したか らです。
 特に中国を中心とするアジアへのシフトが大 きく進みました。
その対応に追われていたと いうのが、このところの我々の実情です。
実 際、我々がアジアからの輸入貨物の取り組み に本腰を入れ始めたのはつい二、三年前のこ とで、昨年末になってようやく輸入貨物に対 応できるシステムが整いました。
 ある既存の大手荷主からアジア発欧州向け の貨物に対応してくれないかという打診を受 欧州SCM会議? 図1 ラ・ポストは世界5 位の売上高を誇る(国際インテグレー ターと各国郵便事業体の売上高ランキング、06 年) 図2 仏郵政公社の部門別売上高(06 年) ドイツポスト 米郵政公社(USPS) UPS フェデックス イタリア郵便 TNT 英ロイヤルメール 0 10 20 30 40 50 60 (単位:10 億ユーロ) 49.6 32.4 22.0 20.1 14.6 11.8 11.0 仏郵政公社 (ラ・ポスト) 54.2 銀行 22.8% 小包& ロジスティクス 20.8% 郵便 56.4% 売上高 201 億 ユーロ SEPTEMBER 2008  62 けたのが、そもそものきっかけでした。
続い て別の大手荷主からも同じような要請を受け ました。
そうした要望が四社、五社と増えて いくことで、個別案件での対応ではなく、全 社的な対応が必要になってきたのです。
 アジア発欧州向けの荷動きが伸びているこ とは、統計数字からも確認することができま す。
その拡大ぶりは欧州発アジア向け貨物の 動向と比べることで、いっそう明確になりま す。
取引金額ベースでも、海上貨物と航空貨 物の取扱量でも、同じ傾向を見て取ることが できます。
 それが最も鮮明に表れているのが、ユーロ スタット(EU統計局)の資料です。
この統 計では過去四年間で、欧州発アジア向け貨物 量(トンベース)が一〇%強の伸びであるの に対し、アジア発欧州向けは五〇%以上増え ています。
 また国際貨物輸送は一般的には航空貨物を 中心に語られることが多いのですが、数量ベ ースで見れば九対一の割合で、海上貨物の方 が圧倒的に多くを占めています。
我々DPD が難しい対応を迫られたのも海上貨物でした。
カシオの動きに注目  我々が今後の貨物の動向を予測する上で注 目しているのは、日本のカシオ計算機が始め たサプライチェーン改革の取り組みです。
カ シオは従来、日本発欧州向けの貨物輸送に航 空便を利用していました。
しかし〇五年から、 日本からドバイまでは海上輸送で運び、ドバ イから欧州を航空便で運ぶシー&エア輸送に 切り替えました。
 このように海上輸送と航空輸送を組み合わ せることで、いくつかのメリットを得ること ができます。
海上輸送だけで運ぶよりもリー ドタイムが短くなり、航空便だけで運ぶより も輸送コストを低く抑えることができます。
 しかもアジアの主要空港の輸送枠が非常に タイトで確保が難しいのと比べて、ドバイか らの航空輸送枠にはまだ余裕があります。
そ のため、こうした動きはカシオだけにとどま らず、その後ほかの荷主にも広がっていきま した。
 
咤達佑砲いて、荷主はどんなことに頭を 悩ませているかというアンケート調査があり ます。
この調査結果が、我々にとって興味深 いのは、在庫削減やコストの引き下げ、リー ドタイム短縮、正確な配送といった典型的な 項目を抑え、「正確な貨物ステータスとコスト の情報」が荷主の悩みのトップにきている点 図3 ジオポストの組織図 ジオポスト(持ち株会社) 100% 100% 100% 84% ジオポスト フランス ジオポスト ヨーロッパ ジオポスト インターナショナル (欧州以外) DPD 図4 DPD の欧州ネットワーク ●取り扱い個数 1 日平均200 万個 ●売上高 31 億ユーロ(5177 億円) オペレーション ●従業員数 1 万9000 人 ●車両 2 万3000 台 ●支店 750 カ所 ●ハブ拠点 50 カ所 メーンネットワーク ●DPD ネットワーク ●クロノポスト インターナショナル  (ラ・ポストの子会社) ●顧客数(B to B) 30万社 図5 荷主にとっての頭痛の種 正確な貨物ステータスとコストの情報 リードタイムの短縮と正確な配送 市場のコスト削減圧力 逼迫した貨物枠と付帯料金の増加 効率的な在庫削減 複雑さを増すSCM への対応 自社の市場拡大やM&A への対応 アバディーングループとオラクルの調査より 0 10 20 30 40 50 60 70 61% 61% 45% 44% 35% 35% 63% 63  SEPTEMBER 2008 です(図5)。
 もちろん、リードタイムは短く、配送は正確 であることが理想であるわけですが、それ以 上に荷主は、貨物の到着が遅れたときに、そ のことをきちんと把握できる仕組みを望んで いることが分かります。
 我々DPDもまた、従来から正確な貨物追 跡システムの構築に、優先課題として取り組 んできました。
しかし荷主の現在の要望に応 え、貨物追跡能力を高めるためには、それま での基本戦略を大きく修正しなければなりま せんでした。
これまでの貨物追跡システムを 大きく見直す必要に迫られたのです。
輸入対応でシステム改革を実施  自前の航空機を持って自己完結型のネット ワークを構える国際インテグレーターとは違っ て、我々DPDが輸入貨物を取り扱う場合に は、輸送キャリアとの連携が前提となります。
我々は輸送キャリアや荷主の持つ情報システ ムやバーコードを、どうすればDPDのシス テムと連結できるかという課題に直面しまし た。
 従来のDPDの貨物追跡システムは、欧州 におけるトラック輸送のネットワークをベース に作られたものでした。
輸入貨物の場合でも、 パートナー企業であるエールフランス─
烹味 のシステムとは連動するようになっていまし たが、それで対応できるのはエールフランス がシャルルドゴール空港に運びこんだ貨物だけ でした。
大韓航空や日本航空がアジアから運 んできた航空貨物の追跡はお手上げだったわ けです。
 それが五年前の我々の状況です。
それから 二年間をかけて、貨物追跡システムをインタ ーネットベースの仕組みに変更し、主要な航 空会社に対応できる体制を整えました。
 また従来の貨物追跡システムは発地での積 み込み時間と、着地の到着予想時間を表示す るだけでしたが、新システムでは航空会社の 運航スケジュールとDPDの作業工程を一気 通貫で見られるようになりました。
運航スケ ジュールが予定とずれた時には、それに合わ せてDPDの作業工程を変化させる仕組みも 導入しました。
これら一連のシステムが完成 したのが、昨年秋のことでした。
 航空輸入貨物の基本的なフローは次の通り です。
まずアジア地区の荷主の倉庫か、あるい はジオポストの倉庫で、貨物をパレットに積み 込み、主要空港まで横持ちをかけ、通関を切 って飛行機に積み込みます。
欧州では、フラ ンスのシャルルドゴール空港、英国のヒースロ ー空港など四空港で貨物を荷受けします。
そ して通関を切った後に、DPDかクロノポス SEPTEMBER 2008  64 ト(ラ・ポストの別の子会社)のハブ拠点で 仕分けて、各国の配送デポに運び、そこから 荷主の指定する送り先へと届けます(図6)。
 海上貨物の流れも、航空貨物と似通ってい ます。
ここでもキャリアの運航スケジュール とDPDのシステムを連動するようにしまし た。
ただし、大きな違いが二つあります。
一 つは、輸入貨物を荷受けするのが英国のサザ ンプトン港とオランダのロッテルダム港になる 点です。
もう一つの違いは、通関を切ってD PDのハブ拠点に運んだ後に、ラベルを張り 替える作業が入ることです(図7)。
 航空貨物の場合、アジアを出発してから、 三日目か四日目には荷主の指定する送り先に 届けることができます。
しかし海上貨物の場 合、アジアの港を出てから欧州の港に到着す るまでに、ほぼ三〇日かかります。
荷主にと って貨物が到着する三〇日も前に、すべての 貨物の行き先を決めることは大きな困難を伴 います。
 そのため、これまでは荷揚げした貨物をコ ンテナのまま荷主の倉庫や物流センターに運ん で、そこで荷主が人手を使って仕分け作業を してから、最終仕向地に運んでいました。
し かしユーロ高が進んだことで、この仕分けの 工程を省きたいと考える荷主が増えてきまし た。
多様なバーコードに対応  一般に荷主のSCMにかかわる部門は、コ ストを前年比で五%削減できたら上出来とさ れるような世界です。
と ころが過去五年間でユ ーロはドルに対して約五 〇%も値上がりしまし た。
従来通りに欧州地区 で作業をしていたら、ユ ーロの上がった分だけコ ストが膨らんでしまうわ けです。
 そのため荷主から、ど うにかして欧州の自社倉 庫における作業負担を軽 減できないかという要望 が相次ぎました。
そこで 我々がとった方法は、海 上コンテナが港に到着す る直前に荷主から貨物の 最新データを受け取り、 それに従って我々のハブ 拠点でラベルを張り替え て、仕分け後に最終目的 地まで運ぶという方法で す。
 これを実現するために 我々は、荷主のバーコー ドを使って作業ができる 態勢を整えました。
スキ ャニングのシステムは複 数の大手荷主のバーコー ドに対応できるように変 更しました。
これによっ 図6 航空貨物の流れ 荷主の倉庫 ジオポストの現地倉庫アジアの主要空港仏シャルルドゴール空港 独フランクフルト空港 蘭スキポール空港 英ヒースロー空港DPD の英 バーミンガムハブ DPD の独 アシャフェンブルクハブ クロノポストの仏 チリーハブ拠点 各国の国内デポ 各国の国内デポ 欧州の主要空港各国の国内デポ 図7 海上貨物の流れ 荷主の倉庫 ジオポストの現地倉庫アジアの主要港 ●仕分け ●ラベル貼り 英サザンプトン港 蘭ロッテルダム港DPD の蘭 ロッテルダムハブ拠点 DPD の英 サザンプトンハブ拠点 欧州各国の 国内デポ 英国の 欧州の主要港国内デポ て荷主はDPDの貨物追跡システムに合わせ て新たなバーコードを導入する必要がなくな りました。
そして、この仕組みは我々の作業 効率の改善にも繋がりました。
 一本のコンテナには通常二〇〇〇個から五 〇〇〇個のアイテムが積み込まれています。
そ れをバラしてハブ拠点のコンベアに乗せます。
すると、元から製品に貼付されていた荷主の バーコードをシステムが自動的にスキャンしま す。
その後、〇・五秒の間にスキャンした情 報は荷主から受け取った最新の情報と照合さ れ、新しいバーコード・ラベルが貨物に貼付 されます。
そのバーコードを再びシステムで読 みとって、ソーターが貨物を正しいラインに 振り分けていくという流れです。
 平均すると海上コンテナの八〇%は、陸揚げ 後すぐに目的地に運ばれます。
残りの二〇% が荷主の倉庫で保管されるものです。
それを 我々が荷受けすること自体は難しくはありま せん。
しかし、全ての貨物を荷主の要望に応 じて配送するとなると作業の難易度は高くな ります。
 しかもDPDのハブ拠点は、海上コンテナ だけを取り扱っているわけではありません。
現場では海上コンテナを一、二本処理した後 に、また通常の陸上貨物を処理することにな り、そのたびに段取りを設定し直さなければ なりません。
一年以上の試行錯誤を経て、昨 年十二月にオランダのロッテルダムに新しいハ ブ拠点を建設したときに、ようやくこの新し い処理システムを完成させることができまし た。
山九とのパートナーシップ  
庁丕弔浪そでは自社のネットワークを持 っていますが、アジアを中心とした経済新興 国においては、同業他社とパートナーシップを 結んでネットワークの強化を図っています。
ア ジアでも特に力を入れているのが、中国、日 本、インドです。
そのほかに、ロシアや南ア フリカ、ドバイでも同様のパートナーシップを 結んでいます。
 中国と日本ではここ数年来、日本の3PL 企業である山九とパートナーシップを結んでき ました。
山九は七〇年代から中国への進出を 進めており、現在、中国本土九カ所に現地法 人を構えています。
合計で二五万平方メート ルの倉庫スペースを持ち、約二五〇〇人が働 いています。
 また山九は〇四年、上海に二万七〇〇〇 平方メートルの最新式の倉庫を建設しました。
山九とパートナーシップを結ぶことで、我々D PDは中国市場へのアクセスを大きく改善す ることができました。
山九にはまた日本発の 貨物の取扱業務も委託しています。
※編集部注:DPDの親会社である仏郵政公 社=ラ・ポストは七月末、日本郵政の子会 社・郵便事業会社との業務提携を発表した。
業務提携の柱は二つ。
一つは国際スピード 郵便(EMS)における協力。
もう一つは 業務提携に先立ち日本郵政と山九が設立し た合弁企業「JPサンキュウグローバルロジ スティクス」(出資比率:日本郵政六〇%、 山九四〇%)を使って、ジオポストと国際 小包と国際ロジスティクス業務において提 携するというもの。
 中国同様に、経済成長が著しいインド においては、コンチネンタル・キャリアズ ( Continental Carriers)をパートナーに選ん でいます。
同社は英国の大手小売りであるマ ークス&スペンサーなどを荷主として抱えるイ ンドの大手ロジスティクス業者です。
インドの 十三都市に事務所を構え、一八都市に合計で 三万平方メートルの倉庫スペースを持ってい ます。
 ロシアにおけるパートナーは、アルマジロ・ グループ( Armadillo Group)です。
二七カ 所に事務所を構え、ロシア最大の陸上ネットワ ークを持っているロジスティクス業者です。
ま た南アフリカのパートナーは、レーザー・グル ープ( Laser Group)で、三〇〇カ所に事務 所を持ち、合計の倉庫スペースは一〇万平方 メートルです。
ドバイのパートナーは、ザ・カ ノー・グループ(The Kanoo Group)で、従 業員三〇〇人、三万平方メートルの倉庫スペ ースを有しています。
 欧州のユーロ高もあり、今後も海外での生 産は拡大し、それに合わせて欧州向け輸入貨 物の取り扱いも伸びていくことが予想されて います。
DPDがBt o Bの受け皿として成長 していくためには、今後もそうした流れを取 り込んで荷主に貢献できるソリューションを 提供していかなければならないのです。
65  SEPTEMBER 2008

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