ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年9号
特集
現場を強くしよう カンダコーポレーション―QC活動を刷新

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2005 18 エアキャップ使用量を削減 カンダコーポレーションは九五年に品質改善(Q C)運動「ダッシュ2 1 」をスタートした。
「ダッシュ 21 」とは物流現場で働く社員やパートタイマーたちが 少人数のチーム(サークル)を編成して業務改革を進 めることで、サービスの品質向上やコスト削減を実現 しようという試みである。
スタートして以来、サーク ルの数は徐々に増えていき、一〇年目を迎えた二〇〇 四年度には全国の支店・営業所で計一八二サークル、 従業員約一六〇〇人がQC活動を展開したという。
カンダでは年に一回、「ダッシュ 21 ! 中央発表会」 を開催している。
「中央発表会」は全国各地で実施さ れたQC活動の成果を報告し合う場で、全国一〇ブ ロックの予選会を勝ち抜いたサークルが一堂に会し、 決められた時間内でプレゼンテーションを展開する。
役員らで構成する審査員から評価され、見事に優秀 賞などに選ばれたサークルは賞金や賞品を手にするこ とができる。
二〇〇四年度に実施されたQC活動を対象にした 今年の「中央発表会」は五月に東京で開かれた。
例 年通り、大会には各ブロックの代表として計一五サー クルが出場した。
このうち最優秀賞に選ばれたのは鷲 宮営業所の「さわやかシスターズ」。
医薬品卸の物流 センターを運営する同営業所でピッカーやパッカーと して活躍している女性パートタイマー十二人で編成さ れたサークルだ。
チーム発足から二年目を迎えた「さわやかシスター ズ」が二〇〇四年度に選んだテーマは、「出荷材料費 の削減と効率アップ」。
出荷梱包作業時に緩衝材とし て活用しているエアキャップや新聞紙の使用量や購入 費の削減を目指すという内容だ。
同サークルでは月に 三〜四回のペースでメンバーが集まり、目標達成に向 けた具体的な改善策などについて話し合いを重ねてき たという。
鷲宮営業所では酢や健康ドリンクといったビン製品 が輸送中に破損するのを防ぐため、製品にエアキャッ プを巻きつけている。
ただし、巻きつけ方は作業員任 せにしてした。
そのため、同じ製品であっても使用す るエアパッキンの量が作業員によってバラバラで、過 剰包装など無駄が生じていた。
そこで、「さわやかシスターズ」ではエアキャップの 巻き方を製品ごとに統一化するため、作業マニュアル を作成した。
その結果、例えば酢ではボトル一本当た りのエアキャップ使用量を従来に比べ約三〇センチ減 らすことに成功した。
他の製品についても同様の改善 を施したところ、トータルで年間約四三万円のコスト ダウン(エアキャップ購入費の削減)を達成するとと もに、包装の作業時間を大幅に短縮できたという。
もともと営業所ではエアキャップと同じように緩衝材として使用している新聞紙を外部から購入、その費 用に年間約六万三〇〇〇円を投じていた。
これも無 駄なコストであると判断した「さわやかシスターズ」 はセンター内に「新聞置き場」を設置。
従業員たちに 各家庭で不要となった古新聞を営業所に持参するよ う呼び掛けた。
新聞紙をわざわざ購入するのではなく、 「新聞置き場」で回収した新聞紙を緩衝材として有効 利用することで、購入費ゼロを実現した。
今年の「中央発表会」は第一〇回の記念大会であ ったため、カンダでは入賞した各サークルに対して副 賞を付与した。
最優秀賞に輝いた「さわやかシスター ズ」には「高級牛肉セット」が送られた。
栄養満点の ご褒美でパワーを充電した「さわやかシスターズ」は、 「中央発表会」でのV2達成を目指して新たな挑戦を カンダコーポレーション―QC活動を刷新 QC運動を本格化してから10年が経過し、各現場での活動 内容が徐々にマンネリ化してきた。
「発表のための活動」を展 開しているサークルも目立つ。
現場の作業員たちにすべてを 委ねるのではなく、管理職が中心となってサークルを運営す るといったルール改正に踏み切ることで、再びQC運動を活 発化させようとしている。
(刈屋大輔) 第3部事例研究・強い現場の作り方 19 SEPTEMBER 2005 スタートさせているという。
コツコツやる現場を評価する カンダでは二〇〇五年度の「ダッシュ 21 」を始める にあたって、活動方法を一部変更した。
その目的はこ こ数年見受けられる「発表会のためにQC活動に取り 組むサークルが増えている」という望ましくない傾向 を断ち切ることにあった。
QC活動のゴールは「発 表」ではなく、サービス向上やコストダウンといった 「成果」を上げて顧客満足度(CS)を高めることだ。
カンダでは?ルール改正〞を通じて、それを現場に再 認識してもらおうとしている。
活動の進め方はガラリと変わった。
まず、従来の 「ダッシュ2 1 」では各サークルが一年間に一つのテー マを完結させることになっていたが、今年度からは一 テーマ当たりの活動期間を短くして、一年間に複数の 課題解決を求めていくことにした。
目安は一サークル につき、年間に二つのテーマ。
もちろん二つ以上でも 構わない。
サークルの編成方法も見直した。
これまではサーク ル編成→リーダー選出→テーマ選定という順番で活動 を開始していたが、これをリーダー選出→テーマ選定 →サークル編成という順番に改めた。
さらにサークル の運営を現場の従業員にすべて委ねるのではなく、管 理職クラスの社員が積極的に活動に関与する体制に した。
テーマの内容によっては管理職がサークルのリ ーダーとなって活動を先導していくというルールも新 たに設けた。
これに伴い、発表会の「評価項目」と「配点」にも 手を加えた。
従来は「課題達成効果=四〇点」「会合 回数=三〇点」「テーマと工夫=二〇点」「発表の仕 方=一〇点」で一〇〇点満点としていたが、今年度 からは「課題達成効果=三〇点」「継続実行=三〇点」 「会合回数と内容=二〇点」「課題達成数=一〇点」 「発表の仕方=一〇点」という配分にした。
現場で 日々コツコツとQC活動に取り組んでいるサークルが より高い評価を得られるような仕組みに改めた。
ルール改正に踏み切った背景について、「ダッシュ 21 」事務局を務める教育・安全推進室の福田喜大課 長代理は「当社は二〇〇五年度の経営方針の一つに 『現場力を強化するカイゼン活動を展開する』ことを 掲げている。
現場力の強化に欠かせないのは、現場で 働く従業員たちが一丸となって自主的に改善に取り 組める環境だ。
改善を?やらされている〞のではなく、 ?自分たちからすすんでやる〞ような職場にするには、 成果の大きさよりも、QC活動の継続性が重視される ルールに改める必要があった」と説明する。
カンダではもともと特別積み合わせ便(路線便)を 中心としたトラック運送事業をコアビジネスとしてい た。
しかし最近では卸や小売業向け物流センターの運営といった3PL事業に徐々に軸足を移しつつある。
今後、この分野で実績のある日本通運や日立物流な どの大手物流企業や、ハマキョウレックスのような新 興勢力との競争で勝ち残っていくためにはサービスの 差別化が絶対条件となる。
カンダではQC活動を通じ て磨き上げた「現場力」を一つのセールスポイントに していきたい考えだ。
QC活動の活性化を狙った今回 のルール改正はカンダにとって「現場力」強化に向け た第一歩と言える。
全国の支店・営業所が常に改善を意識しながら日々 の業務に取り組む物流現場に生まれ変わったかどうか。
それをチェックする場でもある、二〇〇五年度のQC 活動を対象にした「中央発表会」は来年五月に開催 される予定だ。

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