2009年1月号
SOLE

RFIDとバイオメトリクスを統合タグ+指紋認証で不正使用を防ぐ

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics DECEMBER 2008  76 は、バイオメトリクスが有効な技術 として見込まれている。
安全で便利 なネットワークシステムへの進化に は、RFIDとバイオメトリクスと を統一的に把握する視座を持たなけ ればならない。
アクティブ型は自らIDを発信  RFIDには複雑なテクノロジー が利用されている。
これを今一度整 理してみよう。
 RFIDは、非接触での認識に電 磁場・電波を利用する。
タグ側がデ ータ処理回路とメモリーを持つため、 データキャリアとして多くの情報を 持たせることができる技術として期 待されてきた。
また、?電源を持た ず?に受信・発信が半永久的に出来 る技術としても注目され、研究開発 されてきた。
 しかし、電源を持たせることがで きれば、活用の場は飛躍的に拡大す る。
これまでは電源としての電池の 大きさとデータ処理回路の性能に制 約があり、かつ、そのコスト・価格 から活用の場が非常に限定されてい た。
それが今では、電池の性能向 上・小型化、データ処理回路の飛 躍的な性能向上(高速化、省電力化、 メモリーの微細化・大容量化)とコ スト・価格の低下から、?電源を持 つRFID?の小型化、活用領域の 拡大が進んでいる。
 以上のような経緯から、現在のR FIDに関する概念を整理しておく。
 第一に、データキャリアとしての 位置付けは、バーコード、二次元コ ードに続き、RFIDの順となる。
これはデータ収納容量能力によるも のである。
 第二には、分類の基軸としては、 ?電源を搭載しているか、?どの 周波数を使用するか、?タグの形状、 の三つが挙げられる。
RFID利活 用の形態からの分類は、?電源を搭 載しているか、が現実的であり、電 RFIDとバイオメトリクスを統合 タグ+指紋認証で不正使用を防ぐ  十一月度のフォーラムでは、サッ トンイーストの中井利光代表に「R FIDの動向とバイオメトリクスと の統合システム」をテーマにご講演 いただいた。
安全で便利なネットワ ークシステムの実現には「物品」の 識別だけでなく、ネットワークにア クセスする「人」を認証する仕組み が必要だ。
それぞれ別個に発展し てきたRFID(Radio Frequency IDentification)とバイオメトリクス (生体認証)の統合が、課題の解決 に有効な技術となる。
(SOLE日 本支部・瀬良光弘幹事) 安全性と利便性が今日の課題に ユビキタス社会の実現を目指して、 国の施策として「e-Japan」、「u-Ja pan」と「ICT(Information and Communication Technology)」が 推進されて久しい。
ブロードバンド の整備が進み、ネットワークシステ ムも発展し、社会全般でネットワー クシステムが活用されている。
 ロジスティクスの領域では、RF IDが物の認識・トラッキングを革 新的に実現するテクノロジーとして 期待されている。
タグの開発が進む と同時に、タグ活用の数多くの実証 実験が推進されてきた。
 この様に発展してきているネット ワークシステムにおける今日的課題 は、システムが「物品や情報」とそ れにアクセスする「人」との対応関 係を的確に取り結ぶ必要があるとい うことだ。
つまり、膨大な「物品や 情報」の識別と、サービスを要求す る「人」の認証が重要なのである。
 「物品」の識別への対応:?何を 出荷したのか/何が入荷したのか/ 何が売れたのか/何が在庫として残 ったのか等、一品ごとユニークに? には、RFIDの活用が期待されて いる。
一方、アクセスする「人」の 認証への対応:?情報を流してよ いのか/入室・入場を許してよいの か/現金を払い出してよいのか?に ●Active RFIDは、電池を搭載し、定められた条件の下に 自らをID 発信するActive, Tag-First ボタン電池 電池ホルダー=アンテナ 基板(=簡易送信機) ※定められた条件 ex.1. 設定されたID 発信間隔 ex.2. トリガー が掛かった時のみIDを発信   セミアクティブ ※電源でサポートされているため読取距離は長い   電池寿命の問題 双方向通信LF(Low Frequency)、振動センサー *特定小電力:数百m *微弱電波:10m 前後 図1 アクティブRFID タグの仕組み。
大きさとしては 非常に小型のものまで開発されている 出所:サットンイースト資料より作成(以下同) 77  DECEMBER 2008 影響、電波の反射および干渉の影響 など、読取精度を左右する要因に対 する配慮が必要である。
導入には次 のステップを踏む必要がある。
?読み取りの実証実験 ?現場環境での実証実験 ?実験ラインへの導入 ?部分導入 ?本格全面導入 の順である。
 導入事例の紹介として、米国国 防総省(DoD)とドイツの小売大 手、メトロの例があった。
メトロで は入出荷システムにおいて、二秒間 池なしのパッシブRFIDタグと電 池を搭載しているアクティブRFI Dタグに大きく分けられる。
 パッシブRFIDは、リーダー/ ライターのアンテナからの電磁波を 電気エネルギーに変換して情報の送 受信を行う。
従って、自発的には電 波を発信せず、リーダーからの電磁 波での読み取りを受け、機能し始め る(Passive, Reader-first)。
通信距 離は近距離に制約されるが、半永久 的に使用可能である。
 アクティブRFID(図1)は、 電池を搭載し、定められた条件の下 に自らIDを発信する(Active,Tagfirst) のが特徴だ。
例えば一定の時間 様々な業界、様々なアプリケーショ ン領域に導入が進んでいる。
こうし た活用事例ではパッシブRFIDの 利用が多い。
 ただし導入に当たっては、システ ム構築上の注意事項も多い。
最も 大きいのは、RFIDシステム自体 には一〇〇%の読み取りを保証する 技術的な仕組みがないということだ。
これについて活用事例をみると、プ ロセス工程全体の中で、最適な読み 取りポジションと読取方法の設定に 工夫がなされている。
工程分析、シ ステム設計、システム運用での対応 が重要になる。
 また、タグの指向性、水と金属の 間隔や、送信トリガーが掛かった時 のみ、などの条件を予め設定すれば、 IDを発信するようにできる。
電源 でサポートされているため、読取距 離は長い。
微弱電波では一〇メート ル前後、特定小電力では数百メート ルも可能である。
ただし、電池寿命 の考慮は必要である。
  読取精度の向上には工夫が必要  RFIDは近年、?入退室管理 システム、?工程管理システム、? 図書館管理システム、?ロジスティ クス・システム、?SCMシステム、 ?農畜産物のトレーサビリティ・シ ステム、?資産管理システム、など JANUARY 2009  78 的な泣き所がある。
紛失・盗難によ る他人の不正使用を防ぐ手立てがな いことである。
冒頭で述べたように、 システムにアクセスする「人」の認 証、つまりシステムに対して間違い なく?本人?であるという認証を提 示する仕組みが必要なのだ。
 ここに、それぞれ別個に発展して きたRFID技術とバイオメトリク ス技術とが、統合されるべき現実的 な契機を見出すことができる。
バイ オメトリクスの特質は、生来の天賦 の身体特徴をキーとして本人認証に 置することにより、出と入りの動き を識別できる。
さらに、施設の要所 にトリガーアンテナを設置すること により、施設全体における人(物) の動態管理も可能になる。
 しかし、こうしたこれまでにな いアプリケーションを実現したアク ティブRFIDシステムにも、致命 エリアへのハンズフリー入退室管理、 などがある。
 こうした応用事例の展開から窺 えることは、アクティブRFIDが 「物を識別・管理するRFID」の 枠を超え、その応用領域を広げてい るということである。
そのこと自体、 アクティブRFIDがパッシブRF IDとは異なる役割を担う可能性を 示している。
 アクティブRFIDの特性は、読 取距離の長さを活かしたリモート操 作性と、その利便性にある。
昨年来 のアクティブRFIDの領域で起こ った大きな動きは、注目に値する。
 あるアクティブRFIDベンダー の提供するハンズフリー入退室管理 システムが、大手システムインテグ レーター数社により一大ブレークを もたらし、数万単位のオーダーでア クティブRFIDが導入された。
同 システムでは、九〇キロヘルツの低 周波をトリガーとしてタグがID情 報を三〇〇メガヘルツで発信し、同 時にトリガーアンテナのIDもレシ ーバーに送信する。
従って、同管理 システムはアクティブRFIDを持 つ人をIDで認識するだけではなく、 IDの発信がされた場所も把握する ことが可能となる。
 どの扉を通過したかだけではなく、 扉の外と内にトリガーアンテナを設 で二〇〇〇個以上のRFIDタグの 読み取りを実現している。
タグをそ れぞれ貼り付けた商品六〇個をパレ ット一枚に載せた状態で、四チャン ネルの読み書き装置により、三六カ 所の入出荷ゲートでタグ情報を読み 取っている。
パレット一枚の読み取 りにかかる時間はわずか二秒のため、 作業に支障はない。
この高読取性能 は、読み書き装置とアプリケーショ ンの間のミドルウエア(ハードとソフ トを統合するツール)のデバイス化 により良い結果を得ている。
アクティブタグの泣き所  多くの場合、RFID、ICタ グとして語られ、イメージされてい るのはパッシブRFIDである。
そ れはアクティブRFIDに比べ小型 化が可能であり、安価で寿命が半永 久であるためである。
 一方、アクティブRFIDは、電 池を搭載し高コストであるが、自ら ID情報を発信し、読取距離が長い ことから、様々な用途が開発されて きている。
 その応用分野としては、?高価 な計測機等の試算管理、?人の所 在管理、高価な物品のロケーション 管理、?センサーと組み合わせた 温度・湿度等の状況管理、?児童 の安全見守り管理、?セキュリティ 図2 リモート指紋認証キーのコンセプト。
システムに対して 間違いなく“ 本人”であるという認証を提示する アクティブ RFID モジュール 生体認証 モジュール 電源 制御 モジュール 時間制御 モジュール 電波 インターフェース 生体認証センサー アンテナ システム設定 管理ソフト PCとの接続はシステム設定と 指紋登録の時だけ ○デバイスレベルでRFIDとバイ オメトリクスとを統合=指紋認 証デバイスとActive-RFIDと の実体的結合 ○ID 情報の発信は、センサーが 取得した指紋情報が登録情報 と照合することを条件とする ○事前に生体情報を登録した本 人以外使用できない 図3 リモート指紋認証キーの仕組み。
事前に生体指紋情報を 登録した本人以外は使用できない 管理PC 受信機 リモート・キー ? ? ? ? ?使用者の指紋を読ませ、 指紋認証がOKであれば ?リモート・キーからアクセ ス要求情報が発信される ?アクセス要求情報を受信 機が、受信し、管理PC に送り ?管理PCでアクセス要求 情報が照合されれば、電 気錠に開錠信号が送られ る 79  JANUARY 2009 活用する技術ということである。
鍵 やカードのように保持するものでは なく、ID/パスワードのように記 憶しておくものでもない。
これは次 の三点にパラフレイズ(言い換え)で きる。
?Universality:誰もが持っている 特徴である ?Uniqueness:その特徴は、各人 固有で他人と異なること ?Permanence:経年変化しないこ と  生体認証としては、指紋、虹彩、 静脈、顔などが実用化されてきてい るが、基本的に予算とTPOに合わ せて選択されるべきかと考える。
こ こでは、指紋を利用する「リモート 指紋認証キーシステム」を紹介する。
 このシステムは、デバイスレベル でバイオメトリクスとRFIDを統 合したものである。
実体は極めてシ ンプルで、アクティブRFIDタグ に指紋認識デバイスを組み込んだも のである。
システムのコンセプトも 非常にシンプル。
ID情報の発信は、 センサーから取得した指紋情報が登 録指紋情報と照合されることを条件 とする、という点にある(図2)。
 バイオメトリクスによる本人認証 をトリガーとしてIDが発信される ため、事前に生体指紋情報を登録 した本人以外は使用できず、他人の 不正使用を許さない。
しかもアクテ ィブRFIDのリモート操作性を損 なうことがない。
受信側システムに、 既存のアクティブRFIDのシステ ムを使用することもできる(図3)。
人、場所、時間を完全に管理  想定される活用領域は、通常の アクティブRFIDは適さなかった、 高いセキュリティレベルを要求され る分野である(図4)。
具体的には、 ?コンピューターシステムへのアク セス管理、?重要文書、貴重品等 のロッカーシステムへのアクセス管 理、?重要物品の保管室への入退 室管理、?モニター室、管制室等の 重要作業場所への入退室管理、な どである。
 また現在、既にUSBメモリー・ タイプのアクティブRFIDの小型 受信機も開発されている。
それをワ ンチップ・コンピューターに組み込 むことにより、自己完結型の車載受 信システムが実現できる。
 車載受信システムは、車両に対す る応用領域を広げてくれる。
具体的 には、?重機、建機等の作業車へ のアクセス管理、?重要物品の搬送 車の荷台アクセス管理、?最終的に バイオメトリクス・スマート・キー、 など車両のセキュリティ要求に応え るシステムが可能となる。
 次に展望できるのは、インターネ ットとリモート指紋認証キーとの統 合だ。
前述の車載受信システムにG PSとインターネットへのアクセス 機能を搭載し、荷台の開閉を制御す れば、貴重品、重要情報、現金等 の運搬について、センターからモニ ターできるセキュリティ支援システ ムの構築が可能となる。
 同システムでは事前に生体情報を 登録した作業員以外は荷物の積み込 み、積み降ろしが不可能な上、作業 履歴をGPS情報とともにセンター の管理システムに対してリアルタイ ムに送信できる。
従って、センター では運搬作業に関する「人」と「場 所」と「時間」をリアルタイムに把 握可能だ。
リモート指紋認証キーと インターネットをシステム連携させ ることで、空間と時間の壁を超えた 認証/アクセス・システムが実現す るのである。
次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは1月19日(月)「RFID最 新事情とSCM」上智大学経済学部 荒木勉 教授の講演を予定している。
このフォーラム は年間計画に基づいて運営しているが、単月 のみの参加も可能。
1回の参加費は6,000 円。
ご希望の方は事務局( sole-j-offi ce@ cpost.plala.or.jp)までお問い合わせくだ さい。
図4 リモート指紋認証キーは、リモート万能キーとして 広い応用分野を持つ

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