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NOVEMBER 2008 30
自社投資物件は汎用化
ハマキョウレックスが「物流センター事業」と呼ぶ
3PLを本格的に開始したのは、一九九二年のこと。
その後、事業の拡大に伴い、特定荷主の専用センター
を多数開設してきた。 その多くは資産としてハマキョ
ウが投資した。 ところが二〇〇〇年を境に、物量の
減少で専用センターのスペースを持てあます荷主が出
てきた。
賃貸物件なら移設することもできる。 しかし、自
社資産として購入した拠点の場合、センターの稼働率
を上げないと収益性が悪化してしまう。 物量が減っ
たのは荷主のせいだからといって、コスト負担を一方
的に押しつけるわけにもいかない。 スペースを埋める
には他の荷主の荷物を取り込まなければならない。
ハマキョウが九五年に開設した静岡県の「浅羽営業
所」は、もともと地元の食品スーパー向けに菓子、加
工食品、日用雑貨品などを供給する専用センターだっ
た。 物流拠点を集約してコスト削減を図ろうとする荷
主に対して、TCとDC併用型の拠点を提案。 積極
的な出店計画を組んでいたこともあり、将来的に店
舗数が倍になっても対応できるよう、大型の拠点を用
意した。
しかし、ライバルの出店攻勢など競争の激化で、次
第に旗色が悪くなった。 出店ペースが減速し、浅羽セ
ンターには空きスペースが目立つようになった。 その
穴を医療機器関連の荷主の仕事を新たに引き受ける
ことで埋めた。 「荷主のニーズは物流コストと作業品
質。 施設が専用か汎用かについてのこだわりはそれほ
どない。 競合他社さえ入っていなければ問題はない」
と開発本部の内田貴啓執行役員はいう。
さらに同センターでは今年五月から、仮想商店街
「楽天市場」出店者の物流業務も始めた。 センターを
新設することなく、既存のインフラを利用して物流面
で課題を抱えることの多い出店者をサポートしたい楽
天と、センターの空きスペースを活用し、かつB
to
C
市場へ本格参入していく上での足がかりにしたいハマ
キョウの思惑が一致した格好だ。 (本誌今年七月号ケ
ーススタディ「楽天」参照)。
二〇〇〇年十一月に設置した愛知県の「豊川第一
センター」でも同様の転換を行っている。 当初は飲料
メーカーの専用センターとして開設した。 〇三年三月
に同じ荷主の「第二センター」も設置。 二拠点体制を
敷く構想だった。 しかし、第二センター稼働後、物量
が計画通りに伸びず、倉庫スペースに空きがみられる
ようになった。 そこで新たな荷主を獲得した。 第一セ
ンターは専用センターのままだが、第二センターを汎
用センターに軌道修正したのだ。
専用センターは賃貸してリスク回避
こうして自社投資物件の汎用化を進める一方、専
用センターは賃貸物件を利用するように方針を改めた。
「専用センターの設置にはリスクが伴う。 もちろん荷
主の将来性を含め、事前に十分に調べあげた上で営業
を行っているが、万が一の時に、その施設を汎用化で
きるかどうかまで視野に入れる必要がある」と、内
田執行役員は説明する。
今年八月、大阪に大手アパレルSPA(Speciality
store retailer of Private label Apparel:製造小売業)
A社の関西拠点「大阪北港センター」を専用センター
として立ち上げた。 A社の業績は好調で、売上高、店
舗数ともに増加を続けている。 直近決算でも大幅な
増収増益を記録。 今後も成長が期待できる。
それ以前にもハマキョウは神奈川県の「綾瀬営業所」
物流センター事業は特定荷主の専用センターから始まっ
た。 しかし、荷主の物量は常に変化する。 荷主数が増加
していくのに伴い、物量が減少した専用センターを汎用
化して、空いたスペースに新たな荷主を取り込んでいった。
その結果、現在では自社で所有するセンターの大部分が汎
用センターになった。 (柴山高宏)
専用センターの汎用化を進める
──ハマキョウレックス
逆風をバネに事業を拡大
31 NOVEMBER 2008
特 集
で、A社の関東拠点の物流業務を担ってきた。 綾瀬
営業所は二〇〇〇年に、A社とは別の荷主の専用拠
点としてハマキョウの資産で立ち上げたセンターだっ
たが、物量減少に伴い汎用化し、そこにA社も入居
していた。 ところがA社の物量の増加で、スペースが
足りなくなってきた。
そこで同営業所をA社専用の関東拠点に衣替えし
た。 他の荷主には了解を得た上で、同じ神奈川県内
にある「海老名センター」などに移転してもらうこと
となった。 移転にかかるコストは全てハマキョウが負
担した。 この実績をA社から評価され、関西拠点も
任されることになったのだ。
ハマキョウにとってもA社は最上位クラスの優良荷
主だ。 それでも専用センターである以上、施設は賃貸
にした。 プロロジスの物流拠点に入居したのだ。 ハマ
キョウが外資系投資ファンドの賃貸施設を利用するの
は、これが初。 従来は割高な賃料を嫌って敬遠してき
た。 しかし、近年関西地区に物流拠点の供給が相次
ぎ、空室率が上昇したことで外資系投資ファンドの大
型施設の賃料もハマキョウの算盤に合うレベルまで低
下してきた。
内田執行役員は「今後も外資系投資ファンドの施設
が妥当な賃料なのであれば、ドンドン使っていく。 セ
ンターの立地は坪単価とパートの集めやすいロケーシ
ョンの二つで選んでいる。 プロロジスの物流拠点は社
員食堂や送迎がしっかりしているので、パート集めの
面で期待できる。 専用センターだけでなく、汎用セン
ターとして利用することも十分にあり得る」と評価し
ている。
汎用センター化の流れは変わらない
荷主が所有する物流センターに入り込み、現場改善
を通じて空いたスペースを活用し、新たな荷主を取り
込むケースもある。 「海老名センター」がそうだ。 同
センターは、商業施設や文化施設などの企画、装飾、
施工を行う会社の所有する物流センターだった。 その
庫内レイアウトや在庫スペースを見直し、荷主にも在
庫削減に協力してもらうことで、センターに空きスペ
ースを作った。 そこに、前述の綾瀬営業所の専用化
に伴い、移動することになった荷主や新規顧客を取り
込んだ。
事業規模がシュリンクしている荷主のなかには、物
流拠点など所有する固定資産が重荷になっているこ
とが多い。 その物流業務をハマキョウが請け負うこと
で物流が効率化されるだけでなく、荷主が所有する
施設の回転率が高まるなど、資産の有効活用が期待
できる。 ハマキョウにとっても新たな荷主を取り込め
る。 物量の減少をビジネスチャンスにしているのだ。
もちろん、汎用化の難しいセンターもある。 昨年一
〇月、ハマキョウはカタログやインターネット通販を行
うムトウの物流業務を全面受託した。 ここでもムトウ
の所有するセンターに入り込んでいるが、新たな荷主
を入れることはセキュリティ上の制約がある。 B
to
C
に特化したビジネスモデルの会社にとって、顧客情報
などが漏れることは致命傷につながるからだ。
それでも内田執行役員は「今は経済の先行きが見
えにくく、荷主の商機にも変化がある。 商売のサイク
ルも短くなっている。 荷主はなるべく長期間の物流
契約を回避したいし、物量の波動に応じたコスト削減
をしたいと考えている。 そういった意味では、今後
は専用センターより汎用センターの方が増えてくるだ
ろう。 当社の拠点戦略も、自社投資物件は基本的に
複合化していく。 この流れは変わらない」と将来を
見据えている。
自社センター 15 133,858
賃借センター 12 92,613
客先センター 9 129,256
合 計 36 355,727
ハマキョウレックス(単体)の物流センター施設能力
区 分 センター数 面積(?)
ハマキョウレックス本社に併設している汎用センター
大手寝具メーカーを中心に20 〜30 社の荷主の荷物を扱っている
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