ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年9号
物流IT解剖
住友倉庫

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2008  70 オープン化する以上 レガシーは残さない   倉庫業はもともと3PL事業と親 和性の高い業態だ。
一九九〇年代に 欧米流の3PLが日本に移入された ときにも、倉庫業者がその有力な担 い手となると期待された。
ところが 現実には3PL事業者として名乗り を挙げた企業はほとんどなかった。
 スペースを提供するだけで保管料 収入を得られた伝統的な倉庫業にな じんだ人たちにとって、3PL事業 は手間ばかりかかる利幅の薄いビジ ネスだった。
もともと自分たちこそ “日本流3PL”を提供してきたとい う自負も強い。
不動産事業の拡大で 倉庫事業の落ち込みを覆い隠せたこ とも影響した。
 しかしその後、経営環境は一変す る。
会計制度改革で減損会計が導入 されると、株式市場は保有資産の活 用効率を注視しはじめた。
米プロロ ジスをはじめとする新たな物流不動 産ビジネスも普及してきた。
倉庫各 社は改めて物流での収益確保を模索 するようになり、3PLや文書管理 ビジネスなど自らの強みを発揮でき る事業に目を向けはじめた。
 大手三社(三菱倉庫、三井倉庫、 住友倉庫)の事業戦略にも変化が生 じた。
それまでの横並び体質を脱し、 独自の事業戦略をとる動きが目立っ てきた。
三菱倉庫は強みとする医薬 品事業などへの注力を進めた。
三井 倉庫はITの先進性を武器に真正面 から3PLに取り組んでいる。
 住友倉庫もIT戦略を明確に転換 した。
二〇〇四年に基幹システムをオ ープン化する検討に入り、〇五年四 月から「次期情報システムへの移行 プロジェクト」をスタートさせた。
三 年余りでクライアント・サーバー型の オープンシステムを構築し、メインフ レーム(汎用機)の利用を完全に停 止するという内容である。
今年の年 末の連休時にシステムの移管作業を 実施する計画だ。
 住友倉庫のIT戦略は、三菱倉庫 と三井倉庫のちょうど中間に位置し ている。
三菱は豊富な資金力をバッ クに、使い慣れたホストを維持しな がら、別にオープンシステムの活用も 進めている。
三井は九〇年代初頭か らいち早くオープン化に取り組み、競 合他社に先駆けてITのコストパフ ォーマンスを高めてきた。
 こうした動きと比べると、住友倉 庫に派手さはない。
しかし、最近の 劇的な変化は見逃せない。
〇四年五 月に住友倉庫の情報システム部長に 就任し、強引なまでのリーダーシップ でIT改革を牽引してきた松本一則 執行役員はこう強調する。
 「私は個人的にシステムというのは できるだけシンプルにしていくべき だと考えている。
だからオープン化す る以上は、すべてオープン系のシステ ムにする。
レガシーは残さない。
そ 脱ホストとパッケージ活用を3年で推進 今年末に次期システム移行の正念場迎える 住友倉庫  4年前に就任した情報システム部長が、それまでのIT戦略を大きく 転換させた。
住友倉庫に対する販売比率が7%弱しかない協力ITベン ダーの株式を100 %取得し、子会社化することで開発・運用体制も 見直した。
今年の年末に予定している脱ホストのための作業が、次 のステップへの正念場となる。
情報システム部長を務める 松本一則執行役員 脱ホスト 第18 回 ◆本社組織  情報システム部に25人 の社員と、物流子会社アイスターからの 応援者27人が所属している   ◆情報子会社  アイスター、本社:大 阪市、資本金:4000万円(住友倉庫 100%)、売上高:約25億円(親会社 への販売額は約1.7億円で外販比率は 93%以上)、従業員:270人 《概要》一貫してシステムを自社開発してきた。
情報子会社を持っていなか ったが、この方針を2006年に転換。
協力ITベンダーだったアイスターの 株式を100%取得して子会社化した。
 04年に就任した情報システム部長の下で、6年計画で次期システムの 構築プロジェクトに取り組んでいる。
前半3年間が経過する今年末にメイ ンフレームを完全に停止する予定。
 次期システムの開発やネットワークの二重化投資などに最近3年間で 計20億を投じている。
07年度の年間ITコストは単体売上高(854億 円)の2.3%だが、そのうち約半分は新規投資に充当している。
71  SEPTEMBER 2008 松本部長の決断で、同社のIT戦略 はにわかに動きはじめた。
六年の移行期間を設定し 堅牢性と柔軟性の両立図る   もっとも既存の情報システム部の メンバーにとって、新任の部長が打 ち出した方針は容易に受け入れられ るものではなかった。
同部に二〇年 間ほど在籍している米原博文次長は、 三年間でメインフレームを停止する という決断に対する周囲の反応を次 のように振り返る。
 「若手は乗り気だったが、ほとんど の年配者は反対だった。
外部の知り 合いからも『冒険しますね』と言わ れた。
私も最初は泣く泣くだったか ら、彼らの気持ちはよく分かる。
四 〇年近く動いているシステムを潰す のは、やはり怖い。
長くシステムに 携わっている人間ほど安全な道を選 んでしまう。
部長の決断がなければ 踏み切れなかったと思う」  以前から部内でもオープン化の話 は出ていた。
しかし、実際に基幹シ ステムをオープン化するとなると多 額の投資が発生する。
そこまでする 必要があるのかと尻込みしてしまい、 具体的な話には至らずにきた。
 この膠着状態を松本部長が動かし た。
港湾や船社営業などの現場を経て 総務畑を歩んできた松本部長に、I T部門の生え抜きのような躊躇はな かった。
それよりもCOBOLを使 いこなせる人材がどんどん退場して いる現実を問題視した。
このままで は自社のITインフラが致命的な制 約を抱えかねないという危機意識が、 方針転換の決め手になった。
 オープン系の基幹システムの安定 稼働が確認できるまで、旧システムと 併用するという選択肢もあった。
だ が使い慣れたレガシーシステムが残っ ていると、新システムへの切り換え が進まない可能性が高い。
新旧二つ のシステムの維持コストも重複する。
熟慮の末に決断した。
 次期情報システムへの移行プロジ ェクトは六年計画となっている。
ま ず前半の三年間でマイグレーション (レガシーからの移行作業)などを実 施し、〇八年末に基幹システムをオ ープン化する。
そして〇九年一月か らの三年間で基幹システムそのもの をオープンシステムとして抜本的に再 構築していく。
 二段階のステップを踏むことで、過 去に培ってきたノウハウを新システム に移植し、メインフレームの長所であ る“堅牢性”を引き継ぐ。
その一方 で、ウェブ対応の強化や開発期間の 短縮、標準化などオープンシステムな らではの“柔軟性”も確保していこ うというわけだ。
買収したシステム会社の 親会社向け販売は七%弱   住友倉庫の主力ITベンダーは、 採用しているメインフレームの製造 元であるNECだ。
計画通りに脱ホ ストを実現したとしても、NECと の関係はさほど変わらない。
新シス テムで採用するサーバーでも同社のデ ータセンターを使うためだ。
 かつて住友倉庫のシステム開発は 典型的な自前主義をとっていた。
技 術面ではNECをパートナーとしな がらも、システムの開発・運用はす べて情報システム部のメンバーが手掛 けてきた。
人手が足りないときに実 務を協力システム会社に委ねること はあっても、あくまでも住友倉庫の 指示で動かしてきた。
 大手物流事業者には珍しく、つい 最近までIT子会社を持っていなか った。
それが〇六年四月に、一〇数 年前から取引のあった独立系のシス テム会社、アイスターを買収して一〇 〇%子会社とした。
この会社の直近 の年商約二五億円のうち住友倉庫向 けの販売額はわずか一・七億円。
全 体の七%弱にすぎない。
売り上げの 過半をダイキン工業やNECグルー ういう発想でやっている」  長年にわたって作り込んできたシ ステムに不満があったわけではない。
メインフレームを中心にきれいに整理 されており、使い勝手やコストパフォ ーマンスは今でも高く評価している。
しかし近年は、外部とのデータ交換 などに優位性のあるオープン系のシス テムを開発・運用するケースが頻発 している。
それだけ情報システム部 の負担も増大していた。
 「今はまだレガシーとオープン系の 二本立ての開発体制でやっていける。
だが五年、一〇年はもたない。
いず れネックになる」と松本部長。
あえ て将来のリスクを直視しようとする 次期システムIT子会社 次期情報システムへの移行ステップ Step1 オンライン・マイグレーション+基幹システム再構築 (05 年4月〜08 年12月) Step2 完全移行化段階(09 年1 月〜) ■基幹バッチの再開構築 ■基幹オンラインOPEN COBOLへのマイグレーション ■Java ■  .NETシステム開発体制の立ち上げ ■マイグレーション資産(OPEN COBOLの 完全Java ■   .NET 化 ■OPENシステム安定化 ■Java ■   .NETでのシステム開発力強化 Step3 システム拡張段階 ■システム強化、拡張 ■完全武装化 SEPTEMBER 2008  72 プなどから得ており、親会社だけを 見ている会社ではない。
 住友倉庫は当初、情報システム部 を分社化し、親会社の仕事をメーン で手掛ける子会社にすることを検討 した。
そのうえで外部の仕事もこな し、開発力などを磨いていくという 青写真だった。
しかし、二〇人程度 のシステム会社が、親会社以外の仕 事で稼げるまでにはかなりの時間を 要する。
他の物流会社系IT子会社 の現状をみても、事業化が容易でな いことは明らかだった。
 そこで独立心と多様性に富む専業 のIT企業であるアイスターに目を つけた。
オープンシステムに関するノ ウハウもあるし、事業者としての実 績もある。
買収金額が未公表のため、 このM&Aの損得勘定を評価するこ とはできないが、住友倉庫の次期シ ステム構想にとって計算できる戦力 を確保したのは間違いない。
 現在、住友倉庫の情報システム部 には社員が二五人、アイスターから の応援者が二七人の計五二人が所属 している。
総員の八割近くが大阪本 社に勤務しており、システム開発や 運用のほぼすべてをまかなっている。
東京に勤務する一〇人余りは、もっ ぱら営業支援を担当している。
 アイスターで親会社の仕事を専業 でこなしている二七人は、社内の「S I事業部」という部署にいる。
住友 倉庫としては、アイスターの多様性 は維持しながら、SI事業部を拡充 することでIT力を強化していこう としている。
ただし、優秀な人材を 同事業部に集めたりはしない。
 「いずれは当社の仕事を一部肩代わ りしてもらうときが来るかもしれな い。
それでもアイスター全体の売り 上げに占める割合はわずかにしかな らない。
この会社を住友倉庫の色に 染めようというのは、まったく不適 切。
あくまでもグループ以外の顧客 で稼げる会社にしていこうというの が今の方針だ」(松本部長) 自前主義に見切りをつけ 三分野でパッケージ導入   システム開発の考え方も見直した。
前述した通り、かつての住友倉庫は 徹底した自前主義だった。
それが近 年はパッケージソフトも活用してい る。
すでに「人事・給与システム」、 「経理システム」、「グローバルなサプ ライチェーン管理システム」の三分野 でパッケージを導入した。
 米原次長は、「六〇年代に会計シス テムと人事給与システムを自前で作 り、その後は手直ししながら使いつ づけてきた。
しかし、もう限界だっ た。
COBOLを使える人材が減っ ているのに、システムは膨れあがっ ている。
制度の変更や機構改革のた びに手直しを迫られ、もはやパッケ ージを導入せざるを得ない状況にな っていた」と述懐する。
 
稗圓寮賁膕箸砲箸辰謄僖奪院璽 の活用は既に常識になっている。
だが 住友倉庫の社内では、年配者を中心 に自社開発を望む声がいまだに絶え ないという。
自社開発であれば社外 への支払いが発生しないことや、社 内の特殊事情を反映しやすいことな どが背景にあるのだろう。
 しかし、会計分野に限っても、「内 部統制」や「データ監査」などシステ ム面で対応すべき課題は増えつづけ ている。
コストパフォーマンスを考え ても自社開発の優位性は小さい。
基 幹システムの刷新に人員を確保した い住友倉庫にとって、パッケージの 導入は合理的な判断といえる。
 大きな営業案件で、グローバルなサ プライチェーン管理システムのパッケ ージを採用したのも避けられない選 択だった。
住友倉庫は昨年七月、サ ウジアラビアで現地資本と合弁会社 を新設している。
サウジアラビア国営 の石油会社と住友化学が折半出資す る石油化学品メーカーの物流を請け 負うためだ。
 新会社は、石化樹脂製品を生産す るサウジの工場での構内物流と、中 東域内の販売物流を手掛けることを 目的としている。
日系物流事業者と して初めてサウジで本格的な事業展 開をするもので、住友倉庫にとって は未知の領域の仕事だった。
 この案件では、サウジの工場を起 点に国際物流をカバーできる情報シ ステムが不可欠だった。
輸送中の製 品の在庫管理や、そのために情報を 可視化する仕組みを、住友倉庫がす べて自社開発するのには無理があっ た。
そこで同地に情報インフラを持 ち、貨物追跡など必要な機能を備え ている外資系システム会社のパッケ ージを採用。
そこに必要な機能を外 付けしていく手法をとった。
 ところが、この選択に落とし穴が あった。
昨年六月にシステム開発をス タートしてから約半年後、契約上の 行き違いから外資系システム会社が 手を引いてしまったのである。
降っ 情報システム部の米原博文次長 パッケージ活用 73  SEPTEMBER 2008 ろう。
ミズノの有価証券報告書の沿 革には、同社が八四年に住友倉庫の 東大阪営業所内に「大阪流通センタ ー」を設置したことが明記されてい る。
荷主企業が自社の公的な文書に、 わざわざ物流パートナーの名前を明 記する例はあまりない。
それだけ両 者の関係は深い。
 住友倉庫は昨年、大阪市住之江区 に延床面積が四万八〇〇〇平方メー トル近い物流センターを開設して、ミ ズノの複数の物流拠点を集約した。
こ のセンターと東日本の拠点(神奈川 県厚木市)の二カ所でミズノの八万 品目の商品を管理し、全国に供給し ている。
自動化機器を多用したこれ らの拠点には高度なITが欠かせず、 住友倉庫のIT部門にとっても最先 端の施設となっている。
 このように現場オペレーションとI Tの融合を求められる拠点は、今後 ますます増える。
最近、多くの倉庫 業者が触手を動かしている文書管理 ビジネスも同じだ。
荷主が必要とす るときに、必要な文書を、現物もし くはデータで迅速に提供するこのビ ジネスは、一種のソリューション事業 だ。
住友倉庫としても本格的な参入 を虎視眈々と狙っている。
 同社の年間ITコストは、〇八年 三月期には単体売上高(八五四億円) の約二・三%だった。
最近三年間は、 次期システムの開発費やネットワー クの二重化投資など、通常の保守・ 運用業務とは異なる支出が発生して いる。
レガシーとオープンシステムへ の重複投資を余儀なくされている期 間でもあり、ITコストは高止まり している。
 ただ松本部長としては、次期シス テムの構築などの課題が一通り片づ いたとしても、「年間二%ぐらいは投 資しつづけなければ必要な機能を整 えられない」と考えている。
そのた めにも、まずは今年の年末に、近年 の投資の結果を出す必要がある。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) てわいた危機に対処するため、住友 倉庫のIT部門は非常時体制を組ん だ。
次期システムへの移行プロジェク トを一時中断し、すべての戦力をサ ウジの案件に投入した。
この緊急対 応を四カ月つづけて、何とか難局の 打開にメドをつけた。
 この新システムは今年中に稼働す る予定だ。
住友倉庫としては将来的 に「システムを汎用化して他の分野で も使えるようにしたい」(松本部長) と考えているだけに失敗は許されな い。
基幹システムのオープン化と併せ て、これを計画通り乗りきることが 当面の正念場となる。
営業の月例会議に出席し 
稗埓鑪の浸透を後押し   住友倉庫の社内における情報シス テム部の立場も変わりつつある。
も ともと事務管理から出発して業務領 域を拡大してきた同部は、営業に対 して弱い立場にあった。
社長など経 営陣も出席する月例の営業会議にも、 つい最近まで顔すら出せずにいた。
そ れが一年ほど前から毎回出席するよ うに変わった。
システムと営業の連 携は着実に深まっている。
 現在の住友倉庫にとって最も3P Lらしい案件は、大手スポーツ用品 メーカーのミズノからの物流受託だ 営業支援 住友倉庫の現在の情報システムの概要 倉庫・上屋在庫管理 自動倉庫 貴金属 LME 配送センター トランクルーム 輸入荷捌き 人事・給与システム、経理システム(会計・固定資産) 航空貨物国際荷捌き 荷主個別 汎 用 コンテナ荷捌き ヤード別在庫管理 リース・空コンテナ 搬出時現収 船社個別 コンテナ陸運 算出データ等 (クライアント/サーバシステム) (WEBシステム) 入出庫・在庫 貨物追跡等各種情報の閲覧 荷主(得意先) (クライアント/サーバシステム) コンテナヤード管理 書類保管 トランククルーム 輸出荷捌き 配送センター (ホストシステム) 関係会社ロンドン CCSJ POLINET Air-NACCS Sea-NACCS

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