2008年10月号
特集

共同物流入門 卸連合で業界再編を生き残る

OCTOBER 2008  20 NSグループ ──共同出資で物流管理会社設立  全国の地域菓子卸で構成するエヌエスグループ(N Sグループ)は二〇〇四年、会員企業の共同出資で 物流管理会社のエヌエス物流(NS物流)を設立した。
NSグループの会員企業は会社組織としては独立して いる。
それでも物流システムの運用と現場のオペレー ションを集約することで、コスト削減を進めようとい う狙いだ。
 現在、NSグループ一七社のうち五社が物流管理を 委託している。
NS物流は一社専用の物流センター七 カ所のほか、福岡、兵庫、愛知の三カ所に共同物流 センターを運営している。
 NS物流の設立に先立ち、NSグループでは情報 システムを統一し、二〇〇〇年には情報システム開発 会社のエヌエスシーエス(NSCS)を設立していた。
しかし、システムの実際の運用には各社でバラツキが あった。
本来の効果を出すには業務プロセスをシステ ムに合わせて変更する必要がある。
しかし、それぞ れの部署・会社組織が従来から馴染んできた物流管 理のプロセスを変えることは一筋縄ではいかなかった。
そこで物流管理機能から現場のオペレーションまです べてをアウトソーシングできる受け皿を作った。
 NSグループの中核企業、外林の浦上和明専務取締 役システム本部長(NSCS専務取締役を兼務)は 「NS物流は業務を移管した会員企業の在庫削減と欠 品率の低減、鮮度管理の徹底、オペレーションの効率 化・精度向上などを実現している。
さらには物流の 専門企業が現場の問題点を洗い出し、システムを改善 していくことで、コスト削減も継続できている」と説 明する。
 アウトソーシングは顧客別の収益管理にも貢献して いる。
NS物流では物流費の総額やセンター運営費用、 配送費用といった大括りな単位ではなく、各得意先 の納入ロット、頻度、受注時間、容器などに細分化 してコストを管理し、会員企業に請求する費用の内訳 としても提示している。
荷主の営業はそれを顧客との 取引条件の改善に活かすことで物流コストを下げ、収 益性を改善できる。
 共同物流センターは販路拡大も容易にする。
会員卸 が営業範囲を新たな地域に拡大しようとしても、取 引規模が小さい間は物流網の整備が負担になる。
し かし、その地域を地元とする会員卸と物流を共同化 することで投資負担が軽くなり、進出のハードルは下 がる。
現地側でも物量の拡大によるコストメリットを 享受できる。
 菓子卸の事業環境は年々厳しくなっている。
主要 な販売チャネルは伝統的な商店街の菓子専門店からス ーパーマーケットやコンビニエンスストアに移った。
同 時に総合商社や大手食品卸が各地域の菓子卸を系列 化。
外堀を埋められた中小の菓子卸同士が手を結び、 独立を守りながら生き残りを目指す目的で作られたの がNSグループだ。
 広島県福山市の外林を中心として一九八六年に八 社で発足した。
その後、会員企業数は一七社に増加。
現在のグループの売上規模は一三五〇億円に達してい る。
菓子卸業界では第四位に相当する。
「各社の独立 性を保ちながらも、グループ全体の利益を考え、あた かも一つの会社のように動く」(浦上専務)ことを基 本方針としている。
会員企業間で商圏が重複しても 協力して営業を行い、グループとしての地域シェアを 高めることに目標を置く。
 グループ発足後に共同事業として最初に取り組んだ 卸連合で業界再編を生き残る  多くの業界で中間流通の再編と寡占化が急速に進ん でいる。
独立を選んだ卸売業者は同業他社とのアライア ンスに生き残りをかけている。
そこでは単なる共配を超 え、法人格の異なる企業とのロジスティクス全域にわた る共同化が実施に移されている。
    (梶原幸絵) 第2部 21  OCTOBER 2008 共同物流入門特集 PB商品の共同仕入れにも、その姿勢は如実に表れ ている。
当初のPB商品はもともと外林が開発した もの。
それを会員企業にも開放し、外林と全く同じ 条件でメーカーから直接仕入れられるようにした。
 八八年にはメーカーに対するPB開発・共同仕入れ の窓口としてエヌエスを設立。
グループとしての取引 口座を開設し、PBと一部のNBの帳合いを一本化 させた。
今ではこの活動が海外におけるPBの開発に まで広がっている。
NS口座の開設により、グループ の調達力を活かした小売業への営業活動も可能にな った。
 九四年には基幹情報システム「NSIP」を導入。
会員企業の情報システムを統一した。
営業、物流、管 理システムなどすべて同じシステムを使っていること がNSグループの特徴だ。
「システムが同じだからこ そ、物流の共同化でメリットを出せる」と浦上専務は 説明する。
 現在、物流管理システムのバージョンアップに取り 組んでいる。
このところ小売業からの要請に対応す るための、緊急出荷などのイレギュラーな物流作業が 増加している。
こうした特別作業の追加費用が現状 では他のコスト項目に埋没してしまっている。
それを 顧客別の営業経費に反映させることで、営業部門に コスト削減を提案するつもりだ。
共創未来グループ ──加盟卸を在庫負担から解放  医薬品卸第四位の東邦薬品が地域卸一五社と組織 するアライアンスグループ「共創未来グループ」では、 東邦薬品と全く資本関係のないメンバーまで含めた在 庫の一元化を実施している。
東邦薬品がまとめて仕 入れた商品在庫を物流センターに保管し、メンバーか らの発注に応じて各営業所に納品する。
これによって 各メンバーは営業所の在庫を除き、在庫負担から解放 される。
 政府の医療費抑制政策の一環で医薬品の薬価(医 療用医薬品の公定価格)引き下げが進み、医薬品卸 の事業環境は様変わりした。
八〇年代までは地盤と する地域でメーカーの系列卸として安定した経営基盤 を築いていた。
しかし、薬価が下がったことでコスト 競争が激化。
医療機関は効率化の一環として仕入れ 先の集約を進め、卸にはフルラインの品揃えが求めら れるようになった。
同時に調剤薬局の広域化やドラッ グストアの巨大化に対応した全国展開も課題となった。
 医薬品卸業界にM&Aの嵐が吹き荒れた。
寡占化 が進み、今ではメディセオ・パルタックホールディング ス、アルフレッサホールディングス、東邦薬品グルー プの上位四グループで市場シェアの九〇%以上を占め るまでに至っている。
 ただし、他の大手卸が買収や合併により規模を拡 大したのに対し、東邦薬品は「やわらかな絆」を掲 げ、地方卸との業務提携と資本提携を通じたグループ 化を選んだ。
長い歴史を持つ医薬品卸はそれぞれの 地域で強固な基盤を築いている。
性急に系列化して も、取引先や社員に抵抗感が生まれ、統合効果を出 すのは難しいと判断した。
 形式よりも実態を重視して、各社の自主性やメーカ ーの意向を尊重しながら時間をかけて営業政策の共同 展開、仕入れの統合、情報システムや物流網などの共 同利用を進めてきた。
結果としてグループの一体感が 醸成され、連結子会社化が進むというかたちになっ ている。
現在、グループ一五社のうち連結子会社は八 社、資本提携先は四社、業務提携先は三社だ。
 法人格は分かれていても、インフラを共同利用する 外林の浦上和明専務取締 役システム本部長(NSCS 専務取締役) 東邦薬品が06年に都内に開 設した最新鋭の物流センター 「TBC東京」。
機械化を行い、ピ ッキング作業では一部でICタグ も導入している ことでメンバーはシステムや物流センターへの投資負 担を軽減できる。
共同仕入れにより、品揃えの幅が広 がり原価も大きく低減する。
東邦薬品もインフラの稼 働率向上やバイイングパワーを拡大できる。
今ではグ ループ各社の調達の大部分を共同仕入れが占めている。
 共同仕入れの在庫は東邦薬品の東京、大宮、大阪、 岡山などの物流センターに集約し、そこから各社の営 業拠点に配送している。
グループに参加する以前は、 各社はそれぞれ本社や物流センターなど自社の拠点に 在庫を置き、営業所に供給していた。
東邦薬品から 商品を送ることで在庫拠点が不要になった。
 ただし、営業所から在庫拠点までの距離は遠くな る。
「物流網の共同利用に当たっては、リードタイム を気にするところも多かった」と東邦薬品の有留逸郎 執行役員物流本部本部長は語る。
ところが実際には、 リードタイムが変わることはほとんどなかった。
従来 は在庫の引き当てに時間がかかっていたからだ。
極端 なケースでは、営業所と在庫拠点の在庫管理にシステ ムを導入していなかった。
営業所に在庫がなければ拠 点に問い合わせて在庫を探す必要があった。
時間と労 力を費やしていた。
 東邦薬品の情報システムではリアルタイムで営業所 の在庫を確認できる。
注文を受けて在庫がなければ即、 物流センターの在庫を引き当てることができる。
セン ターでは一八時までの注文分を翌朝八時までの届ける というリードタイムを順守している。
 さらに、参加卸にとってグループに在庫を統合する 最大のメリットは、欠品を防げることだった。
一社 の規模では取り扱いアイテム数も扱い量も少ないため、 欠品率が高かった。
在庫管理の精度にも問題があった。
 現在はシステム上の理論在庫と実在庫は常に一致し ている。
センターでの入庫、ピッキング、出荷などい くつかポイントでロットごとにシステムに商品の動き を登録し、受発注データと照合している。
「各物流セ ンターで年二回棚卸しをしても、誤差数はゼロもしく はひとケタだ。
在庫精度は当社の物流の生命線」と加 藤勝哉取締役経営企画本部長は強調する。
 センターの運営費用は、東邦薬品が各社に販売する 商品価格に含まれている。
メーカーからの仕入れ価格 にマージンが上乗せされることになるが、共同仕入れ の物量が多いため、「地域卸がメーカーと直接取引す るよりはかなり安い」(加藤取締役)。
センターから営 業所までの配送コストは各社の負担だが、多くの営業 所の貨物を合積みするため割安だ。
 首都圏、大阪、北関東などセンターの近距離圏で 物量の多い地域では、各営業拠点の貨物を合積みし て一日二便出荷する。
遠隔地向けでは各地方別に貨 物を混載し、トラックターミナルまで一日一便で輸送。
ターミナルで仕分けし、物量と立地により混載して配 送している。
日本酒類販売 ──メーカーの共同物流を事業化  帳合いを通さず、メーカーの共同物流の事業化に取 り組んでいるのが酒類専門卸の最大手、日本酒類販 売(日酒販)だ。
首都圏と東北に共配センターを設置 し、メーカー〜卸間の一括物流を実施している。
酒類 の中心は日本酒と焼酎。
近畿地方と九州地方の中小 メーカーが利用している。
 共同物流の狙いは卸側の物流効率化にあった。
メー カーは卸の物流拠点に商品を納入するため、それぞれ チャーター便や路線便を手配しており、卸側では一日 数十台ものトラックの荷受け処理に追われていた。
し かも当時、一回当たりの発注単位は三〇ケースが目安 OCTOBER 2008  22 東邦薬品の有留逸郎執 行役員物流本部本部長 東邦薬品の加藤勝哉取 締役経営企画本部長 日本酒類販売情報物 流本部の鶴切孝副本部 長兼物流統括部長 共同物流入門特集 になっていた。
必要量が五ケースであっても三〇ケー スを発注しなければならず、在庫が膨らみ、鮮度維 持に問題が起きることもあった。
 卸の物流拠点の近くにメーカーが共同利用する物流 センターを設置し、複数のメーカーの貨物を合積みし て納入すれば、荷受け回数と車両台数を削減できる。
そこで九四年、日酒販は横浜に「首都圏共配センタ ー」を設置した。
卸側では競合他社との協力に対し て抵抗感もあったが、「コスト削減のために商流と物 流を分け、物流面で手を組んだ」(日酒販情報物流本 部の鶴切孝副本部長兼物流統括部長)。
 卸にとっては品揃えの強化というメリットもあっ た。
首都圏にメーカー共同物流センターを設置するこ とで、商品力があっても物流網がないために、販売 が難しかったメーカーの商品を取り扱うことが容易に なる。
メーカーとしても共配センターを利用すること で、首都圏への輸送費を削減できる。
仕向地を一カ 所に集約できるためだ。
共同物流のコストは共配セン ターからの出荷量に応じて負担することになるが、そ れでもコスト削減効果は高いという。
 こうした仕組みを作り上げるために、日酒販とメー カー、卸各社は調整を重ね、共同物流の運営ルールを 作った。
卸にとって大きかったのは発注方法の統一だ。
卸はVANセンターを通じて発注をかけるが、一回の 発注単位は一〇トントラック一台分にまとめなければ ならない。
 一方のメーカーはVANセンターを通じて受注し、入 荷指示をVANセンターに送る。
共配センターはVA Nセンターから指示を受け、出荷する。
センターの在 庫はメーカーがVANセンターのデータにより管理し、 適時補充する。
限られた車両で効率よく配車するた め、納入頻度・時間も調整した。
 ただしルールの運用を厳格化すれば、参加企業のデ メリットが大きくなる。
このため、「ある程度基本と なるルールを設け、その枠の中で各社の希望に沿うよ うに運営している」と情報物流本部物流統括部首都 圏共配センターの露木一彦センター長は説明する。
 VANセンターでは卸からの発注は午前十一時まで 受け付けている。
共配センターからは当日午後の配送 も可能だ。
ただ実際は卸からの発注時間は夕方に集 中している。
希望に合わせて配車計画を策定し、翌 日午後または翌々日の午前中配送を行っている。
 参加企業は開始当初のメーカー八社・卸二社から、 メーカー三五社・卸四社に拡大している。
しかも「M& Aのケースを除けば、これまで脱退はゼロ」と同部物 流企画課の平山修課長は共同化の効果を強調する。
 〇三年には仙台に東北共配センターを開設し、首都 圏と同じ仕組みを東北地方に導入した。
さらに〇六 年には取扱量の増加に対応し、首都圏共配センターを 東京・武蔵村山市に移転。
今後は中部地区でのセン ター設置も検討していく。
 共同物流の仕組みをもう一段階進めることも考えて いる。
現在、メーカーは共同物流に参加していない卸 向けには、直接出荷せざるを得なくなっている。
この ため、共同物流センターとは別に物流拠点を残してい るメーカーもある。
こうしたメーカーを共同物流に巻 き込むため、首都圏の卸拠点であれば参加卸の拠点 に限らず、どこにでも配送する「メーカーの完全な首 都圏物流拠点」(鶴切副本部長)への転換を目指す。
 共配センターをきっかけに、メーカー〜センター間 の共同輸送も始まった。
今後、ロットがまとまれば鉄 道輸送や海上輸送も可能になる。
「モーダルシフトで 環境負荷の低減をもっと進められれば」と鶴切副本 部長は期待している。
23  OCTOBER 2008 情報物流本部物流統括 部首都圏共配センターの 露木一彦センター長 首都圏共配センターでは参 加卸向けに10トン車1台分 の貨物を組み上げ、出荷する 庫内では自動倉庫も導入し、 鮮度管理を徹底している 情報物流本部物流統括部 物流企画課の平山修課長

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