ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年12号
現場改善
協力運送会社見直しと運賃体系変更

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

77  DECEMBER 2008 運賃値上げ要請に打つ手なし  今回紹介する食品メーカーC社は、東北に 本社を置く年商八〇億円の中堅企業である。
創業一二〇年という老舗で長年売り上げは横 ばい傾向にあったが、五年前に当時の社長の 息子が新社長に就任してからは新たな成長軌 道に乗った。
商品開発に力を入れた結果、新 商品がヒットし、ここ三年で年商を三〇億円 以上も増加させている。
これに伴いアイテム 数もそれまでの五〇〇から一二〇〇へと急増 し、販売網も日本全国に広がった。
 現社長の友人である某公認会計士の紹介で、 私はC社を訪問することになった。
初めて目 にするC社の建物や室内の様子は、さすがに 歴史を感じさせるものであったが、現代的で 斬新なオブジェが飾られているコーナーが設 けられているなど、老舗企業とベンチャー企 業の両面を持ち併せている会社という印象を 受けた。
 公認会計士と私の対応に当たったのは、C 社の番頭格であるS専務で、ほかに中堅社員 二人が同席した。
S専務は「現在の我が社に は、ここ数年で急成長したリバウンドがきて いる。
とくに物流の問題が大きい」という危 機意識を持っていた。
もちろん、それが私の 呼ばれた理由である。
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端劼録�覆里覆�任癲∩�戮�斗廚破萋� 納品する必要のある商品、いわゆる?日配 品?をメーンにしている。
?地産地消?を原 則とする商品であり、C社に限らず、中小の 日配品メーカーが事業エリアを拡大しようと する場合には往々にして物流がネックになる。
 しかしC社はそのことを見越していたよう だ。
販売エリアの拡大に伴い、本社工場のほ かに大消費地の関東に二カ所、関西に一カ所 の計四カ所に工場を配置していた。
物流を重 視した賢明な措置と言えるだろう。
 しかも、この四工場は現状で既に年中無 休・二四時間フル稼働の状態であった。
一般 に中小の日配品メーカーと言えば、大手メー カーから委託されたOEM生産や大手小売 業のPB商品を事業の柱としているものだが、 C社の場合は自社ブランド商品の生産で手一 杯であるため、OEMやPBの生産には対応 せず、依頼が来ても断っている状況であると いう。
このことにもC社の戦略性が見てとれ るように感じた。
事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第71 回  若き新社長の就任で老舗の日配食品メーカーの急成長が 始まった。
ところが事業規模の拡大に物流整備が追いつか ない。
高騰する物流コスト。
協力物流会社を一社に集約す る体制が仇となり、運賃の値上げ要請にも言いなりになる しかなかった。
協力運送会社見直しと運賃体系変更 日配食品メーカーC社 DECEMBER 2008  78  ただし、物流コストは高止まりしていた。
売上高に対する支払い物流費の比率は一〇% をはるかに超える水準にあった。
C社は協力 物流会社を商社系の一社に集約し、運んだ商 品の販売価格に対するパーセンテージで支払 い運賃を算定するという従価制を採っていた。
急成長企業に相応しい、管理の手間のかから ない体制と言える。
 しかし、これによって協力物流会社の値上 げ要請に対し、C社側からは何の手も打てな い状況に陥ってしまった。
S氏と中堅社員二 人の説明によると、この五年間の販売拡大に 管理組織や機能の整備が追いつかなかったよ うだ。
その結果、物流のみならず、生産や情 報システムといった、本来なら片手間では対 処できない重要な業務の管理が、兼務という かたちで特定の人材に集中することになって しまった。
 こうしてC社の三人から一時間ほど話を聞 いて、私は物流体制を抜本的に見直す必要が あるのは明らかだと判断した。
そして我々日 本ロジファクトリー(NLF)として、C社 に対して以下の方向性を提示した。
1.協力物流会社の一社集約を改め、東西そ れぞれに主力幹事会社を選定する。
幹事 会社には実運送を行っている会社を選び、 ムダな中間マージンをカットする。
運賃 体系は従価制からケース単位に改める。
2.物流コストの可視化 3.物流コストの適正化 4.物流機能強化に向けた社内体制づくり  これに対してC社からのリクエストとして 「5.物流コストから見た得意先損益の検証」 が挙がった。
加えてC社はこれまで卸経由で 販売を行っていたが、今後は小売りとの直接 取引を拡大していくつもりであるため、そ の点でもサポートが欲しいとのことであった。
もちろん長年の取引先の卸には?義理?があ り、一刀両断に切り替えができるわけではな いことは承知しているという。
従価制運賃を方面別ケース単位運賃に  このような背景のもと、六カ月におよぶ物 流改善プロジェクトを開始した。
まず、新た な協力物流会社の選定に着手した。
その候補 として三社をNLFから紹介した。
?食品 卸への納品を行っている物流会社、?大手小 売業の物流センターへ納品している物流会社、 ?当該エリアで物流センターを運営し店舗配 送を行っている物流会社の三社である。
いず れもC社の荷物との、積み合わせ輸送や共同 納品によるコストセーブを狙ったものだ。
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端劼猟鶲突彑舛紡个掘∋絢劼�修譴召貶� 面別のケース運賃とチャーター運賃を提示し てきた。
なお運賃体系をそれまでの商品価格 に料率をかける従価制からケース単位に改め るのは、従価制運賃では方面別の取引先採 算が判断できないことが大きな理由の一つで あった。
実際、それまでC社では新しい得意 先からの引き合いがあっても物流コストの問 題で商談の滞ることが少なくなかったという。
 これに対して候補三社の見積もりは、い ずれも全国約一〇〇カ所の納品先がエリアに 区分けされ、方面別の出荷量とケース運賃が 明確に示されていた。
そして三社のうち二社 の見積もりは、現状と比較して大幅に割安で あった。
この相見積もりを出発点として以下 のプロセスで選考を進めた。
?見積り金額以外での提案 ?現場視察 ?日配品の取り扱い、および卸、店舗、物流 センターへの納品実績 ?現場責任者を交えた協議  コンペの結果、西日本は既存の商社系物流 会社をそのまま利用することにして、候補企 業のうち一社を、東日本エリアの新たなパー トナーに選んだ。
これによって支払い運賃の コストダウンが実現した。
 物流の可視化については、トータル物流コ ストと、方面別物流コストを算出することか ら開始した。
これをベースに、得意先別物流 コスト、商品別物流コストを算出するという 二段階のプロセスで進める。
作業にはC社の 財務担当者M氏が中心となって当たった。
私 が会計士とともにC社を訪れた時に同席した 人物である。
 算出されたトータル物流コストを見て、社 内のプロジェクトメンバーたちは目を見張っ た。
C社の年間の波動(季節波動)、つまり 79  DECEMBER 2008 夏場の繁忙期と冬場の閑散期の物量の差は 二・五倍に達していた。
そしてトータル物流 コストに占める支払い運賃の割合は五〇%を 超えていた。
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端劼両豺隋�鎤柯覆箸い�ι米胆Ⅹ紂∧� 流センターはDC(在庫型)ではなく、TC (通過型)である。
庫内作業は仕分け・出荷 が中心で、他の一般的な商品と違って、保管 料やピッキングコストはほとんどかからない。
ただし、配送リードタイムは極端に短い。
そ れだけに、支払い運賃が大きく採算性に影響 してくるのである。
 この事実を数値で目の当たりにできたこと は大きな収穫であった。
工場から納品先まで の距離を基に新規顧客の開拓に当たれば良い ことがはっきりしたからだ。
つまり物流管理 の問題を超えて、営業戦略に一つ指針を与え ることができた。
 それまでの従価制運賃では納品先別の配 送費が把握できなかったため、工場近隣の 顧客には実際よりも割高な運送費が割り振ら れていた。
方面別のケース運賃がはっきりし たことで、管理上のボトルネックが解消され た。
近隣の顧客の納品価格の引き下げが可能 になった。
その結果、他社メーカーの商品を C社の商品に切り替える取引先も出てきた。
若き初代物流部長の誕生  またこのプロジェクトの長期的な成果とし て最も大きかったのは、物流部の発足だろう。
それまで営業や生産管理の下部機能として、 担当者に兼務で当たらせてきた物流管理を独 立した部門に格上げし、物流を専門的かつ継 続的に管理・運営する体制を整えた。
 ただし、物流部長の人選は難航した。
通常、 C社クラスの規模であれば社内から選ぶ以外 に、社外の経験者の登用も検討していいとこ ろだが、C社の若社長はそれをよしとはしな かった。
専門知識のある人材を外部から招く より、たとえ初めは素人でも物流を運用しな がら自前で人材を育成していきたいという想 いが強かった。
 結局、初代物流部長には今回の改善プロ ジェクトで最も多くの汗をかき、大きな貢献 した財務スタッフのM氏が抜擢された。
若干 三三歳の部長誕生である。
今回のプロジェク トを通じてM氏は物流の重要性と面白さに気 付いたという。
「特に物流を数値に置き換え ていくことの威力にひかれた」と、新たな使 命に意欲を燃やしている。
あ お き ・ し ょ う い ち  1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 見積書フォーマット例 □見積条件 弊社運賃体系:個建距離制(ケース× 単価) 輸送荷姿:手積み、手下ろし(混載) 使用車両:t車(内寸     �
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蹇� t車(内寸     �
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蹇� □配送エリア A:○○県全域配送 起点:○○工場(○○市○○町) 与件:1車1日当たり平均○件配送 午前中納品 配送責任者を1名工場内事務所に常駐させ、ピッキング指示、及び配車を行う。
代表品種荷姿:タテ  mm、ヨコ  mm、タカサ  mm、重量  kg 主要配送都市と物量構成比(昨年度実績) ○○市 (20%) ○○市 (10%) ○○市 (15%) ○○市 ( 8%) ○○市 (22%) その他 (25%) 合計 約○○○○ケース 与件 契約形態:貸切運賃 使用車両:     �
�屐米眄�  。
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蹇� 代表品種荷姿:タテ  mm、ヨコ  mm、タカサ  mm、重量  kg ○○県○○市  ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円    〃    ~  ○○県○○市 円 円円円円円円円 単位:円/1車 □御社の保有車両台数をご記入下さい。
□その他ご提案などがあれば、ご記入願います。
1~ 30km 31 ~ 60km 61 ~ 90km 91 ~ 120km 121 ~ 150km 円円円円円 台台台台台 B:幹線輸送 10t以上 10t 4t 2t 合計 【弊社代表品種荷姿-参考】 商品群 タテmm ヨコmm タカサmm 重量kg ABCDEFGH

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