ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年9号
特集
現場を強くしよう 菱食―儲かるマテハン投資

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2005 14 物流コストは利益の源泉 マテハン活用のトレンドは、バブル崩壊を機に一八 〇度変化した。
それまでの人手不足に配慮した自動 化・省力化推進から一転、投資額が大きく変化への 柔軟な対応に欠けるとされる自動倉庫などの大型マテ ハン設備は今日では避けられる傾向にある。
しかし 「当社の方針は全く逆だ」と、菱食の渡辺聖文ロジス ティクス本部DC統括部九州物流事業所長はいう。
実 際、同社は物流センターのマテハン装備を九〇年以降 も一貫して強化し続けている。
現在、同社が運営するチェーンストア専用センター (SDC)の設備費は、九〇年代中頃までの初期型セ ンターに比べて三三・一%増加している。
しかし、人 件費が三九%下がったため、トータルコストは八・ 三%低減している( 図1)。
自動化によって現場の人 員を減らすことで、利益を生み出している格好だ。
こ うした「物流コスト削減を当社は利益の源泉としてき た」と廣田正会長は説明する。
加工食品、酒類、菓子のカテゴリーを統合して今 年四月に稼働した「九州フルライン物流センター(九 州FLDC)」では、図1の「3期型専用センター」 と比較しても、さらに設備が増強されている。
同セン ターは九州全域のバラピッキングを集中して処理する 「RDC」機能と、北九州エリアの顧客向けのケース 出荷商品を扱う「FDC」機能を併せ持っている。
まずバラピッキングのオペレーションから説明する。
出荷頻度の高いAランク商品は、一つのパレットに一 つのアイテムだけが載った状態で入荷される。
これを 検品後そのままパレット用自動倉庫で保管する。
自動 倉庫からデジタルピッキングシステム(DPS)用フ ローラックへの商品補充には専用のクレーンを四機導 果敢なマテハン投資でコスト削減を実現し、利益を捻出す る。
過去19年にわたり実質的な増収増益を続けてきた菱食の 物流戦略だ。
今年4月に稼働した最新拠点「九州フルライン 物流センター」には、そんな同社が蓄積してきたマテハン活 用技術の粋が集められている。
(大矢昌浩) 入した。
一つのクレーンで一時間当たり二〇〇ケース を処理できる。
人手では一人一時間五〇ケースだから、 クレーン一台が四人分の仕事をする計算だ。
九州F LDCでは四機×四人分で計一六人分の補充業務を 自動化したことになる。
同時に補充業務用のスペース 約四〇〇坪分を圧縮できたという。
一つのパレットに複数のアイテムを混載して入荷す るBランク〜Eランクの商品にはケース用の自動倉庫 を使う。
商品の製造日管理と先入れ先出しを徹底す るため、従来は商品ごとに保管ロケーションを固定し ていた。
しかし固定ロケーションは、回転率の低いス ロームーブ商品でも一定の棚スペースを占領してしま うために保管効率が悪い。
そこでスロームーブ商品をケース用自動倉庫で保管 することで、フリーロケーションに変更した。
注文を 受けて商品を引き当てると、自動倉庫が該当する商 品ケースを排出し、ピッキングエリアに搬送する。
こ のうちBランク、Cランクの商品はAランク商品と同じDPS用フローラックに補充する。
Dランク、Eランクの商品は、注文をバッチで処理 して総量を自動倉庫から排出、専用ラインに運ぶ。
D E商品は出荷量では全体の数%を占めるに過ぎないが、 アイテム数としては膨大だ。
それをA〜C商品と同じ ラインで処理すると、アイテムが増える分だけピッカ ーの動線が長くなり効率が落ちる。
そこでDE商品は、 他の商品とは別に、種まき式のデジタルアソートシス テムで店別のオリコンに仕分ける形をとった。
ピッキングの済んだオリコンは全て、重量を計測し て正しく商品が投入されているかを判定する「ウェイ トチェッカー」を通過させる。
検品をパスしたオリコ ンは立体型の高速自動仕分け機「SAS」へ。
SA Sから店別・棚別に順次排出されるオリコンを、自動 菱食―儲かるマテハン投資 第3部事例研究・強い現場の作り方 15 SEPTEMBER 2005 積付機でカートラックに乗せて出荷準備が終了する。
現場を担うスーパーバイザー パレット用自動倉庫とケース用自動倉庫は、ケース 単位の出荷を処理するFDC用のマテハン設備として も使用されている。
ケース出荷するうち売れ筋の超A ランク商品は入荷後も、そのまま床に直置きかピッキ ングエリアのパレットラックに格納。
無線携帯端末と BTフォークを使って店別に集荷する。
通常のAランク商品とBランク商品はパレット用自 動倉庫へリザーブ在庫として保管。
必要に応じてパレ ットをピッキングエリアに補充する。
ピッキングには 超Aランクと同様に無線携帯端末とBT車を使う。
C 〜Eランクは、入荷したパレットをケースにバラして コンベヤに投入し、ケース用自動倉庫で保管する。
ピ ッキングは注文を引き当てたケースを店別に自動倉庫 から排出して、出荷用ラベルを自動的に貼付。
店別の カゴ車に積み付けて出荷する。
同センターのオペレーションには、「スーパーバイ ザー(SV)」と呼ぶ正社員の管理者を五人配置し、 三交代制でシフトを組んで指揮をとっている。
SVは 情報システムによる在庫管理とマテハン制御のほか、 庫内作業を担う協力物流会社の指導にも当たる。
基 本的にパートの雇用を含めた現場運営は協力会社に 委託する体制だが、作業生産性の数値目標や改善に 必要な実績データは、各センターのSVが集計して 提供する。
人手のかからない仕組みの構築を目指す同社にと って、現場の労務管理はコア機能ではない。
しかし管 理の手綱を緩めることはできない。
本社から全国の現 場に派遣した二〇歳代後半から三〇代の中堅社員で 構成するSV部隊がその役割を担っている。

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