ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年11号
特集
物量減少 物流機器レンタルはここまできた

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2008  28 固定費を変動費に変える バブル崩壊後に事業を拡大  荷動きが減少すると施設や機器の稼働率は低下す る。
物流関連機器のレンタル業にとっては、それがチ ャンスになる。
「物量が減る不況時には保有資産はど んどん処分されていく。
新規調達など愚の骨頂。
物 流設備だって変動費化はできる。
少なくともパレット はレンタルが正解だ」。
レンタルパレットの最大手、日 本パレットレンタル(JPR)の山崎純大社長の鼻息 は荒い。
 躍進の原動力となった「P研(JPR 11 型レンタル パレット共同利用推進会)」の発足はバブル経済がピ ークを迎えた一九九〇年十二月。
食品メーカーと卸・ 流通業を同じテーブルに座らせ、同じパレットをサプ ライチェーンの中で共同・循環利用する一貫パレチゼ ーション「パレットプールシステム」の研究を本格化 させた。
 その直後に訪れたバブル崩壊が格好の追い風になっ た。
それ以降、同社の業績は拡大基調に乗り、現在 まで一七年間連続で売上規模を伸ばしている。
「日本 はこの一七年間、ずっと不況だったといっても過言で はない。
そのことが合理化に対するウォンツを生んだ。
そこにT 11 型レンタルパレットによる一貫パレチゼー ションという当社の提案がうまくはまった」と山崎社 長は語る。
 物価の高騰は同社にとっても無縁ではない。
昨年 度の商品売り上げなどを除くレンタル事業の売上高は、 前年度比五・三%増の一一三億五〇〇〇万円だった が、利益面では減益だった。
売上高の約三割に相当 するパレット購入費の値上がりが原因だ。
 木材や石油など原材料費の高騰を理由とするパレッ トメーカーからの値上げ要請は、この一年で十三回に も及んだ。
その影響で一枚当たりの価格が二〇%アッ プした。
二年前と比較すると値上がり率は四〇%に 達する。
やむを得ず今年はレンタル料金の値上げに踏 み切った。
バブル期以来のことだ。
 それでも事業規模の拡大は続いている。
現在、同社 の所有するパレットは六二〇万枚にも上る。
オリコン やカゴ車も含めると七〇〇万の物流機器を運用してい る。
レンタル出荷枚数は年間延べ二二〇〇万枚。
この うち異なる企業間で行き来する共同利用システム向け のネットワーク出荷枚数は一二〇〇万枚を占める。
本 格的な不況に突入したことで、引き合いは増加傾向 にある。
物流機器のレンタル市場にバブル崩壊以来の チャンスが訪れている。
物量の波動対応でレンタル需要  八月、インターネット上で物流機器のレンタル事業 を紹介する「ダイフク物流機器レンタルサイト」を立 ち上げたダイフクビジネスサービスにも、予想を大幅 に上回る引き合いが集まっている。
同社は物流機器メ ーカー、ダイフクの子会社でレンタル事業や修理サー ビスなどを行っている。
 レンタル製品はダイフク製の「パレテーナ(メッシ ュボックスパレット)」や「カーゴテーナ(ロールボッ クスパレット)」が中心。
高いレンタル稼働率を見込め るものに絞っている。
いずれも川下の分野で動くケー ス単位やピース単位の貨物輸送に主に使われる。
この ため顧客も卸と物流業者が中心になっている。
 物流機器のレンタル市場は平パレットが大部分を占 める。
パレテーナやカーゴテーナのレンタルはニッチだ が、底堅い需要がある。
「川下の物流は夏商戦、年末 商戦などの消費変動の影響を受けるため、波が大き い。
ピーク時に合わせて設備を導入すれば閑散期には 物流機器レンタルはここまできた  物流関連機器のレンタル市場が活況を呈している。
物 流コストのうち備品・消耗品は無視できないボリューム がある。
物量が減れば不要になってしまう設備を資産 として所有するのは得策ではない。
そのことに気付い た荷主や物流企業の利用が広がっている。
(梶原幸絵) 29  NOVEMBER 2008 特 集 持てあますことになる。
置き場所だってばかにならな い。
そこにレンタルのニーズがある」とレンタル営業 部の松下征彦部長は説明する。
 店舗や物流拠点のスクラップ&ビルド、新製品の発 売など、事前に物量が予測できないケースでもレンタ ルは効力を発揮する。
物量の見込み違いによる緊急 発注も少なくない。
レンタルの注文を受けてから、資 材を手当てし現場に納品するまでのリードタイムが利 便性のカギを握る。
全国に置くデポを生かし、そこに うまく対応している。
 業績は順調に拡大している。
ダイフクビジネスサー ビスがレンタル事業を開始したのは、ITバブル崩壊 で設備投資が急減した二〇〇二年。
その四年後の〇 六年度には計画通り黒字化を果たし、昨年度には累 損も解消した。
今年度の売り上げは前年度比三割増 のペースで伸びているという。
松下部長は「顧客が必 要なときに必要なものを即座に貸し出せるよう、来 年度も容器を五〇〇〇台程度は増やすつもり。
需要 があればさらに積極的に投資していく」考えだ。
 同社はカゴ車、パレットの中古品売買の仲介も行っ ている。
自社で中古品の在庫を持ち、販売するので はなく、引き合いに応じて売買を仲介している。
最 近は買いの引き合いが急増している。
「予算が取れな いために新品を買うことができず、安価な中古品を 求めている顧客が増えている。
不況を実感する。
し かし今は供給が少なく、売買の成立は難しい状況」と 松下部長は顔を曇らせる。
中古パレットの売買仲介事業を拡大  平パレットの中古品を販売するエスコットでは、業 界人脈やインターネットを使った情報ネットワークを 構築することで商材を確保している。
中古品を売り たいという会社の販売情報をネットに掲載、引き合い があった時点で、売り手からエスコットが中古品を買 い取り、販売する。
 土器薗歩代表兼CEOが船会社出身ということも あり、輸出入用木製パレットの取り扱いを主力にして いる。
取り扱い枚数は増加を続けており、今年は二 万枚以上を見込んでいるという。
 ただし買い取り需要のうち、成約率は現状で三〇%。
同じ平パレットでもサイズや品質は千差万別。
マッチ ングできない引き合いも多い。
売り情報と買い情報を どれだけ蓄積しているかがカギになる。
自社では扱 いの少ないプラスチックパレットの販売情報があれば、 プラスチックパレットに強い同業者に紹介することが 多い。
その逆もある。
顧客層が異なるため共存でき る。
その方が買い手がつきやすい。
同業者同士の横 の連携がモノをいっている。
 同社の中古パレット売買仲介事業は、土器薗CE Oが以前在籍していたNPO法人の活動を前身とす る。
環境負荷の低減が事業の出発点だった。
輸入に 使用されたパレットは使い捨てで、使用済みのものは 廃棄されてしまう。
こうして不要になったパレットを、 輸出出荷・国内出荷のワンウェーパレットへのニーズ にマッチングさせ、木製パレットのリユースを進める というアイデアだ。
 中古パレットの売買市場はまだ小さい。
土器薗CE Oは「荷動きがさらに落ちることになれば、物流機器 や梱包材はニーズ自体が減少することも考えられるが、 中古パレットの裾野はまだまだ広い。
現在、国内では 年間四〇〇〇万枚の木製パレットが廃棄されていると いわれている。
また、現状では買い手がつかなかった パレットは処分されている。
こうしたパレットの有効 活用も考えていきたい」と将来を描く。
ダイフクビジネスサービスの 松下征彦レンタル営業部部長 ●必要最小限のみ自社で所有し、波動に対応 時 間 物 量 注:ダイフクビジネスサービス資料より レンタル自社所有

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