2008年10月号
ケース
ケース
在庫管理 カルビー
OCTOBER 2008 52
在庫管理
カルビー
鮮度を重視し域内完結型需給体制を整備
商品の多様化で統合管理が新たな課題に
全製品を製造後一〇日以内に納品
大手菓子メーカーのカルビーは商品の鮮度
に強いこだわりを持つメーカーとして知られ
る。
主力商品の一つ、ポテトチップスは加工 の際に油を使うため、ほかの菓子類と比べ賞 味期限が短い。
工場でつくったものをできる だけ早く店まで届け、店頭に並べたあとも商 品が古くならないようきちんと管理しておく 必要がある。
そこでカルビーは一九七五年にポテトチッ プスを発売したのをきっかけに、菓子業界で 初めて商品に製造年月日を表示するとともに、 卸を経て店頭で販売されるまでの鮮度管理に 乗り出した。
その後、同社は鮮度の維持を経 営戦略上の重要な要素として位置付けてきた。
実際、同社において鮮度は売り上げや利 益などと並ぶ経営指標の一つにもなっている。
その管理基準は「製造から四五日以内に店頭 で消費する」というもの。
これを達成するた めの目安として、自社での在庫期間について 一〇日という上限を設けている。
同社の製品在庫日数は全商品平均で現在、 三日を切る水準にある。
ただし、商品によっ て在庫日数にはバラツキがある。
ポテトチッ プスのように在庫日数が一・五日と著しく短 いものもあればもっと長いものもある。
同社が基準としているのは、賞味期限が一 年と長く「シリアル食品」に分類されている 商品を例外として、すべての商品について直 接の顧客である卸のもとへ製造後一〇日以内 に納め、最も在庫日数の長いものでも一〇日 分を超える在庫を持たないことだ。
平均在庫 日数を短縮することよりも実現のハードルは ずっと高い。
もっとも、同社自身の在庫日数がいくら短 くなっても卸の倉庫で商品が滞留していては 鮮度は維持できない。
同社の在庫日数の上限 を一〇日、店頭での在庫期間を一カ月とする と、四五日以内を達成するには、卸の在庫日 数を五日以内に抑えなければならない。
また小売店でも、特売などのプロモーショ ンを実施した際に、売り上げが店の計画した 数量に達しないと、売れ残った分が定番品の 棚に回って店頭在庫の陳腐化を招くといった ことが起こる。
そこでカルビーでは二〇年ほど前から、「カ ルビーフィールドレディ」と呼ぶ専任のスタッ フを組織化し、定期的に小売店を回って自社 製品の鮮度情報を収集する活動を行っている。
九八年にはこれを「ゾーンセールス」に改組 し、現在では全国の小売店舗一万店を月に二 〜四回の頻度で巡回している。
ゾーンセールス部隊は、専用にプログラム化 された携帯電話の内蔵カメラで売り場に並ぶ カルビーの商品のバーコードを読み、商品に 記載されている賞味期限を入力する方法で鮮 度情報を収集している。
収集した情報はプロ モーション情報などとともにリアルタイムにバ ックオフィスのサーバーへ送られる。
カルビは生産してから店頭で商品が消費される までのトータルリードタイムに着目し、鮮度管理に 早くから力を入れてきた。
主力のポテトチップスで は域内完結型の需給体制を整備した。
その一方、地 域外供給の必要な商品も増えてきたこと、地域間 の物流に格差が目立ってきたことなどから、統合管 理による効率化が新たな課題になっている。
53 OCTOBER 2008 卸に対しても「キーアカウントセールス」と 呼ぶ担当者が定期的に訪問して同じように情 報収集を行い、在庫日数などをチェックして いる。
店頭の日付けが四五日以内の基準を超えて いる場合、これらの情報をもとに原因を分析 して改善策を講じる。
ゾーンセールスやキーア カウントセールスが組織小売業や卸の催す新 製品のプロモーションの際に、直前までこま めに計画数量変更などの確認を行って情報の 精度を高めている。
計画数量を達成するため 店に対して販促支援を行ったり、場合によっ ては店舗の売り上げ規模に見合った発注数を アドバイスすることもある。
卸が安全在庫を持ちすぎているときは、キ ーアカウントセールスが卸に発注点や発注単 位の見直しを提案する。
昨今は新製品を発売する回数が増える傾向 にある。
新製品の需要予測は困難で、発売当 初は売れ行きが好調でも一定期間を経過する と急速に落ちることもある。
頻繁に入れ替わ るアイテムそれぞれについて、販売動向を見 ながらきめ細かく在庫日数をメンテナンスす る必要がある。
膨大なアイテム数を扱う卸の中には変動の 速さにメンテナンスがついていけず、必要以 上の数量を発注して在庫を抱えてしまうとこ ろも出てくる。
こうした卸の在庫リスクを軽 減するために、メーカーの立場からサポート している。
新製品というと以前は一斉出荷の タイミングで初回にまとめて発注するのが一 般的だったが、この方法ではロスが生じやす いため、実際の卸の出荷計画に合わせてその 都度発注するようなアドバイスも行っている。
ポテトチップスは域内需給が原則 鮮度政策を有利に進めるためにカルビーで は、九〇年代から「地域事業部制」を導入 して、地域ごとに事業部が原料の調達から製 造・販売・物流までを統括し損益管理に責任 を持つ組織形態をとってきた。
現在はこれを 「地域カンパニー制」に改め、北部・東日本・ 東京・中部・近畿・中四国・九州の七つの地 域カンパニーを組織している。
売上げの五割近くを占めるポテトチップス については、この地域カンパニーが域内の需 給をすべて管理している。
カンパニーがそれ ぞれジャガイモの生産農家と契約して生産活 動の支援を行い、収穫から定温倉庫での貯蔵、 工場への搬入、製造、流通までを一元管理す る。
店頭に商品が届くまでの在庫をいかに少 なくして経営の効率を高めるかが各カンパニ ーに託されている。
現在、工場は協力工場を含めて全国に十三 カ所ある。
各カンパニーがそれぞれの地域の 工場を管轄している。
ポテトチップスの工場 は全七地域にすべて設置しており、地域で需 給を完結させることを原則としている。
だが、近年カルビーは季節限定商品の販売 に力を入れている。
定番商品と違って販売期 間が二〜三カ月程度と短いため、賞味期限の 管理だけでなく、期間内に販売を終了するた めの管理が必要になる。
販売期間が残り少な くなってからの生産をどう運営するかが重大 なテーマとなる。
店から注文がある限り生産は続けるものの、 売れ残りが出ないように数量を徐々に減らし ていかなければならない。
しかし、ロットが 一定レベルを割ると生産効率が落ちてしまう。
その場合にはほかの地域カンパニーに生産を 委託して、ロットをまとめるという選択肢が 出てくる。
各地域カンパニーでは、原料・資材の購入、 生産、物流の各部門の担当者によって構成す る「SCMチーム」を組織している。
SCM チームは各部門担当者間の連携によって需給 を調整する。
このうち物流担当の役割は、営 業部門の販売計画や在庫情報などをもとに、 生産計画や在庫・出荷計画の立案・管理を行 うことだ。
季節限定商品の販売終了日が近づ いてからの生産をほかのカンパニーに委託す るかどうかについても、物流担当者が工場と 調整を行いながら判断している。
一方、ポテトチップス以外の製品は、域外 供給も日常的に発生する。
期間限定品や地域 限定品を含めるとカルビーの商品アイテム数 は現在、二五〇に上っている。
一〇年前に比 べて二倍以上に膨らんだ。
それに伴い全地域 で生産されない商品が増えてきた。
このためカルビーは二〇〇六年九月に、地 OCTOBER 2008 54 域カンパニーとは別に新たに商品カンパニーを 発足した。
「ポテトチップス」「スナック」「じ ゃがりこ」「ジャガビー」「シリアル」のブラン ド別の五つのカンパニーで、このうち各地域に 製造ラインのあるポテトチップスについては従 来通り地域カンパニーが経営指標の管理を行 うが、これ以外の四つのブランドについては、 商品カンパニーに管理を委ねることにした。
四ブランドの商品に関して、商品カンパニ ーが各地域カンパニーの販売計画や販売情報 をもとに工場の生産数量を割り当て、在庫計 画を立てる体制を目指している。
その第一弾 として今年の春、スナックカンパニーのなか にこうした機能を担うSCMチームが発足し た。
新製品の発売や大きなプロモーションを 行う際に、SCMチームが計画数量と工場の 生産能力から、どの工場がどんなタイミング で生産を行うかを、全国的な視野で判断する。
ほかの商品カンパニーについても順次、同様 の体制を整えていく予定だ。
流通在庫削減へ定時配送 カルビーの物流拠点は全国に十一カ所ある。
このうち四カ所は工場隣接型の物流センター (DC)で、残り七カ所は「SS(サービスス テーション)」と呼ぶ出先の拠点だ。
かつては なるべく市場の近くに在庫を持って顧客の注 文に対応するため、SSを二〇カ所近く配置 し、SSに対して工場から補給を行っていた。
だが分散型では管理が非効率で在庫も陳腐化 誤差を極力減らして流通在庫の削減を図る狙 いだ。
これに並行して卸との間で、菓子業界 の標準EDIサービス「e─お菓子ネット」の 利用による受発注のEDI化を推進している。
受注のEDI化率は現在、九五%に達してい るという。
こうして地域需給体制のもとで高水準の鮮 度管理を実現してきたカルビーだが、その物 流体制には地域格差の生じていることが最近 になってわかってきた。
省エネ法(エネルギ ー使用の合理化に関する法律)の改正がきっ かけだった。
同法によって同社は特定荷主としてCO2 排出量などについて国への報告義務を負うこ しやすいことから、千歳・各務原・滋賀・鹿 児島の四工場にDCを設けて顧客へ直送する 体制を整備し、SSの集約を進めた。
拠点の集約は在庫削減の効果が期待できる 半面、同社の出先の在庫がなくなることで、 卸側が欠品への不安から在庫を多く持とうと するために、流通在庫が増えてしまう恐れも あった。
そこで同社は卸が余分な在庫を持た なくてもいいように物流面で二つの対策を講 じた。
まず顧客のもとへ定時配送する「ダイヤグ ラム配送」の仕組みを構築した。
商品がいつ 届くか分からないと卸は欠品を恐れて多めに 発注する。
これを避けるために卸に対して納 品時間を約束し、ルートを決めて定時に配送 することにした。
配送拠点では、納品時間か ら逆算して受注の締め切り・ピッキング作業 の開始・終了・積み込み・出発までのダイヤ グラムを組んで業務を行う。
これによって卸 は計画的に発注できるようになった。
卸の発注精度を高めるために受注の締め切 り時間も延長した。
かつては翌日配送する 分の受注締め時間を午前十一時に設定してい た。
だが組織小売業などから卸に注文が入る のは大半が午後二時以降であるため、卸の受 注数量とメーカーに対する発注数量の間にギ ャップが生じていた。
そこで締め時間を午後五時まで延ばし、卸 に小売業からの受注数量が確定してから発注 してもらえるようにした。
見込み発注による 店頭起点の10 プロセス改善 物流プロセスにおけるダイヤグラム運用 種 子 圃 場 原材料 前処理 加 工 調 味 包 装 D C 流 通 店 頭 受注起点の流通生産システムの構築 情報連鎖 プロセス連鎖 後行程への品質保証=全量品質保証システムの構築 D C ダイヤグラム 流 通 待機 荷卸 在庫 受注 引当 配車 品揃 積込 待機 荷卸 検品 移動 待機 受領 OCTOBER 2008 55 とになった。
物流分野の報告書を作成するた め、各カンパニーのSCMチームを支援する 本社のSCMグループが全国のデータを集め たところ、カンパニーによって物流コストや CO2排出量などにかなりのバラツキがあるこ とが判明した。
これを機にSCMグループでは、一カ月間 かけて受注・出荷・配車などの物流業務につ いて項目別に分析を行った。
その結果、カン パニーによって工数や人員数、配送時間など に大きな違いのあることがわかった。
七つのカンパニーのうち北部・東日本・東 京の三カンパニーは、それぞれ子会社のスナ ックフード・サービスに受注から出荷までの 物流管理業務を委託し、受注や配車の窓口も 一本化している。
これに対してほかの四つの カンパニーでは、カンパニー自身で物流管理 を行っており、配送などの業務をそれぞれが 協力物流会社に委託する形をとっている。
こ うした管理体制の違いもあって業務の標準化 が遅れていたのだ。
SCMグループ物流担当の大内肇氏は「こ れまではカンパニー間で物流の生産性を比較 することがなく、あるカンパニーで業務を効率 化しても単独の取り組みに終わっていた。
今 後は情報を共有した上で標準化を行い、業務 内容の統合を進める必要がある」と見る。
そ の手始めとしてこれまでに、西日本地区の受 注業務について一部をスナックフード・サー ビスに集約した。
荷待ち時間に大きなバラツキ CO2排出量を削減するという観点からS CMグループが今最も問題視しているのは配 送時間だ。
昨年春からスナックフード・サー ビスに委託して配送時間のモニター調査を行 っている。
従来、配送についてはダイヤグラ ムによって約束した時間に顧客へ納品された かどうかに関心があった。
今回は到着してか ら次の配送先へ出発するまでにどれだけ時間 がかかったかを調査するため、ドライバーに 配送先ごとの到着・出発時間を日報に記して もらっている。
その結果、同じ五〇〇ケースを納品するの にかかる時間が配送先によって三〇分から三 時間までの開きがあることがわかった。
この 差は荷役時間ではなく荷待ち時間の違いによ るところが大きいとSCMグループでは見て いる。
実際、配送先によっては、車の到着に 合わせて倉庫のバースを空け荷受け作業者を 待機させているところもあれば、その一方で ドライバーが到着してから二時間以上も荷降 ろしの順番待ちをしているケースもあった。
「荷待ち時間が減ることでもっと効率のいい 配送ルートを組むことができる。
この調査結 果をもとにどのルートにどんなロスがあるの かを?見える化?して販売部門に問題を提起 し、環境の切り口で流通業と共同で改善に向 け取り組んでいきたい」と大内氏は強調する。
昨年十一月には運送会社から燃費情報の収 集も始めた。
同社の商品の配送にあたる車両 一一〇〇台のうち半数の五五〇台を対象に、 月に一度報告を受けている。
省エネ法への対 応の一環であると同時に、運送会社に対して 運行管理によるデータ化を勧め燃費改善を促 す狙いもある。
これに先立ち、スナックフード・サービスの 自社便に運行管理用の車載端末を導入し、収 集したデータをもとに改善を進めた結果、車 両によって一六〜二一%の燃費向上が見られ たという。
この実績の上で今後ほかの運送会 社にも働きかけていく考えだ。
また長距離輸送の共同化にもこれから本格 的に取り組む。
同社は域内配送については早 くから共同化を進めてきたが、地域ごとに生 産せず域外から供給する商品が増え、長距離 輸送の効率化が新たな課題になってきた。
「カ ンパニー間で情報を共有して物流ネットワーク の相互利用を進めたい」とする。
商品の多様 化に伴う域外流通の拡大によって同社は物流 再構築の時を迎えつつあるようだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) SCMグループ物流担当の 大内肇氏
主力商品の一つ、ポテトチップスは加工 の際に油を使うため、ほかの菓子類と比べ賞 味期限が短い。
工場でつくったものをできる だけ早く店まで届け、店頭に並べたあとも商 品が古くならないようきちんと管理しておく 必要がある。
そこでカルビーは一九七五年にポテトチッ プスを発売したのをきっかけに、菓子業界で 初めて商品に製造年月日を表示するとともに、 卸を経て店頭で販売されるまでの鮮度管理に 乗り出した。
その後、同社は鮮度の維持を経 営戦略上の重要な要素として位置付けてきた。
実際、同社において鮮度は売り上げや利 益などと並ぶ経営指標の一つにもなっている。
その管理基準は「製造から四五日以内に店頭 で消費する」というもの。
これを達成するた めの目安として、自社での在庫期間について 一〇日という上限を設けている。
同社の製品在庫日数は全商品平均で現在、 三日を切る水準にある。
ただし、商品によっ て在庫日数にはバラツキがある。
ポテトチッ プスのように在庫日数が一・五日と著しく短 いものもあればもっと長いものもある。
同社が基準としているのは、賞味期限が一 年と長く「シリアル食品」に分類されている 商品を例外として、すべての商品について直 接の顧客である卸のもとへ製造後一〇日以内 に納め、最も在庫日数の長いものでも一〇日 分を超える在庫を持たないことだ。
平均在庫 日数を短縮することよりも実現のハードルは ずっと高い。
もっとも、同社自身の在庫日数がいくら短 くなっても卸の倉庫で商品が滞留していては 鮮度は維持できない。
同社の在庫日数の上限 を一〇日、店頭での在庫期間を一カ月とする と、四五日以内を達成するには、卸の在庫日 数を五日以内に抑えなければならない。
また小売店でも、特売などのプロモーショ ンを実施した際に、売り上げが店の計画した 数量に達しないと、売れ残った分が定番品の 棚に回って店頭在庫の陳腐化を招くといった ことが起こる。
そこでカルビーでは二〇年ほど前から、「カ ルビーフィールドレディ」と呼ぶ専任のスタッ フを組織化し、定期的に小売店を回って自社 製品の鮮度情報を収集する活動を行っている。
九八年にはこれを「ゾーンセールス」に改組 し、現在では全国の小売店舗一万店を月に二 〜四回の頻度で巡回している。
ゾーンセールス部隊は、専用にプログラム化 された携帯電話の内蔵カメラで売り場に並ぶ カルビーの商品のバーコードを読み、商品に 記載されている賞味期限を入力する方法で鮮 度情報を収集している。
収集した情報はプロ モーション情報などとともにリアルタイムにバ ックオフィスのサーバーへ送られる。
カルビは生産してから店頭で商品が消費される までのトータルリードタイムに着目し、鮮度管理に 早くから力を入れてきた。
主力のポテトチップスで は域内完結型の需給体制を整備した。
その一方、地 域外供給の必要な商品も増えてきたこと、地域間 の物流に格差が目立ってきたことなどから、統合管 理による効率化が新たな課題になっている。
53 OCTOBER 2008 卸に対しても「キーアカウントセールス」と 呼ぶ担当者が定期的に訪問して同じように情 報収集を行い、在庫日数などをチェックして いる。
店頭の日付けが四五日以内の基準を超えて いる場合、これらの情報をもとに原因を分析 して改善策を講じる。
ゾーンセールスやキーア カウントセールスが組織小売業や卸の催す新 製品のプロモーションの際に、直前までこま めに計画数量変更などの確認を行って情報の 精度を高めている。
計画数量を達成するため 店に対して販促支援を行ったり、場合によっ ては店舗の売り上げ規模に見合った発注数を アドバイスすることもある。
卸が安全在庫を持ちすぎているときは、キ ーアカウントセールスが卸に発注点や発注単 位の見直しを提案する。
昨今は新製品を発売する回数が増える傾向 にある。
新製品の需要予測は困難で、発売当 初は売れ行きが好調でも一定期間を経過する と急速に落ちることもある。
頻繁に入れ替わ るアイテムそれぞれについて、販売動向を見 ながらきめ細かく在庫日数をメンテナンスす る必要がある。
膨大なアイテム数を扱う卸の中には変動の 速さにメンテナンスがついていけず、必要以 上の数量を発注して在庫を抱えてしまうとこ ろも出てくる。
こうした卸の在庫リスクを軽 減するために、メーカーの立場からサポート している。
新製品というと以前は一斉出荷の タイミングで初回にまとめて発注するのが一 般的だったが、この方法ではロスが生じやす いため、実際の卸の出荷計画に合わせてその 都度発注するようなアドバイスも行っている。
ポテトチップスは域内需給が原則 鮮度政策を有利に進めるためにカルビーで は、九〇年代から「地域事業部制」を導入 して、地域ごとに事業部が原料の調達から製 造・販売・物流までを統括し損益管理に責任 を持つ組織形態をとってきた。
現在はこれを 「地域カンパニー制」に改め、北部・東日本・ 東京・中部・近畿・中四国・九州の七つの地 域カンパニーを組織している。
売上げの五割近くを占めるポテトチップス については、この地域カンパニーが域内の需 給をすべて管理している。
カンパニーがそれ ぞれジャガイモの生産農家と契約して生産活 動の支援を行い、収穫から定温倉庫での貯蔵、 工場への搬入、製造、流通までを一元管理す る。
店頭に商品が届くまでの在庫をいかに少 なくして経営の効率を高めるかが各カンパニ ーに託されている。
現在、工場は協力工場を含めて全国に十三 カ所ある。
各カンパニーがそれぞれの地域の 工場を管轄している。
ポテトチップスの工場 は全七地域にすべて設置しており、地域で需 給を完結させることを原則としている。
だが、近年カルビーは季節限定商品の販売 に力を入れている。
定番商品と違って販売期 間が二〜三カ月程度と短いため、賞味期限の 管理だけでなく、期間内に販売を終了するた めの管理が必要になる。
販売期間が残り少な くなってからの生産をどう運営するかが重大 なテーマとなる。
店から注文がある限り生産は続けるものの、 売れ残りが出ないように数量を徐々に減らし ていかなければならない。
しかし、ロットが 一定レベルを割ると生産効率が落ちてしまう。
その場合にはほかの地域カンパニーに生産を 委託して、ロットをまとめるという選択肢が 出てくる。
各地域カンパニーでは、原料・資材の購入、 生産、物流の各部門の担当者によって構成す る「SCMチーム」を組織している。
SCM チームは各部門担当者間の連携によって需給 を調整する。
このうち物流担当の役割は、営 業部門の販売計画や在庫情報などをもとに、 生産計画や在庫・出荷計画の立案・管理を行 うことだ。
季節限定商品の販売終了日が近づ いてからの生産をほかのカンパニーに委託す るかどうかについても、物流担当者が工場と 調整を行いながら判断している。
一方、ポテトチップス以外の製品は、域外 供給も日常的に発生する。
期間限定品や地域 限定品を含めるとカルビーの商品アイテム数 は現在、二五〇に上っている。
一〇年前に比 べて二倍以上に膨らんだ。
それに伴い全地域 で生産されない商品が増えてきた。
このためカルビーは二〇〇六年九月に、地 OCTOBER 2008 54 域カンパニーとは別に新たに商品カンパニーを 発足した。
「ポテトチップス」「スナック」「じ ゃがりこ」「ジャガビー」「シリアル」のブラン ド別の五つのカンパニーで、このうち各地域に 製造ラインのあるポテトチップスについては従 来通り地域カンパニーが経営指標の管理を行 うが、これ以外の四つのブランドについては、 商品カンパニーに管理を委ねることにした。
四ブランドの商品に関して、商品カンパニ ーが各地域カンパニーの販売計画や販売情報 をもとに工場の生産数量を割り当て、在庫計 画を立てる体制を目指している。
その第一弾 として今年の春、スナックカンパニーのなか にこうした機能を担うSCMチームが発足し た。
新製品の発売や大きなプロモーションを 行う際に、SCMチームが計画数量と工場の 生産能力から、どの工場がどんなタイミング で生産を行うかを、全国的な視野で判断する。
ほかの商品カンパニーについても順次、同様 の体制を整えていく予定だ。
流通在庫削減へ定時配送 カルビーの物流拠点は全国に十一カ所ある。
このうち四カ所は工場隣接型の物流センター (DC)で、残り七カ所は「SS(サービスス テーション)」と呼ぶ出先の拠点だ。
かつては なるべく市場の近くに在庫を持って顧客の注 文に対応するため、SSを二〇カ所近く配置 し、SSに対して工場から補給を行っていた。
だが分散型では管理が非効率で在庫も陳腐化 誤差を極力減らして流通在庫の削減を図る狙 いだ。
これに並行して卸との間で、菓子業界 の標準EDIサービス「e─お菓子ネット」の 利用による受発注のEDI化を推進している。
受注のEDI化率は現在、九五%に達してい るという。
こうして地域需給体制のもとで高水準の鮮 度管理を実現してきたカルビーだが、その物 流体制には地域格差の生じていることが最近 になってわかってきた。
省エネ法(エネルギ ー使用の合理化に関する法律)の改正がきっ かけだった。
同法によって同社は特定荷主としてCO2 排出量などについて国への報告義務を負うこ しやすいことから、千歳・各務原・滋賀・鹿 児島の四工場にDCを設けて顧客へ直送する 体制を整備し、SSの集約を進めた。
拠点の集約は在庫削減の効果が期待できる 半面、同社の出先の在庫がなくなることで、 卸側が欠品への不安から在庫を多く持とうと するために、流通在庫が増えてしまう恐れも あった。
そこで同社は卸が余分な在庫を持た なくてもいいように物流面で二つの対策を講 じた。
まず顧客のもとへ定時配送する「ダイヤグ ラム配送」の仕組みを構築した。
商品がいつ 届くか分からないと卸は欠品を恐れて多めに 発注する。
これを避けるために卸に対して納 品時間を約束し、ルートを決めて定時に配送 することにした。
配送拠点では、納品時間か ら逆算して受注の締め切り・ピッキング作業 の開始・終了・積み込み・出発までのダイヤ グラムを組んで業務を行う。
これによって卸 は計画的に発注できるようになった。
卸の発注精度を高めるために受注の締め切 り時間も延長した。
かつては翌日配送する 分の受注締め時間を午前十一時に設定してい た。
だが組織小売業などから卸に注文が入る のは大半が午後二時以降であるため、卸の受 注数量とメーカーに対する発注数量の間にギ ャップが生じていた。
そこで締め時間を午後五時まで延ばし、卸 に小売業からの受注数量が確定してから発注 してもらえるようにした。
見込み発注による 店頭起点の10 プロセス改善 物流プロセスにおけるダイヤグラム運用 種 子 圃 場 原材料 前処理 加 工 調 味 包 装 D C 流 通 店 頭 受注起点の流通生産システムの構築 情報連鎖 プロセス連鎖 後行程への品質保証=全量品質保証システムの構築 D C ダイヤグラム 流 通 待機 荷卸 在庫 受注 引当 配車 品揃 積込 待機 荷卸 検品 移動 待機 受領 OCTOBER 2008 55 とになった。
物流分野の報告書を作成するた め、各カンパニーのSCMチームを支援する 本社のSCMグループが全国のデータを集め たところ、カンパニーによって物流コストや CO2排出量などにかなりのバラツキがあるこ とが判明した。
これを機にSCMグループでは、一カ月間 かけて受注・出荷・配車などの物流業務につ いて項目別に分析を行った。
その結果、カン パニーによって工数や人員数、配送時間など に大きな違いのあることがわかった。
七つのカンパニーのうち北部・東日本・東 京の三カンパニーは、それぞれ子会社のスナ ックフード・サービスに受注から出荷までの 物流管理業務を委託し、受注や配車の窓口も 一本化している。
これに対してほかの四つの カンパニーでは、カンパニー自身で物流管理 を行っており、配送などの業務をそれぞれが 協力物流会社に委託する形をとっている。
こ うした管理体制の違いもあって業務の標準化 が遅れていたのだ。
SCMグループ物流担当の大内肇氏は「こ れまではカンパニー間で物流の生産性を比較 することがなく、あるカンパニーで業務を効率 化しても単独の取り組みに終わっていた。
今 後は情報を共有した上で標準化を行い、業務 内容の統合を進める必要がある」と見る。
そ の手始めとしてこれまでに、西日本地区の受 注業務について一部をスナックフード・サー ビスに集約した。
荷待ち時間に大きなバラツキ CO2排出量を削減するという観点からS CMグループが今最も問題視しているのは配 送時間だ。
昨年春からスナックフード・サー ビスに委託して配送時間のモニター調査を行 っている。
従来、配送についてはダイヤグラ ムによって約束した時間に顧客へ納品された かどうかに関心があった。
今回は到着してか ら次の配送先へ出発するまでにどれだけ時間 がかかったかを調査するため、ドライバーに 配送先ごとの到着・出発時間を日報に記して もらっている。
その結果、同じ五〇〇ケースを納品するの にかかる時間が配送先によって三〇分から三 時間までの開きがあることがわかった。
この 差は荷役時間ではなく荷待ち時間の違いによ るところが大きいとSCMグループでは見て いる。
実際、配送先によっては、車の到着に 合わせて倉庫のバースを空け荷受け作業者を 待機させているところもあれば、その一方で ドライバーが到着してから二時間以上も荷降 ろしの順番待ちをしているケースもあった。
「荷待ち時間が減ることでもっと効率のいい 配送ルートを組むことができる。
この調査結 果をもとにどのルートにどんなロスがあるの かを?見える化?して販売部門に問題を提起 し、環境の切り口で流通業と共同で改善に向 け取り組んでいきたい」と大内氏は強調する。
昨年十一月には運送会社から燃費情報の収 集も始めた。
同社の商品の配送にあたる車両 一一〇〇台のうち半数の五五〇台を対象に、 月に一度報告を受けている。
省エネ法への対 応の一環であると同時に、運送会社に対して 運行管理によるデータ化を勧め燃費改善を促 す狙いもある。
これに先立ち、スナックフード・サービスの 自社便に運行管理用の車載端末を導入し、収 集したデータをもとに改善を進めた結果、車 両によって一六〜二一%の燃費向上が見られ たという。
この実績の上で今後ほかの運送会 社にも働きかけていく考えだ。
また長距離輸送の共同化にもこれから本格 的に取り組む。
同社は域内配送については早 くから共同化を進めてきたが、地域ごとに生 産せず域外から供給する商品が増え、長距離 輸送の効率化が新たな課題になってきた。
「カ ンパニー間で情報を共有して物流ネットワーク の相互利用を進めたい」とする。
商品の多様 化に伴う域外流通の拡大によって同社は物流 再構築の時を迎えつつあるようだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) SCMグループ物流担当の 大内肇氏
